冥刀抜錨トリニティGEAR   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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【コソコソ話】
(#ー#)<そういえばさ

(㈩*㈩)<何?

(#ー#)<お前さ、ソラナキに機体型の冥刀あげるとか言ってたけど、結局どうなったんだ?

(㈩*㈩)<ああアレ? 結局貰わなかった。

(#ー#)<え。何で?

(㈩*㈩)<相性が悪くて使えるのがなかった。

(#ー#)<まあ複数持ってたし、しょうがないか。


83

 ヒナタの【パダルン・レドコウト】には【カリュブディス】が融合している。

 【カリュブディス】のチカラは捕食。それは空間や次元ごと齧り取る事が可能。彼女自身はもう死んでいるが、そのチカラ自体は外套に受け継がれている。

 

 だからこそ、エドリーゲインの防御や耐性を空間ごと削り取ったのだ。

 

 普通の人間なら六等分されれば絶命する。

 だが生憎と、エドリーゲインは普通ではなかった。

 

(チィ、こうなったら……)

 

 エドリーゲインは特殊な手術により、頭部さえ無事ならどうにかなる。

 そして、最後の奥の手として、胴体部分に爆弾が仕込んである。いわゆる自爆。

 その破壊力は凄まじく、半径数キロを爆破可能なうえ、自身にダメージはない。

 

(じゃあな……)

 

 だが起爆寸前、外套の胸部から出て来た巨大な顎が、分割部分の胴体部を噛み砕く事で防がれた。

 そうして全ての手札がなくなったエドリーゲインは地面に落ちる。

 もうなすすべがない頭部をオウカは見下ろす。 切れた左腕がひとりでに戻る。

 

「さあ、トドメと行きたいところだけど……」

「!?」

 

 それと同時に、外套が元のデザインに戻る。更にマントのようになってしまう。

 時間切れだった。

 

「もう俺は動けない」

 

 そう言って座り込む。

 そして、マントを自身の影に沈め、少しして何かを引っ張り出す。

 それは――ヒナタだった。

 

「ヒナどうぞ。トドメよろしく」

「え……サク!?」

 

 ヒナタはその言葉に驚いた。

 彼女もかなり消耗しており、満身創痍。

 

「ありがとう。お言葉に甘えていかせてもらう」

 

 それでも、立ち上がって見せ、距離を詰める。

 

「簡単に死ねると思うな……」

「(手足がない……、それどころか動けねえ。)うおぁあ、ちょ、ちょっと待て」

 

 もうこの男に出来る事は何もない。

 ヒナタは上からじっとりと見る。その顔は悪鬼そのもの。

 

「全員の恨みを載せて――撲殺してやる」

 

 そして、魂の拳が振り下ろされる!

 

「まずはとうさんの分」

「ゴオオ……」

「かあさんは眼が見えなくなってた!」

「ガァ、グ」

 

 二発目は目つぶし。眼球を潰し光を奪った。

 

「これはツクヨの分」

「ゴッ!」

「これはホシマルの分」

「ガッ!」

 

 ヒナタは妹弟の分も殴る。

 エドリーゲインは、何も見えない世界で殴られ続ける。

 その拳こそ、ソラナキ=ヒナタの怒りだった。

 

「これはおじいさんの分!」

「ゴボ!」

 

 逃げ遅れた人達の唯一の生き残りである老人。

 泣き怒っていた彼の分の拳をぶつける。

 

「その家族の分!」

「グベポ」

 

 因みに、オウカに加勢するに至って、簡易的な結界装置を渡して置いた。

 見捨てるのは目覚めが悪い。

 

「そして、誰か知らない人の恨み!」

 

 ラッシュで殴る、殴る、殴る。

 

「ガバ、ゲハ、グベ、ゲギャ」

 

 それでもエドリーゲインは生きていた。それどころか意識を保っていた。

 

(あーあ、まだ死ねないとは……)

 

 もちろん、ヒナタが手加減をしているから、という訳ではない。

 彼女の手足は金属の義肢。文字通り鉄拳。常人どころか、プレイヤーやモンスターですら死に至る。

 

 なのだが――今の彼の体は、数十人分の人間の血肉骨を圧縮しているので、常人を遥かに超える程の強度と密度を誇る。

 それに加えて、防御系のスキルを習得している。

 

 だからこそ耐える事が出来ていた。幸か不幸かはわからないが……。

 

(なんでこうなっちまったのかね?)

 

 意識が混濁する中、そんな事を思った。

 とは言え、そんな事単純明快だった。

 

(まあやり過ぎたからな。仕方ないか)

 

 思えば、自身は最初から異常だった。

 

 普通の両親と妹がいて、友人にも恵まれた。

 だが、何か物足りなさと空虚をいつも感じた。

 

 そんなある日、突如発生したモンスターのスタンピードにより、家族や友人を失くした。妹はゴブリン達に犯され殺された。

 泣き叫んでいたのが、悲鳴が小さくなり、壊れてただ笑うだけになって、殺される光景を見て――彼は興奮した。

 そして、偶然見つけた冥刀を手に入れ、スタンピードを止めた。

 

(他の人生はあったのか……)

 

 自身の人生を思い返したエドリーゲイン。

 

 家族や友達が生きていればどうなっていただろう。

 異常性と獣性を抑えればどうなっていただろう。

 もっと上手くやる手段があったのではないのか。

 

(こんな最後じゃなかったのかもな……)

 

 そして、ヒナタが拳を振りかぶり、溜める。

 絶叫とともに叩きつけたのは――

 

「最後は――全ての人の、恨みぃぃぃぃぃぃ!」

「ゴボッ!?」

 

 エドリーゲインの意識を失わせる一撃だった。

 すると、結界が色褪せていく。どうやら、意識喪失でも解除されるらしい。

 

「ハア、ハア、ハア……」

 

 沢山殴り続けたせいで疲労し、肩で息をするヒナタだった。

 

 そして、オウカの方へ視線を向け、彼のところに近づく。

 もう立つ気力すらなのか、赤ん坊のハイハイのように進む。

 そんな彼女を見て、オウカもどうにか同じように進み、近づく。

 

 少しして二人は触れ合える距離に来た。

 まず声を掛けたのはオウカ。

 

「殺さないのか?」

 

 彼はチラリと生首もどき(肩が少し付いている)に視線を向ける。

 

 実はエドリーゲインはまだ生きている。

 意識を失い、出来る事はほとんどないが。

 

「俺が殺ろうか?」

 

 そういう彼に、ヒナタは首を横に振る。

 

「いい。ウチの復讐はこれでお終い」

「……そうか。凄いな」

「え」

 

 オウカの口から出た言葉に、ヒナタはポカンとする。

 

「俺だったら、もっと苦しめて殺すのに……」

「……」

 

 それにどう形容していいかわからない顔をするヒナタ。

 どうにか言葉を選び、口を開く。

 

「こんな奴のためにこれ以上手を汚す必要はない」

「……ふうん」

「それに出来るだけ生かしておいてくれって言われてたでしょう?」

「……あ」

 

 そういえば、聖霊教の面々が言っていた。

 加護ノ翅は死者からだと引き剝がすのに苦労するから、できることなら生かして置いてくれと二人(一人と一匹)が言っていた。

 

「サク? まさか……」

「忘れてた……」

「……」

 

 忘れていたらしい、オウカに呆れた視線を向けたヒナタ。

 そんな彼女の視線に耐え切れなくなったのか、オウカは話題を変える。

 

「それで? ヒナタ」

「何?」

「気分はどうだ?」

 

 その言葉にヒナタは口を引き結ぶ。

 そして、告げる。

 

「全部終われば、爽快な気分になると思ってた」

「違ったんだな」

「……」

 

 沈黙の肯定。

 それにオウカは静かに語る。

 

「復讐はあくまでマイナスをゼロにするだけだからな。当然だ」

「マイナスをゼロ……」

「でもさ、これでやり直せるだろう」

 

 その言葉にヒナタは何かを考えるような仕草をする。

 そんな彼女にオウカは距離を詰め、

 

「……」

「!」

 

 背中に合わせになるようにする。

 少し驚いたが、拒否はしないヒナタ。

 そうして、背中の温もりを感じながら、二人は何も言わずこうしていた。

 

 そして、暫くして。

 

「サク」

「ん」

「考えたけどさ、何も思いつかない」

「……」

「ずっと復讐の事しか考えていなかったからかな……」

「いいさ、俺も一緒に考えてやる」

「うん」

 

 そして、二人はまた黙り込んだ。

 

 今度はオウカが口を開く。

 

「カスミとアレイナには聞けなかったんだけどさ」

「……」

 

 ヒナタはこの二人の事をよく聞いている。

 というか、彼女の場合、おそらくオウカの異世界道中に一番詳しいかもしれない。

 

「俺は役立ったか?」

「立ったよ」

 

 即答するヒナタ。

 

「いなかったら、ウチは確実に死んでた」

 

 今回の相手の手段や戦い方を見て、より強く思う。 

 

「皆の協力があったから、ウチは復讐出来た」

 

 自分一人では絶対に勝てなかった。

 

「そして、それは全部アナタのおかげ」

 

 今回の面々が集まったのは、全部オウカがいたからだと、ヒナタはそう言う。

 それにオウカは苦笑。

 

「俺はきっかけを作っただけ」

「それでも。ありがと」

「……カモさんにも感謝しとけ」

「いつもしてる」

「行動と言葉で示せ」

「……」

 

 オウカのもっともな言葉にヒナタはバツの悪い顔をする。

 

「うん(。今までの事謝らないと)……」

「そうしろ。生きているうちにしか出来ないからな」

「エスパー!?」

 

 心を読んで言った言葉は、とても実感がとっても籠った言葉である。

 

 そうして雑談をしていると、結界が遂に解除される。

 

「……終わったんだ」

「ああ」

 

 改めて思った二人。

 

(これじゃ暫く碌に動けないな……)

 

 そんな事をオウカは思っていると、

 

「サク」

「うん?」

「地獄の先に、希望はあったよ」

 

 その言葉にオウカは笑う。

 

「それなら良かった。やっとアイツらに合わせる顔が出来た」

「今まで合わせる顔なかったの?」

「……ノーコメントで」

 

 会うには問題ないが、威張って会えるかと言えば疑問である。

 

 そんな中でオウカはふと気になったので訊ねる事にする。

 

「なあ、ヒナ」

「何」

「今のお前は笑えるか?」

 

 その言葉にヒナタはどうにか笑顔を作ろうとする。

 前よりは遥かにマシな表情だが、やはりまだ上手く笑えない。

 

「もうちょっと時間が必要」

「そっか。まあ無理せず頑張れ」

 

 そして、二人共死力を尽くして戦ってたせいか――

 

「少し眠い……」

「俺も」

 

 睡魔が襲い掛かって来た。

 この状況で眠った場合、下手するともう目覚めない可能性がある。

 それでも抗えない。

 

「ちょっと眠る」

「俺も……」

 

 そして、眠気に身をゆだねようとする二人。

 だが、その前に。

 

「次に目覚めたら笑顔で会おうぜ」

「……うん」

「おやすみ」

「おやすみなさい」

 

 そして、二人は眼を閉じた。

 

 

 ******

 

 

 ふと意識が浮上するオウカ。

 

(俺は確か……)

 

 ヒナタの復讐を手伝って果たし、眠くなったので目を閉じた所までは覚えている。

 

(あの時は背中合わせだったのに、今は寝転んでいる)

 

 それより気になる点がある。

 

(寝相でなる可能性があるから、それはどうでもいい。頭の下に柔らかいものがある)

 

 何だろう? 

 眼を開けると、そこに映ったのは逆さの女性の顔。

 

「え」

 

 この状況から膝枕をされているのがわかった。

 だが、驚く事はそこではなかった。

 

「どうしました? 随分と驚いた声ですね」

 

 それは目隠ししている袴姿の女性。

 彼女をオウカは知っている。

 

「か、カスミ?」

「はい。ワタシです」

 

 盲目の剣姫。オウカの異世界の友達の一人。

 

「な、なんで……?」

 

 彼女は死んだはず。そして……

 その言葉にカスミは笑って告げる。

 

「夢ですからこういう事もあります」

「それもそうか」

 

 納得するオウカ。

 ふと気になったので訊ねる。

 

「……俺は死んだんじゃ?」

「いいえ。アナタ()死んでません」

 

 アナタはこの程度では死なないでしょう? と続ける。

 少し含みある言い方が気になる所だが……

 

「アチラは――()()次第ですけど……」

「?」

 

 少し遠くを見るような仕草をするカスミ。

 そして、オウカの方を向き直り笑う。

 

「ああ、こっちの話です。気にしないでもいいです」

 

 カスミの手がオウカを頭を撫でる。

 少し気恥ずかしさを感じながらも、されるがままのオウカ。

 撫でながらカスミは口を開く。

 

「オウカ」

 

 モンセラートが愛称を付ける前なので彼女はこう自分を呼ぶ。

 

「ありがとうございます」

「? 何が」

「ワタシとの約束、覚えていてくれて。そして守ってくれて」

「当たり前だろう」

 

 それにオウカは断言する。

 

「俺は約束は守るんだ」

「ええ、知ってます。よく、とっても」

 

 そして、カスミの手が頭から滑り、頬に到達。そのまま掴み引っ張る

 

ふぁふぃふぉふふ(何をする)ー」

「ウフフ」

 

 オウカの抗議に微笑むカスミ。

 

「自分を大事にしない人への罰です」

ふぉんなふぉふぉふぁいふぉ(そんな事ないぞ)

「眼を見て言えます」

 

 眼隠しているじゃない、とオウカは内心を思う。

 そして、暫く引っ張り満足したのか頬から手を離す。

 

「もう少し話しませんか?」

「いくらでも」

 

 そうして二人は他愛ない話を続ける。

 特に多かったのはオウカの近況。

 オウカは意識がなくなるまで、カスミと語り合った。




【後書】
(・▽・)<ヒナタさんは結局殺しませんでした。

(#ー#)<頭だけじゃ、もう死んだようなもんだろう……。もう末路は確定だし。

(㈩*㈩)<でも。殴っただけだと、何か物足りないような気がする。

(#ー#)<そんな事ないだろう……。

(・▽・)<それについてはご安心を。

(・▽・)<外道に煉獄の苦しみを与えるのは次章でやるので。

(#ー#)<は!?

(㈩*㈩)<……(何の話をやるんだろう)……。
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