紫電奔る   作:浜騎士

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もう充分溜まったろ!

21:28

渋谷駅 地下五階副都心線ホームにて

五条悟、封印

 

凡そ30分の死闘によって悪路王大嶽を祓い、息を整えた日下部班は新たな危機に直面する。

五条悟の封印が、虎杖悠仁によって通達された。

 

「誰がやったって…、まぁ、アレだよな」

 

「羂索…、四百年前に俺と契約した術師だ。結界術に卓越し、尚且つ用意周到な奴だ。五条悟を封印できる可能性は十二分に存在する」

 

千年の時を生き続け、その知恵()を蓄え続けた術師。

情報戦や骨法術、そして呪術に至っては高度な反転術式を使うことができ、全てがハイレベルな術師であった。

鹿紫雲も彼と何度も接触しており、軽い戦闘を仕掛け、いなされていた経験を持つ。

戦国の世が終わり、慶応にて死を悟った鹿紫雲に「最強(宿儺)と戦う」という条件で契約し、鹿紫雲はこの時代に目覚めた。

かの術師は、昔に括らず、新しい解釈や新発見、人類が新たに生み出した叡智などを取り込み続け、成長し続けているが、目的は不明だと、鹿紫雲は伝えた。

日下部はその羂索という術師が今回、渋谷にてこの惨劇を繰り広げていることを思考する。

ここまで用意周到に作戦を立て、五条悟(現代最強)を封殺した理由だ。

暗躍でここまで活動できており、更には不死に近い術式を持っている。あの五条悟が老衰して死ぬまで待てばいいはずだろうと考えていた。

青年もまた、その男の狙いを考えていた。呪物を撒いた理由、そして今回の事件、何かのピースを揃えようとしているのだろうかと坩堝へと落ちていく。老人は肩に如意を置き、トントンと叩きながら呟いた。

 

「あの男は俺以外にも契約してた。多分、今この時期が良かったんだろ」

 

青年は鹿紫雲の右目の下に口を作り、日下部に質問を投げかける。

 

「ここ数十年の間に何か呪術界で、異様な事が起きませんでした?」

 

「…、千年の間生まれなかった宿儺の器の出現、十二年前に確か、星漿体の暗殺だったか…、それもあるな。それに去年の百鬼夜行と、乙骨も入るか?」

 

「なるほど、必然か…」

 

ここまでの事象が折り重なったのであれば、この事件自体が必然だったのだろう。

青年は現時点での羂索の狙いを考える。

 

「まず五条さんを封じた理由、多分これは絶対しておきたかった事だと思います」

 

「まぁな、別に五条は現時点、術師のレベルは頂点(てっぺん)だろうからな」

 

日下部は口で飴玉を遊ばせながら呟いた。

日下部がここまで悠長に話している理由は単純だ。会話を長引かせ、事件が終わるのを待つこと。

会話を引き延ばすようにその返答を繰り返す。

 

「五条悟の死亡、もしくは殺害が今回の目的だったんだと思います。それに加えてまだ何か画策しているはず…」

 

「何かって何だよー」

 

パンダが頭を捻り、現在の会話を振り返る。

五条悟の封印が必須事項ならば、不死の術師ならば待てばいい。五条は不老でもないしましてや不死でもない。

無限の時間を持つ存在は、寿命というリミットを削り切るべきだとパンダは考えた。

 

「五条さん…というより、五条さんの持つ何かが計画にとって邪魔だったんじゃないかなあって」

 

「六眼が?」

 

パンダが五条の持つ異能について反射的に呟いた。

六眼ーーー呪術界を支える御三家、その一門である五条家が抱える生得領域とは異なる異能である。

五条家の血筋を持つ者のみが遺伝する眼であり、あらゆる術式をサーモグラフィーのように知り、それに加えて複雑な術式や緻密な呪力の操作が必要な無下限呪術にとっては必須であり、今代の六眼を持つ五条悟は数百年ぶりの無下限の抱き合わせで生まれたのだ。

日下部は六眼の情報を知りうる限り伝えた。

それに返すように、青年も六眼の歴史を聞き返すが、流石の日下部も平安の時代の伝承を知らなかった。

 

「…、もし、羂索の狙いが『六眼』だとしたら、その封印をした場合、計画に移る可能性がある」

 

「その狙いが分からねえ、何がしたいんだ?」

 

「ーーー呪術の進化、とかどうだ?」

 

老人はその言葉を呟いた。羂索と話し合い、彼の性格は何だかんだ老人は把握していた。

まるで虫の羽を捥ぐのが楽しい少年のように、好奇心旺盛な男だった。

未来やその先を見据え、そしてまた新しい発見を伝えに来る。

未知を解明する事が、羂索という男が好きな事だと老人は日下部たちに話した。

青年は納得した。恐らく、そうなのだ。

この渋谷での一件は、その儀式の伏線なのだ。ここまで面倒な手間をかけたのはその進化への供物。

それが何を齎すかは定かではないが、確実に言えるのは

 

「羂索は人死にも、厄災も別に怖がる事はねえ、何が起こっても笑って対応できる奴だ」

 

引き起こされるのは、厄災。渋谷だけで済まないだろう。

日本、果ては世界の終わりへと導くかもしれない。

思考の坩堝に嵌りかけた時、地面が揺れた。

叫び声と獣と人を織り交ぜたような唸り声、死の匂いが地下からやってきた。

改造人間の群れが飛び出してきたのだ。

鹿紫雲は如意を即座に構え、日下部は居合の構えを取る。パンダもまた、異形化していく。

 

「邪魔だ、雑魚」

 

「シン・陰流『居合・夕月』!」

 

「おらあ!」

 

閃光翔ける。剣神切り裂く。パンダ殴る。

だが、改造人間は波が押し寄せるようにこの地下を埋め尽くしていく。

 

「何だこの数は、多すぎる!」

 

日下部は抜刀状態でその呪霊を切り裂きながら、鹿紫雲と背中合わせになる。

鹿紫雲は雷の呪力を掌に纏い、雷撃と共に改造人間の心臓や脳をぶち抜いていく。

パンダもまた、ゴリラへと変貌し、その巨碗で呪いを薙ぎ払っていく。

死体の山が築きあげられるが、更にもう一丁と言わんばかりに改造呪霊が溢れてくる。

日下部はこの兵力に圧殺される危険を感じ、鹿紫雲とパンダに叫ぶ。

 

「これ以上はジリ貧だ!確かに弱いが、別の場所から下へ向かうべきじゃねえか!?」

 

嘘である。上は逃げ、あとはのらりくらりと非術師たちを流す作業に乗じて逃げようと画策する。

だが、その叫びをお構いなしに鹿紫雲の紫電が炸裂する。

 

「もう充分溜まったろ!弾けろ!『雷吼』ッ!」

 

このフロアを焼き尽くす雷がその改造人間たちを殺し尽くす。鏖殺され、下から駆け上がる存在たちを如意を槍のように投げ、下の階へと刺さった如意の電荷と自身の電荷を繋がる。

 

ゴウッと、またも雷鳴が轟いた。

圧倒的な呪力放出、そして戦闘センスは雑魚では敵わない!

 

「行くぞ、日下部、パンダ」

 

交戦的に笑い、下の階へと降りていく。

 

「(か、帰りてえ〜!)」

 

日下部の目論見は失敗に終わった。




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