第一話書いて、感想こないだろうとタカをくくっていたら好評で嬉しくて続きを書きました。
今回はクリスと縁がそこそこ深い二人。
尚、スーパーマンの世界については、アニメ版とヤング・スーパーマンの話が混ざっています。
「レックス・コープとしては今回の被害は想定外だったということですね?」
四人の犯罪者をヒーローに任せたクリスはロボット騒動の事情聴取の為にレックス・コープの社長室へ来ていた。
広い社長室のオフィスに、これまた豪華な椅子に腰かけるのはレックス・コープの社長、レックス・ルーサー。
「当然だ。我々は事態について万全の策で挑んでいた」
「不備は会社サイドとしてはないということですね。じゃあ、犯罪者側の技術が上ということですね」
クリスの指摘にレックスは一瞬、ほんの一瞬だけ表情を歪ませる。
社長の椅子から立ち上がると彼は肩に手を回してきた。
「なぁ、クリス。何か俺に問題があるか?証拠がでたか?」
周りを見ながら小さく首を振る。
「いいや、そういう証拠は出ていないよ」
スーパーマン辺りはレックスが犯人だと思っているだろうけれど。
「逃走した犯人はスーパーマンが捕まえたらしいから、尋問はこっちでやるだろうけれど……今日はこれで失礼するよ。もし、何か悪い証拠がでればやってくるからそのつもりで」
「あぁ……その時は、な」
レックスの言葉にクリスは背を向ける。
まぁ、見つからないだろうけれど。
クリスは背を向けて社長室を後にする。
◆
「目ざわりですね」
クリス・ハリガンが部屋を出たタイミングでレックスのボディガードを務めるマーシー・グレイブスが静かに尋ねる。
「やめておけ。アイツはそこらの無能な警察と異なる。不用意に接触して何が切欠でこちらの不正までたどり着かれるなんてこともありえる」
「……ルーサー様はあの刑事をやけに評価しておりますね」
「あんな経歴を見たら誰だってこうなる」
自らの椅子に深く腰掛けながらレックスは目の前の端末を操作して一枚の資料を取り出す。
出された資料をマーシーは受け取り、目を通す。
「これは、本当なのですか?」
「目を疑うだろう?私もそうだった」
戸惑う彼女にレックスは鼻を鳴らす。
「この経歴が奴の強みであり、そして弱点でもある」
「どういうことです?」
「なぁに、いずれわかるさ。奴は決して逃げられない……マーシー、これを手配しろ」
「わかりました」
受け取った資料を一瞥してマーシーは社長室を後にする。
「クリス・ハリガン、お前はスーパーマンと同じくらい邪魔者だ。いずれ消してやる。そう、いずれな」
不敵に笑うレックスの視線は起動したパソコンの画面に向けられていた。
パソコンの画面は髑髏のようなロボット。
そして、先ほど、刑務所の特別区画に収容された“三人の凶悪犯”の姿があった。
◆
「レックス・ルーサーにたどり着けそうか?」
レックス・コープを後にして警察署に戻ろうとしたところで後ろから声をかけられる。
「残念だが、証拠不足だ。逮捕した男が何か話したり証拠を提示したら別だろうが……出さないだろうな」
「そうか」
「気に病まないでくれ。本来なら俺達警察が奴にたどり着けないことが原因だ」
振り返ると胸元にSのマーク、赤いマントを纏った男がいる。
彼の名前はスーパーマン。
悪を赦さない正義の味方。
「それにしても、キミは大丈夫なのか?」
「彼女達の事か?まぁ、なんとかかな」
今回の件、異変を察知したスーパーマン、バットマン、フラッシュが来てくれなかったら本当にまずかった。
「五分五分だな。キミ達がきてくれなかったら仲間割れを狙うか」
「何か、その、私に手伝えることはあるか?」
「本当にヤバイ時に助けてくれるだけで本当に嬉しいよ。“四人”が監獄にいる以上、しばらくは平和を満喫できると思う」
「今日はこれから?」
「署で報告書をかき上げたら帰るよ。休みをとれと上がうるさいからね」
「ヒーローも休息が必要というわけだ」
「それはキミにも当てはまるだろ、クラーク」
俺はスーパーマン、いや、親友のクラーク・ケントに伝える。
「スーパーマンもたまには休んでくれ。警察も奮闘させないと、スーパーマンにおんぶでだっこなんて良くない」
警察は市民を守る義務がある。
だが、メトロポリス警察のほとんどは危ない事件はスーパーマンに任せようと考える連中が多い。
違うだろう、確かにスーパーマンは事件解決に協力してくれるが警察官じゃない。そんな彼に何もかも任せるというのは警察として問題がある。
俺が理想としているのはゴードン本部長とバットマンのような関係……だろうか?
スーパーマンと俺が対等になれるかといわれるとわからないが。
「ふあわぁ、このまま居眠り運転なんてしたらシャレにならないからな。そろそろ帰るとする。キミも表の仕事へ戻れよ」
「わかった。おやすみ!」
「仕事が終わったらだよ。じゃ」
スーパーマンと別れた俺は警察署に戻り報告書をかき上げる。
上司へ提出し、住んでいるアパートへ戻った。
「シャワー浴びて寝よう」
土ぼこりや泥まみれで疲労を訴えている体に鞭打ってシャワーを浴びる。
綺麗になって後はベッドインという所で傍に置いてあるピルケースへ視線を向けた。
ケースをあけて中にあるカプセルの数を確認する。
「そろそろ補充しないといけないけれど、今日は大丈夫だろう」
眠気がまさり、そのままベッドの上に倒れこむ。
この時、薬を飲んでおけば、あんなことにならなかっただろうと後々、後悔するがそれは別の話。
◆
「ジーザス」
目を覚ますと椅子の上に雁字搦めに拘束されていた。
薄暗い空間、おそらく地下室だろう。
天井でゆらゆらと揺れる豆電球がうっすらと室内を照らしている。
奥の方はカーテンで隠れていて様子を伺うことが出来ない。
全身をしっかりと固定されていて、動かせるのは頭のみ。
「あらぁ~、もうお目覚めなのねぇ」
シャーとカーテンがめくられてそこから現れるのは美少女。
赤と黒の派手なシャツ、胸元の部分は破られていわゆる見せブラになっている。
すらりとした手足、綺麗な金髪。
だが、片手につけた鉤爪がすべてを台無しにしている。
「フレディ・クルーガー」
「もう!そんな他人行儀にならないでよぉ、私達は恋人なんだから」
拘束から逃れようと暴れるも上からフレディの手が伸びてやんわりと抑え込まれてしまう。
「どうして、刑務所に」
「うふふ」
鉤爪で俺の頬を撫でながら彼女は話す。
スーパーマン、バットマン、フラッシュに倒された直後、近くで眠っている浮浪者に気付きその夢の中に侵入。
身代わりが刑務所の中にいる。
「今頃、起きてわーわーうるさいかもしれないけれど。いくらスーパーマンでも特殊素材に包まれた刑務所の異変はすぐに察知できない……久方ぶりの二人っきりの時間」
フレディ・クルーガーは死ぬ直前に悪魔と契約。
夢の中に入り込める力を持っている。
悪夢を見せて、その人間を苦しめる。また、人がフレディの事を思い出し、恐怖することで存在を保っていた。
「もう、ずぅっと、貴方の夢に訪れるのと楽しみにしていたのよ?あの変な薬!あんなものが私と貴方の逢瀬を邪魔していたんだから、根こそぎ破棄してやったつもりなのに」
「……狙いはそれか」
俺の問いかけにフレディはにたぁと笑う。
瞳から光を失った状態で顔を近づけてくる。
「そうよ。私の力を強める為、そしてこれ以上、貴方が穢れないように二人っきりの世界へ行くためにアレは邪魔なの。手持ちのアレだけが全部じゃないわよね?さぁ、教えて?あれはどこで製造されているの?そして、誰が作っているの?お姉さん、あまり乱暴な事をしたくないの。ほら、生前は私の教え子だったわけだし、今は警察なんてつまらない仕事をしているけれど、素質がある。人殺しの才能ね~」
「俺は、そんな才能」
「ノンノン、そんな連れない態度とらないでぇ。今はくだらない理性とあのナンシーとかいう小娘が邪魔をしたから失敗したけれど。それはその他大勢が邪魔したから……学習した私は決めたの。二人っきりの世界にいれば誰も邪魔されることがない。そう今度こそ私達だけの世界……あぁん、そう考えてきただけで何か滾ってきちゃう」
妖艶な笑みを浮かべながら爪がガリガリと俺の拘束椅子を削っていく。
恐怖を与えたいのか、自分が愛しているものが手に入った事で周りが見えていないのか。
とにかく、大ピンチだということはわかった。
◆
「クリス、いるかい?」
クラーク・ケントは親友のクリス・ハリガンが住んでいるマンションへ来ていた。
「いないのか?」
別れる直前、一日睡眠すると言っていた。
仕事がない以上、部屋で休んでいる筈。
クラークは目を細める。
彼の持つ特殊な力の一つ、透視能力によって室内の様子が明らかになった。
「これは」
緊急時という事で彼は力を使ってドアノブを破壊。
中へ入る。
「クリス!」
ベッド近く、クリスが倒れていた。
駆け寄るクラークは彼の体を揺らす。
うめき声をあげるだけで起きる様子がない。
何より、彼の体に次々と切り傷ができていく。
「まさか……」
この現象にクラークは心当たりがあった。
ハイスクール時代、クリスと共に旅行中に訪れた街で起こった事件。
あの時の出来事と似ている。
「待っていろ……」
クラークはヒーローとしての姿、スーパーマンとなるとクリスを抱きかかえる。
「すぐにキミを助ける!」
クリスを抱えてスーパーマンは空を飛ぶ。
目的地はセントラル・シティにあるS.T.A.R.ラボ。
世界最速の男がいる場所だ。
次回は最速の男登場。