俺のヴィランは愛が重たい   作:断空我

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前回の続きです。

フレディについてはリメイク版やらいろいろ混ざった感じになっています。




第三話

セントラル・シティ。

そこは犯罪が多発している訳でも、宇宙人が現れたりしない。

この街はメタヒューマンによる犯罪が横行していた。

メタヒューマンとはS.T.A.R.ラボが開発した粒子加速器の爆発によって発生したエネルギーによって特殊な力を宿した人間である。

竜巻を起こす、体を分裂、鋼鉄のボディに変化する。

そういった特殊能力を用いたメタヒューマンによる犯罪の横行。

だが、メトロポリスにスーパーマン、ゴッサムにバットマンがいるようにセントラル・シティにヒーローはいる。

そのヒーローの名はフラッシュ、世界最速の男。

誰もが追い付けないほどの高速で走り、市民を守り、犯罪者を捕縛する。

多発しているメタヒューマン事件もフラッシュによって解決されていた。

 

 

 

彼をサポートする仲間がいる。

S.T.A.R.ラボ。

ハリソン・ウェルズが作った研究所のメンバー達。

そんな彼らのいるラボにある人物が訪れていた。

 

 

 

 

「うわぁ、まじ、スーパーマンだ!本物だよ!」

 

 

 

ラボのフロア。

そこでシスコ・ラモンが興奮した様子で携帯端末を構えている。

 

「シスコ、落ち着いて。キミの頭脳が必要なんだから」

 

興奮しているシスコを落ち着かせるのはこの街のヒーローであるフラッシュ。

今はマスクを脱いでバリー・アレンとしての正体を晒している。

 

「その、ミス・スノー、彼の容態は?」

 

スーパーマンこと、クラーク・ケントは別室でクリス・ハリガンの容態を確認しているケイトリン・スノーへ尋ねる。

 

「脳波等は睡眠と同じよ。でも、これは明らかに異常だわ」

 

「見た感じ、なんか溺れているように見えるけど?」

 

バリーの視線は口からボコボコと水を出して暴れているクリスへ向けられている。

呼吸器を取り付けようとするが口の中から滝のように噴き出す水によってうまくいっていない。

 

「おそらくだが、これはフレディ・クルーガーの仕業だ」

 

「前にクリスから聞いた。人の夢の中に入って殺人をするって?」

 

クラークは頷く。

彼の手の中にはクリスの記録手帳がある。

これは過去にクリスが体験、記録した事件が記載されていた。

ほとんどの内容がジェイソン、レザーフェイス、チャッキー、フレディ・クルーガーの出来事。

 

「これだ。五年前、エルム街でフレディとジェイソンによる殺人事件」

 

「当時は大騒ぎだった奴だ」

 

シスコが端末を操作してメインスクリーンに当時の記事を映し出す。

 

「でも、二人の事は記録されていない」

 

「記録することが危険なんだ」

 

「どういうこと?」

 

「フレディ・クルーガーは夢の中で倒されても切欠があれば復活できる。だが、人々から忘却されることによって夢の中で保てる力を徐々に失い、存在消滅の危機となる」

 

「VS殺人鬼とどうやって繋がるのさ?」

 

「ジェイソンが暴れることによって連鎖反応で自らの存在を思い出させようと企んだんだ」

 

「うわぁ、やり方が恐ろしい」

 

「それで……彼をどうすれば目覚めさせられるの」

 

「ヒントはこれだ」

 

クラークが取り出したのは一個のカプセル。

 

「それは……」

 

「クリスの話によるとフレディが夢に現れなくなる薬らしい。この成分を分析してほしい。なんとか彼を目覚めさせないと」

 

「成分を調べてみる。もしかしたらアレが使えるかもしれない」

 

待っててといってケイトリンは部屋を出ていく。

 

「クラーク、クリスは大丈夫かな?」

 

「彼はタフだ。こんな状況を何度も潜り抜けてきている……きっと、大丈夫だ」

 

クリスの手を握りしめるクラーク。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

「ねぇ~、どこいったの?出て来てよぉ~。乱暴しないからぁ嘘だけど、ねっとりしっぽりしましょうよぉ」

 

夢の中だろう。

拘束から抜け出す事に成功した俺は蒸気が噴き出している工場内を走っていた。

この場所を知っている。

今はない工場。

幼い頃に俺とフレディが最後に遊んだ場所。

当時の記憶を頼りに必死に工場内を走る。

後ろから笑い、壁を爪で削りながらガリガリと近づいてくるフレディ。

一定の距離を保ち、追いかけることを楽しんでいる。

 

「昔を思い出さない?クリスちゃーん?捕まえたらなにしょっか?」

 

「悪いけど、捕まるつもりはない。今も、昔も、な!」

 

背後から迫ってきたフレディの爪をギリギリのところで躱して階下へ繋がる階段を駆け下りていく。

 

「あぁもう!昔よりもすばしっこいじゃない!」

 

――捕まえたら手足をもごう。

 

光のない瞳でこちらをみているフレディ。

絶対、碌でもないことを考えている!

このまま捕まったら絶対に手足をもがれる。

どいつもこいつも危険な思考を持っているからな。

 

「薬を飲んでいたらこんなことに」

 

角を曲がろうとしたところで壁に激突する。

 

「ぐっ!」

 

まともに壁とぶつかった事で視界が揺らぐ。

おかしい、記憶が確かなら。

 

「つっかまーえた」

 

背後から伸びてくる白い手。

駆け出すことも出来ず背後からフレディに抱きしめられた。

 

「うーん、昔と違ってごつごつしているけれど、いとしい人の温もりっていつも幸せねぇ」

 

ぺろりと頬を舐められる。

 

「なんで、ここに壁が」

 

「私の力~」

 

ニコニコと後ろで彼女が笑う。

 

「少し前なら不可能だったけれど、ここの所、急に強くなったのよ。こうして、目の前の空間を歪めるようなこともねぇ」

 

パチンと指を鳴らすと周囲の空間が歪み、先ほどの部屋に戻った。

 

「さぁて、ここでやることは一つ」

 

トンと後ろから突き飛ばされてベッドの上に倒れる。

体を起こそうとしたところで上からフレディがのしかかった。

 

「ここなら誰も邪魔されない。二人っきりの時間よぉ。もう逃がさない。二人で誰もいない私達だけの空間で永遠に」

 

「うっ」

 

「え?」

 

「うげぇえええええええええええええ!」

 

急にこみあげてきた嘔吐感。

止める暇もなく口から吐き出される赤い液体。

それは真っすぐにフレディの顔にかかった。

 

「ぶべぇぁら!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実世界。

 

「うがぁあああああああああああああああああ!?」

 

目を開けると同時に診察台から転がり落ちるクリス。

口周りは真っ赤に染まり、ボタボタと赤い液体が零れる。

血、ではない。

 

「みじゅ、みじゅを」

 

かすれた声で周りへ手を伸ばすクリス。

 

「これを」

 

フラッシュが差し出したマグカップを受け取ると一心不乱に飲む。

あっという間に水がなくなりながらも口内の痛みは抜けない。

 

「ここは」

 

「S.T.A.R.ラボの中だよ。キミはスーパーマンによってここに連れ込まれたんだ」

 

「そうか……助かったよ。でも、あの激痛は」

 

「ケイトリン特性の激辛ドリンクだよ」

 

「あ、そう」

 

激辛ドリンクを飲まされて悪夢の世界から現実世界へ戻された事に喜んでいいのか悲しむべきなのか悩むところだった。

 

「無事に覚醒したみたいでよかった」

 

「ありがとう、フラッシュ」

 

ぺたんと座り込むクリスだったが、すぐ傍で声が聞こえた。

 

「離せ!離せよぉ!あと少し!あと少しで彼を私のものにぃぃぃぃぃ、許さん、許さんぞ。お前達、絶対に、夢の中に出て殺してやる!確実に殺してやるからなぁ!」

 

「暴れるんじゃない」

 

濁り切った瞳に憎悪の炎を灯して周りへ怨念を込めた言葉を吐き出すフレディ・クルーガー。

 

そんな彼女を拘束しているのはスーパーマン。

悪魔と契約して悪夢の中で好き勝手できるフレディも現実世界では多少力のある人間に過ぎない。

超人的なパワーを持つスーパーマンの前では赤子同然。

 

「それで、このヤンデレウーマンはどうするのさ?出来ればメトロポリスの刑務所へ連れて行って欲しいところなんだけど」

 

「……そんな離れた所で言われても困るんだけどな」

 

「だって、ねぇ?」

 

隣のフロア程の距離を開けているシスコとケイトリン。

二人はどうやらあの噂のフレディ・クルーガーを前にして少し恐怖しているらしい。

 

「パイプラインへ閉じ込めるのは?」

 

フラッシュの提案にスーパーマンは首を振る。

 

「あまりメタヒューマンと一緒にすることはお勧めできない。この場合」

 

「……メトロポリス刑務所だな」

 

「うふふふ、私と貴方は運命の赤い糸で結ばれているのよ。ぜったい、ぜぇぇったい、離れられないんだから」

 

全否定したいところだが、一つだけ彼女の言葉は正しい。

 

クリス・ハリガンは彼女達から逃げられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そもそも、何をどうすれば四人の殺人鬼に身も心を狙われるんだ?そういうフェロモンでも出している?」

 

セントラル・シティにあるジッターズ。

事件終了後。

クラーク、バリー、シスコ、ケイトリン、そして仕事で不在だったアイリス・ウエスト、そしてクリス達で集まってコーヒーを味わっていた。

コーヒーを満喫したいところだが、特別製激辛ドリンクを飲んだ影響で味覚がマヒしていた。

話題は当然のことながら今回の出来事について。

スーパーマンとフラッシュの手によって特殊素材の刑務所へ収容されたフレディ・クルーガー、彼女の事についてだ。

 

「もし、そんなフェロモンを出しているなら科学的に除去してもらいたいよ。彼女とは、俺が幼稚園に通っていた時に知り合った縁なんだ」

 

「そんな昔からなの?でも、それならあの人、相当な年齢になっているんじゃ」

 

驚くアイリスにクリスは説明した。

 

幼稚園の時、沢山の子ども殺害される事件が発生する。

大人達は幼稚園の清掃係をしていた彼女を犯人だと決めつけて住んでいる家へ火を放った。

警察が異変を察知するも既に遅く、家は全焼、彼女の遺体はみつかることがない。

その出来事をみていたクリスに死ぬ間際の彼女が告げた。

 

「可愛い可愛い、愛しい子、私は絶対に貴方を大人に、あんな醜い大人になんかさせない。絶対に、私は帰ってくる。二人だけの幸せな時間、素敵な時間を必ず」

 

実際の所、彼女が子供たちを殺害していた犯人で間違いないだろう。

クリスに殺人の技術を教育と称して教え込んでいた上に旦那を邪魔者として始末していた。

だが、証拠はない。

真実はすべて闇の中なのだ。

 

「それがはじまりだったんだろうな」

 

フレディ・クルーガーの出会いと一回目の別れがはじまりだったのだ。

チャッキー、

ジェイソン、

レザー、

彼女達との出会いと別れが今の自分を形成している。

 

「じゃあ、クリスは普通の女性と知り合いたいと思う?」

 

「シスコ、それは」

 

「それをしたら、確実に街の一つが崩壊するよ」

 

止めようとしたクラークだが、クリスは首を振る。

フレディとジェイソンが激突した事で街一つがなくなりかけた事を思い出す。

 

「あれは最悪だったな」

 

クラークもあの場にいたので辟易とした声を出す。

 

「最悪な出来事上位に食い込む出来事だよ」

 

「じゃあ、クリスにとって最悪な出来事一位はなに?」

 

「……多分、グッドガイ人形再販だろうな」

 

クリスが正式に警察官となる前。

ゴッサムで起こった事件。

ダークナイトこと、バットマンと共に解決した笑えない事件の事を思い出す。

けたけた笑う犯罪者と共に殺人を起こしたチャッキーの事を。




感想を貰えて嬉しいです。
沢山、いただけるとやる気になります。

次回について予想出来ている人、沢山いるでしょう。
そう、彼の話です。
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