レースを走り終えた子たちが集まる席へ行く。
(ラブの走り………どんなのだろ)
私みたいに逃げ?それとも先行?差し?追込?
きっと、どんな脚でも良い走りだろうな。
「___ねえねえ、キミの走りすごかったね!」
席に着いた瞬間、誰かから声をかけられた。
それは、隣に座っていた(私よりは大きいけど)小柄なウマ娘。
「はあ、どうも………?」
「ウチも同じ逃げなのにさー!全然最後の脚とか違ったもんね!ねえねえどうやってあんな風に走ったの?」
………ラブとはまた違う方向性で距離感近いな。
「………別に、私はラブが教えてくれた通りに走っただけだよ」
そう言って、ゲートに入っていくラブを指さす。私と同じ9人だてで行われるレース、5番ゲート。たしか、ラブはぶっちぎりの1番人気だった。
「ラブ?………ああ、ラブペインターちゃんか!あの子すっごいよねー!」
「………ラブの走りを知ってるの?」
「知ってるも何もウチ一回走ったことあるもん!」
「えっ!?」
まさかの事実が判明した。
「………あ、と言っても小学生の頃だよー?地域の大会でたまたま一緒に走ったの!」
『___5バ身ほどのリードを保っています3番!前半の1000m通過タイムは59.1!』
___話している間に、いつの間にかレースは始まっていた。
(ラブは………最後尾だ)
少し縦長に並んだ列の1番後ろにラブはいた。
おそらく、差しか追込か。
「でねでね、ラブペインターちゃんの脚ってすごいんだよ!」
ラブが、大外を捲っていく。
『ここで1番人気のラブペインターが上がってきた!!』
「ウチたちがどんなに前を走っていてもね、」
残り600m、最高速度のままで走っていく。
『一気に上がって先頭に立ったー!!』
「外から一気に追い抜いていっちゃうんだよ」
後続には目もくれず、圧倒的な速さで、そのまま駆け抜けていった。
『ラブペインターゴールイン!!圧倒的な強さを見せつけました!!さきほどのユウシンサクラと同じく大差勝ちです!!2着は___』
その差は圧倒的だった。
「………すご」
「でしょでしょー!ラブペインターちゃん本当に速い!」
彼女が言ったように、ラブは外側から一気に他のウマ娘たち全てを追い抜いていった。まるで、積んでいるエンジンが違うみたいに、大人と子どもみたいに、目に見えて速さが違った。
「やっぱりラブペインターって子は凄いですね!」
「両親ともにレース界で活躍しているからな」
「しかもお母さんの方は三冠ウマ娘!そりゃあ子どもも才能ありますよ!」
観客たちは、さも知っていたかのように言う。それだけ、ラブは期待されていたということか。
それは、羨ましくもあり、少し窮屈そうにも思えた。
…………………………
「___見てた〜?サクラ」
レースが終わってすぐ、ラブは私の元へ駆け寄ってきた。
「うん、凄い脚だった」
「当然〜だってアタシだもん」
「………それは理由になってるの?」
さっきまでとんでもないレースをしていたウマ娘と同一人物には思えないくらいゆるゆるとしていて、話していて変な感じ。
「………ん?キミは…」
何かに気づいた様子のラブ。視線の先にいたのは、さっきのウマ娘だった。
「あ〜………たしか『ファーストカケル』だっけ?」
「………えっっっ!?なんでウチの名前知ってるのー!?」
「だって昔同じレース走らなかったっけ?結構最後まで粘ってたからよく覚えてるんだけど」
………記憶力良すぎない?
彼女の反応から、おそらくこのウマ娘の名前は『ファーストカケル』で合ってるんだろう。
「アタシは、良い走りをしたウマ娘は忘れないからね」
「!!」
そうラブが言うと、ファーストカケルは一気に目を輝かせる。
「………ちょー嬉しい!!今日は良い走り見せられなかったけど、次は見せてやるから!!ラブペインターちゃんも、ユウシンサクラちゃんもウチのこと忘れないでねー!!」
そう言って、彼女はこのスペースから出ていった。
…………………………
「………よく覚えてたね」
「………ん?サクラもあの子のこと知ってたの?」
「さっき、ちょっとだけ話したから」
「ふ〜ん………まあ、レースってデータが大事だからさ。『この子スゴイ!!』って思った子は覚えておかなきゃだからね〜」
「そ・れ・よ・り」と若干おどけながら、ラブはスペースの外を指さした。
「未来のトレーナーたちがサクラとアタシを待ってるよ」
外では、大勢のトレーナーたちが今か今かと私たちを待っていた。
「………すご」
「それだけ、アタシたちの走りがスゴかったってこと!」
そう言って、ラブは私の手を引く。
外に出た瞬間、私たちは一斉に囲まれてしまった。
「ユウシンサクラ、僕と契約を交わしてくれ!」
「いや、俺と!」
「いいや、私と!」
「ラブペインターさん!自分と契約してくれませんか!?」
「あ、おい!抜け駆けしてんじゃねえぞ!」
ギュウギュウとおしくらまんじゅう状態になりながらトレーナーたちが声を掛けてくる。
(………流石に人多すぎ!)
あまりの人の多さに思わず辟易しそうになる。
ついついラブに助けを求めようと振り返ってみたけど、人混みに流されて思ったよりずっと遠くの方にいた。
(うわっ、しかも良い感じに躱してる!)
これだけの数の人全てに丁寧に対応するのはかなり難しい。だが、悪い印象は与えないようにしつつも、ラブはにこやかに人混みを避け少しずつ進んでいる。
(………せめて、誰か良さそうなトレーナーがいれば___)
そう思った瞬間、
「______うわああああっっっっっ!!??」
「………えっ?」
ズザザザザザアアアアアッッッッ!!!!
大きな音を立てて、何か___いや、誰かが目の前に倒れ込んだ。
(………何???)
顔面から転んだ(?)かのように思われた女性。
しばらくの間(と言っても数秒ほど)沈黙が続く。
そして、鼻血塗れの顔を上げて言った。
「___わ、私と契約してくだしゃいっ!!!!」
「はっ、はい!?」