(㈩*㈩)<基本ルール。<冥刀>は一人一本しか持てない。
(㈩*㈩)<まあ、相性とか代償をどうにかして、持っている人もいるにはいる。
(㈩*㈩)<それでも二つ三つが限界。……なんだけど。
(#ー#)<破っている奴チラホラいるよな。
(㈩*㈩)<まあね。そういうのが可能な<冥刀>が幾つかあるから。
(・▽・)<因みに、サクの場合、それを持っていたのもあるけど。
(・▽・)<ある理由で、幾つも<冥刀>が使えます。
(#ー#)<理由って?
(・▽・)<それも追々。生い立ち関連だから。
その時だった。
「縛!」
オウカの足元に大量の呪符が現れる。そこから大量の鎖が飛び出しオウカを雁字搦めに縛り付ける。
その人物の方へ、オウカは億劫そうに視線を向ける。
「……どういうつもり?」
それはクドウ=カナタ。
そんな彼に彼女は問いかける。
「それはこっちのセリフよ。一体何をする気だったの?」
「塵を処分しようと思って」
事も投げに言うオウカ。それにカナタは少し悲し気な眼をして言葉を発する。
「お願い、やめて」
「……」
「私のお願い……聞けない?」
その言葉にオウカは苦笑する。
「大丈夫。すぐ終わる」
「そういう事じゃない。彼を殺すのをやめて頂戴」
カナタの真摯な言葉。
更に、そこに言葉を重ねるのは、いつの間にかオウカの前にいたベニバナ。
嫌な予感がしたので、共闘していた相手を振り切り、ここに駆け付けたのだ。
「
男を庇うように立って頭を下げる。
「どうか止まってですわ」
オウカは少し沈黙してから話しだす。
「この塵屑は俺にとって最も許せない事をした」
「……何を?」
「俺の
それが彼には許せない。
それに四肢が潰れて動けない男は反論した。
「し、してねえよ。そんなk」
それにオウカは、相手に圧を掛け睨みつけて言葉を封じる。
そして、続ける。
「アイツらの技はあんなものじゃない。アレらはな、アイツらが様々な体験をして積み上げたものだ」
楽しい事や嬉しい事ばかりではない。憎悪、憤怒、恩讐、怨嗟。負の感情すら積み上げ、数多の激闘、死闘を繰り広げて出来たもの。
「だから俺はコイツが許せない。だから殺すんだ。大丈夫すぐ終わる」
それをどうにか止めようと、友達二人は言葉を重ねていく。
「お願い。そんな事で手を汚す必要ないわ」
「ある。アイツは皆を馬鹿にしたんだから」
「相手は悪気はないですわ! だから止まってくださいまし」
「ここまでしたんだ。もう引けない」
だが、オウカは止まらない。
もう相手を殺さなければ止まらない。
そう思われた。
★☆★☆★
男――ウラベ=ヒロノブは特殊な<スキル>を持っている。それが《月鏡》。対象が強いと思った相手を再現する能力。
しかも、その戦い方や能力すらもある程度なら再現できる。
とはいえ、誰でも再現できる訳ではないうえ、一定以上見た相手しか出来ないうえ、インターバルもある。
だからこそ、体捌きが独特なコジュウロウは上手く扱えなかった。
これを上手く使って、強い相手すら倒して来た。だからこそ、今回の『バトル×三』に選ばれた。
だが、今回はそれが命取りになってしまった。
彼は知らなかったのだ。
オウカが友達・仲間を大事にしている事を。
今はもう会う事が出来ない、彼女らとの思い出を、彼が宝物にしている事を。
劣化コピーでは馬鹿にしていると思われる事を。
だからこそウラベの命は風前の灯となっていた。
だが、逆境や窮地は成長・進化の兆しになる事がある。
今回はそうなった。
■□■□
(ヤベエ、ヤベエ)
ウラベはどうにかこの場から逃げ出そうとする。だが、四肢が曲がって動けない。
(どうすれば……、どうすれば……)
その時だった。
[助けてあげようか?]
声が聞こえた。
「だ」
[おっと、声には出さない方が良いよ? サクにバレるよ]
その誰かの助言に従い、とりあえず心の中で喋る。
[誰だ!]
[今はそんな事どうでもいいだろう? 助けてあげるよ]
相手の正体はわからないし、どこにいるのかすらわからない。
だが、彼は藁にすがる。
[ど、どうすればいい?]
[何、簡単な事さ。その体を貸してくれればいい]
[は?]
唖然としたウラベに声は続ける。
[気づいていないんだ。キミの奥の手だよ]
その声の説明によれば、自分の《月鏡》の最後の奥の手。
外側だけではなく、本人を呼び込んで内側も再現する。
ただし、デメリットは勿論ある。
インターバルはかなり長いうえ、それとは比にならないデメリットが出て来る。
それは――
[本人の魂魄と精神を呼び込むからね、乗っ取られる危険性があるんだよ]
[ふ、ふざけんな! じゃあ俺死ぬじゃねえか!?]
ウラベの抗議に、その声はケラケラ笑って続ける。
[大丈夫さ。ちゃんと返してあげるから。なんなら〈誓約〉? を結んでも良いよ]
〈誓約〉は特殊な術技。お互いが何かしらを誓い、それを破ればそれ相応のデメリットが降りかかる。
[で、でも……]
[ちゃんとサクにとりなしてあげるからさ]
この時点でウラベは気づいていないが、オウカをサクを呼んでいる。つまり、この声の主は、彼の親しい友である。
だが、それにウラベは反論する。
[とりなすって……あいつ等出来てねえじゃん]
カナタとベニバナがどうにかオウカを鎮めようとしているが、あまり効果がない。
[ダイジョブさ。彼は負い目があるから]
[負い目?]
[それは今はどうでもいい]
疑問に答えない。そして選択を促す。
[さあどうする?]
[……]
[座して死を持つ? それとも抗う?]
そして暫しの沈黙後、ウラベは決断する。
[わかった! ちゃんとどうにかしろよ! 後、体返せよ!]
[わかった。契約成立だ]
その言葉と同時、ウラベの意識が薄くなっていく。
彼が最後に聞こえたのはこの言葉。
[今は眠って。起きた時には終わってるさ。……多分]
凄く不安になったウラベ。
そして、意識はなくなった。
□■□■
次の瞬間。
「「!?」」
凄まじい圧がウラベの方から発せられる。
それにオウカ達はその方向を向く。
すると、そこには男ではなく、女がいた。
今まで、変身した人物は可愛い人や美しい人が多かったのだが、この女性は妖艶と言ってよい美貌を持っていた。
服装はサイズが大きいせいで、ダボっとした露出の少ない服を着ているが、不思議と動きにくくないようになっている。そして、腰には三日月刀。
因みに四肢が動かないので、座り込んだまま。
その女を、オウカは知っている。
「野郎! 懲りも懲りずに……」
拘束を引き千切りながら、迫ろうとしたオウカ。
だが、女の声に足が止まる。
「やれやれ変わっていないねサク」
その声を、オウカは知っている。
女は更に続ける。
「まあ人は変わらないけど。良くも悪くも」
やれやれと女は肩を竦める。
そして、オウカは気づく。
今までの贋物とは何かが違う。
何より――圧が違う。
「ま、まさか……」
そして、女は笑みを浮かべてこう告げる。
「座ったままで悪いけど、改めて自己紹介だ」
一拍置いて女は自身の名前を告げた。
「ソルの名前はソルドアット。短い時間だけど宜しくね」
そして、ウインクした。
その自己紹介を受けて、オウカは唖然。彼は馬鹿ではないからこそ気づく。
(本物だ……。間違えない)
だがどういう事だと試行を巡らす。
そして、カナタがオウカと代わるように、ソルドアットに問いかける。
「本物……なんですよね?」
「そうだよ。まあ何を持って本物かとするかだけどね。ところでキミは誰だい?」
「私はクドウ=カナタです」
一拍置いてこう続ける。
「サクの友達です」
その言葉にソルドアットの眉が上がる。口元に笑みが浮かぶ。
「へえ、許されているんだぁ」
「はい」
その会話に疑問を持ったのは、ベニバナ。
実は前々から気になっていた。一部の面々がオウカをそう呼ぶ事に。なので良い機会だと思い問い掛ける。
「前々から気になっていたのですわ」
「うん? キミは?」
「ハナヤマ=ベニバナですわ。それはともかく、オウカの呼び方でサクってありますけど」
「ああ、愛称だよ」
ソルドアットが説明する。
元々のきっかけは、友人であるモンセラート、彼女がオウカを愛称である、セラと呼ばせるようになってからの話。
『私だけ愛称と言うのは何か不公平ですね』
『何が。三文字だから別にいいんじゃない』
『という訳で愛称を決めましょう♪』
『おい』
そういう訳でこうなった。
「まあ本人もまあまあ気にいっているみたいだよ」
「なるほどですわ」
「まあセラの事を見習って(?)命を懸けてくれて、懸けられる人にしか許してないけど」
ヴィーとは逆だ、とケラケラ笑うソルドアット。
因みにモンセラートも愛称で呼ばせる人を限っている。ヴィーは、親しい人にしか本名を教えないので、逆という訳だ。
その会話を聞いてオウカは一つ疑問に思う。なので呼びかける。
「なあソルドアット」
「愛称で呼んでくれないのかい? サクヅキ=オウカ」
いたずらっ子のような顔をするソルドアット。
そんな彼女にオウカは真面目な顔で問いかける。
「呼ぶ資格、今の俺にあるか?」
「あるさ」
真顔になったソルドアットは続ける。
「ソルとキミの仲だろう?」
「でも俺はお前を」
その言葉に、ソルドアットは溜息を吐く。
(まだ気にしてるのか……)
彼が根に持つ事を知っているが、ここまでとは。
とは言え、ああなった原因は自分にあるので、ちゃんと言葉を掛ける事にするソルドアット。
「サク」
「何だソル」
「あ、今度は呼んでくれた」
同姓であるカナタやベニバナすら見惚れる美しい笑みをオウカに向け、彼女は続ける。
「アレはさ、ソルが望んだ事だ。だからキミは胸を張れよ」
「張れるか間抜け。俺はお前を……」
「いいんだよ。ソルはさ、平和な世界じゃ生きる事ができない」
それは確かにそうだった。異世界――戦いばかりの修羅の世界で、強くなければ生きていけなかった。……まあ強くても死ぬ時は死ぬが。
「だから良かったのさ。ソルはあそこで――死ぬべきだった」
「……」
「だから、あの時言ったけど、今も言うよ。ソルを殺してくれてありがとうサク」
頭を下げるソルドアットだった。
ソルドアットの心からの言葉だが、オウカは無言。
そんな彼にソルドアットは溜息を吐こうとしたが、ある事を思いつきにんまりと笑う。
(そうだ。この状況、利用しない手はないね)
そして。
「刃金の誓い、今此処に」
詠唱を開始した。
「「!?」」
驚く一同。だが、それを無視して言葉は続く。
「我は羅刹。十の頭と、二十の腕を持つ魔王なり」
腰に佩刀した三日月刀が一人でに抜ける。
「さあ、戦いの始まりだ。武器を持ち、戦車に乗り、いざ行かん」
宙を舞い、彼女の後ろに佇む。
「光へ堕ちろ、闇を照らせ」
ソルドアットの両眼が光る。
「
その言葉と同時、後ろにあった三日月刀が扇状に動き、刀が増えていく。そして、合計二十の刀が背後に展開された。それはまるで後光のよう。
「さてと。じゃあまずは〈
その言葉と同時、一本の三日月刀がソルドアットの前に出て来る。
「じゃあまずは動けるようにしないと。【デア・トロイエ・ヨハネス】」
言葉を唱えた。
■□■□
少し時間は戻る。
オウカがブチ切れてから、即座に会場に駆けつけようとしたマユだったが、それを一同どうにか止める。
「落ち着いてマユさん!」
「行ったら、≪
「そうだ。全てが水の泡になる」
ジンナ、リア、ランコがどうにかマユを抑えにかかるのだが、彼女は止まらない。
「それでも行かなきゃならない。このままだと……」
「VF、転移、あるけど」
バイカが指摘する。それにほぼ全員が「ああ!」となるが、マユは首を横に振る。
「意味ない。ほら」
その言葉と同時、オウカが転移を封じた。
それに、ザンカが唖然とする。
「オウカクン、あんな事できたっすね」
転移封鎖は準備やコストが大変なのに、それを踏みしめだけで封じてしまったのがオウカである。
それにルラとジョージがある事に気づく。
「もしかして……オウカ君は空間に関する適性がある?」
「という事は、時間もか?」
それにマユは引き留めようとする面々を、引き剥がそうとしながら答える。
「まあ似たようなもの」
「「?」」
その言い方に疑問符を浮かべた一同。
そして、事態は更に動く。カナタとベニバナが動こうとする中、ウラベがまた姿を変えた。
だが……
「!」
「あら?」
「へえ……」
今までの変身と違う事に、ザンカ、ルラ、ジョージが気づく。
そして、マユの動きも止まる。
眼を真ん丸にして姿を変えた人物を見た。そして、その口から言葉が漏れる。
「ソルドアット……」
「あの人、名前?」
「確か戦闘狂の人だよね?」
バイカとジンナの疑問。特にジンナは話題に出したばかりだったのでタイムリーだった。
二人の疑問にマユは頷いた。
「そう」
「また性懲りもなく油を注いで……」
「いえ、リア様、アレは先程までのとは違います」
ランコも気づいた。
今までの変身は外だけしか伴っていなかったいわばハリボテ。なのだが、今回の変身は内側も伴っている。しかも、気配や威圧がまるで違う。
それにマユが肯定する。
「そう。アレはソル自身。間違えない」
「本人を呼べるって……」
そういう<スキル>はあるにはある。だが、何かしらのデメリットやリスクがあるはず。
そう思っていると、そうしたせいで引き止めの力が弱まったせいで、マユがそちらに行こうとするのを再開する。
「マユさん! アレが本人ならサクさんは大丈夫ですよ」
リアの言葉にマユは首を振る。
「違う。今度は別の問題」
「「別の問題?」」
全員の疑問にマユが答える。
「辺り一帯が消し飛ぶ」
【TIPS:特殊なスキル】
(#ー#)<特殊な<モンスター>を倒した時に、そういうのは習得できる時があるんだが、
(#ー#)<心臓や脳に特殊な加工して作られる石――【スキルストーン】、略称【SS】があるんだが、
(#ー#)<これを使って覚えられる場合もある。まあかなりランダム要素が強い。
(#ー#)<当たり外れが激しいんだが、当たりの時は凄まじい。
(#ー#)<このコピー野郎や、聖女とかがそれにあたるな。
(・▽・)<サクは使わなかったのですか?
(#ー#)<忘れたのか? コイツは<スロット>自体を奪い取られた。
(・▽・)<あ!
(㈩*㈩)<忘れないで。
(・▽・)<……ごめんなさい。