冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【前書】
(・▽・)<今日の本文の内容についてですが、

(・▽・)<前回の【コソコソ話】を覚えている人は。

(・▽・)<(。´・ω・)ん? ってなるかもしれません。

(・▽・)<でも実際はそれほど矛盾はしてませんので。


52

 分身を出していた二人を倒したおかげで、大勢いた敵は一人になった。

 

「あとひとっり♪ あとひとっり♪」

 

 手足で武器をジャグリングして、飛び跳ねながらオウカは言った。

 どう見てもふざけているようにしか見えないが、実は内心分析していた。

 

(アイツ……ずっと何もしてこなかった)

 

 最後の一人。かかってくる訳でもなく、援護をする訳でもない。

 ただこちらをじっと見ているだけ。

 嫌な予感がしたので、時折攻撃はしたのだが、全て避けられてしまった。

 

(何か隠してそうだな……)

 

 相手を観察する。

 見た所、普通の男子生徒。顔に幼さがまだあるので、もしかしたら一年生。

 

「もしかして、急遽本戦出場が決まった人?」

 

 答えるかはわからなかったが、オウカは訊ねた。

 それに答えは――返って来た。

 

「ああ、そうだ」

「!」

 

 答えてくれた事にオウカは少し驚いた。

 そんな彼に、相手から疑問が投げかけられる。

 

「そっちもか?」

「まあね」

 

 隠すような事ではないので、正直に答えたオウカ。

 続けてこう言う。

 

「そういう訳で、そっちも早く手札を出せ」

 

 こっちはずっと戦っていたのだから。

 それに相手の返答は、

 

「いいぜ」

 

 是だった。

 更に続ける。

 

「とは言え、こっちは最初から出せるモンじゃねえんだ」

「ふーん(。条件付きのチカラかな)」

「まあ、│見《・》│る《・》のは十分。ここからだ!」

 

 その言葉と同時、彼の姿が別人に変わった。

 

 そこにいたのは――美しい女性。桃色の長髪を持ち、赤いドレスを着ている。ここまでなら普通(?)なのだが、手にしている凶器――巨大なチェーンソーのせいか、凄絶に見える。

 

 その女性を見たオウカは呆然とする。彼女の事を、オウカは知っている。

 

『苦しんで死にましょう♪』

 

 元殺人鬼の仕置人。

 あまりに殺し過ぎたため、“殺戮鬼”と呼ばれ、依頼されて殺すようになってからは、あまりに惨たらしく殺す事から“拷問姫”と呼ばれた女性。

 オウカの親友であり、<冥刀>【ルンペルシュティルツヒェン】の使い手。

 

 その名は、モンセラート。

 

 親友の姿をした者は、手にした巨大チェーンソーを無造作に振るう。

 その攻撃に、オウカはどうにか正気を取り戻し、地面に伏せる。

 

「!?」

 

 その一撃で周囲が薙ぎ払われる。

 喰らってたら、おそらく一撃でアウト。

 

 その一撃を放った直後、セラの姿が変わる。

 

 そこにいたのは――可愛い女性。髪の毛をサイドテールにして、医者のような恰好している。こちらは武器や凶器を持っていないのだが……

 

「今度はアイツか!」

 

 吐き捨てるオウカ。

 彼女の事も知っている。

 

『医者の仕事? 輪廻を切り裂き、摂理を歪め、熱力学第二法則に真っ向から戦いを挑む事さ』

 

 超凄腕の名医。

 元は超大病院の有名な外科医だったのが、とあるボケナスのせいで怪我人が大勢出た際に、重傷な孤児よりも、掠り傷の富豪を優先して診ようとする院長に腹を立てて、右ストレートでぶん殴って裏社会にドロップアウトした女性。

 戦闘者としても超一流で、糸の<冥刀>である【クリドゥノ・アイディン】により万能に戦える。

 

 その名は、ディアン。

 

 贋物は糸を指から出し操る。縦横無尽に襲い掛かる糸に対してオウカは。

 

「こうっと」

 

 一本を無造作に掴む事で軌道を変えた。

 糸による戦闘は繊細なので、そう簡単に真似は不可能。

 

 それを相手もわかったのか、姿を更に変えた。

  そこにいたのは男。多分。オウカと同じように、中性的なので、女と言っても通じる。

 着流しを着て、左手には剣。それより特徴的なのは――右側が死んでいる事。右眼には刀傷、右腕からはフック状の海賊義手、右足は棒状の義足が見える。つまり隻眼、隻腕、隻脚。

 

 彼の事をオウカは知っている。

 

『そうでござるか。良かったでござるな。でも拙者の方が強いでござる』

 

 求道者。

 最強となるため、全ての知的生命体の抹殺を誓った大馬鹿野郎。幾度も追手や討伐隊が組まれ、重傷を負った事もあるも、全てを返り討ちにした。トータルキルスコアはあの世界でもトップレベル。

 一人一つという基本ルールを、ある意味逸脱している<冥刀>【レッソワニー】の使い手。

 

 その名は、コジュウロウ。

 

 踏み出そうとした贋物だったが、前につんのめる。だが、それでも一撃は放たれた。それはオウカには当たらなかったが、代わりに当たった岩が切断された。

 その様子を見たオウカが、内心で吐き捨てる。

 

(アイツの体捌きが、そう簡単に真似できるかよ)

 

 それを感じ取ったのか、更に姿が変わった。

 

 そこにいたのは少女。袴姿をして、両方の腰に佩刀している。何より目立つのは、盲目なのか、両眼には目隠しをして、白杖を持っている。

 

 彼女の事をオウカは知っている。

 

『復讐さえ果たせば、後はどーでもいい』

 

 盲目の剣姫。

 求道者の妹弟子。実力差を知りながらも抗う人。堕ちかけながらも踏みとどまった人。

 実力差を埋めるため、複数の<冥刀>を使った猛者。

 

 その名は、カスミ。

 

 贋物は、仕込み杖である白杖を構える。そして居合が放たれる。それを避けるオウカ。

 普通の居合ならこれで終わりだが。

 

(まだ来る……!)

 

 彼女の居合は終わらない。そのまま降った体制から、鞘走りの音。居合が放たれる。そのまま連続居合が襲いかかる。

 これが、彼女が常用している白杖――<冥刀> 【ガスティガ=フォッリ】のチカラ。空間を圧縮して鞘を作り出す。コレにより連続した居合が可能となる。

 オウカはどうにか距離を離す。するとまた姿を変えた。

 

 そこにいたのは男装の麗人。男の物の服をカジュアルに着こなした美人。特徴的なのは左右で違う眼の色。

 

 彼女の事をオウカは知っている。

 

『男は男同士、女は女同士で子供が作れればいいのに……』

 

 凄まじい戦闘センスの持ち主。

 とある女性だけの都市に存在した自警団のリーダー。幼い頃の経験から、男が大嫌いとなった同性愛者。ただし、オウカは例外だった。

 一応は槍型の<冥刀>である【ブリトマート】の使い手。

 

 その名はリリアーヌ。

 

 無手の掌に現れたのは光の長槍。それを膝を使い圧し折り、二つの短槍にする。そして、それをオウカ目がけて投擲した。

 

 

 ■□■□

 

 

 一方その頃。

 観客席で戦いの様子を見ていた愉快(?)な面々。

 

 ジンナはコメントし、それにランコが首を捻る。

 

「サク、押されてる……」

「やっぱりあの姿が原因なのか?」

 

 そこへルラとジョージも口を開く。

 

「動きがまるで別人。どうやらアレ、姿を似せるだけじゃないようですね」

「その戦闘力もある程度コピーできるようだな。限度があるようだけど」

 

 あの隻眼、隻腕、隻脚の剣士には、最初の一回以来変身していない。使いにくいのだろう。

 

「サクさん大丈夫でしょうか……」

 

 心配そうなリア。マユとネラの方を見て訊ねようとするが。

 

「マユさ…!? 大丈夫ですか?」

「「!?」」

 

 叫んでしまったリアの様子に、何だと全員の視線がマユの方へ向く。

 彼女の顔は真っ青だった。

 

「不味い、ヤバイ」

「な、何が?」

「サクがキレる」

 

 そして、口を開いた。

 

「それ、何が、問題?」

 

 バイカの問いかけ。

 それにマユが即答する。

 

「相手を殺す」

「「!」」

 

 驚く一同。とは言え、オウカと付き合いがあるものは、何となく察したらしく驚きは少ない。

 だが、まだ付き合いが浅い面々はどういう事かわからない。

 ルラがランコの方を見る。

 

「どういう事ですか?」

「ええと、元々サクは敵対者には容赦ないんです」

 

 一時的に一緒に暮らしていたので、幾らか彼女は知っている。

 

「とはいえ、大抵の場合は落ち武者や河童、パンチやキック、ガスバーナーで済むんですけど……」

「十分やり過ぎな気がするんだが……」

 

 ジョージがツッコミを入れた。それに答える者は今はいなかったが。

 

「そして、彼は殺しに全く躊躇いがないんです」

「それ、今、時代、珍しくない」

 

 バイカの言葉は最もだった。

 今の時代、治安の悪い都市や街はある。なので、年齢一桁で殺しの経験を持つ人もいる。

 

「それで、決めているそうなんです。絶対に殺す相手を」

「ほう。それは?」

 

 それに答えたのはマユ。

 

「友達と仲間を馬鹿にした人」

 

 彼女は知っている。

 あの世界で、復讐者が本懐を遂げて死んだ後、彼女を馬鹿にしていた二人組を、問答無用でブチ殺した事を。

 

 マユの答えに、ジョージはすぐに思い至らなかったが……。

 

「馬鹿にって……。まさか!?」

「そう。本物はもっと凄い」

 

 要するに贋物の技術の問題である。

 

「サクにとってはアレは馬鹿にしているも同然」

「……なるほど」

 

 ルラは納得した。

 そして、改めて試合に目を移す。

 一見すれば、オウカが追い詰められている様に見える。だが、彼の強さを知っている面々は何かを我慢しているようにしか見えない。

 

(怒りを抑えているのですか……。すぐに殺してしまわないよう)

 

 こんな大舞台で殺人をするわけにはいかない。だからこそ、理性を働かせているのだろう。

 だが、相手はそれを知ってか知らずか、火に油を注ぐ。

 姿が更に変わった。

 

「「!?」」

 

 観客の声にならない声が重なる。

 そこにいたのはシスター。

 なのだが……露出度の高い服と折衷して大変な事になっている。

 しかも、この女性スタイルが滅茶苦茶良いため目に毒。

 その人を何人かは知っている。その逸話を知っている者もいる。

 

「あの人って……左の頬を叩かれたら、右の頬に肘打とボディブロウの人?」

「うん。マリア」

 

 ジンナの疑問に、答えたマユ。

 直接面識はないマユだが、よく知っている。

 

『ワタクシは知ったのです。祈りだけでは救われないと』

 

 皆に慕われる優しきシスター。

 孤児達の面倒を見ていたのだが、ある切っ掛けにより破戒した修道女。

 元々高いフィジカルに加え、一日一万回の正拳突きにより、鍛えた拳は岩をも砕き、右腕に埋め込んだ<冥刀>【レギンナグラル】の力で鋼鉄の塊すら粉砕可能になった“ハカイシスター”。

 

 その名はマリア。

 

 繰り出したのは右拳。それをオウカは受け止める。

 そして、彼は

 

「ふざけてんじゃねえぞぉー!」

 

 怒号を上げた。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 オウカの頭にあるのは『殺意』。ただそれだけだった。

 先程までは、湧き上がるそれをどうにか堪えていたのだが、贋物マリアの拳の一撃で吹き飛んだ。

 

「殺してやるぞ。ドブカス野郎」

 

 オウカは相手に迫る。それに相手は、リリアーヌの姿を取り、投槍するが、

 

「当たるかそんなもん」

 

 当たらない。

 彼女の投槍はもっと鋭く速い。

 それに相手は、ディアンの姿を取る。そして、糸で琴を作り出す。それを奏でる音攻撃を放つが、

 

「効かねえよ」

 

 大盾二枚を出し、それを防ぐ。

 攻撃の再現度が甘い。彼女はもっと凄まじい。

 それに相手は、モンセラートの姿を取る。そして、チェーンソーの薙ぎ払いをするが。

 

「そんなポンポン使うな」

 

 飛び上がり避けた。

 あのチェーンソーは友人の最高│欠《・》作の一つ。彼女は奥の手としていたうえ、こんなタイミングで使わない。

 それに相手は、カスミの姿を取り居合を放つが、

 

「ノロマ」

 

 親指と人差し指の二本指で受け止める。

 贋物はそれを引き剥がそうとするが、剥がれない。

 だからこそ、姿をマリアに変え、動けるようにしてから、拳を放つ。

 直撃。内蔵が傷つき血を吐くオウカ。

 攻撃を防げるVFだが、防げない攻撃も存在する。その一つが浸透する攻撃である。

 

 だが、そんなダメージを彼は意に介さない。

 

「アイツの拳は骨をも砕く」

 

 腕を掴み。

 

「テメエのは紛い……ものだぁー!」

「!?」

 

 咆哮と同時、間接を逆に曲げた。

 こういう攻撃も防げない。

 

「ギャアアア!」

「うるせぇ」

 

 悲鳴をあげる相手に、オウカは蹴りを叩き込む。

 当てた場所は膝。見事に逆に折れ曲がり、贋物は元の姿に戻りながら吹っ飛んだ。

 

「あ、足が……」

 

 痛みに悶える相手にオウカは言い放つ。

 

「この程度の痛み、アイツらなら意に返さないぞ?」

 

 化けるならちゃんと化けろ、とオウカは言いながら、相手に近づき告げる。

 

「さあ選べ。惨たらしく死ぬか、苦しんで死ぬか」

「じ、実質一択です。死ぬしか選択肢がありません」

 

 男の指摘にオウカは何を言っているんだという顔をして続ける。

 

「なにを今さら。お前は俺の親友(ダチ)を馬鹿にした。もう死ぬしかない」

 

 相手は冗談だと言おうとした。だが、オウカの眼を見てわかった。

 この少年は自分を殺す気だと。

 

「い、嫌だ。死にたくない!」

 

 護身用に持っていたナイフを左手で抜き、自分の首を切りにかかる。急所によるダメージ判定でこの場から逃走を図る。

 だが。

 

「逃がさねえよ」

 

 オウカが地面を思いっきりストンプ。

 するとVF値が零になっても転移が発動しなくなる。

 

「な、なんで!?」

「俺は時空系の攻撃に耐性があってな。応用すればこういう事もできる」

 

 そのまま、左手を蹴り飛ばす。ナイフが吹っ飛ぶと同時、腕が圧し折れた。

 

「ギャア……ガボ!?」

「うるせえゴミ」

 

 顔面を蹴り飛ばして言葉を封じる。

 そして相手に告げる。

 

「さあ十秒やる。俳句を詠め」

 

 辞世の句という奴である。

 そして、オウカは数え始める。

 

「十、一、零」

 

 数字が一気に飛んだ。

 相手からの言葉は。

 

「いやだ、し、死にたくない」

「それが遺言か。じゃあな」

 

 そのまま足を顔面目掛けて振り下ろした。




【後書】
(#ー#)<主人公(コイツ)、自分はコピーしてんのに、相手のコピーは許せないのか?

(㈩*㈩)<そういう批判はあると思ってた。だから捕捉する。

(・▽・)<はい。まずこの人は相手の姿を使っているうえ、

(・▽・)<技の精度が甘いんです。勿論本物と比べてですが。

(#ー#)<……確かこういうコピーって、本物以上にはならないってルールなかったか?

(・▽・)<ある程度なら、許したと思いますよ。

(・▽・)<でも、やり過ぎました。

(㈩*㈩)<オウカの場合、確かにコピーはしてるけど、

(㈩*㈩)<そのまま使わないで、自分用にしているから。

(#ー#)<わかるような、わからないような。
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