冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【前書】
(・▽・)<少し報告です。設定が変わります。

(#ー#)<何の?

(・▽・)<前に解説した刀剣系のアーティファクト。

(㈩*㈩)<かなり前に詳しく解説してたね。

(・▽・)<それに+αします。ちょっと追加したくなったので。

(#ー#)<……。まあいいけど何を追加するんだ?

(・▽・)<魔法が使える剣で、魔剣を追加。後はちょこちょこ。

(・▽・)<それについては追々。


六九

 オウカの脳裏に過るのは、カヤの言葉。

 

『あの子は普通に言えば拒否します。でも何かしら益があれば引き受けるのですよ』

 

 だからこそ、最大の目的で釣る事にする。

 

「何だったらチカラをあげる。丁度使っていない冥刀が幾つかある」

 

 その言葉にピクリとヒナタが身じろぎする。

 

「それと、お前が使っている冥刀、メンテナンスしていないだろう?」

 

 これもカヤ情報。自己修復に任せているそうだ。

 

「友人が冥刀のメンテナンスが得意でな。紹介してやる」

 

 報酬を上乗せしていく。

 

「その代わり、俺にも協力させろ」

 

 その言葉にヒナタは何も言わない。

 そして、暫しの静寂後。

 

「何で?」

 

 漏れたのは疑問。

 

「どうしてそこまでしてウチに関わろうとするの?」

 

 狸のお面のせいで表情はわからない。

 だが、その顔は泣いているようにオウカには感じられた。

 

「そんな事してもアンタに益なんてないでしょう?」

 

 その疑問にオウカは答える。

 

「人付き合いってのはな、与えたり、貰うだけじゃない」

 

 確かに損得勘定の付き合いもある。

 だが、それ抜きの関係だってある。

 

「それに放って置けないんだよ。お前みたいな復讐者がさ」

 

 だから、と前置きしてオウカは告げる。

 

「俺は役に立つぜ。だから協力させてくれ」

 

 その言葉にヒナタは――。

 

「わかった」

 

 了承してオウカの手を取った。

 義手なので、温もりは無いが少し暖かく感じた。

 それにオウカは少し微笑む。

 

「そっか」

「でも約束して」

「何を?」

「もし危なくなったら、ウチを見捨てて逃げて」

 

 それを聞いてオウカはカヤの言葉を思い出す。

 

『あの子は一人を気取ってますけど、本当は寂し屋でとっても優しい子なんですよ』

 

 本当にその通りだった。

 なので、オウカはこう答える。

 

「安心しろ」

「?」

「俺がいる限り千パーセントそんな事態にはならない」

 

 彼の断言にヒナタの気配が変わり、少し震える。

 お面でわからないが笑っているように感じられた。

 

 そうして二人でカチコミとなる。

 

「じゃあ今渡すか?」

「……持ってるの?」

「うん。どれがいい?」

 

 学外実習で手に入れた機体型の冥刀を差しだす。

 その数は残り十二本。

 それを手に取ろうとしたヒナタだったが、途中で止まる。

 

「後でいい。今はこっちに集中する」

「そっか。わかった」

 

 オウカは仕舞う。

 そして、ニヤリと笑う。

 

「さ、久しぶりのカチコミだ。暴れるぞー」

「……経験あるの?」

「おう」

 

 オウカがモンセラートの助手をしていた時は、しょっちゅうしていた。

 なので慣れている。

 

「今回は雑魚は俺がやる。強敵は頼む」

「わかった」

 

 そうして二人は乗り込む。

 

 普段のカチコミでは、ヒナタは暗殺者スタイルで行く。

 なのだが、オウカのスタイルは――それとは真逆。

 

 オウカが扉を蹴破る。

 

「皆! 死のう! 諦めよう!」

「何だ?」

「カチコミか!」

「諦めるかぁ!?」

 

 正面突破。

 それにヒナタは、オウカの申し出を受けた事を、少し後悔し始めていた。

 だが、それは一瞬で覆る。

 

「今日は……これで行こう」

 

 出した武器は――メイス。オウカはメイド師匠から武芸百般習っているので、大抵の武器は使える。更に〈冥肌鏤骨〉で刻まれた糸による経験と技術まで存在する。

 対する相手は銃火器を出す。プレイヤーやモンスターにも有効な特殊製もあれば、《ブルークロス》まである。

 

「死ねぇ!」

「蜂の巣じゃあ!!」

 

 弾丸が襲い掛かる。

 喰らえばひとたまりもないだろうが、素人の弾丸など当たる訳がない。

 

「目線と殺気で丸わかり」

 

 オウカは全弾回避し、手近にいた相手の頭部にメイスを叩きつける。

 

「脳みそぶちまけろ」

「げぎゅ!?」

 

 そのままオウカは暴れる。メイスで相手を一撃で仕留めていく。

 

 それをヒナタは食い入るように見つめる。

 彼女はオウカと意図に気づいていた。

 

(彼はウチの参考になるようにこうしているんだ)

 

 そうして雑魚をオウカが始末し終えると、奥から二人の人間が出て来る。

 

「なんだオマエら……」

「よくも部下を殺してくれたな」

 

 それは取引をおこなっていた二つの組織のボス。

 片方は、眼の白黒が反転しており、青紫に輝いている――クルセイダー。手にはエモノである日本刀を二刀流にしているのだが、左右の刀は妙に禍々しい。

 もう片方は、普通の眼なのでクルセイダーのようではない。ただ手に持った斧が妙な圧を放っているので恐らくは――デュナミスト。

 

(ふうん。中々強そうだな)

 

 そんな事を思っていると、ヒナタがオウカの前に出た。

 

「ここからはウチがやる」

 

 それにオウカは提案する。

 

「二人だから二対二で行くか?」

「ううん。ウチだけで十分」

 

 この程度の相手が倒せないのなら、自分は仇を取れない。

 そんな彼女にオウカは了承する

 

「……わかった。でも危なくなったら割って入るぞ」

「うん」

 

 メイスを仕舞い後ろに下がるオウカ。入れ替わるようにヒナタは更に前に出る。そして手に持った棍棒をメイスへと変える。

 

「テメエら舐めてんのか?」

「一人で勝てると思ってんのか?」

 

 そんな二人へヒナタは告げる。

 

「気に食わないなら掛かってこい雑魚共」

 

 ヒナタの挑発に二刀流と斧使いが逆上する。

 

「何だとテメエ!」

「死ねぇー!!」

 

 襲い掛かる二人。二刀流が真っ先にヒナタの所に到達。

 

「真っ二つだ!」

「!」

 

 右手の斬撃をメイスで防ぐヒナタ。そのまま押し込みにかかる。

 

(重!? コイツ、この細腕でどんな腕力してんじゃ……)

 

 二刀流は片手では防げないと判断し、もう片方の腕も使う。だがそれでもパワーは片手のヒナタが上。

 

(コイツ……何かトリックがあるな……)

 

 そこへ斧使いがヒナタ目がけて斧を振るう。

 距離的に届かない。普通なら。

 

「死ね!」

「!」

 

 斧が巨大化。リーチが伸びる。それをヒナタはバックステップして避ける。

 だが、それは隙となる。

 

「チェリャアア!」

「っ!」

 

 襲い掛かって来た二刀流の突き攻撃をどうにかメイスで防ぐ。

 

 そこからは膠着状態となる。

 二刀流が連続攻撃を打ち込んでくる。

 それをヒナタがどうにか避けたり、防いだところで、斧使いの巨大斧が降って来る。

 

(お互いの隙を潰し合っている)

 

 スピードの二刀流とパワーの巨大斧。中々の連携。

 

 内心感心していると、オウカから声が掛かる。

 

「どうする? 加勢するか?」

 

 その言葉にヒナタはこう答える。

 

「平気。この程度ピンチですらない」

 

 そして、彼女はもう一つの冥刀を使用を決意する。

 

「【パダルン・レドコウト】」

 

 言葉が紡がれると同時、纏っていた黒い外套が形を変える。背から無数の帯が伸び、相手に一気に襲い掛かる!

 

「! 不味い!」

 

 二刀流が前に出る。そして、帯を捌く。だが、帯の攻撃は一度で終わらず、連続で襲い掛かる。二刀流は完全に捌ききれず体中に傷を負っていくが、致命傷は避けていく。

 そこへ斧使いが斧を巨大化させ、ヒナタを叩き斬ろうとする。

 

「隙ありだぁー!」

 

 だが。

 

「そんなものはない」

 

 外套が更に変化。現れたのは巨大な獣の顎。口を開ける。

 

「ギャア!?」

 

 彼を一撃で噛み砕いた。

 

「次」

 

 獣が引っ込み、増殖した帯が二刀流使いに迫る。

 

「ギョバアア!」

 

 二刀流は遂に捌ききれなくなり、こちらもバラバラにされた。

 

 あっという間に二人を片付けると、ヒナタはふうと息を吐く。

 そんな彼女の耳に聞こえたのは拍手。

 振り向くとそこにはオウカが手をパチパチと叩いている。

 

「凄いな」

 

 素直な称賛。

 それにヒナタはこう答える。

 

「まだまだ」

 

 そんな彼女にオウカは苦笑した。

 

 そうして、二人は協力して戦利品を搔き集める。

 斧、刀、銃、アクセサリー、そしてクロス。

 ヒナタは狸のお面を外し、その下に付けているバイザー越しにモノクルを付ける。鑑定のスキルを持つアーティアクトらしい。

 そして、物品の鑑定を始めるが。

 

「斧は冥刀。銘は【リサナウト】。巨大化が可能」

「似たようなの知っているけど、何が違うのかな?」

「ウチに言われても……」

 

 冥刀には鑑定スキルが効かないので、戦闘時と、刻んである銘を見て判断する。

 因みに、オウカが言ったのはストックにある【オルナ】であり、こちらも巨大化能力を持っている。

 

 そして、ヒナタは刀を持って鑑定する。

 

「刀は妖刀」

「どのタイプ?」

「呪いの武器の方。能力は高いステータスバフ。右が防御力低下、左が呪怨付与」

 

 妖刀には四種類がある。

 

・モンスターが憑依したり、封じ込められている

・使い手が次々死んでいる曰く付き

・呪いや怨念を吸って変質した、もしくはさせた

・妖怪の素材を使って作った

 

 カナタが使っていたのは一番目で、二刀流使いが使っていたのは三番目。

 

「相手の一人が、《ヴァイオレットクロス》持っていたでしょう」

「あ、もしかしてそれで呪いを無効にしてた?」

 

 こくりと頷くヒナタ。

 

 二刀流のクロスは《ヴァイオレットクロス〔耐性薬〕》。

 呪い耐性の薬のチカラを使う事で、妖刀をデメリット抜きで使っていたらしい。

 

 納得するオウカに、ヒナタが胡乱な視線を向ける。

 

「?」

「ウチが妖刀持っている事には、何も突っ込まないなって」

「え、あ!」

「知ってるのね? この手のチカラ」

 

 その言葉にオウカはバツの悪そうな顔をした後、説明する。

 

「さっき言ったメンテナンスできる奴いるって言っただろう」

「(こくり)」

「ソイツは冥刀に恐ろしく詳しい。だから教えてくれた」

 

 一拍置き続ける。

 

「その腕は【ダス・メッチェン・オーネ・ヘンデ】。能力は穢れの除去」

 

 オウカの言葉に、ヒナタの眼が見開かれる。

 

 ソレは毒、呪い、穢れ、汚れを消せ、応用も色々効く。

 本来なら、呪いの武器を持つどころか、浄化まで可能だが、今回はしない。妖刀は呪いや怨念こそが武器なのだから。

 

「メイスは【テーセウス】。応報系の一つ。ストックが可能」

 

 冥刀とクロスは、似た能力になる事はあるが、全く同一にはならない。

 

「そんで、その外套は【パダルン・レドコウト】。形状操作により色々できる」

 

 無数の帯を伸ばし、相手を切り裂いたり、獣の顎や腕を出して攻撃・防御も可能。

 

 隠し事は面倒な事になりやすいのでちゃんと話したオウカだった。

 

 それにヒナタは驚いていたが、暫くして平静を取り戻す。

 

(聞いただけで、それだけでそこまでわかるのか。いや、映像とかで見たのかもだけど)

 

 どうやら基本的な能力はバレている。……オリジナル技である畢竟はわからないが。

 だが、そこまでわかるとは。その人物に興味が出て来た。

 なので、

 

「サクヅキ君……でいいのよね?」

「ああ。そっちは、ソラナキさん……でいいのか?」

「ええ、それでいい」

 

 聞いてみる事にする

 

「その冥刀に詳しくて、メンテナンスしてくれる人には会えるのよね?」

「ああ」

「今からに会える?」

「起きてるかな……。つーかもう明日になるよ?」

 

 時刻は夜遅く。本来、マユには睡眠は必要ないのだが、気分の問題で、毎日数時間は眠っている。

 そして、今日は金曜日なので明日は土曜日。

 プレイヤー育成高校は完全週休二日制なので休みである。

 

「大丈夫。予定は特にないから」

「じゃあ……家に来る?」

「行く」

 

 そういう訳で残りの物品――クロスを鑑定する。

 ヒナタが持ってき特殊な容器に、骸から抉り出した眼球を一つ一つ入れていく。ちゃんとどんな能力だったのかは覚えているので、メモ書きも忘れない。

 

 クロスはナノマシン移植が一般的だが、眼球移植して、適合すれば使えるようになる。だからこそ、クルセイダーの眼は能力によってはかなりの値段で売れる。

 

「あまりレアなのはなさそうだな」

 

 そう呟いたオウカ。だが、ヒナタがそれを否定する。

 

「そうでもないみたい」

「え」

「ほら、今回は二つの組織の取引だったでしょ?」

「あ」

 

 そういえばそうだった。

 

「何の取引だったんだ?」

「レアなクロス」

 

 クロスでも《レッドクロス(自然・操作)》、《グリーンクロス(幻獣・神魔)》、《グレークロス(乗物・建物)》は大当たりと言われ、価値も他のと比べ一桁二桁値段が変わる。

 

「一体何なんだろう?」

「この中にあるみたい」

 

 アタッシュケースをヒナタは開ける。そこには容器に入った眼球がある。色は――灰色。

 

「乗り物・建物か……。何かはわかる」

「書いてある。えっと……」

 

 暫し沈黙後、口を開く。

 

「人型ロボットだって」

「マジ?」

 

 ちょっと驚くオウカ。

 《グレークロス》はスケボーや自転車から、戦闘機やUFOなど幅広い。ロボットになる事例も確認されている。

 

「高く売れそうだな」

「いや、ウチが使う」

「ふうん」

 

 カヤの話では複数のクロスを使う術を確立しているらしい。気になる所だが、プレイヤーによっては切り札や必殺技を隠し持っているものであり、それを詮索するのはマナー違反。

 なのでオウカは何も聞かない事にした。 




【TIPS:ダス・メッチェン・オーネ・ヘンデ】
(㈩*㈩)<義手型の冥刀。まあ今は義足にもなっているから義肢だけど。

(#ー#)<これ元ネタなんだ?

(・▽・)<グリム童話の「手無しの娘」ですか?

(㈩*㈩)<うん。能力は上記の通りなんだけど、実は戦闘以外の応用が凄い。

(#ー#)<?

(㈩*㈩)<穢れと汚れ消去だから、泥、埃、汚れ、返り血が付かなくなる。

(㈩*㈩)<そして――汗、垢、老廃物も出る度に消去されるから。体を清潔に保てる。美肌効果あり。

(・▽・)<女性が欲しがりそうですね。

(#ー#)<美肌と手足って引き換えにするものじゃねえだろう。

(㈩*㈩)<そして……これは追々。まだ早い。

(#ー#)(・▽・)<??
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