(・▽・)<この二人は人であると同時、<冥刀>でもある。だけど違いがある。
(#ー#)<違い? <冥刀>の形態か? 櫛と蟻だし。
(・▽・)<そういう事じゃなくて、根本的に違うのです。
(・▽・)<まず、どうやってなったか。
(・▽・)<マユさんは色々調整してなりましたから、その気になれば、
(・▽・)<人間の生理活動は必要ないし、服も一緒に変身します。
(#ー#)<そういや、あのアリ女は人間に変身する度、全裸だな。
(・▽・)<はい。無理矢理なった弊害で、服は別なんです。
(・▽・)<しかも排泄はともかく、ある程度の栄養補給や睡眠が必要です。
(・▽・)<それに人形態は少し負担になるのです。
(・▽・)<だから彼女は専ら機械アリ形態です。
(#ー#)<死ななきゃ安いと言うが、ちょっと高かったか?
◇◆◇◆
その日、オウカは一人で散歩をしていた。
「♪~」
こういう時は、大抵の場合、
(こういうのも悪くない)
偶に見かけた出店などで買い食いする。
ソフトクリーム七段重ね(バニラ、チョコ、抹茶、キャラメル、オレンジ、ブドウ、バナナ)を食べている時だった。
「あら? サクですの」
聞き覚えのある声にそちらを向くと、そこにはベニバナがいた。
夏の暑い時期なので、着物、袴、ブーツのハイカラさんスタイルではなく、涼しそうな浴衣姿に雪駄。浴衣は白に赤と青の朝顔があしらってある。
こちらも買い食いしていたらしく、右手にはケバブ、左手にはクレープを持っている。
「ベニ……。何してるって、見ればわかるな」
「貴方と同じですわ」
二人はクスクス笑う。
「ここで会ったのも何かの縁ですわ。二人で見て回りません事?」
「断らぬ」
「何ですの!? その返事!?」
そうして二人で雑談しながら食べ歩く。
この二人は結構健啖家。
なので、ここで沢山飲み食いしても、夕食に支障は出ない。
「この肉まん美味しいですわ!」
「マジ!? 確かにこのあんまんは美味いしな……」
「分け合いません事?」
「いいね」
偶に分け合う。
その様はどこからどう見ても……
「「恋人にしか見えない……」」
「!」
「その声は……」
そのツッコミにベニバナは思考停止、オウカは普通に振り向く。
そこにいたのはカナタとソルドアットだった。
「何してんの?」
「それはこっちのセリフって言いたいところだけど、一目瞭然だね」
「そっちもな」
この二人も買い食いしていたらしく、カナタは手にかき氷、ソルドアットは焼きそばを持っている。
そして、両手に食べ物を持つオウカに呆れるソルドアット。
「相変わらずよく食べるね」
「昔の癖だ。食べれる時に食べとかないと」
そう言ってオウカは手に持ったベビーカステラを一気に頬張る。
「……昔? ですの?」
ベニバナが起動して訊ねる。
それにオウカは答える。
「この面子に言ったかはわからんけど……」
一拍置いて続ける。
「俺家出中」
「「はい!?」」
●○
「さて場所も変えたし、話すとしよう。とは言っても……ある程度ぼかす」
「ソル? どうしてって? 完全に知っちゃうとちょっと不味いから」
「カナタ? ああ、うん、あるな。後ろ盾の件にもちょっと関係ある」
「ベニバナ? 気遣いありがと。前に学外実習に面々には言ったけど、俺双子」
「歴史がかなりある<ノーブル>の名門出身、その跡取り息子って奴だったんだが」
「双子ってのが大問題でな。ソル? どうしてって? 双子は才能が分散する」
「んで、禁術を使われて<プレイヤー>としての才能を根こそぎ盗られてね」
「それに忌み子扱いで離れに幽閉。酷いだろう? え? 笑えない? 笑え」
「冗談はさておき。だから教育はないどころか、衣食住すら怪しい状態」
「どうにか生きてられたのは――育ての親と親友達のおかげ」
「育ての親は――絡繰人形。いわゆるオートマタ。自我を持った貴重品」
「カナタは知ってたか。昔々の<クラフター>が作った逸品だよ」
「とはいえまともにメンテナンスできる人もいなかったから、壊れる寸前」
「だからこそ、あてがわれたんだろうな……。その人が色々俺に教えてくれた」
「優しいヒトだった。俺に愛をくれた。俺にとっての親でありニンゲンだった」
「……まあ本人は、自分が絡繰である事を気にしてたけど」
「〔ワたしは木と鋼で出来てマす。だカらアなたに温もりを与エられナい〕」
「〔乳を与エる事も出来ない〕っていつも言っていたな……」
「んで親友は――ゴキブリ、ネズミ、シロアリ」
「ドン引きするな女子三人組。とは言え<モンスター>化してたけど」
「数少ない食べ物を分け合ったのをきっかけに仲良くなってね」
「――奪い合えば足りない。でも、分け合えば余る――って本当なんだよ」
「色々差し入れしてくれた。だから生き延びれた」
「でも……限界が近かった。アイツら俺の事を完全に消そうとしたんだ」
「あの家にいたのは、
「ソル? こう言う時は腐った蜜柑じゃないのかって? 蜜柑に凄く失礼。謝れ馬鹿」
「だから、親と親友は命を懸けた。だからどうにか逃げられた。でも……アイツらは……」
「そして、師匠に拾われて、彼女の勧めで高校入学した訳だ」
「こういう経験があったからかな? 俺はさ――あんな下衆共を人間とは認めない」
「人間ってのはさ、誰かに優しく出来るのが条件だと思うんだ」
「だから、親と親友……アイツらは人間だった。そう思う」
「ん? 俺か? 俺は化け物さ。外道に地獄に送るために人である事をやめたんだから」
「……三人共悲しそうな顔はやめて。悪かった、悪かったから」
■□■□
その日、ジンナの姿はや長野県の森の中にあった。
目的は、学校の課外活動で受けたクエストであり、特殊な茸の採取と【ゴブリン】の討伐。丁度同じ場所で出来るので引き受けた訳だ。
この特殊な茸は薬の材料になったりするのだが、<モンスター>の生息域でしか産生しない。だからこそ、<プレイヤー>が採取を引き受ける。
【ゴブリン】は人間に友好的な【ホブゴブリン】を除けば、害獣扱いされており、見つけ次第討伐対象になる。放っておくと数が増殖し、ランクアップを重ねて大惨事になりかねないのだ。小国が滅んだ事例も存在する。
服装は和洋折衷な戦闘服姿。右手には双刃刀形態の【エスペ・アヴァンチュルーズ】。実は茸の採集中に【ゴブリン】に接敵しており、多数倒していた。
「この辺だよね……」
左手にはコンパスのような探知機。これで巣を探していており、反応の強い所にやって来た。そこにあったのは洞窟。
こういう場合、普通なら一網打尽にするため、火、水、毒を使うのが一般的なのだが。
「よし!」
ジンナが選んだのは
そうして武器を手に襲い掛かる【ゴブリン】を倒していく。サバイバルナイフとなった【エスペ・アヴァンチュルーズ】を振るい、その度に【ゴブリン】の命が消えていく。
ところが、その状況に疑問を覚えるジンナ。
(数多くない?)
もう斬り捨てた数は数十体近く。事前情報では十体程とあったのに。
(それと――武器の品質が良すぎる)
通常、【ゴブリン】の雑兵である【ゴブリン・ソルジャー】が持つのは棍棒や粗末な石器武器が精々。
そのはずなのだが、雑兵が金属武器で武装し、金属の鎧を纏っている。【エスペ・アヴァンチュルーズ】の特性が無ければ、消耗している可能性がある。
(これ……上位個体がいるよね)
<モンスター>は年月を経ればランクアップする。数カ月あれば雑兵が司令官になれる。……だからこそ、百年千年級になると、とんでもない事になる。
(絶対に何かある……)
引き上げようかとも思った。だが、今の状態は万全なうえ、ステータスは向上中。最近強敵とも戦っているので、行けると判断。
「まあ、失敗したら死ぬだけだよね……サク君」
もし自分が帰らなくても、どこに行ったかはちゃんと書置きや依頼受注の記録が残っているので、すぐに凄腕が派遣されるだろう。
「ま、死ぬ気はないけど」
そうしてジンナは奥に進んだ。
すると、最近聞いたある音が聞こえる。
(鉄打ちの音?)
つまり誰かが鍛冶をしていると言う事。
では一体誰が? その答えは明白。【ゴブリン】である。
思わず声が出る。
「【スミス】がいるの!?」
群れを作る<モンスター>は役職《ジョブ》を持つ時がある。【ライダー】、【メイジ】、【アサシン】などの戦闘職が一般的で、【コマンダー】、【キング】、【エンペラー】などの指揮官がいた場合は大規模の討伐隊が組まれる。そして、更に不味いのが【スミス】――生産職がいる場合。
つまりは、武器を作り提供できるだけの知恵がある。ある意味、下手な指揮官がいるより遥かに不味い。
「引くか……」
<プレイヤー>に何より大事なのは引き際を見極める事。だからこそ、ジンナは踵を返そうとした。
その時だった。
「行ってしまうのか?」
「!?」
声が聞こえた。酷く残念そうな声。
その方向を向くと、そこにいたのは――鬼。
通常の【ゴブリン】は子供の背丈位なのだが、この【ゴブリン】は二・五メートル程の背丈がある。小鬼なんて口が裂けても言えない。
それに加え、通常種なら、腰蓑やボロ布がせいぜいのはずなのだが、着流しの着物を纏っている。
そして――手には頑丈そうな片手鎚。戦闘にも鍛冶にも使えるだろう。
この時点でジンナは悟る。コレは不味い。
(<ボス>なのは確実。下手をすると……<ネームド>や<ユニーク>だ!?)
感じる圧が凄まじく、通常の【ゴブリン】とは比べ物にならない。
そして、流暢に喋っている
恐らく、自分では――勝てない
どう撤退するかを考えていると。
「ああ警戒させたな。安心しろ。手を出す気はない」
そして、次に告げた言葉は。
「上がっていけ。茶を出そう」
「は?」
意外過ぎるもので、ジンナは絶句した。
******
そして、ジンナはこの鬼の招待を受ける事にした。とは言えエモノは抜錨したまま。
奥に進むと、そこは鍛冶場となっているが、生活用品もあった。
鬼は急須と湯呑を出して茶を淹れる。そして、羊羹と共に出す。
「ほれ。毒はない」
「ど、どうも……」
御座に座り、羊羹とお茶を頂く。警戒するも、ずっと飲まず食わずだったので、美味しそうな匂いに抗えず、食べて飲む。
「美味しい……」
「そうか。なら良かった」
軽く笑みを見せる鬼に、ジンナは自己紹介。
「ボクはジンナ。貴方は?」
「オレは【イムロン】。【ゴブリン・キング・スミス】だ」
その自己紹介に驚く。【スミス】なうえに【キング】とは。兼業《ダブル》は極稀にあるが、まさか指揮官兼生産職とは。
この時点ではっきりする。コレは<ネームドユニークボスモンスター>である。
驚きつつも問いかける。
「ではイムロンさん。ここで何を?」
「鍛冶だ」
なんでも流浪中に、ここを拠点にしていたはぐれの【ゴブリン】達の食客になっていたらしい。
「場所を提供して貰う代わり、武器を作っていた」
「そうなんですか……」
「だからお前には恨みはない」
どうやらビジネスライクな関係だったらしい。
「それよりお前に頼みがあってな」
「……何でしょう?」
警戒しながら訊ねるとイムロンはこう言った。
「その武器をオレに見せてくれないか?」
「はい?」
「これでも鍛冶師の端くれでな。興味があるんだ」
誠心誠意なお願い。
とは言えこればっかりは自分の意志で決めれない。
なので、双刃刀形態の相棒に問いかける。
[どうする?]
返って来た答えは手荒にしないなら構わないと言う事。
なので。
「どうぞ。ただし! 丁寧に扱ってください!」
「わかってる。見るだけだ」
イムロンはジンナから双刃刀を丁寧に受け取り、じっくり眺める。
そして、暫く眺めると。
「ありがとう」
素直に返してくれた。
ちょっと拍子抜けしながらも受け取るジンナ。
そして、彼女は問いかける。
「それで、貴方はどうするのですか?」
「どうするとは?」
「人に害を与えますか?」
その言葉にイムロンはこう答える。
「オレは鉄打ちだ。頼まれれば武器を作るだけ。……まあ暫く依頼人はいないだろうがな」
どうやら自分から害を与える気はないらしい。
でもこのままにしておく訳にはいかない。
(どうしよう……)
その時だった。
イムロンが傍らに置いていた鎚を持つと、
「フン!」
投げた!
そこには何もないはずだったが、
「危ないっす!?」
声が聞こえた。
その声をジンナはよく知っている。
「姉さん!? 何で!?」
現れたのはザンカだった。どうやら透明なれる<アイテム>で潜んでいたらしい。
それに彼女はバツの悪い顔をする。
「ジンナちゃんが心配だったっすから」
そして、イムロンの方を向くと提案する。
「鍛冶場を提供しようっすか? 勿論素材とかも」
「魅力的な提案だが、何が望みだ?」
「伝手は大事っすから」
「……そうか。なら乗ろう」
そして、ザンカはイムロンを匿う事になった。
因みにジンナは無事に単位を取得出来た。報告書では【イムロン】の事は伏せたが。
【TIPS:単位について】
(#ー#)<実は<プレイヤー>を養成する高校はな、
(#ー#)<授業に出て、テストで点数を取るだけじゃ、卒業出来ない。
(・▽・)<へえ……。じゃあ何するのですか?
(#ー#)<課外活動って事でクエストをこなさきゃならない。
(㈩*㈩)<ファンタジーで御馴染み、冒険者の活動って奴?
(#ー#)<まさにそれ。<モンスター>の討伐とか、<オブジェクト>の採取だな。
(#ー#)<場合によっては指名依頼とか、護衛依頼もあるが、滅多にない。
(・▽・)<やっぱり希少な品だと単位が高くなったりするのですか? 杖〇剣の学校みたく。
(#ー#)<……まあな。ただそれのせいで死者が出た事もあるから。
(#ー#)<一部の生徒限定で見せる感じだな。これで比較的安全なんだが……
(#ー#)<実際、擦り抜けがある。今回みたく。
(#ー#)<そして――高難易度なのに、低難易度に偽装されているとかな。
(㈩*㈩)<うわあ。まあ人間って完璧じゃないから。
(㈩*㈩)<
(#ー#)<まあな。……それが元で大惨事になる話をいずれやるかもしれない。