【完結】何度やっても君が死ぬ   作:ほほほのほ

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平和会。ゲロ注意。


2.GO!高専GO!

 呪霊操術。

 降伏させた呪霊(自分よりも2階級下の呪霊なら無条件)を使役することが出来る術式だ。

 ただし、そのためには呪霊玉を体内に取り込む必要がある。

 夏油曰く、吐瀉物を処理した雑巾とのこと。

 

 私は術式を知覚してすぐに、その辺の呪霊を呪力でボコって降伏させた。項垂れる呪霊を泥団子のように丸める。こねこね......これが意外と楽しいのだ。

 掌に乗った呪霊玉は何処か神秘的な光を放っている気がする。それを掴み、大口を開けて一口で呑み込んだ。

 

「う゛ォえ゛ぇぇッ!!」

 

 苦味、酸味、渋味、エグ味......全てが一斉に私の味蕾を襲う。なんか最早これは単純に不味いとかそういう問題じゃない気がする。私の魂が、これを拒絶しているのだ!

 胃が痙攣し、一気に胃液と内容物が逆流してきて、私の口から漏れる。吐瀉物が着ていた服の裾を汚した。

 口に広がる吐瀉物の風味でまた気持ち悪くなって、何度も嘔吐した。苦しくなって、膝を着く。膝まである靴下が出したばかりの暖かい液体を吸って、気持ち悪い。

 

 出すものを全部出しきって、顔をハンカチで拭う。涙と汗と鼻水でもう汚いこと汚いこと。

 夏油......お前、凄いよ。私、ここまで不味いとは思ってなかった。

 まだ見ぬ戦友に敬意を表しつつ、着替えるために急いで家へと帰った。親にはめちゃくちゃ心配されたけど頑張って誤魔化した。

 

 呪霊玉の味についてはまあ......後回しでいい。

 夏油も今頃このクソ不味さに苦しんでいるだろう。同じような苦労をしてきたという事実がきっと私と夏油の仲を強めてくれるはずだ。

 

 それよりも問題なのは──星漿体の方だ。

 前回、私はポイントで培われた超人的な身体能力でパパ黒、もとい禪院甚爾を何とか撃退した。

 ......嘘です。実際は五条が反転で復活するまで夏油と協力して必死に持ち堪えただけでした。

 

 今回の私はそれよりも遥かに弱い。このままでは最初の弾丸は防げても夏油と一緒に切られて終わりだ。また理子ちゃんの死体五体フルセットと猿の拍手で夏油が病む。

 

 ......夏油と私は呪霊操術持ちな以上殺されないし、どちらかが足止めをしてもう片方が虹龍のように空へ移動できる呪霊で逃げるのがいいかな? あの人自由に空飛んだりできないよね。出来たら人間やめてるよね。

 まあ対処するためにも、とにかく呪霊を取り込まないといけない。

 地道なゲロ雑巾が夏油を救う。今日も頑張って取り込んでいこう。

 

 あれから数年が経ち、すっかり入学シーズン。

 暖かい陽が差し、桜が咲き乱れ、憧れの新生活にどこか世間は浮かれた気分だ。

 そう、私は高校生になった。

 

 ──おかしい!

 

 いつもならば中学の卒業前には高専からのスカウトが来るはずなのに、何故か今回は来なかった。もう一般の高校に入ってしまったじゃないか。

 このままではただの一般人だ。何が悪かった? 目についた呪霊は全部取り込んだのに。

 

 ......まさか、私が取り込みすぎたせいでこの辺に呪術師が派遣されることがなくなったのか?

 仕方ない、不本意だけど呪霊を傍で遊ばせながら過ごそう。時々遠出もすれば見つかる確率は上がるはずだ。

 比較的かわいい呪霊を出しておこう。猫の頭部を模した呪霊を頭の上ら辺に飛ばせとけ。

 はやく、私を見つけてくれ。高専。

 

 

「あの、少しよろしいですか?」

 

 高校入学から2ヶ月ほど立ったある日。私はいつも通り猫呪霊をヘッドドリブルしながら散歩をしていると、スーツを着た男性に声をかけられた。

 

 ──やっと来た!

 

 内心歓喜していることを必死に隠しながら毅然とした態度で対応する。

 当然高専にスカウトされた。二つ返事で了承する。もうこんな所で時間掛けてらんないからね。

 あれよあれよという間に今の高校から高専へと転校する処理が終わった。両親は私が説得した。今まで私があんまり何にも興味を示してなかったから熱意を持って話せば案外あっさり納得してくれた。

 

 春が終わり、少しずつ日差しが強くなりつつある頃に高専の小さな教室の机が1つ増える。

 何百回も繰り返した『初めまして』だ。私は緊張することも無く自己紹介を終え、頭を軽く下げた。

 硝子はあまり関心がなさそう。五条は意外と興味ありそうな感じだな。これは予想外。

 そして夏油は当然、こちらをめちゃくちゃ見つめている。同じ一般家庭出身、同じ術式。当然興味津々だろう。

 

─────

 数ヶ月入学が遅れてどうなることかと思ったが、案外私は馴染んでいた。

 

「夏油、夏油。持ってる呪霊の見せ合いっこしようよ」

「ええ...まあいいけど」

 

 ツンツンと夏油のお団子をつつく。五条も硝子も気になるみたいで俺も私もと集まってきた。

 

「じゃーん。私の持ってる中で1番かわいい猫ちゃん呪霊」

「どうみても化け猫だろ。趣味悪ぃなコイツ」

 

 ずっと引き連れてた影響もあってなんだかんだ可愛く見えてきた猫頭の呪霊を出す。五条はこの可愛さが分からないらしい。まだまだ子どもだな。

 

「悟、時に事実は人を傷つけるんだよ」

 

 夏油、こいつもまだ青い。いや硝子なら...硝子なら分かってくれるはずだ。

 

「刹那、流石にかわいくはないと思う」

 

 なぜ誰もコイツの可愛さが分からないんだ......首の断面に蛆が湧いてなんかの神経がはみ出てるし、目が血走っているけどそんなの許容範囲だろうに。

 

「私はそうだな...虹龍はどうだい? かっこいいだろう」

「カッケー!」

「私も空飛べるやつなら持ってるし! 告死鳥!」

「やっぱコイツ趣味悪ぃー!!」

 

 夏油はうっすらと虹色に光り輝く白い龍を出す。神々しさすら感じさせるその姿は正直言うまでもなくカッコイイ。

 対抗して私も告死鳥を出す。巨大化した小夜啼鳥をベースに女の上半身を持ち、口から呪詛を放つ呪霊だ。カッコイイぞ! 五条からは相変わらず不評だが。

 

「……ねえ、これって夜蛾先生に申告してる?」

 

 私らがギャイギャイ騒いでいるのをにやにやしながら見ていた硝子が、ふと思い出したかのように言った。

 

「……あ」

 

 私と夏油の声が重なった。

 そして、高専中にアラートが響き渡る。未登録の呪力を感知したときのアレだ。

 

「お前ら! 何をしている!」

 

 当然すぐに夜蛾先生が走ってきて、私と夏油の頭に拳骨を振りかざした。すごく痛い。

 五条はめちゃくちゃ指さして笑ってくるし。こいつも面白がってたのに許せねえ。

 

──────

 私たちが桃鉄99年やら大富豪大会やら遊びまくっているうちにあっという間に時間が経ち、2年生になった。

 新入生の七海と灰原は一般出ということもあって呪術師界隈には慣れていないらしく、まだまだ初々しい。

 

「七海、灰原。初任務はどうだった?」

「えーっと……緊張しました!」

「案外あっさりでしたね」

 

 私は2人の初任務に付き添った。呪霊操術はサポートがしやすくていいね。

 灰原は緊張した、なんて言っているが、いの一番に飛び出して呪霊を祓除しに行ったのは彼だ。七海はそれにめちゃくちゃ目を丸くしていた。

 七海は落ち着きがあって良い。冷静で周囲の警戒も怠らないし、2人の相性は良いだろう。

 初めての任務お疲れ様、というわけで個室焼肉に行った。ちなみに私の奢りだ。1級術師の収入を舐めるなよ。

 

「先輩はどうして呪術師に?」

「私も非術師家系だからね。高専からのスカウト。君らとそう変わんないよ」

「そうではなく……動機の方です」

「あー……」

 

 七海から聞かれて少し口篭る。私が態々このクソみたいな世界に飛び込んだのは間違いなく神の悪戯……と、夏油のせいだ。いや、夏油は何も非がないのだけれど。

 そういえばずっと夏油のことばかり考えていたけれど、たまには普通に生きてみてもいいのかもしれないな。

 まあ、この周回で終わりそうだからもうそんなことを考えるのはやめよう。

 

 ずっと黙っていたからか七海が少し気まずそうにこちらを見ている。地雷を踏んだのではないか、と思っているんだろうか。

 安心させるように私は笑顔を貼り付けた。

 

「別にやりたいこともなかったからね。強いて言えば……神の啓示ってやつじゃない?」

「……驚きました。虛枝さんもそんな冗談言うんですね」

「七海! 先輩はいつでも面白いだろう! この間も格ゲーで五条さんに負けて、悔しさのあまりブレイクダンスをしてたじゃないか!」

「灰原、お願い。その話はやめて……」

 

 ゲームは苦手だ。毎回ぼろ負けする。その度に五条が煽ってきて死ぬほどムカつくんだけど、無下限呪術を破る術がない私は泣き寝入りだ。

 ……対策を考えていない訳ではないんだけどね。負け惜しみじゃないよ。本当に。

 

──────

 さて、歌姫先輩と冥さんからの連絡が途絶えたということで、私たちはその現場へと向かっている。車に5人は少し手狭だ。そのうち2人が無駄にデカイから尚更。

 補助監督は急いでくれているけども、せっかちな五条はイラついてきたらしい。

 

「もうコイツ置いてさっさと行っちまおうぜ」

「本気か? 悟」

「当たり前」

 

 補助監督が帳云々の話をしているのに『俺が降ろすから』なんて言って車を飛び出しやがった。そしてそれについて行く夏油。

 

「どうする? 硝子」

「んー……あのクズ共はどうでもいいけど、早く歌姫センパイに会いたいかも。心配」

「じゃ、飛びますか」

 

 随分と広くなった車から私達も飛び出した。

 告死鳥を呼び出して、そのフワフワの羽毛に包まれる。硝子と手を繋いで一緒に目的地まで飛んだ。

 

「あーあ」

 

 私らが現場に着いた頃にはもう既に五条が術式を使ったらしく、瓦礫が散乱していた。酷い有様だ。

 でも歌姫先輩と冥さんは無事のようだ。硝子も嬉しそう。

 

「歌姫センパ〜イ、無事ですか〜?」

「生きてて良かったです」

「硝子!! 刹那!!」

「心配したんですよ、2日も連絡なかったから」

 

 硝子が手を降れば、歌姫先輩は階段を駆け上がって来て、私たちに抱きついてくる。うーん、先輩とは思えぬ可愛さだ。

 どうやら呪霊の結界で時間感覚が狂っていたらしく、2日も経っていたことに先輩は驚いていた。

 感動の再会をしたわけだが、私たちがすっかり忘れていた……帳を降ろすことを。

 

 いやでもこれは五条が降ろすって言ったんだし私は全然悪くないよね。うん。

 夜蛾先生の前で正座させられながら私たちは全力で五条に指を指した。悪いのはアイツなんです!

 

 




■虛枝 刹那
ゲーム下手くそ。趣味が悪い。
桃鉄万年4位。

■灰原 雄
先輩の奢りで焼肉を腹いっぱい食べるのは気持ちがいいです!

■七海 建人
人の奢りだと気を使って自由に食べられなさそう。
モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……

■庵 歌姫
クズ共を除けば後輩は可愛い。
でも刹那はちょっと趣味が悪いと思っている。

■冥冥
金の成る木がいっぱい居るなあと思っている。
なんとか縁を繋いでいきたい。

■夜蛾 正道からの評価
普段は比較的真面目だが煽り耐性が低いのが欠点。
呪霊に対しての恐怖や死への忌避感が極度に薄い。家庭環境に問題がないので生来のものか。
時折問題行動を起こすので注意が必要。
……この学年は問題行動を起こすやつしかいないのか。

那由多の明日はどっちだ

  • しめりけ
  • だいばくはつ
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