つよつよシュヴァルのお話 詰め合わせ。   作:秋穂寿

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副題:酒断愛情、油断大敵。

ふたたび「よわよわシュヴァトレvsつよつよシュヴァル概念 二回戦(https://bbs.animanch.com/board/2817446/)」より。「こちら『お酒弱いけど地酒巡りが趣味のシュヴァトレ♀が温泉旅行で旅館の女将おすすめの地酒を満喫したら案の定ベロベロになっちゃって本来は布団別のはずなのにぽかぽか体温のシュヴァルを抱きまくらにして熟睡するトレ♀(記憶なし)と温泉上がりのトレ♀の匂いに包まれてかかってしまい全然寝れなかった分起きたときに「おはようございますトレーナーさん。」と少しとろんとした目で言うシュヴァル(起こさないよう慎重に向かい合うように向きを変えたため少し乱れた浴衣)』というのを受信したのですが詳細はどこかにありますかね…?」とのことで。

2024/02/08 一部表記揺れを修正いたしました。お読みくださった皆様、申し訳ございませんでした。


つよつよシュヴァルと酔っぱらったよわよわトレーナーのお話。

畳が敷かれた部屋の中。向かい合わせで座布団の上に座る二人は、いかにも旅館の膳としたご馳走の乗せられている机を挟んでいる。

「それでは、シュヴァルが無事に3年間を走りきったことに!」

「え、ええっと。じゃあ、トレーナーさんのご指導に……?」

「かんぱーい!」

「か、乾杯!」

片や、今はその名を各所に轟かす『偉大なウマ娘』シュヴァルグラン。片や、彼女の夢を笑うこともなく導き続けたそのトレーナー。

温泉旅館の一室にて、たった二人による乾杯の音頭が響いた。

 

ウマ娘の成り行きを決めると言っても過言ではない最初の3年を文字通り駆け抜けた後の、一息つける貴重な頃合い。

かつての福引きにてシュヴァルグランが引き当てた温泉旅行券の存在をレース漬けの二人は見事に忘れていたが、期限切れ寸前で思い出し、こうして休暇を満喫していた。

「温泉、どうだった?シュヴァル。」

右手に箸、左手にお猪口を持ったトレーナーが担当に問う。一度身体を清めてから夕食に臨む二人の身体は揃いの浴衣に包まれ、湯の暖かさを残していた。

「姉さんたち、旅館よりはホテル派でしたから。初めてでしたけど、気持ちよかったですよ。」

「そっか。うん、肌もつやつやになったみたいだし、良かったよ。」

決して短くはない期間の二人三脚。未だファンに対しては笑顔を向けるのが精いっぱいのシュヴァルグランも、トレーナーに対してだけは素直な胸の内を見せられるようになっていた。

「……トレーナーさんだって、綺麗になってますよ?」

そんな想いすら、口に出してしまうほどに。

「ん?何か言った?」

「いいええ何にもっ!」

幸か不幸か眼前の相手に届かなかったらしい言葉を誤魔化そうと、シュヴァルグランは帽子を目深に被って箸を手に取った。

「そっか、シュヴァルのお姉ちゃんたちはホテル派かぁ。セレブはやっぱりそっちに行くよね。」

「特にヴィブロスは拘りますね、出来るだけ高い階の部屋がいい!とか。」

「うわー、言ってそう!」

和やかに語らいながら、食事を楽しむ。こうしてトレーナーもシュヴァルグランも、すっかり気を抜けるひと時……だったはずなのだが。

「トレーナーさん。ちょっと飲みすぎじゃないですか?」

お互い箸を進めること、一時間。異変は起きた。

「うふふふ。これ美味しいねぇ、シュヴァルも飲んでみる?」

「僕、まだ学生なんですけど……」

煮物に舌鼓を打っていたシュヴァルグランに、自身の持っているお猪口を差し出すトレーナー。指導者以前に大人として失格な姿だが、彼女は呆れ顔の担当バに対し「冗談だよう」とけらけら笑いながら手の物を引っ込め、一息に呷る。酒に弱い酒飲みが、許容量を超えた。この姿は、まさにその典型とも言える。

「っくぅ、最高!こんなにがっつり飲めるの久しぶりだぁ、幸せ~!」

「トレーナーさん、お酒とか飲むんですね。」

知らなかった一面に、シュヴァルグランは少し眼を見開いた。彼女にとってトレーナーとは、常に自身の前を歩き、トレーニング方針を、出るレースを示してくれた者。……密かな想いを抱いてしまうほど、誰より近くにいてくれて、3年間を一蓮托生で乗り切ったその相手は、

「は~いいねぇ!お酒ばんざ~い!」

今や目の前で見る影もないことになっていた。

「私、実は地酒とか大好きでさー。さすがに飲みには行けなかったけど、見つけたら通販頼んだり。」

シュヴァルグランに押し付けられたグラスの水を三杯ほど飲んで正気と日本語を取り戻したトレーナーは、箸を振りながらどうにか目の前で心配を隠さなくなった担当バに向き直る。

「じざけ、ってなんですか?」

「あー、知らないかぁ。まあ無理ないよね、まだ学生だもんねぇ。」

さっきその学生に酒を勧めたのは誰だ、と言いたげなシュヴァルグランの視線に気付いたか定かではないが、トレーナーはお猪口を置いて徳利を手に取り、注ごうとしてから静かに眼を伏せた。

「あ、なくなった。むねん……。」

「お水ならありますからね、こっち飲んでください。」

そしてまた水を受け取り、飲んでからかくりと首を傾げる。

「ごめんね~、こんなだらしないとこ見せてさぁ。ちょっと気が抜けちゃったかなぁ?」

グラスを手の中で玩び、ふらふらと赤い顔を揺らすその様子は確かにだらしない。実際、シュヴァルグランにとっても、ここまで崩れたトレーナーの姿を見るのは初である。

「お酒が好きだって言ってましたけど、お休みの日もこんなになるまで飲んでたんですか?」

もしそうなら、流石に気にせざるを得ない。なんならそこらの名目で休日も一緒に、などと帽子の下で考えはじめた彼女であったが、返されたのは予想と真逆の言葉だった。

「ん?ううん、全然。シュヴァルと契約してからはほとんど飲んでないよ。」

空のグラスを持ちながら、首を振るトレーナー。

「な、なんで?」

「そりゃもちろん、お酒よりシュヴァルの方が大事だし。」

突如真顔に戻ったトレーナーに、シュヴァルグランは思わず息を止めた。

「確かに、お休みの日に飲んでもよかったけどさ。でも酔ってたら、急にシュヴァルから連絡があったりした時に動けないかもしれない。私はお酒より、あなたが怪我も病気もせずに走って夢を叶える、その未来がなにより欲しかったから。」

「っ……。」

真剣で、それでいて何より優しい眼差しを真正面から受け止め、言葉を出せなくなるシュヴァルグラン。俗な目論見もすっかり弾き飛ばされ、その頬が段々と朱色になっていく。

「そうやって、僕の気も知らないでそんなこと……」

「失礼いたしますお客様。」

シュヴァルグランが何かを口にしようとしたその時、すい、と靴脱ぎ場と部屋を仕切る障子が開く。そこには、旅館の女将が新しい徳利を横に置いて正座していた。

「お客様、見ていて実に気持ちのいい飲みっぷりで。提供させていただいたこちらとしても嬉しく思います。」

「光栄です~。こんなに美味しいお酒が飲めて、私も嬉しく思いますよぉ~。」

「えっと、僕のトレーナーがご迷惑をおかけしてますっ……。」

ぱたぱたと両手で顔を冷やしてから立ち上がり、頭を下げるシュヴァル。しかし、女将はそれに対して笑顔で続けた。

「ここまで喜んでいただければ、料理人もさぞ誇りに思うことでしょう。こちらお酒のおかわりです、失礼ながら地酒がお好みだと聞こえましたので、この辺りで特産のものをお持ちしましたが。」

「ぜひ!ぜひ飲ませていただきますっ!」

「もう、トレーナーさん!すいません、またお水もいただけますか?」

「あははぁ~シュヴァく~ん、大好きだよぉ~?」

「トレーナーさん飲みすぎですよ、抱きつかないでお水飲んでくださいっ!」

突如シュヴァルグランに抱きつくトレーナーと、人前が故に拒む姿勢をとった二人を前にしても動じず、笑顔のままでいた女将が去った後、シュヴァルグランの差し出したグラスを受け取り、一息に中身を飲み干すトレーナー。音を立てて卓に置くと、そのまま自らも突っ伏した。

「あたしだってさぁ、言いたいよ?ファンの人みたいにシュヴァくんかわいいよーって、大好きだよーって、でも言えないじゃんトレーナーだし!教える立場だし!いいなぁいいなぁ、あたしがシュヴァくんのファン第一号なのにぃ!」

突如豹変したトレーナーの様子に、シュヴァルの耳がぴんと立ち上がる。何かがおかしい。

「トレーナーさん⁉」

「くそう、シュヴァくんの良さはあたしが一番よく知ってるのにさ!普段はおどおどしてるけどトレーニングは真剣にやるしレースの時はキリっとしてるしライブは超絶キュートだし!全部知ってるのはあたしだけなんだぞー!『あたしだけにチュウする』のとこ、投げキッスもらったことあるやついる?いねぇよなぁ、あたしはもらったけど!リハーサルで!」

「あ、あれは練習で他に誰もいなかったからです!」

「あれ最高だったよー、もう胸がキュンキュンしちゃって!もう一回やってよシュヴァくん!お願いこの通り!」

「やめてください、ああもう頭上げてくださいよぉ……!」

突然の褒め殺しに、シュヴァルグランの尻尾がへにゃりと下がった。一度も酒を口にしていなくとも容易に分かった、彼女のトレーナーは現在ものの見事に悪酔い中である。それも、笑い上戸や泣き上戸ではなく「褒め上戸」。他の相手ならともかく、未だ自信を持つことも覚束ないシュヴァルグランにとっては相手が悪すぎる。

「トレーナーさんは一回横になった方がいいですよ。掴まってください、布団まで一緒に行きましょう。」

シュヴァルグランは努めて事務的にそう告げ、肩を貸そうとした。

「えー、まだ飲めるよぉ?」

「飲める飲めないじゃなくて、もう飲み方が無茶なんです。お姉ちゃんが今のトレーナーさんを見たりしたら、きっと怒りますよ。」

箸と盃を置かせ、トレーナーの脇に腕を通して持ち上げる。ウマ娘の膂力はあっさりと成人女性を持ち上げ、布団へと運んで行った。

「お姉ちゃんかぁ。いいよねぇ、ヴィルシーナちゃんはさ。こんなかわいくてかっこいい子が妹でさ?お姉ちゃんって呼んでくれてさ?ねえシュヴァくん、あたしもお姉ちゃんみたいじゃない?だよねぇセレブじゃないからねーあたし。トレセンそんなに給料出るわけじゃないからなぁ。」

「僕、まだ何も言ってませんけど……。」

言ったとしても、トレーナーが思うような答えは出さなかったですよ、との言葉は口の中で転がすだけに留めたシュヴァルグラン。

背中に当てられる脱力したトレーナーの身体は、背負う彼女の理性を揺さぶっていた。無心、無心と唱えながら敷かれた布団までたどりつき、トレーナーを下ろそうとしたところでシュヴァルグランの尻尾がぴくりと動く。敷かれた二枚の布団、しかしその距離が不自然に近かった。

「無心無心無心……」

足で片方の布団を動かしてから、片膝をついてトレーナーを下ろす。そっとその身体を布団に横たえ、これでよし、と頷いたその瞬間である。

「えいっ。」

トレーナーの片腕が酔っ払いとは思えないような速度で動き、ばしりと音を立てて歩き去ろうとしていたシュヴァルグランの足を払い飛ばす。見事な足払いが炸裂し、バランスを失ったシュヴァルグランを同じ布団の上に転がした。

「ぅ、わっ!何するんですか!」

「んぅ~、一人より二人で寝た方が気持ちいいよぉ?」

突然の事に戸惑って動けないシュヴァルグランに、トレーナーはのしかかる。両腕を担当バの腰に回し、あっという間に抱きついた。そのまま、シュヴァルグランの胸にぐりぐりと顔をすりつける。

「シュヴァくんぽかぽかするね~、温泉気持ちよかった?」

ウマ娘の体温は、人のそれより高い。ましてや温泉に入った後なら、酔っ払いにとっては格好の湯たんぽになる。

「ん~贅沢!あの偉大なウマ娘、シュヴァくんに握手どころか抱きつけるのはあたしだけ!ファンの諸君、羨ましいか?羨ましいでしょ?職権乱用だけどな!ごめん問題発言!」

「や、やめてくださいトレーナーさん!」

我慢ができなくなるから。しかし、シュヴァルグランがそう唱えようとしたところで、古今東西話の通じる酔っ払いが存在した試しは無い。

「う~ん、照れてるシュヴァくんも最高!」

「だからやめてくださいよぉ!」

今度は手を頭に伸ばし、帽子の上からはでも構わずわしゃわしゃとかき回す。指が耳に当たる度、シュヴァルグランの身体がびくりと震えた。

「ひゃっ、だからやめてぇ……!」

何度も何度も触れられ続けた耳が反応し、次に耳を触られたら思い切り襲ってしまおうか、とシュヴァルグランがある種の覚悟を固めたその瞬間。

「はぁ~あ満足満足。お酒美味しい担当かわいい愛バはここにいまし世は全て事も無し!ばんざいばんざーい!」

突如叫び声をあげ、シュヴァルグランに背を向けるごとく寝返りを打ち、動かなくなった。

「……トレーナー、さん?」

余りにも唐突な終焉。

その身勝手な行いは、シュヴァルグランの我慢を解き放つ最後の一手としては充分すぎた。好き放題に自分を弄び、一方的に理性を保たせて、最後はコレか。

「そんな事ばっかりしてると、僕だってっ、やりたいようにやっちゃいますからね……!」

一世一代の勇気を振り絞ったか、シュヴァルグランが動く。掛布団から抜け出し、トレーナーの顔に急接近。その顎に手を添え、たところで。

「んぐぅ~……」

少々品性に欠けたいびきが、部屋中に響き渡った。意識していたか無意識であったか、担当バを煽りに煽っていたトレーナーは、既に夢の中へと旅立っていたようだ。

シュヴァルグランは、胸中でブツリと何かが切れた感触を味わう。その眼が、すっと据わった。

「……僕だって、ただおとなしいだけじゃないですからね。」

音を立てぬよう帽子を脱ぎ、枕元に置く。そして、トレーナーと同じ布団に潜りこんだ。

夜が明けるまで、女将が二人の部屋にある膳を下げに来ることはなかった。

 

月が沈み、空が明るくなり始めたころ。障子から差し込む日差しが、畳上に敷かれた布団に重なった。そこに転がっていた者の顔を、白く照らす。

「いったぁ……ここまで飲んだのいつ以来だっけ?うわ気持ち悪……」

頭を抑えたトレーナーが、そう呻きながら布団から身は起こさずに眼を開けた。どうも昨日の夜に大酒を飲んだのは覚えているが、そこから先がきれいに消えている。確かシュヴァルと乾杯して、料理を味わって、地酒に舌鼓を打って。それから、どうした?

「布団に入ってるんだから、自分で歩いたかな?担当ほっといて?うーわ、やらかしたか……」

しかし、起きたことは仕方がないと自分の中で割り切る。割り切るしかない。レースにもレース以外にも、やり直しはきかないのだ。

後でシュヴァルに謝らないきゃなぁ、と呟いたところで、彼女の脳裏にもうひとつ懸念事項が現れる。即ち、担当バはどこへ行ったか?横になったまま、視線を部屋に巡らせるトレーナー。向かい側に敷かれたもう一枚の布団は、皺ひとつなく綺麗なままだ。もっとも、シュヴァルなら起きて布団を整えた可能性も充分にある。鞄は昨日の位置から動いておらず、鍵も卓の上にある、ならば室内か、いても旅館の中だろう。一人で朝風呂にでも行ったかな、と暫定の結論を出した彼女は、何の気なしに寝がえりをうち……最も欲しくなかった解答を得た。

いた。担当バが。あろうことか、目の前に。自分と同じ布団の中で、くぅくぅと小さな寝息を立てている。大声で叫びかけ、慌てて口を抑えたトレーナー。瞬間、彼女の脳裏を数多の思考が飛び回った。誤ったか。誤ってないと思う。自分にそんな気があったか。否定はしない。そちらの趣味があったか。……無かったはずだが。でも相手が相手だよ。だからまずいんだよ。多様性が叫ばれるこの時代、女同士でも問題は無いのでは。それ以前に指導者と教え子なのでアウト。うん知ってた。やばい詰んだか。

「ん……おはようございます、トレーナーさん。」

色々な感情のこもった視線を向けられ続けたせいか、シュヴァルグランも布団の中で目を覚ます。しかし、次なる問題なのはその姿。裾が乱れ、前が開きかけた浴衣。ほどけそうな帯と、何より少し赤みがかった顔は、トレーナーの酔いを醒ますには余りにも充分すぎた。

「……ねぇシュヴァル。昨日、何があったか覚えてる?」

恐る恐るを飛び越し、もはや怯えているような顔で質問をしてくるトレーナーに対し、シュヴァルグランはその内を巡る思考を読み取ったらしい。何も答えず、枕元に置いていた帽子を被ると。

「トレーナーさん、昨日は好き放題してくれましたよね。」

「ええっ⁉」

「何回『やめてください』って言っても、全然手を緩めてくれないし……」

「待って、ねえ待ってシュヴァル?」

大いにたじろぐトレーナーを尻目に、起き上がって使わなかった方の布団を畳み始める。

「あーあ、僕もうお嫁にいけないかもしれません。」

「嘘でしょねえ、私何した?昨日何やった?教えてシュヴァル、お願い!全部正直に言っていいから!謝るよ、私に出来ることならなんでもする!」

畳んだ一式を軽々と押し入れに入れ、部屋から出ようとしたシュヴァルグランに追いすがろうとしたトレーナーが、頭を抑えてうずくまった。

「あぐ、二日酔い……。」

そのまま動けず、布団に転がったままのトレーナーを逃すことは無く。彼女の上に覆いかぶさり、眼と眼を真正面から合わせるシュヴァルグラン。互いの瞳に、相手の顔が映る距離。

「なんでもするんですか、トレーナーさん。」

「で、できる限り、なら……」

昨夜はずいぶんと焦らされ、惑わされ、振り回された。酒に酔った故の行いだと言うのなら。

場に、雰囲気に酔った、という言い訳は許されるだろうか?

トレーナーを見下ろすシュヴァルグランが見せたのは、飛び切りの笑顔であった。レースやライブでファンに見せるようなものではなく、どこか影があり、蠱惑的でもあるような。

「責任。取ってくれますか?」

 

二人が宿を発ったのは、退室時刻をわずかに過ぎた頃であった。

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