(・▽・)<今回のサクの言葉に矛盾があると思った人もいるでしょうが、
(・▽・)<それしか方法がなかったり、敵対したり、裏切ったのなら
(・▽・)<場合によっては、容赦せずに殺します。
(㈩*㈩)<それで後で後悔する。未だにソルの件は後悔しているし。
(#ー#)<……面倒臭い奴だな。
******
そんな日々はまたもや崩れ去った。
マリアが暮らしているところに、政府上層部主導で、国の一部に火が放たれた。
理由は簡単。国の清浄化の一環で、汚い物は燃やそうというトチ狂った理由。
オウカは丁度その時、遠出してこの場にいなかった。だからこそ、マリアは一人で子供達やそこで暮らす人を助けるために駆けずり回った。幸い彼女の体は炎熱にも耐性があった。
だが、全員を救う事は出来なかった。目の前で焼け焦げた子供達を見て彼女は考える。
(どうして? この子たちは何にも悪い事はしていない。なのに、何で幸せになれないの?)
その時、彼女は一人だった。
(どうすれば皆を幸せに出来る?)
だからこそ考えがおかしな方向へ突っ走ってしまった。
「ああ、そうか。この世には救いはない。でもあの世にはきっとある」
思い出したのは、殉教者。彼彼女らは死を恐れなかった。
「だから――
そして、マリアは火事の生き残りを全員殺害した。
かつて殺ったように苦しめて殺す訳ではなく、苦しまないように、一撃で殺して行く。
そうして身近な人を殺し続け、全て殺し終わっても、彼女は止まらない。
その国に生きる人全てを殺しつくした。勿論抵抗したが、冥刀使いなうえ、元からのスペックが凄まじい彼女を止められなかった。
△▲△
暫く経って、用事を済ませ彼は帰って来た。食料を大量に手に入れた。甘いお菓子もある。
「皆元気かな……」
ところが、そこは酷い事になっていた。
焼け焦げた街、死んでいる人々。
「な、何が起こった?」
色々な事があったおかげで、耐性はあるが、流石にこれには取り乱すオウカ。
「だ、誰か居ないかー」
探し回るオウカ。だが、そこに死んだ人しかいない。
そして、気づく。
「何だこの死体?」
まるで力づくで殺し壊したような遺体。そして、マリアの死体が見つからない。
「まさか……マリアが……」
「はい、その通りです」
答える声に振り向くと、そこにはマリアがいた。その姿は血塗れだった。
それにオウカは問いかける。
「何してんだテメェ」
「救ってあげたのです」
「は?」
意味がわからないオウカに答えるマリア。
「この世に救いはなく幸せになれない。だから死んであの世で幸せになるしかないのです」
これがマリアの結論だった。
◇◆◇◆
「……それは本当に私の話なのか?」
そこまで聞いたマリアはオウカに訊ねる。
流石に信じられないらしい。
それにオウカはコクリと頷く。
「ああ、そうだ。お前の話だ」
一拍置いて続ける。
「まあ気にする事はない。あの世界では皆狂ってたから」
そうしてオウカは具体例を挙げる。
とある医者は、生活用水に使われる湖に麻薬をばら撒き、一国の住民全てを薬物中毒者にした。
とある女性は、全男性を去勢しようとした。
とある政治家は、全住民の思考能力を奪って操り人形にした。
「まあこんな感じ」
「……馬鹿しかいないの?」
「黒幕は全てを滅ぼしたかったから」
だからこそ、狂わせていった。
……まあ狂わずに馬鹿をやった人もいるが。どこぞの“拷問姫”や“堕天剣聖”のように。
少し遠い目をするオウカにマリアは問いかける。
「それで続きは?」
「ああ……話す」
そして話が再開される。
「そんでアイツは俺の事すら
「……それで?」
「ま、抵抗した」
「当たり前だな」
オウカは死ぬのは怖くないが、嫌。
この頃はやる事はなかったが、それでも嫌。
だからこそ、激突した。
「そして……まあ苦戦した」
マリアは素の性能が凄まじいうえ、そこを冥刀の補正で身体能力は凄まじい事になっている。それに加え、【レギンナグラル】のチカラのせいで、その拳は防御を貫通する。
「本当に負けるかと思った」
この頃は手札は少なく(普通に比べれば多い)、経験値も少ない。
だが、それでもどうにか食い下がった。
「まあ勝ったけど」
「どうやって?」
「アイツの弱点をついた」
まずマリアの戦闘スタイルは、殴る蹴るの喧嘩殺法。拳の握りと繰り出し以外は素人同然。
そして、攻撃が大振りで、予備動作がわかりやすい。なので、どうにか避けられるうえ、カウンターとして大きな一撃をねじ込める。
更に、防御はタフネス頼りなので、急所攻撃を防げない。
「それでどうにか……ね」
あの時の事を思い出し溜息を吐くオウカ。
それでもマリアは倒れなかった。最後は立ったまま気を失った。
「殺さなかったの?」
その言葉にオウカは何を言っているという顔をする。
そしてこう言う。
「
オウカにとって友達や仲間は大切なのだから。
「気を失った後は、どうにか拘束して介抱した」
普通の拘束――縄や手錠程度――では引き千切られるので、鎖を巻きつけた。因みに、ヴィシュヴァカルマンお手製の鎖で、凄まじい強度なのだが、重量も凄まじい。
「幸いすぐ目覚めたけど、暴れ出そうとしていたな……」
苦笑するオウカだが、あの時は大変だった。
鎖は軋んでおり、今にも襲い掛かってきそうだった。
なので。
『落ち着け!!』
『!?』
頭突きをしておいた。
それにどうにか動きを止める。
そしてそこからは……
「ひたすら言葉を尽くしての説得だった」
もう一度、殺戮をする理由を聞き、そこからはどうしてそれがいけないのかを教授した。根気よく熱心に。
●○
「なぜお前は人を殺そうとする?」
「赤ん坊が生まれてきてすぐ泣く理由がわかりますか?」
「質問に質問で返すな」
「この世が地獄だからです」
「それはまあ、認めなくもない」
「でしょう? だからワタクシは殺すのです」
「じゃあ人は生まれない方が良い事になるぞ?」
「ええ。だからこれから皆殺しにします。老若男女問わずに」
「……」
「そうすればもう人間は生まれなくなります」
「お前は誰かを幸せにするために生まれたんじゃないのか? 本末転倒しているぞ?」
「していませんよ?」
「は?」
「あの世は極楽というじゃないですか。ワタクシのこれは善行です」
「……そんな訳ないだろう」
「ありますよ。この世は地獄です。どうやっても幸せになれませんから」
「……。なあ、お前はさ」
「はい?」
「今まで生きてきてさ」
「はい」
「幸せに感じた時や、嬉しかった時は、一切無かったのか?」
「……それは」
「あるだろう? 否、絶対にある」
「……」
「お前の
「ですが、この世は地獄です。だからこそ苦しみから解放してやりたいのです」
「マリア。いいか」
「……」
「人生は――苦しいし、痛いんだ。だから人は楽な方へ流される」
「ええ。だから死ねば」
「そうじゃない。だから人間は幸せになるために苦しむんだ」
「え?」
「絶望の先に希望はある。だから人は頑張って生きてるんだ」
「……」
「それを幸せじゃないと決めつけて、殺して良い通りはな、ねえんだ!!」
「!」
「気づけ! 馬鹿! お前が幸せにしたかったのはそういう子だろうがぁああああああ!」
△▲△
そうして会話の応酬を繰り広げた二人。
……まあ、会話というよりは意見のぶつけ合い。会話のキャッチボールならぬ、会話のドッジボール。
暫くして。
「……」
マリアは何も言わなくなった。
何かを考えているのか、わからない。……もしかしたらどうにか抜け出せないかと考えているのか。
そうして幾らか時が経った頃。
「サクさん」
声を掛けて来た。
「あん?」
「拘束を解いてくださいませんか?」
それに白い目を向けるオウカ。
「あんな事をしておいて解くと思っている?」
「ええ。だって永遠に拘束しておく気なら、殺した方が早いでしょうから」
「……」
それはそう。
実際オウカは拘束を解く気はあった。
だが、流石に早いと思っていた。
「まだ早い。もう少し反省していろ」
「反省しました。こういうのは量より質でしょう?」
加害者が言うな。
「……」
沈黙していたオウカだったが、溜息を吐いてから、問いただす。
「もうこんな事……しない?」
「はい」
「もう殺さない……は駄目だな。正当防衛しないと……」
この世界は物騒。
不殺主義を貫くのはかなり難しい。
実際、貫こうとした人も失敗している。
理由? 逆恨みでお礼参りしてくるから。
「じゃあ……出来るだけ殺さない?」
「はい。約束します」
「じゃあ……」
一拍置いて問うオウカ。
「お前はこれから何のために生きるの?」
「……」
それに沈黙するマリア。
何かを考えていたようだったが、オウカを見上げ(マリアの背丈はオウカより小柄)、何かを決意した顔になる。
「ワタクシは……」
「? もう一回言って?」
小声で言ったので聞こえなかったオウカ。聞き返すが、それにマリアはいたずらっぽく笑ってこう言う。
「教えません」
「は?」
「ちょっと恥ずかしいので」
「??」
一体何を言ったのだろう。
気になったのだが……
(無理に詮索する必要もないか……)
オウカは人の事情には、余程の事が無ければ深くは詮索しない。
「……ふう。わかったよ。外してやる」
「わーい」
「……」
鎖を外し、拘束を解いた。
するとマリアは体をほぐすように動かしていく。
そして。
「サクさん、いえサク様」
「様!?」
何か呼び方が変わった。
驚くオウカに気にする事なく、マリアは頭を下げた。
「これから宜しくお願いします」
「……はい?」
◇◆◇◆
「そしてアイツは俺の旅路について来るようになった」
「……もう子供の面倒は見なくなったの?」
その問いにオウカは笑っているような、哀しんでいるような顔をする。
そして答える。
「資格がないってさ」
子供達を二度も守れず、最終的に手に掛けた。
そんな自分には子供の面倒を見る資格はない。
「――だってさ」
「……それはそうだろうな」
自分事とは思えないが、そう思った。
「それで?」
「……」
続きを促したマリアだったが、オウカは沈黙。
その顔は沈痛な面持ち。
「……何があった?」
「強敵との戦いでな、アイツ俺に先に行けって言って……」
自分は問題ない、大丈夫だからと。
それを信じて先に向かったのだが……。
「こっちが決着した後、大きな爆発があっちであってな……」
戻ってみると、そこは瓦礫の山。
「どうにか探したんだ。そしたら……」
△▲△
オウカが戻って来ると、そこは辺り一面瓦礫の山。まるで爆撃でもされたかのよう。
「……」
呆然としていたオウカだが、
「ッ!」
すぐに再起動する。
「マリアー! どこだー!」
大声で呼びかけ、友達を探す。
(アイツが、あのフィジカルゴリラのアイツが死ぬわけない!)
失礼である。
そうして駆けずり回っていると。
「!」
見覚えのある物が目に入る。
瓦礫から出ているそれは――人の左腕。袖にも既視感がある。
「マリア!」
駆け寄り掴む。手を握って確信する。
(良かった。アイツがそう簡単に死ぬわけない)
ホッとしてから、行動開始する。
「待ってろ! 今掘り出してやる!」
返事はない。それでも生きてると信じて瓦礫を退けていく。
だが……
「……え」
現実は非情だった。
そこには腕しかなかった。
「あ、あ……」
この時点でわかった。
マリアは、親友は死んだのだと。
「ああああああ!!」
オウカは絶叫し、滂沱の涙を流す。
「あああ、あああ!」
しばらくの間、声を上げて泣き続けた。
◇◆◇◆
「友達が通りがかるまで泣いてた」
苦笑するオウカ。
それにマリアは訊ねる。
「生きてるとは思わなかったの?」
「冥刀との繋がりが消えてたから」
左腕の冥刀が使い手なしの状態になっていたから、死んだと思っていた。
「生きてるなら、掘り出した時点で動いてる」
「怖!?」
冥刀は使い手と契約すると、使い手が死ぬまで仕え続けるのだから。
【後書】
(・▽・)<本当にあの世界は酷かったんです。
(・▽・)<私がジョブチェンジした後、依頼がよく舞い込みましたし。
(#ー#)<もしかして、お前が裁いた奴入っている?
(・▽・)<ええ。去勢女はターゲットでした。
(・▽・)<オウカと戦った奴もいますけど。
(㈩*㈩)<まあ、簡単に言うなら……。
(㈩*㈩)<忍者と戦う極道とか、ソムリエや蛸が裁く外道みたいなのの、
(㈩*㈩)<グレードアップが沢山いる。
(#ー#)<そんな世界嫌すぎる!?