自分の事が大嫌いな少年と彼の事が大好きな皆 作:いもけんぴ。
道化、鳳瑠マガト
生きる事が辛かった。
別に、親からの虐待だとか、学校で虐められているとかでは決して無い。むしろ、両親は優しく、不自由無く育ててくれたし、学校でも友人に恵まれ、良い学校生活を送れていると思う。
ただ……この世界の異物である俺が、今を生きていて良いのかと思う様になってしまった。
いつだったか。自分の生きている世界が、物語の中の世界だと理解した。そして……元々の世界に、俺は居ないことも分かってしまった。
元々この世界は、俺が居なくても完結していた。なら、俺は異物だ。余分な物だ。それでも、生きてて良い理由が欲しかった。
だから、人を助けようと思った。いつか来る主人公の様に、みんなを助ければ、俺が生きてる事で、救われる命があるって、生きてる価値があるって、そう思いたかったから。
でも、それでも。俺じゃ人は救えなかった。知っていたのに、助けられる筈だったのに、身近な人間一人さえ救えなかった。
俺じゃ人は救えない。俺だったから、助けられなかった。あの人だったら、救えたのに。
そう考えた次の日から、あの人の真似をした。
口調を変えた。なるべく穏和な雰囲気になるように。
見た目を変えた。初対面で怖がられない様に。
思考を変えた。あの人の様に、すぐに人を助けるために動ける様に。
そうして出来たのが、"僕"という存在だ。
最初の内は、人助けに没頭できた。各地を周り、困っている人が居たら出来る限り助けた。良い思い出ばかりでは無いけど、それでも、人を助けている間は、自分が何かになれている様な気がしたから、嬉しかった。あの人になったかの様に、錯覚していた。
でも、途中で気がついてしまった。僕は結局、あの人を真似ているだけ。僕はあの人の紛い物でしかない。いつかあの人が来れば、僕は必要無くなる。
その事に気がついてからは、何にも手がつかなかった。なんだったら、死んでしまおうと思った。だけど……出来なかった。
頭に浮かぶのは、僕が救えなかった人の顔。ああ、誰一人忘れていない。全員覚えている。片方を救うために切り捨ててしまったもう片方、手を伸ばしてくれたのに、僕がそれを掴むことの出来なかった子。
彼らの分まで、僕はもっと人を助けなきゃいけない。
そんな身勝手な思考が、死にたいという感情に従って動く身体を止めさせる。
何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
何度死のうとしても、最後の1歩を踏み出せなかった。毎回、脳裏に僕の事を恨む彼女達の顔が浮かぶ。たとえ僕の幻覚だと分かっていても、それを振り切る事が出来ない。
だから……僕は今日も人を助ける。何もしなかったら、また死にたくなってしまう。せめて、あの人達に恩を返せるまでは生きなければ。
その思いのまま、僕は外へと足を踏み出す。
「あぁ……今日も良い天気だ」
◇
「……私のミスでした」
「私の選択、そしてそれによって招かれた全ての状況」
「結局、この結果に辿り着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて」
「……いまさら図々しいですが、お願いします、先生」
「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません」
「何も思い出せなくても、恐らくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから」
「ですから、大事なのは経験ではなく、選択」
「あなたにしか出来ない選択の数々」
「私では救えなかった彼も、あなたにだったら」
「全てを救える未来、そこに繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです」
「だから先生、どうか……」
◇
「───先生、起きて下さい」
「んー、あとちょっと……」
「はぁ。……先生!」
「うわぁ!」
「少々待っていて下さいと云いましたのに、お疲れだったみたいですね、中々起きない程に熟睡されるとは」
「えーっと、ここは……」
愚か者
それはそうと高評価くれんか?