(#ー#)<人がどれだけスキルを覚えられるかだな。人によって違う。
(㈩*㈩)<ない人に移植は可能って前聞いたけど、増設も出来たんだ……。
(#ー#)<まあな。でもやる人は少ないけど。
(㈩*㈩)<やっぱりリスクがあるから?
(#ー#)<そうだ。失敗する可能性も高いし、元あるモノに影響が出る場合もあるから。
(㈩*㈩)<なるほど。
エドリーゲインの右の頬に浮かび上がったのは、刺青や痣のような紋様。それは蝶や蛾の翅のよう。
それを見たオウカは内心しかめっ面をする。
(ついに出したか……)
それはノワールとマックス――聖霊教の円卓から聞いたとあるチカラ。
本来、機密事項であるのだが、事情が事情なので、守秘義務込みで説明してくれたのだ。
(翅……)
加護の翅。
聖霊教で崇められる【セイレイサマ】のチカラであり、十四に分けられた紋章。
便宜上、七つの大罪と七つの美徳の名前が付いているが、あまり関係ない。
しかも、使い手によって結構変わるとの事。
エドリーゲインが持っているのは〈純潔〉。
そのチカラは――『融合』。
(どうなる?)
エドリーゲインが呼び出したのは幾人かの屍と骨。
それがエドリーゲインに融合して、肉で出来た繭のようになる。
更に――
「ギャアアア!」
「助けてー!?」
「死にたくない!!」
辺り一面に散らばった命だったものだけでなく、銃を持っていた逃げ遅れた人達まで吸収し始める。
「不味い!?」
オウカは咄嗟にヒナタと老人を庇うように立つ。
だが、この二人は吸収されない。
(? どういう事だ?)
今にも倒れそうな状態なヒナタに、回復用の呪符を渡しながら分析する。
(何が違う……。あ)
気づいた。
それは――エドリーゲインが持っていた銃器まで吸収している。
(なるほど。それでマーキングされる訳か)
悪因悪果、因果応報。
そして、吸収できる者全てを吸収し終える。
すると、繭が大きく脈動してから弾けた。
「なるほど……。こうなるのか」
そこから出て来たのはエドリーゲイン。
だが、その姿と形は変わっており、怪物となっていた。
まず身長が大きくなっている。人二人を縦に接合させたかのように。
下の体の首にあたる部分から、上の体の上半身が生えているので、上半身と下半身ならぬ、上半身、中半身、下半身の三段構成の体となっている。
そして、腕が十二本、足は八本生えている。
因みに十二本の腕は、上半身に六本、中半身に六本生えており、まるで阿修羅の二段重ね。
更に、全身は骨のような甲殻を纏っており、見るからに堅そう。
手には【タナトス】。しかも各手に持っている。恐らく変形の一種。
それを見てオウカは古代剣ではなく、手数を稼ぐため、ロングナイフ二本に持ち替える。
戦いはここからが本番だった。
★☆★☆★
サクヅキ=オウカの戦い方は――様々。相手やその時の気分で変わる。
徒手空拳で戦う事もあるが、武器を使う事の方が多い。
剣や刀をよく使うが、他の武器も使えるし、使う。例えば、槍や棍などの長物に、鎚やメイスなどの打撃武器、拳銃やランチャーなどの銃火器。
そして、剣や刀も普段なら、二尺程度の長さの物を普段使うが、身の丈以上の大太刀やツヴァイハンダーを使ったり、短めのナイフやドスすらも使う。
時には、二刀流にし、更には三本以上の武器を器用に使う事もある。
メイド師匠のメインウェポンはドスとチャカ、そして、徒手空拳。だが、他の武器(マイナーなのを含む)も結構使える。
なので、素手での戦闘を叩き込んでから、色々な武器をオウカに使わせてみた。これは彼の得意武器が何かを確かめるためだったのだが……
『……これは。なるほど、そういうパターンですか』
その結果、分かったのは、どの武器もある程度は使えるようになるが、一流には届かない事。
だからこそ、メイド師匠は使い分けの戦法を教える事にした。
一つに絞って極めるのが一番良いが、それが無理なら、複数の武器を相手によって使い分ける戦法も手段の一つ。
持ち運びの問題もあるが、それは今の時代は匣があるためどうにかなる。
……まあそれでも徒手空拳、ドス、チャカを主体に教えたが。
そういう訳で、異世界に落ちた後も、刀剣系をメインウェポンとして色々な武器を使っていた。とは言え、やはり苦戦が多かった。何か一つを極限まで極めた者は強いのだ。
だが、ある時に転機が訪れる。それが、闇医者である友達――ディアンから冥刀を受け継いだ事。
彼女の冥刀は糸型の【クリドゥノ・アイディン】 。
勿論糸のように、切断、拘束、罠設置、応急処置などにも使えるが、その本質は情報収集とコピー。つまりは冥刀を再現できるのだが、それは相手の経験や技量まで再現可能。
しかも、ディアンの場合、仕事が仕事なので、他者の冥刀に接する機会も多かった。だからこそ、数多の冥刀を再現可能としていた。
それのおかげで、オウカは多種多様な武器を使える代わり、ほとんどが二流状態だったのだが、一気に引き上げられた。
今では剣聖クラスと刀剣でバチバチ渡り合う事まで可能となっている。
なのだが、今回の相手はかなり毛色が違っていた。
その理由は二つある。
一つ目が、相手も似たような手段を使っている事。
エドリーゲインは死体から技術と経験を取り込む事が出来る。彼が殺して来た人物は数えきれない程。一般人が多いが、達人もいる。だからこそ、その技術と経験を自分の物にしている。
二つ目が、姿形。
対人戦と言っても、ほとんどの人間は顔一つ腕二本足二本。
だからこそ、暗器を仕込んでいるタイプでも、パターンは大体同じなので、オウカはそういう相手の対策を学んでおり、数多に戦って来たので読み切れる。
だが、今回は、完全に人型を留めておらず、どこから攻撃が飛んで来るかがわからない。
そのせいで戦いは膠着していた。
■□■□
ソラナキ=ヒナタはボロボロだった。
畢竟の反動に加え、斬られ、撃たれている。オウカの処置が無ければ、とっくに意識を失っているか、死んでいる。
だが、今は正念場。倒れる訳にはいかないので、気力で立っていた。
その視線の先では
エドリーゲインは多脚を使う事で凄まじいスピードで走る。更に幾つもの腕で武器を使う。更に、死体を融合した際に、単純に手数が増えただけでなく、関節が増え、長さも伸ばしたせいで、攻撃が読みづらくなっている。
オウカはそれに対して、ロングナイフを二刀流にして、背中から蠍尾の冥刀である【ギルタブリル】を伸ばして数に対抗。
さらに、血液型の冥刀である【イーコール】の能力である、ステータス配分・強化をスピードに回し、高速機動していた。
それによってこの二人の戦いは常軌を逸したものになっていた。
戦闘場所を駆け回りながら、武器同士が連続してぶつかり合う。エドリーゲインの読みづらい攻撃をオウカは捌いている。時に反撃を加え、直撃しているのだが……。
「……チッ」
「ハハハ」
相手の防御力のせいで通らない。
まったく無傷ではないようだが、浅い傷なためすぐに塞がってしまう。
更にそれだけではない。
(あの蠍の尻尾、絶対毒があるよね?)
ヒナタは戦いを見て気づいていた。
あの蠍尾の先端の棘からは毒が出ている。
なのに、全く効いていない。
(どういう事?)
状態異常は厄介なので、対策をしている人は多い。
だが、それでも限度はあるはず。
しかも冥刀の毒なら猶更のはずだった。
(スキルで取っている?)
レアやユニークならそういうモノもある。だが、キャパシティやスロットに限界はあるはず。
(ん?)
何かにひっかかりを覚えるヒナタ。
(付加や増設の手段の一つに移植ってあるけど、限界はある)
臓器移植のように、他者からソレらを移植可能。ただし、執刀医はあまりいないうえ、そもそもドナーがいなければ出来ず、出来たとしても失敗する可能性も高い。
(限界……)
ふとエドリーゲインをヒナタは見やる。その体は人間をやめている。
(アレは翅のチカラ)
加護の翅は、応用性と拡張性は高い
(ちょっと待って? 融合して部位だけが増えたなんて言っていない)
それだけとは一言も言っていない。
(まさか……キャパシティやスロットも増やした?)
それなら辻褄が合う。
そこに防御、耐性、回復のスキルを覚えれば、難攻不落になる。
「サウヅキくん! アイツはスロットやキャパシティも増やしている!!」
「! まさか!?」
「へえ気づいたか……」
エドリーゲインが笑う。
どうやらその考えが正しいらしい。
しかもご丁寧に説明してくれる。
「
何でも、死者を骨の兵隊にする際に、キャパシティやスロットを取り出し、屍の兵隊に移す。そして、必要なスキルを覚えさせる事で、生前より強化させる。
更に今回はそれを取り込み、更に追加分と空のストックに防御系のスキルを覚えたとの事。
だからこそ、硬く、再生力があり、耐性まで存在する。
つまりは――大火力や次元攻撃をぶつけるしかない。
(不味い……)
手札を数多に持っているオウカだが、色々制約がある。しかも今回は場所が客船であり、まだ中には人がいる。
(火力過多なのは使えない……)
更に、今は
つまりかなり不味い。
(要するに確実にダメージを与えられる攻撃しかない)
ロングナイフを握った左腕を見やる。
これは友の遺された左腕を移植してある。その時に、彼女が使っていた冥刀も一緒に移植した。
【レギンナグラル】
釘型の冥刀であり、 腕に埋め込んで使う。その痛みが代償であり、能力は拳撃の連打と炸裂。それに付随して、相手の防御を無視して、ダメージを浸透させる事も出来る。
「南無阿弥陀仏」
オウカは徒手空拳となり、構えた。
******
素手になったオウカを見て、エドリーゲインは警戒を上げる。
(あの左手……不味いな)
そして、彼の狙いにも気づく。
アレは喰らったら不味い。
「だったら――近づけさせなければいいだけだ」
足を増やしたうえ、地面に設置する面積を増やし、安定性を上げる。
腕の関節を増やしリーチを伸ばし、それを振り回す。
これにより機動性はゼロになったが、安定性と対応力を引き上げる。
そうして相手の出方を伺うエドリーゲイン。
(さあどうする?)
後はその都度対処すればいいとした。
オウカはそれに対して、背中に展開していた蠍尾を伸ばし地面に突き立て固定。
「?」
エドリーゲインが疑問に思う中、オウカは下がる。蠍尾がギリギリと引っ張られる。
「まさk」
最後まで言えなかった。
オウカが蠍尾の張力を利用し射出された。
それはスリングショットの原理を利用したもの。
(不味い!?)
その刹那、思考を加速させる。
防御は出来る。だが、近づけせないように腕を展開したせいで、完全に防ぐ事は難しい。打たれ所が悪ければ死ぬ。
回避は不可能。安定性を求めたのが仇となった。
(チィ! 仕方ねえ)
変形してから少しずつ準備していた、最後の手段を急ピッチで準備しながら、体を曲げ、内部の重要器官を移動させ、腕を前方に集中。
だが。
「そんなモンはタコセン以下だ」
左腕の拳撃――【レギンナグラル】により粉砕。
もとより、この冥刀の破壊力は高い。
それに加え、この腕の持ち主である“ハカイシスター”マリアは常人を遥かに超える筋繊維密度と骨密度を誇る体質を持っていた。
そういう場合(ミオスタチン関連筋肉肥大)、燃費が悪いのだが、マリアはエネルギー効率が良いのかそこまで沢山食べずとも、凄まじいパフォーマンスを常時発揮できる。
因みに、彼女は筋肉や骨が太くならず、細く締まっていくタイプだったので、そこまで太っていない。
地力が高い者が更に凄まじい事になっている。
だからこそ、その腕を移植した左腕は右腕よりもスペックが高い。
そして、その拳はエドリーゲインの胴体に到達。
「オラア!」
「グフゥ!?」
拳撃が内部に浸透し、炸裂。
エドリーゲインが吹っ飛ぶ。そして、上空の結界に叩きつけられた。
【TIPS:キャパシティとスロットの違い】
(・▽・)<この二つって何が違うんですか?
(#ー#)<また変更あるかもだが、それでもいいなら。
(・▽・)<お願いします。
(#ー#)<言ってしまえば、スキルの種類によって変わる。
(#ー#)<奥義とかの術や技だったら、キャパシティ。容量の方になる。
(#ー#)<そんで、能力とか、常時発動のモノだったら、スロット。穴だな。
(・▽・)<と言う事は――モンスターとかのスキルはスロットなのですか?
(#=#)<おう。そんな感じだ。……まあ設定また変わるかもだが。