冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【コソコソ話】
(#ー#)<前回登場したカモノ=カヤ。ノーブルで陰陽師で御馴染みの賀茂家出身。

(㈩*㈩)<と言う事は……キョウコの知り合い?

(#ー#)<それどころか、友達だ。“かきくけこ”と呼ばれた五人組の一人。

(㈩*㈩)<え? あんなのが後三人もいるの?

(#ー#)<あんなの言うな。各高校に散らばっている。優秀だからな。

(㈩*㈩)<プレイヤーの高校は強い奴を配置しなきゃならねえから。


六八

 ******

 

 

 そして、翌日の放課後。

 リアから連絡があり、情報が集まったとの事で、校舎裏に来て欲しいとの事。

 

「渡船」

「渡りに船?」

「ベストタイミング」

 

 と言う訳でオウカはいつもの三人で向かう。

 

 実は昨日、カヤから色々話を聞く事が出来た。

 マユとネラにはもう十分に思えたが、オウカに言わせればまだ足りない。

 

 彼曰く。

 

『裏を取った方がいいし、他の視点ももっと知らなきゃならない』

『それはそうかも……』

『殺すにしろ、仲良くなるにしろな』

『『殺す気(殺害)!?』』

 

 その言葉には二人がツッコミを入れたが。

 それにはオウカはフフフと笑うだけだった。

 

 そうして校舎裏にやって来たのだが、誰もいない。人っ子一人いないうえ、隠れている気配もない。

 

「まだ来ていないのか?」

「珍しい」

 

 そういう訳で待っていると、人が近づいてくる気配がする。それは二人。恐らくはリアとランコ。

 そして、物陰で止まる。オウカ達からは見えない。

 

「「?」」

 

 取り敢えず近づいて行くと、物陰近くで声が掛けられる。

 

「止まってください」

 

 それはリアの声。

 疑問に思いながら、とりあえず止まる。

 すると、資料を持った手がぬっと出て来る。

 

「お求めの資料です」

「……ありがと」

 

 礼を言って、受け取った資料を流し読みする。

 資料はかなり分厚く、色々な情報がある。

 

「おお。想像以上」

「そう言って頂けると嬉しいです」

 

 リアが物陰から笑う気配がする。

 そんな彼女にオウカは気になった疑問をぶつける。

 

「ところでさ、一ついい?」

「はい? 何でしょう?」

 

 一拍置いてオウカは訊ねる。

 

「何で姿見せないの?」

 

 素朴な疑問に答えたのは、ランコ。

 

「好きなドラマに影響されてな……」

 

 何でも、そこには腕利きの情報屋が登場するのだが、この人物は顧客に姿を見せず、背中合わせだったり、今のリアのように資料を横から渡すそうだ。

 

「なるほど……」

 

 一応納得するオウカ。

 それと同時、気になった事が出来たので訊ねる。

 

「もしかして、これからずっとこの方式?」

「はい」

「「面倒臭(面倒)!?」」

 

 マユとネラが思わずツッコミを入れる。

 それにリアはフフフと笑うだけだが、ランコは苦笑い。

 そんな四人を後目にオウカは資料を速読していく。

 そして、読み終わった途端。

 

「これが」

 

 ポツリと言葉が漏れた。

 それに疑問符を浮かべる、マユ、ネラ、ランコ。

 だったが。

 

「人間が出来る事なのか……」

 

 そう言葉を漏らした瞬間、オウカから怒りが漏れだした。

 あまりにも凄まじい圧に四人は怯んでしまう。

 それは、一流の戦闘者であるネラやランコすら怯む程。

 

 そんな状況下で、口を開いたのは――マユ。

 

「サク。落ち着いて。皆怯えている」

「あ、ああ。悪い」

 

 一瞬で圧が霧散。

 それに何人かが安堵の息を吐く。

 そして、ネラがオウカに訊ねる。

 

「資料、何書?」

「昨日聞いただろう? アレの詳しい奴」

 

 この資料を見る限り、カヤの説明は嘘はない。

 だが、敢えて言わなかった事幾つもがあった。そして、ヒナタの仇の資料も存在した。

 

 資料を知っているリアが顔を顰める。

 

「調べて吐きそうになりました。かなり胸糞悪いです」

「糞とか言わないでください。リアs……ちゃん」

「では話します」

 

 ランコの言葉をスルーしてリアは説明を始めた。

 

 

 ▼▽▼

 

 

 ソラナキ=ヒナタには父母が四人いる。

 

 本当の両親は、彼女が生まれたその日に死んだ。

 父は麻薬中毒者の飲酒運転の暴走運転に巻き込まれ死亡、母は体が弱かったためヒナタを産むと引き換えに命を落とした。

 そんな彼女を引き取ったのは父の義弟。義兄の忘れ形見を放って置けなかったのだ。

 一人で悪戦苦闘しながら子育てをしている中、とある女性と運命の出会いをした。それが賀茂家の双子姉妹の一人。カモノ=カヤの妹。

 そして二人は紆余曲折の末、結婚して子供が二人生まれた。

 

 ヒナタは両親に血のつながりが無い事を、幼い頃からちゃんと知っていた。義父がきちんと伝えたのだ。

 

 曰く。

 

『彼らが生きていた事を忘れてはいけない。彼らの存在を無かった事にしてはいけない』

 

 との事。

 

 それでも仲は良かった。

 優しい両親と、可愛い弟と妹。

 毎日が幸せだった。

 だが、それはある日突然失われた。

 

 休日に家族で遊びにいった遊園地で大惨劇に巻き込まれたのだ。

 

『さあゲーム、スタートォォォォォォ!』

 

 エドリーゲイン=バンディー=ルーカスジョン。愛称はエドリー。通り名は“死の収集家(デッド・コレクター)”。

 シリアルキラーにして、快楽殺人鬼。

 世界を渡り歩き、殺人……どころか、大量虐殺(ジェノサイド)をしているため、某海賊漫画の強豪キャラクターのような賞金額が懸けられている。

 なのだが、頭が良いうえに恐ろしく強い。デュナミスト兼クルセイダのプレイヤーで、持っているチカラの特性上、下手に刺客を送ると逆に強化されてしまうので、討伐隊すら組めない。

 かつて超大規模な討伐隊が組まれた際、返り討ちにされ、エドリーを増強させてしまい、更に手が付けられなくなってしまったので、専守防衛しか出来なくなった。

 

 しかも彼のやり方は質が悪い。

 シリアルキラーであったオウカの親友――モンセラートよりも遥かに酷い。

 

 彼女の場合、殺しまくってはいるが、それは楽しむためではなく、生きるための生理現象のようなもの。

 だからこそ、無差別殺人をするにはするが、悪人狙いが多いうえ、苦しまないよう一瞬で殺す。更に一人も残らず皆殺しにするため、恨みはあまり買わなかった。……災害の一種と思われていた。

 人は地震、雷、火事は恨まない。親父は憎むかもしれないが。

 

 そして、仕置人に転職(?)してからは、依頼がなければ正当防衛でしか殺さなくなった。その代わり、量を質で補うためターゲットに壮絶な拷問を掛けるようになったが、対象は生きる価値のない下衆だらけ。

 だからこそ、恨まれる事は少なく、恐れられていた。

 

 だがエドリーは違う。

 彼が殺す理由は楽しいから。

 苦しむ人や悲しむ人が好きだから。人の死ぬ瞬間が面白いから、絶望する人を見るのは楽しいから。

 そして、ターゲットは弱い者、何の罪もない一般市民。特に家族連れ、恋人連れ、友達沢山伴っている幸せに生きている者

 しかもそういう人達を大量虐殺するため、レジャー施設や客船などを狙い、そこに結界を張ってから自分の趣味を始める。

 そして、やり方は最低最悪。

 自分で殺す場合は、甚振り嬲って殺すが、それはまだマシな方。

 

 対象を意志のあるままに操作して、家族や恋人を殺させる。

 子供の目の前で親を殺し合いさせたり、自殺させる。 

 対象を動けなくしてから、その大切な人を甚振り殺す。

 

 しかも、皆殺しにはせず、毎回多少の生存者を出す。その理由は唾棄すべきもの。

 

 曰く。

 

『誰かにオレの犯行を語り継いで欲しいからなぁぁぁぁぁぁ』

 

 との事。

 

 そんな彼の犯行にヒナタは巻き込まれた。

 操られて弟妹を自分の手で殺す事になった。

 手足を斬られ、人質にさせられ、エドリーの要求により、殺し合いをする事にんった父母間近で見た。

 生き残った母親がエドリーの要求で自殺するのを見た。

 

 そしてその大惨劇唯一の生き残りとなったが、心も体も大きな傷を負った。

 精神崩壊してもおかしくなかっただろう。だが、憤怒と憎悪が彼女の精神を留めた。

 そして、決意する。

 

『アイツを――殺す』

 

 そして、チカラを欲した。

 とは言え、彼女には才能がない。ならば、どうするか?

 だからこそ、冥刀を手にした。

 

 リスクがある複数持ちに手を出し、他のチカラまで彼女は手に入れた。

 そして、今も牙を研ぎ続けている。

 目的を果たすために。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 聞き終えた全員が黙り込む。

 その顔は皆一様に歪んでいる。

 

 リアがまず言葉を漏らす。

 

「わたくし、全ての人間には生まれて来たからに、は幸せになる権利があると思ってました」

 

 誰に対しても優しいリアだからこその重い。だがそれは過去形。

 

「この世界には、生きているだけで害悪が存在するのですね」

 

 その言葉を肯定するのはマユ。

 

「まさか、あの世界の住人並に狂った人間がいるとは思わなかった」

 

 彼女の世界は末期の世界。自分さえ良ければ後はどうなっても良いという人……否、ケダモノばかり。

 

 そんな彼女にネラは訊ねる。

 

先輩(ネラ)

「何?」

「下衆、彼方、出身?」

「……どうだろう?」

 

 そもそもこちらとあちらの人間は違いはほとんどない。

 強いて言うなら、プレイヤーの割合が少ないくらい。

 それに加え。

 

「向こうの住人は精神汚染を大なり小なり受けてたし」

「「そうなの!?」」

「アレ? 言ってなかったけ?」

 

 言ったよね? と首を捻るマユに、リアが何かを思い出す。

 

「そういえば、世界が滅んだ元凶とか言ってましたけど、物理的じゃなくて、精神的だったんですか?」

「両方」 

 

 神刃(アレ)は人間を狂わせ、破壊活動をさせる事で滅ぼそうとした。

 

「でも今は関係ない。それよりその屑の話」

「ああそうだな」

 

 その時だった。

 パタリと音が聞こえた。

 それと同時、ランコの叫びが響く。

 

「リアちゃん!?」

 

 何か不味いと物陰を見ると、そこには倒れたリアを受け止めているランコがいた。

 

「きゅ、救急車!?」

 

 慌てふためくランコにオウカは、デコピンを打って落ち着かせる。

 

「痛!?」

「落ち着け。とりあえず保健室へ」

 

 そして保健室へ連れていき、診察してもらう。その結果は――

 

 少しして、オウカ達が見守る中、リアは目覚めた。

 

「ここは?」

「保健室。お前何も食べてない……訳なかったな。吐いたな」

「……」

 

 沈黙。

 少しして。

 

「今は吐き気はありません。けど食欲がなくて」

 

 そんな彼女にオウカは謝ろうとする。

 

「w」

「言わないでください!」

 

 リアはそれを遮って告げる。

 

「これはわたくしの心の弱さが招いただけ。だから断じてあなたのせいではない」

「でも……」

「でももへちまもない。だからまた頼んでくださいね」

 

 その言葉にオウカは頷くしかない。

 

「わかった」

「それでいいです」

 

 そして、笑っていた顔を真剣な物にする。

 

「それと、サクさん。ここには書きませんでしたけど、もう一つ追加の情報が」

「うん?」

「まだ未確定なのですが――」

 

 それを聞いてオウカは口元を歪めた。

 

 

 ■□■□

 

 

 夜の街を一人の外套姿の人物が歩いていた。

 それはソラナキ=ヒナタ。

 とは言え、いつものバイザーだけでなく、今は誰だかわからないようにフードとマスクをしている。

 

 彼女の目的はある場所でおこなわれる、裏組織の取引を叩き潰す事。

 これが彼女の副業(?)。

 

 復讐のためにチカラを求めるのだが、それを手に入れるのは、彼女にとっては、表立って手に入れるより、非合法な裏取引を潰す方が手っ取り早い。……一応表立ってもやってはいる。

 目的のモノがなくても、戦闘経験が積めるうえ、要らないモノならば金に換えればいいのでやっている。

 

 因みに、この事を叔母であり、保護者代わりのカヤは知っているが、見て見ぬ振りをしてくれている。

 

『良いですか? 重傷を負ったらすぐにやめさせますよ?』

 

 との事。

 

 そして、目的の廃倉庫にやって来た時だった。

 

「よお」

 

 挨拶の声と人の気配。

 すぐさま、亜空間から棍棒を抜き、後ろに振るう。

 

「危ないね」

 

 相手は棍棒をしゃがむ事で避ける。

 

「お前は……」

 

 その人物に覚えがある。

 それは――

 

「確か昨日の……」

「覚えていたか」

 

 昴咲高校の制服を着た少女。

 夏休みから、バイカと稽古をしているのは、ヒナタも気づいていた。

 そして、叔母が仲良くなるよう頼んだ人。

 

 その事まで思い出し、彼女は思い至る。

 

「まさか叔母さんが?」

「ああ」

 

 彼女からヒナタの事を聞いた際に、この事も聞いていた。

 

「仲良くなるにはまずは共同作業。一緒に戦う(遊ぶ)のが一番だからね」

「いらない」

 

 その少女を振り切ろうとした時だった。

 

「強くなりたいんだろ?」

 

 その言葉にヒナタは足を止め、少女を見る。

 

「隠し事は後でバレるとこじれるからな。誠意を見せよう」

 

 少女は指をパチンと弾いた。

 すると、昴咲高校の女子用ブレザーが、男物の黒い戦闘衣に変わる。そして、縛っていた髪を流し、ティッシュで化粧を取る。

 あっという間に少女が少年となる。彼をヒナタは知っている。

 

「サクヅキ=オウカ……!」

 

 あの対校戦で人智超越した戦いをした少年だった。

 呆然としているヒナタに続ける。

 

「貴方の目的は聞いた」

「叔母さん、余計な事を……」

 

 しかめっ面の彼女に告げる。

 

「わかってるんだろ? このままじゃ復讐には足りないって」

「……」

「だから、手を貸してやる」

 

 復讐者の手助けなら経験があるんだ、と手を差し出す。

 そんな彼にヒナタは訊ねる。

 

「なぜウチを? 他人なんて放っておけばいいのに」

「誰かれ構わず助ける気はないが、手の届く範囲の人は助けたいんだよ」




【コソコソ話】
(#ー#)<因みにコイツの狙いは――クロス、アーティファクト、冥刀だ。

(#ー#)<特に、クロスはとある理由から欲しがっている。

(・▽・)<N○RUTOの、やる事成す事裏目に出た、アイツの右腕みたいになっているんですか?

(#ー#)<いや、それは別人。

(㈩*㈩)<そんな奴いるの!?

(#ー#)<まあそれはいずれ。どう利用しているかは追々判明する。
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