冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【TIPS:代償】
(#ー#)<……。あ、忘れてた。

(・▽・)<おいおい、と言いたいところですけど、

(・▽・)<今まで出て来たのって、軽めのが多いですものね。

(・▽・)<体力・気力・魔力消費、インターバル、制限や欠点など。

(・▽・)<後、前払いでの試練とかだから、払い終えている場合も多いです。

(#ー#)<俺のは時間かけての蓄電が代償だしな。そっちも似たようなものだろう?

(・▽・)<はい。【ルンペル】は制限や欠点です。

(・▽・)<そもそも本体だけだったら何も出来ませんから。

(㈩*㈩)<というか今まで、この作品に出て来たのはこういうタイプが多い。

(・▽・)(#ー#)<急にぬって出て来た!?

(㈩*㈩)<重すぎて使う人いないんじゃどうしようもないから。

(㈩*㈩)<因みに今回出て来た二つ。これでもマシな方。

(㈩*㈩)<もっと凄まじいのがあるけど、それは追々。


六七

 そして、バイカの案は――

 

「ソラナキさん。ちょっと、いい」

 

 正面突破だった。

 

「……」

 

 その声に一瞬だけ声の方向を向くヒナタ。だが、何もなかったように鍛錬に戻ってしまう。

 もう一度声を掛けるバイカ。

 

「ソラナキ=ヒナタさん」

 

 今度はフルネームで呼びかける。だが、相手は無視。

 

「おーい、聞こえないの?」

 

 もう一回呼びかけてそれも無視された。

 

「……」

 

 なので、バイカが取る手段は単純明快。

 

「話、聞け」

 

 抜刀しての閃光のような斬撃を放つ。

 仏の顔も三度まで。

 

 それをヒナタは素振りに使っていた棍棒で防ぎ、鍔迫り合いとなる。

 

「?」

 

 それに疑問を覚えるバイカ。彼女のエモノは冥刀【オーバギュ】。生半可な武器では刃毀れを起こすどころか、鍔迫り合いすら不可能。圧し折れるだろう。

 なのに棍棒は受け止めている。

 つまり。

 

(冥刀? 確かめる)

 

 バイカは力を緩め、一回間合いを離す。そして、連続突きを仕掛ける。鍛錬の結果、かつてジンナとの戦いの時よりもその攻撃は速い。

 それをヒナタは避け切る。バイザー越しの視線を見てバイカは確信。彼女の眼は見えている。

 

(目、良い?)

 

 そんな事を思いながらも、攻撃を続けていると、ヒナタの唇から言葉が漏れる。

 

「……見切った」

 

 棍棒で反撃を開始。武器同士がぶつかり合う。

 

「ッ!」

「見切ったと言った」

 

 ヒナタの攻撃がバイカに掠り始める。こちらの攻撃は避けられるか、防がれるのに。どうやら見切られ始めているらしい。

 

「だったら、こう」

 

 上半身に意識を向かせたら、下半身を狙うのがセオリー。

 足を踏み潰しにかかるバイカ。だが、それは見切られており、避けられる。

 

「無駄。これで終わり」

 

 それどころか、反撃としての棍棒の攻撃で吹っ飛ぶバイカ。

 空中でどうにか態勢を整え、顔を伏せるバイカ。それを隙と見て、間合いを潰しヒナタは襲い掛かろうとしたが。

 

「!」

 

 足が止まる。

 

「やる、ね」

 

 顔を上げたバイカ。その顔は喜悦に染まっていた。

 

「戦闘、こうじゃなきゃ。戦い、やっぱり、楽しい!」

 

 笑う、笑う、笑う。

 そして、襲い掛かって来るヒナタを迎撃。覇気が増し、攻撃の速度も増す。

 すると、バイカの攻撃がヒナタに当たり始める。

 

(トリック、ある?)

 

 先程の見切りは、トリックがあったらしい。

 ならば。

 

「一気、決める」

 

 一方、ヒナタの方も同じ考え。

 

「決着を付ける」

 

 両方が鬼札を切る。

 

 

 ******

 

 

 戦いが激しさを増す中、オウカはと言えば。

 

「二人共やるな……」

 

 呑気に観戦していた。因みに、その場にいた生徒、全員が見ている。

 そんな状況下で、マユとネラがツッコミを入れる。

 

[サク、止めないの?]

[戦闘、激化、周囲、巻込]

「流石に二人共自重するでしょう」

 

 オウカの願いはかなわなかった。

 

「来て」

 

 バイカが機械馬を召喚。

 

『ヒヒーン、ブルルル!』

 

 出番を待っていた、とばかりに嘶き、前足を上げる機械馬。

 

「それならこっちも」

 

 ヒナタの言葉に応じたかのように、棍棒が姿を変えメイスとなる。棍棒に擬態していた冥刀である。

 放射状にフランジ(出縁)が六枚付いており、先端は鋭くなっている。

 

 オウカが念話でマユに訊ねる。

 

[マユ、アレは?]

[【テーセウス】]

[今迄、不分]

 

 疑問を呈したネラにマユは答える。そして捕捉。

 

[擬態していたらわからない]

[納得]

[能力は応報]

[【ネメシス】や【フラガラック】みたいな?]

 

 全く同一能力の冥刀はないが、同じような能力を持つ冥刀は存在する。

 

[うん。でもそれより問題は……]

 

 マユが言葉を切って続ける。

 

[あの子、冥刀を他にも持ってる]

[え……]

[何処?]

[手足と外套]

 

 そこからマユは説明する。

 

 手足は【ダス・メッチェン・オーネ・ヘンデ】。

 本来は義手の冥刀なのだが、使い手に応じて多少変形する事があるため、彼女の場合は、手足になっている。

 外套は【パダルン・レドコウト】。

 これも使い手によって、形を変えるタイプで、彼女の場合は、コートとして使っている。

 

 そこまでの説明を聞き、オウカはとある事実に思い至る。

 

[マユ。代償は?]

[サクは知ってるでしょ?]

[……]

[??]

 

 知らないネラにオウカは説明すると。

 

[……(絶句)……]

 

 ネラが何も言えなくなる。

 つまりはヒナタは手足を捧げたという事。

 体の部位を置換する冥刀はそういう代償。とは言え、それ以上は要求しないうえ、能力も結構強力なモノが多いので良心的と言われている。

 

 だが、それより問題はもう一方。

 

[問題は【パダルン】の方]

[そんなにヤバイ代償なのか?]

[一部の人以外には]

 

 少し言い淀んだ後、マユは口を開く。

 

[服がそれしか着れなくなる]

[は!?]

[外套、内部、裸体?]

下着(インナー)は着ているとは思う]

 

 その代償はヌーディストやナチュラリスト以外には重い。

 なにせお洒落が出来なくなるうえ、防具も着れない。

 プレイヤーとしてもキツイ。

 

 だが、それだけの代償を支払っているという事は……

 

[チカラは?]

 

 オウカの疑問に答えるネラ。

 それを聞き、オウカは二人の戦闘に目を移した。

 

 オウカ達の会話は思考加速状態でおこなわれたため、時間は数秒も経っていない。

 バイカとヒナタは一歩も動かず、相手の出方を伺っている。

 

 そして――まず動いたのはヒナタ。

 

「喰らえ」

 

 正確には機械馬。

 ミサイルがヒナタ目がけて放たれる。

 

「馬鹿か!?」

「巻き込まれる~」

「死ぬー!?」

 

 周囲が叫んだり、ツッコミを入れるが、流石に対校戦の時と違い、誘導されており、全弾ヒナタに向かう。

 それに対してヒナタは。

 

「ソレ貰う」

 

 メイスを振るう。するとミサイルが綺麗さっぱり消え失せる。それと同時、メイスのフランジ(出縁)が光る。

 

「嘘!?」

 

 驚くバイカ。だが、直ぐに混乱を捻じ伏せる。

 機械馬に他の攻撃方法での攻撃支援を頼み、自らも切り込みに行く。

 奥の手の合体はまだ使わない。

 

 それをヒナタは迎え撃つ。

 野球のバッターがバットを振るうかのようにして迎撃。

 響き渡る金属音。

 

 打ち勝ったのは――ヒナタ。バイカは吹っ飛ぶ。それを機械馬が頭部で器用に受け止める。

 

「ありがと」

 

 どうにか態勢を立て直す。そして。

 

「ミーマンサー」

 

 【オーバギュ】を真名で呼びかける。

 すると、機械馬が頭部を使って、器用にバイカを背に乗せる。

 人馬一体の形態となる。

 

 それにバイカは

 

「――刃金の誓い、今此処に」

 

 詠唱を始めた。

 抜錨前でも、冥刀はある程度のチカラを振るえるが、本番は詠唱をしてから。

 

[サク!]

主人(サク)!]

 

 もうこれ以上続いたら、大変な事になる。

 ネラとマユはオウカに呼びかける。

 それに彼は答える。

 

「わかってる!」

 

 オウカは【アロンダイト】を抜錨。

 

「頭を……冷やせぇー!」

「「!?」」

 

 斬撃が放たれる。

 【アロンダイト】や系列の冥刀の基本技。ジャブのような技であるが、斬撃一つ一つが空間ごと斬り裂くので、通常の防御手段は無効化される。

 それが二人目がけて襲い掛かる。

 

「わわわ」

 

 バイカはどうにか避け切る。

 

「危ない」

 

 ヒナタはメイス――【テーセウス】を向け、攻撃を消去した。それと同時にフランジ(出縁)が光る。それは先程とは違うフランジだった。

 

(なるほど。ストックできる訳か)

 

 【テーセウス】のチカラは応報、つまりは相手の攻撃を跳ね返すチカラを持つ。

 同系統の冥刀は何本かあるが、どれも差異が存在する。

 【テーセウス】の場合は、喰らった攻撃をストックし、任意のタイミングで跳ね返せる。

 ただし六発まで。それ以降はストックを空にしないとならない。

 

(便利だな)

 

 そんな事を思ったオウカだった。

 

 とりあえず戦闘を止められた。

 オウカは剣を片手に、向かい合う二人の真ん中に立つ。

 

「お互い武器を収めろ。どっちか死ぬぞ」

 

 その言葉にバイカはこくりと頷き納刀。機械馬も消える。

 一方、バイカはオウカを警戒しているのか、武装解除しない。

 

「……」

 

 そんな態度にオウカは――

 

「なんだ? 戦るか?」

 

 強烈な圧を掛ける。

 彼の本気の圧ならば、強者でなければ、気絶するか、戦意喪失する。

 だが、ヒナタは耐え切る。

 

「……舐めるな」

 

 それどころか、オウカへ立ち向かおうとする。

 なので、オウカはニヤリと笑い、内心で彼女の実力を上方修正する。

 おそらく、学生レベルを超えているランコよりも強い。

 

「へえ。だったら遊んでやるよ」

 

 その時だった。

 

「二人共そこまでよ」

 

 声が響いた。

 それと同時、オウカとヒナタの前に鎧武者が現れる。オウカの前にいるのは小太刀二刀、ヒナタの前にいるのは大太刀を持っている。

 

(気配が人じゃない。それと突然現れた。召喚モンスターか?)

 

 そんな事を思っていると、ヒナタが声の方を向く。

 そこにいたのは女性。女性物のスーツを着た敏腕秘書のよう。

 彼女こそが昴咲高校の学長であるカモノ=カヤ。

 その顔見て顔を顰め、声を漏らすヒナタ。

 

「叔母さん……」

「貴方は相手を殺す気ですか?」

「手を出して来たのはあっち」

 

 指を指したのはバイカ。

 それに、バイカの方を向く。

 

「シンゲツさん? どういう事ですか?」

「声、掛けても、無視」

 

 それを聞いて溜息を吐くカヤ。

 そして、気持ちを切り替えるようにオウカを見る。

 

「二人の戦いを止めてくれたのには礼を言います」

 

 頭を下げる。だが、苦言を呈する。

 

「でも、貴方まで戦おうとしないでください。本気で暴れられたら止められません」

「すいません」

 

 とりあえず頭を下げるオウカ。

 それにもう一度だけ溜息を吐く。

 そして、空の右手をオウカとヒナタの中央に向けてくるりと回す。すると、オウカとヒナタの前にいた鎧武者が消え失せ、カヤの右指には人型の呪符が二枚挟まっていた。

 

(式神か……)

 

 式神は召喚モンスターの一種で、陰陽師、退魔士、修験者などの東洋プレイヤーがよく使う。

 

 その呪符をポケットに仕舞うと、改めて三人を見て告げる。

 

「とりあえず三人は学長室へ行きますよ。被害はありませんでしたが、流石に無罪放免と言う訳にはいきません」

 

 

 ******

 

 

 そして、学長室に呼び出された三人。

 まずは小言から始まる。

 

「ヒナタ」

「……はい」

「人とは会話をしなさい。人は一人では生きていけないのですから」

「ウチは一人で生きていけます」

「ヒナタ!」

 

 声を荒げるカヤに対し、ヒナタは横を向く。

 それに溜息を吐くと、バイカに視線を向ける。

 

「シンゲツさん」

「はい」

「人が無視するからって、武器を向けてはいけませんし、振るうなんてもってほかです」

「……はい」

「素直で宜しい」

 

 こちらは素直に頷くので、溜息を吐かずに済んだカヤ。

 そして、オウカに視線を向ける。

 

「サクヅキくん」

「はい?」

「あなたは……さっき言ったからもういいでしょう」

「じゃあ何で呼んだんです?」

 

 素朴な疑問をぶつけるオウカ。それにカヤは答える。

 

「お願いがあります。聞いてくれますか?」

「……」

 

 それに沈黙したオウカ。

 こういう事は面倒事が多い。

 なので。

 

「内容によります」

 

 こう言った。

 それにカヤはお願いを言う。

 

「わたしの姪――ヒナタと仲良くしてくれませんか?」

「はい?」

 

 意外な提案に目を見開くオウカ。

 こっちとしては願ったり叶ったり。

 なので了承して、理由を確認しようとしたが。

 

「構いm」

「ウチには必要ありません。失礼します」

「ヒナタ!」

 

 ヒナタはそれを遮った。そして、何も言わずにヒナタは出て行った。

 それに溜息を吐き、こめかみを揉むヒナタ。

 そんな彼女に訊ねるのはバイカ。

 

「噂、本当? 保護者、代わり?」

「ええそうです。妹の娘です」

「あまり、似てない」

「血の繋がりはありませんので当然です」

 

 何でも妹の再婚相手の連れ子だったそうだ。

 しかも、その相手とも血の繋がりはないとの事。

 

「それでも、あの二人はヒナタの事を愛していました。だから、私が引き取ったのですよ」

「……」

 

 想像以上に闇の深い話にバイカは黙り込んでしまった。

 なので、次はオウカが訊ねる。

 

「彼女がああなったのは、両親の死が関係しているのですか?」

「ええ。そうです」

「誰かに殺された?」

「……どこでそれを?」

 

 警戒するカヤにオウカは、ここまでの経緯を話す。

 復讐者の友人と眼がそっくりな事、彼女と復讐者を救う約束をしている事、接触しようとしていたら、バイカがあんな行動を取った事を話す。

 

 オウカが話し終えると、カヤは納得する。

 そして。

 

「では彼女の事をお願いできるでしょうか?」

 

 改めてのお願いにオウカは無言で頷いた。




【TIPS:応報】
(㈩*㈩)<メイスの【テーセウス】は“応報能力”の冥刀の一つ。これはストックして放出。

(㈩*㈩)<連続攻撃には少し弱いのが欠点。

(#ー#)<その言い方からすると、他のもあるのか?

(㈩*㈩)<うん。ロングソードの【ネメシス】は、そのまま跳ね返し。ストックは出来ない。

(㈩*㈩)<その代わり、連続攻撃にも強いうえ、飛翔も可能。

(㈩*㈩)<柳葉刀の【フラガラッハ】は、倍にして跳ね返す。

(㈩*㈩)<こっちもストックは無理。更に連続攻撃には弱い。

(㈩*㈩)<日本刀の【アンサラー】は、刀剣に纏わせたり、斬撃状にして放出。

(㈩*㈩)<こっちはストックが可能。まあ数は【テーセウス】より少ないけど。

(㈩*㈩)<その代わり、何回も使えるうえ、上書きしない限り消費されない。

(・▽・)<あの戦闘狂ストックしてそうですね。

(㈩*㈩)<【フラガラッハ】はしてる。
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