冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

82 / 182
【TIPS:マリア】
(・▽・)<破戒修道女さんは特殊体質です。近いのが――ミオスタチン関連筋肉肥大です。

(#ー#)<近い? それじゃないのか?

(・▽・)<彼女の場合、筋肉と骨の密度が更に凄まじいうえ、

(・▽・)<太らないで、ドンドン締まっていった。着やせするタイプです。

(・▽・)<更に、本来なら悪い燃費も結構良いです。

(#ー#)<良い所取りじゃねえか。

(㈩*㈩)<いやいや。欠点あるよ。

(#ー#)<何?

(㈩*㈩)<元々オウカよりも背が少し高くて、スタイルが良い爆乳なんだけど。

(㈩*㈩)<体重がかなり重い。ド○えもん状態。

(#ー#)<体重と身長が同じか!

(㈩*㈩)<下手するとそれ以上。本人も結構気にしている。


82

 ◇◆◇◆

 

 

 これにて決着。そのはずなのだが。

 

「……?」

 

 左腕を見つめるオウカ。

 

 違和感がある。

 それは、今まで数多の戦いを繰り広げて来たオウカの第六感。

 

 そして、聖職者でありながら、人々を殴り続けて来たマリアの左腕が告げる勘。

 

 それに加え、オウカのメイド師匠の教え。

 

『いいですか? オウカ。戦いで一番気を抜いてはいけないのは――』

 

 一拍置いて続けた。

 

『戦いが終わった直後です』

 

 敵は死んだふりをして、一撃を加えようとしているかもしれない。

 増援や第三勢力が割り込んでくるかもしれない。

 

『注意しなさい。警戒しなさい』

 

 この三つがあったからこそ……

 

「オラァ」

「!?」

 

 オウカは、その一撃を咄嗟に出したナイフで防ぐ事が出来た。

 

「……やっぱし」

「へえ気づいていたのか」

 

 鍔迫り合いをするオウカとエドリーゲイン。

 やはり生きていた。

 

「……」

「どうした? 何か言えよ」

「……痩せた?」

 

 その姿は更に変わっていた。

 多腕多脚の異形だったが、人の姿に戻り、大きさも元に戻っていた。

 更に纏っていた骨状の甲殻が鋭角的になっている。

 

 オウカの軽口にエドリーゲインは答える。

 

「いんや。どっちかというと太ったな」

「あん?」

 

 意味不明な言葉に思えたが……。

 

「まさか!? その分圧縮したのか……」

「ご明察」

 

 これが融合のチカラを使ったエドリーゲインが、辿り着いた形態。

 あの多腕多脚の異形も悪くはないが、若干の動きずらさがあった。

 それを彼は蛹として利用し、この形態に移行したのだ。

 

「だから……こういう事も出来るんだよ!」

「!?」

 

 強引に腕力でオウカを吹っ飛ばす。

 そのままさらに上がったスピードで追撃。

 

「ハッハー! 細切れだ!」

 

 二刀状態の【タナトス】を振るう。パワーとスピードを兼ね備えた豪雨のような攻撃。

 それをオウカはロングナイフ二刀流で捌く。

 力と速さが劣っていたとしても、技で補えば良い。

 それでも、相手は技量が高いので、やはり不利となる。

 

 だが。

 

「お前さ」

 

 防ぎながらオウカは続ける。

 

「もうストックないだろう?」

 

 恐らく死体のストックを今ので全て使い切ったはず。

 

「それにこの形態が最終形態だろう?」

 

 恐らく、オウカの拳撃は主要部位を移動させての、蜥蜴の尻尾切りと、脱皮の合わせたような技で防いだ。

 

「これで殺せば終わりだ」

 

 そう指摘した。

 

 その言葉にエドリーゲインは笑う。

 

「だったらどうした! テメエ殺せばいいだけだ!」

「やれるもんならやってみろ!」

 

 そうして激突する二人。

 オウカはロングナイフ、エドリーゲインはファルシオン。両者共に二刀流で斬り合う。

 その剣戟は両者、音を置き去りにする速さ。

 暫く拮抗していたが、先に血飛沫を上げたのは――オウカ。

 

 理由は明快。

 オウカの攻撃は減衰・遮断・軽減され、傷がついても回復・再生するから。

 こちらは、ステータスが上の相手の攻撃を捌かなければならないから。

 

「ハッハー!」

「……」

 

 笑うエドリーゲイン、沈黙するオウカ。

 そのまま思考するオウカ。因みに、傷はこちらもすぐ塞がる。

 

(動きはさっきと違って読みやすい)

 

 さっきの阿修羅二段重ねと違い、関節や腕が増えるわけではなく、ちゃんと二本腕で人間範疇の攻撃を仕掛けてくるエドリーゲイン。

 

(だけど、(パワー)速さ(スピード)防御(タフネス)技術(テクニック)が凄まじい)

 

 しかもこれに経験(エクスペリエンス)が付いている。

 更に再生力と、攻撃耐性まで付いている。

 下手をすれば持久力もある。

 

(……どうする?) 

 

 このままでは負けるのは自分。

 斬られてやられるか、消耗して自滅するかの二択。

 

(どうにか確実に仕留められる一撃が必要)

 

 【レギンナグラル】(先程と同じ手)は使えない。

 完全に警戒されているだろう。

 使える手札はもうわずか。

 

(被害無視なら手札はある)

 

 【ティソーナ】(核分裂)【パンドーラ】(大火力兵器)etc。

 だがこんなところでぶっ放せば、巻き込まれる人がいる。

 流石に巻き込むのは忍びない。

 

(だが、ここでこの下衆を逃がす訳にはいかない)

 

「絶対に」

 

 そう呟き、全力の一撃――【イーコール】をパワーに振り、相手を吹っ飛ばす。

 そのまま間合いを取る。

 

(是非もない。アレで行くか)

 

 ある事を決めた、その時だった。

 

「サクヅキくん」

「!?」

 

 聞き覚えのある声が聞こえた。

 振り向くとそこにいたのは、案の定――ヒナタ。

 まだ反動と消耗があるのか、今にも崩れ落ちそうだが、どうにか二本足で立っている。

 

「ウチも加勢する」

「おま、大丈夫なのか?」

「大丈夫」

 

 どう見てもそう見えない。

 

「……いいから休んで」

「ねえサクくん」

 

 それはオウカの愛称。

 親しく、命を懸け合う関係の人にしか許さないもの。

 

「事後承諾だけどいいよね?」

「ああ。いいよ、ヒナ」

 

 そう言った彼の言葉にヒナタは目を丸くした。

 だが、一瞬で戻る。

 そして、言葉をゆっくりと投げかける。

 

「これは、ウチの復讐」

 

 家族を奪われたのは自分。

 

「だからウチもやる。やらなきゃならない」

 

 でなければ

 

「ここまでやって来た事が水の泡になる」

 

 そして少しだけ、口元を歪める。彼女のぎこちない笑みを。。

 

「本当だったらね、一人でやろうと思ってた」

 

 仲間は集めようとすれば集められただろう。

 だが、そうしなかったのは自分でやらねば気がすまなかったから。

 そして、これが本当の理由。

 

「また失うのが――怖かった」

「お前……」

 

 その言葉にオウカが思い出したのは――キョウコのヒナタの人物評。

 

『あの子は本当は寂しがり屋の優しい子なんです』

 

 確かにその通りだった。

 

「ねえサクくん。このままだったら、不味いでしょう?」

「それは……」

「どうにかなるとしても――辺り一帯消し飛ぶか、相打ち前提でしょう?」

 

 その言葉に少しだけ顔を顰める。

 実際、後者をやろうとはしていた。

 

「そんなのは駄目。あなたが死んだら、ウチは悲しい」

 

 きっと二度と笑えなくなるだろう。

 だから

 

「ウチも戦う。戦わせて」

 

 ヒナタの心からの言葉。

 それにオウカは少し溜息を吐く。

 

「わかった。でも」

 

 消耗しているから、後衛に集中して欲しい。

 そう言おうとしたオウカだったが、それをわかっていたのか彼女は続ける。

 

「大丈夫。今の自分に出来る事をする。お願い――アズライール」

 

 それは冥刀の真名。

 【パダルン・レドコウト】の本当の名前。

 それを聞いた外套がするりとヒナタから離れ、オウカに纏わりつく。そしてオーバーコートへと姿を変える。なぜか帽子も付く。

 

「おお。恰好良い……」

「へえ、こうなるんだ……」

 

 因みにヒナタは当然の如く全裸になる。大事な所は腕で隠している。

 なので、オウカはヒナタへ手を差し出す。

 

「ん」

「?」

 

 首を捻るヒナタの手を取って。

 

「暫く入ってろ」

「!」

 

 オウカは影の中に彼女を沈ませる。

 かつての【オートクレール】の置き土産である、緊急シェルターの出来る空間である。因みに学外実習の時にも使った。

 

 そして、改めてエドリーゲインに向き合う。

 

「待ってくれてありがとうよ」

「いいさ、どうせ殺すからな」

 

 そして心の中で付け足す。

 

(そんな隙なかっただろうに……)

 

 実はヒナタと話している間も全く隙を見せなかったオウカだった。

 

「じゃあ待ってくれてたお礼に……」

 

 一拍置くとオウカは続ける。

 

「一発」

「……打たせてくれるのか?」

「いんや」

 

 否定してから言う。

 

「声を掛けてから拳を打ってやる。サービスにただの拳にしてやる」

 

 そうしてオウカは構えを取る。右拳を引いて

 

 その言葉にエドリーゲインは内心ほくそ笑む。

 

(いいぜ、カウンターで殺してやる)

 

 そして、両者隙を伺う中。

 

「今から打つ」

 

 オウカはそう言った。

 

「!?」

 

 悪寒がしたエドリーゲインは、咄嗟に腕を交差し、防御の体制を取る。

 それと同時、オウカの拳が叩き込まれる。

 エドリーゲインが吹っ飛んだ。

 とは言え先程のように、結界に叩きつけられずに、どうにか途中で止まる。

 

(なんだ……今の……)

 

 今の攻撃は全く見えなかった

 そして、威力が段違いになっている。

 

「何が起こった?」

 

 思わず呟きが漏れる。

 それにオウカは律儀に答える。

 

「近づいて殴った。ただそれだけ」

 

 そうして両拳を打ち合わせる。

 その拳に黒い手袋が付く。

 

「次はコレで行く」

 

 そして再び消えるオウカ。

 それを迎撃しようとするも、その一撃は空を切る。

 

「!?」

「遅い」

 

 オウカのボディブロウ炸裂!

 

「ゴボオ!」

 

 クリンヒット!

 その拳は外骨格を砕き、ダメージを炸裂・浸透させる。

 エドリーゲインはどうにかその場を留まる。

 だが、オウカは止まらない。

 

「オラァ! ハア! フン!」

「グフ、ゲア、ギャ」

 

 拳蹴による連続攻撃! ラッシュラッシュ!

 その場に相手を留めたまま殴り蹴る。

 

(動きが速い、一撃が重い……)

 

 エドリーゲインはどうにか防御と回復に集中して凌ぎながら、分析する。

 

(これ、あの女が使った奥の手だな)

 

 それは正解。

 どうにか回復に集中させたおかげで、もう一度だけ使えるようにしたのだ。

 

(だったら、耐え凌げばオレの勝ち)

 

 恐らく長時間は使えない。反動や消耗もあるだろう。

 

(そして、真に怖いのはあの左拳)

 

 他の攻撃よりも重く速い。そして、耐性や削減が効きにくい。

 何かしらを使っているのだろう。

 

 そして、暫くして、攻撃を的確に避け防いでいく。

 

(どうにか見切れなくもない)

 

 これでも達人の技巧を取り込んでいるのだから。

 

「ハッハー!」

「……」

 

 遂にエドリーゲインは反撃を加えるようになってきた。

 まだ当たらないが、時間の問題であろう。

 

 それにオウカは表情は変えずとも、内心顰め面をする。

 

(流石……。敵ながらに天晴)

 

 褒めたくはないが、称賛する時は称賛するのがオウカ。

 

(でもこのままだと凌がれる。どうする……)

 

 時間切れで負けるのは嫌すぎる。

 思考、思考、思考。

 

(あ)

 

 ふと、とある手段を思いつく。

 だが、コレを使った場合、反動でどうなるかわからないが……。

 

「よしやろう」

 

 即断即決。オールイン。

 

 そして、赤い糸を指から展開。

 それがオーバーコートに纏わりつき、形を変える。

 コートのデザインが豪華になる。

 

 オウカは【クリドゥノ・アイディン】のチカラで【パダルン・レドコウト】をコピーし、二重で纏っている。

 ……恐らく後で反動で大変になるだろうが、知ったことではない。

 

(後は――)

 

 そして、相手を仕留めるための道筋を作り出す。

 

 一方、エドリーゲインも警戒を引き上げる。

 

(見た目が変わった。見せかけだけじゃねえな……)

 

 感じる圧が更に上がった。

 恐らくスペックも上がったと見るべき。

 

(何か狙ってるな……)

 

 恐らく時間がないのだろう。

 だったら持久戦に持ち込むか、と考えたが……。

 

(駄目だな)

 

 すぐに否定。

 

(その場合、気持ちで負ける)

 

 戦いの最後の最後は――心で決まる。

 

 だったら。

 

「決めにいく」

 

 左手に握るファルシオンを上空に投げる。それが八本に分裂。

 

 そうして示し合わせたようにお互い同時に飛び出す。

 速いのはオウカ。

 だが、エドリーゲインは八本のファルシオンを飛ばし、ビームや突撃を仕掛ける。幾ら速くても範囲攻撃をされればひとたまりもない。

 

(肉を切らせて骨を叩き斬る)

 

 オウカは回避を諦め、ダメージを最小限に抑えて相手に近づく。

 

 そして、遂に接近戦の間合いになる。

 

「!」

 

 エドリーゲインの右手に持つファルシオンが襲い掛かる。

 リーチ的には向こうが上。

 

 それをオウカは――あえて喰らった!

 左腕が吹っ飛んだが、それと引き換えにオウカはエドリーゲインの懐に入り込む。

 

(勝った!)

 

 それにほくそ笑んだエドリーゲイン。

 右腕の攻撃なら凌ぎ切れると踏んだ。

 だが――

 

「!?」

 

 気づけばオウカの残った右腕が巨大な鉤爪になっていた。

 それを見てエドリーゲインは思い出した。

 外套のもう一つのチカラを。

 

「アアアアアア!」

 

 鉤爪が逆袈裟に襲い掛かり、エドリーゲインを六等分にした。




【コソコソ話】
(㈩*㈩)<【パダルン・レドコウト】は外套型の冥刀なんだけど、

(㈩*㈩)<使い手によって形状は変わる。

(㈩*㈩)<ヒナタの場合、トレンチコート。たまに着る毛布みたくもなる。

(・▽・)<……ああ! 寝間着形態ですか!

(㈩*㈩)<そう言う事。これしか着れないから。

(㈩*㈩)<オウカの場合、オーバーコートと帽子。

(㈩*㈩)<イメージ的に、武○錬金のシ○バースキンを真っ黒にした感じ。

(#ー#)<もっといい例えねえのか!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。