冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【前書】
(㈩*㈩)<サクの友達・仲間だけど、多少述べた人以外にもいる。

(㈩*㈩)<月日的には短くても、影響を与えた人も含むから。

(㈩*㈩)<今回少し述べる、ポンコツお嬢様と毒舌メイドもそれ。

(#ー#)<アイツの知り合いは変人しかいないのか?

(㈩*㈩)<……それはわたしも含まれてる?

(#ー#)<う~ん。アイツはともかくお前は微妙なラインじゃねえの?

(㈩*㈩)<そ。あそうそう。今回ちょっと閲覧注意。過去のネタバレあり。


lⅹⅹⅱ

 復讐者は復讐を果たしたらどうなるのか?

 それは人により様々。

 

 

 ある者は、復讐後に自殺した。復讐のために沢山の人を巻き込んだ呵責に耐え切れなかったのだ。

 ある者は、仇を道連れに死亡した。それしか手はなかったからこそ、この手段を取った。

 ある者は、仇の親族によって殺された。その復讐対象の事を、大切に思う人もいたのだ。

 

 このようにほとんどが悲劇的な末路となっている。

 だが、世界で最も有名な復讐者は、自分が救った者と共に旅立った。救いはあったのだ。

 

 

 カナタは、だからこそオウカに訊ねた。

 それにオウカは沈黙。暫く後、ヒナタの視線に耐え切れなくなったのか答える。

 

「カスミは直後に死んだ。冥刀のチカラが切れてな」

「どういう事?」

「瀕死だったのを、状態固定して動いていたんだ」

 

 目的――復讐を果たせば終わる命。それを使い切った。

 

「アレイナは……」

 

 言葉に詰まる。それでも言い切る。

 

「俺を庇って死んだ」

「!?」

「約束してたんだ。全部終わったら、この世界を案内するって」

 

 自分の大事なものはこの世界にはなくなってしまった。

 だから、帰る時は連れて行って欲しいと願っていたのだ。

 オウカも二つ返事で引き受けた。

 だが、そんな未来は来なかった。

 

「どうしてそんな事になったの?」

 

 ヒナタの疑問にオウカは一から答える。

 

「【アロンダイト】を破壊してからは、まあフラフラしてたんだけど」

「やる事なかったの?」

「特にはな」

「帰還は?」

 

 帰る事はどうしたのか、と聞かれるかと思ったが、案の定聞かれた。

 

「ん~? あんまり考えてなかったな」

 

 元々自分は此処にいるはずない異物。だからこそ時が経てば、自然に帰る事が出来ると思ってた。

 

「それにこの世界に未練はあんまりなかったし」

 

 友人はいない、というか皆死んだ。

 大切な人は、師匠くらい。だが、あの人の場合、この世界にもやって来そう(笑)。

 

「だから、友人の手伝いしたりしてたんだ」

「どんな?」

「そうだな……」

 

 思い返すオウカ。

 

「まずは仕置人? 復讐代行の手伝いかな?」

「……。カスミさんやアレイナさんにやっていた?」

「かなり違う」

 

 そして、オウカは説明する。

 

「あの二人は補助だけど、こっちは主体でやってた」

 

 依頼人に変わって、執行するのだ。

 

「しかも、普通に殺さないで、苦しめてから殺してた」

「!?」

 

 平然と放たれた言葉に絶句したヒナタだった。

 そんな彼女にオウカは躊躇いながらも続ける。

 

(絶対アイツの事嫌いだろうからな……)

 

 でも話す事にする。

 反面教師にはなるだろうし、意外な所でバレる可能性がある。

 

「ソイツは元々……シリアルキラーだったんだけど、ジョブチェンジしたんだよ」

「……は?」

 

 意味が分からない。

 それにオウカは説明する。

 

「元々アイツ……モンセラートは先天的な異常者だったんだ」

「……」

「誰かを殺さなきゃ生きられなかった」

 

 本人曰く、物心付いた時から、殺人衝動に苦しんでいた。

 

「そんな奴死んだ方がいい」

 

 ばっさりと斬り捨てたヒナタ。それにオウカは苦笑する。

 

「アイツも最初は我慢してた。家族に迷惑かかるってな。でも家族が死んで弾けた」

 

 そこからは殺人鬼として暴れた。あまりにも殺し過ぎたせいで“殺戮鬼”と呼ばれるようになっていた。

 

「でもある時、殺した事でお礼を言われたんだって」

「誰に?」

「盗賊のせいで家族を失った少年に」

 

 ありがとう。仇を取ってくれて本当にありがとう。

 そのように感謝されたそうだ。

 

「それが嬉しかったんだって」

 

 だからこそ、彼女は殺人鬼を廃業して、仕置人になった。

 

「それからはターゲット以外は、正当防衛と、どうしようもない時以外は殺さなくなった」

 

 だがその分、衝動を抑えきれなくなった。

 

「だから、相手を苦しめる事にしたんだって」

 

 古今東西あらゆる拷問を使い、ターゲットを苦しめる。

 時には組み合わせ、時にはオリジナルの拷問をする。

 

「それの手伝いをしてたんだ」

「……」

「一人じゃ大変なのもあるし」

「……例えば?」

「ほら、串刺しとか。固定したり、刺したり、持ち上げたりとかあるだろう?」

 

 それ以外にも、複数を同時拷問する事もあるので、助手が必要だった。

 

「まあ長くは続かなかったけど」

「……人の恨み買ってたんでしょう?」

「まあな」

 

 だからこそ、モンセラートは死んだ。

 ……まあ嵌めた奴は道連れにしたが。

 

「アイツの最後の言葉を、俺は守ってる」

「?」

「相手を理解しろって。味方も敵も」

「敵も?」

「ああ」

 

 

 どういう動機で戦っているのか?

 どういう戦い方なのか?

 大事なものはあるのか?

 

 

「でもさ」

 

 ヒナタが訊ねる。

 

「もし、相手に同情すべき点があったら? だったら知らない方がいい気がする」

 

 殺す手が鈍るのではないか? そういうヒナタにオウカはこう言う。

 

「それでもだ。何も理解しないでやっていたら、いずれ訳の分からないものに潰されるってさ」

 

 その言葉を聞いたヒナタは、何かを考え始めた。

 

 一通り話終わり、ずっと話していたので、小休止代わりにお茶(午後なのでノンカフェイン)を淹れ、お菓子代わりのカステラを出す。

 

「はい」

「……ん」

 

 切り分け、ヒナタの口に入れるオウカ。そして、お茶も飲ませる。

 

「どう?」

「美味しい」

「そっか」

 

 ヒナタに食べさせた後、オウカも自分のを食べる。そして呟く。

 

「思えば、ここまで話したの初めてかもしれない」

「他の人達は?」

 

 その疑問にオウカは答える。

 

「他の面々は疎らだな。アッチの事は話していても、コッチは話していないとか」

 

 百合女(リリアーヌ)天才鍛冶師(ヴィシュバカルマン)の事はほぼ全員に話したが、お嬢様(ベアトリクス)メイド(アンジェリカ)の事は、機会が掴めず、まだ誰にも話しておらず、微妙な面々についても断片的に述べたくらい。

 

「そっか」

「マユは話していないけど、知っている」

「?」

「お互いの記憶を見せ合った際にな」

 

 だからこそ、相棒なのだ。

 そうしていると、皿のカステラが無くなり、お茶も無くなる。

 

「大分話したな。後何かあったっけ?」

 

 こめかみを触りながら、思い起こそうとするオウカ。

 そんな彼にヒナタが問いかける。

 

「どうしてここにいるの?」

「? どういう意味?」

「向こうにいるって選択肢もあったんでしょう? ならどうして帰って来たのかなって」

 

 その言葉に、オウカの顔が歪む。

 暫く沈黙後、呟く。

 

「そっちの事は知っているのに、こっちの事は知らないのは不公平だな。よし話す」

 

 少し気合を入れオウカは話し始める。

 

「何度か言ったけど、あの世界が可笑しいっていっただろう?」

「ヒト科の害獣しかいないんでしょう?」

「うん」

 

 ほとんどが自分以外どうなろうが知ったこっちゃない、の精神を持っている。

 だからこそ、人を幾ら踏みにじっても何とも思っていない。

 

「そうなった元凶がいたんだ」

「え……」

「全ての始まり。神の刃」

 

 ある日、やって来た意志を持った超常兵器。

 完全復活するために、暗躍をした。

 様々な事をしていたが、その内の一つが、人々を狂わせたこと。

 

「外的要因があったのね」

「うん。でソイツと戦う事になってね」

 

 その戦いで友達・仲間達は次々と脱落していった。

 

「同じ土俵に立って、最後はどうにか荒技使って勝ったんだ」

 

 【オートクレール】最後の置き土産。それを使った。

 だが、代償は大きかった。

 

「荒技って?」

「時間遡行による相手の消滅」

「!?」

 

 絶句するヒナタに構わずオウカは続ける。

 

「代償もデカくてね。皆俺の事を忘れた」

 

 アイツ以外はなと、オウカは悲しそうに笑った。

 

 そして、平和になった世界で、自分以外に記憶を留めていた友達との決着を付け、彼は帰った訳である。

 そして、その後も色々騒動に巻き込まれ、今に至る。

 

「ふう……」

 

 話を終え、一息付くオウカ。

 

「夕食作るか。少し待ってて」

「……(コクリ)……」

 

 キッチンで準備と料理を始めた彼を見て、ヒナタは思う。

 

(ウチ程辛い目にあった人はそうはいないと、思ったけど……)

 

 結構身近にいた。

 

(手の届く人しか助けないって言ってたけど、それ以上助けてるよね)

 

 特にリアやカナタの件。

 頼まれたって断れば良かったのに。

 そして自分。

 

(復讐の先に希望か……)

 

 思えば、自分は復讐する事しか考えていなかった。それさえ果たせれば後はどうでも良かった。

 でも、それは違った。

 もう終わっていたカスミと自分は違う。その先にも自分の人生は続いている。

 

 そんな事を思っていると。

 

「おやつも食べたから、軽めにしたぞ」

 

 オウカが持って来たのは、野菜と肉が入ったおじやだった。

 

「はい。アーン」

「……(アーン、パクリ)……」

 

 もう完全に慣れてしまった二人。

 そして、夕飯を終え、入浴となる。

 準備をし始めたオウカに、ヒナタが口を開く。

 

「ねえ」

「?」

「一緒に入りましょう」

「はい?」

「だって、ウチは隅々まで見られているのに不公平でしょう?」

「……それはそうだろうけど」

「その方が時間も短くて済むわ」

「……わかった」

 

 そういう訳で二人でお風呂に入る事になる。

 ……何か異性と風呂に入る機会が多い気がする。

 そういう訳で、服を脱ぎ、ヒナタと一緒に浴場に入る。

 

「引き締まっているね」

 

 ヒナタがオウカの体を見てこう言った。

 

「それと傷だらけ」

「……まあな」

 

 そして、体を洗い、背中合わせ風呂に浸かる。

 ヒナタが口を開く。

 

「ウチね、家族を亡くしてから、全部一人でやろうと思ったの」

「ああ。自分の事情に巻き込みたくなかったんだろう」

「それもあるし、大事な人が出来て奪われるのが怖かった」

「……」

「でもね、やっぱり寂しかったし、悲しかった」

「そっか」

 

 そのまま両者沈黙。

 暫くしてヒナタがポツリと呟く。

 

「サクヅキ君。ウチを助けてくれる?」

 

 その言葉にオウカは断言する。

 

「当たり前だ」

 

 それにヒナタは泣き笑いの顔になる。

 

「ありがと」

「おう」

 

 そして、その後、風呂から出た後、眠ってしまうまで雑談した。

 

 次の日。

 オウカは朝食としてパンケーキを大量に作る。

 

「偶に食べたくなるんだよな」

 

 朝食は和食(御飯、味噌汁、おかず)がお決まりのパターンなのだが、偶には別の物が食べたくなるオウカである。

 そう言う訳で、パンケーキにメイプルシロップ、蜂蜜、餡子、ジャムなどを塗って食べていく二人。

 オウカもヒナタの補助に慣れて来たのか、右手で自分のパンケーキを食べ、左手でヒナタに食べさせる。

 

「フワフワで美味しい」

「そうだろう。隠し味に色々入れてるんだ」

 

 ヒナタもオウカに心を開いたのか、自分から話すようになっている。

 そんな時だった。

 

「疲れた」

「疲労、空腹」

 

 マユとネラが帰って来た。その顔には疲労が滲んでいる。

 

「おかえり。食べるか?」

「うん」

「馳走」

 

 この二人がそろそろ戻ると思って、オウカは沢山パンケーキを作った訳である。

 そういう訳で四人でパンケーキを平らげる。

 

「ところで、作業は終わった?」

「完璧」

「なぜネラが言う?」

 

 そう言う訳で付けていく。

 

「サクヅキ君、付けて」

「え? いや、女子にやってm」

「いいから」

 

 そう言う訳で、またオウカがヒナタの補助をする事になる。

 義肢を付け、外套を着せ、メイスを渡す。

 

「どう?」

 

 マユの疑問に、ヒナタは暫く手足を動かし、外套をはためかせ、メイスを振るう。

 そして。

 

「今までで一番調子が良い」

「えっへん」

 

 胸を張るマユにヒナタが頭を下げる。

 

「ありがとうございます。お代はいか程でしょう?」

「初回サービスでタダでいい」

 

 実はこのサービス結構やっている。

 

「でも……」

「二回目以降は金取るから」

「じゃあお言葉に甘えます」

 

 メイスを亜空間に仕舞うと、ヒナタは出口に向かう。

 

「じゃあお暇します」

「え……」

「もう少しゆっくりすればいいのに」

「昨日十分ゆっくりしたので」

 

 少し顔に笑みを浮かべる。

 

「それに早く試してみたいので」

「だったら、相手になろうか?」

「え……」

 

 オウカの提案に、ヒナタは驚く。

 

「いいの?」

「ああ。俺と良い勝負出来れば、大抵の敵には勝てるよ」

「「だろうね」」

 

 三人のツッコミがハモる。

 彼女にとってそれはありがたい。百戦錬磨の彼との戦いは良い経験になる。

 

「ああ。でもどこでやるか……」

「それなら良い場所を知ってる」

 

 そういうと、ヒナタは端末を操作し誰かと連絡を取り始めた。




【コソコソ話】
(㈩*㈩)<捕捉説明。実は彼女、結構名家出身。公爵令嬢だった。

(#ー#)<マジで!? そういえば所作とか丁寧だもんな……。だから我慢してたのか。

(㈩*㈩)<そういう事。家族の事は愛してたから。迷惑をかけたくなかった。

(㈩*㈩)<だから、我慢し続けて、限界が来たら。

(㈩*㈩)<自分で幕を閉じようと思ってたみたい。

(#ー#)<そういえば前言ってたな。ところで、家族が死んで弾けたんだよな?

(㈩*㈩)<母国で、軍がクーデーター起こして、家族処刑された。目の前で。

(#ー#)<……なんともはや。

(㈩*㈩)<それで、その場の全員と、国民を皆殺しにして、家族のお墓を建ててから、旅に出た。
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