紫電奔る   作:浜騎士

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ドンマイ!!

22:03

 渋谷駅地下五階副都心線ホーム

 

呪霊の波が放心中の人間たちを引き潰しながら迫る。

 

「『拡張術式『十黝(とぐろ)』」

 

三級二級で構成される波が瞬間、呪力を膨大に解放し、辺りを抉り取る。

爆散した衝撃波が辺りを大きく吹き飛ばす。

冥冥は線路を駆け巡りながら、その斧を羂索の頭に振り下ろした。

羂索が腕を翳し、その斧の破壊力を受け止める。

羂索の前腕部と斧の間には、呪詛を吐く呪霊が盾となっていた。

 

「拡張術式『十黝』」

冥冥と同じく『自死』の縛りにより呪力の限界(リミット)を解放する術式。

主に低級の呪霊のパワーを上げることに使われており、その一瞬の攻撃、防御力は一級にも引けを取らない。

 

「『神風(バードストライク)』」

 

同じく、『自死』の縛りを枷した鴉が呪霊の波を撃ち抜く。

崩壊する線路と階段、魑魅魍魎と鴉の死骸が幾つにも積み上がっていく。

その死骸の山を踏み抜き、雷電が電車を貫き、爆風が吹き荒れる。

飛び散るガラスが羂索の呪霊をチクチクと刺し、煙と共に雷神は現れる。

鹿紫雲の身体からは呪力(電気)が迸っていた。

 

「限定術式解放『幻獣琥珀・瞬(げんじゅうこはく・マタタキ)』!」

 

術式の解放、死を踏み倒し、鹿紫雲の両手両足の指が焼き切れる。

紫電と閃光が構内の壁を踏み抜き、羂索の身体がぶち抜かれた。

 

「やるね、確かに君の術式は自分の身体を電気に変貌し、あらゆる事象を模倣(トレース)すること、出力を抑えれば死ぬことはないかもね。それに、手足の指を縛りの代償として自死を踏み倒してるのか。考えるね、鹿紫雲、それとも受肉体の子かな?」

 

鹿紫雲の返答は掌印を結ぶことであった。

見たこともない掌印、左右の第三関節をコツリと合わせ、骨と骨がジッパーのように組み合わされる形、羂索はそのジグザグを雷と瞬時に理解した。

 

「『空鬼(くうき)』『(とどろき)』『(りゃう)嘶き(いななき)』」

 

「呪詞か!」

 

「拡張術式『龍吼白雷(リュウコウハクライ)』」

 

その白雷が放たれる。龍が吼えるような轟音がこの渋谷を貫いた。

約1億ボルトが電車を前から後ろまで貫いた。

羂索の防護服であった星の吸血鬼も絶縁破壊と共に消滅し、羂索もその閃光に焼かれるはずであった。

その雷は羂索の周り数百センチから全て地面へと流れていた。

呪霊操術の力ではない、もう一つの術式

 

「『反重力機構(アンチグラビティシステム)』、まさか使わされるとは思っていなかったよ」

 

結ばれていた髪が解け、はらりと宙を舞う。

ここが鹿紫雲と羂索の勝負の決め手であった。

ここで決めるべきであったのだ。鹿紫雲が呪詞を詠唱した理由、掌印を結んだ理由は呪力切れの間近だったからだ。

膨大な重力が鹿紫雲を押し潰す。先ほどの蟹とは隔絶した領域が彼の意識を失わせる。

鹿紫雲の二度目の敗北、そして、剣閃がカシャンと割れたもう一つの領域から羂索目掛けて振り払われた。

満身創痍の日下部の不意を突いた夕月が、羂索の頭部を切り裂いた。

 

残念(ドンマイ)!!」

 

グルグルと頭部が回転し、スリッピングアウェイを利用し、そのダメージを軽減する。

それに乗じ、無数の鴉で撹乱しながら、冥冥も斧を振り下ろし、鴉たちの命を支払う。

地面にその爪痕を残し、羂索の身体を鴉たちが一斉に突撃しようとした。

だが、それすらも千年を生きた術師にとっては、一つの奥義を開帳するのみで全てを圧殺することができてしまうのだった。

 

「『領域展開』」

 

「『胎蔵遍野』」

 

結ばれた反叉合掌、潰される一級術師四名、彼らは理解する。

理外の力を

 

この領域をどうにかするには、自分たちも領域を展開するしか方法はない。

だが、この超重力に対する対抗札を彼らは持っていなかった。

冥冥は無理だと判断し、憂憂に術式開示の合図を向ける。

姉への行き過ぎた敬愛は、自身の体が押し潰されながらも、二人を対象に術式が行使される。

この領域から冥冥、憂憂二人が消失する。

これが出来たのは、憂憂の特異性ともう一つ、この結界が閉じない領域だったからだ。

日下部もまた、簡易領域で粘り続け、目の前の意識を失った鹿紫雲に毒を吐く。

 

「お前が頼りなんだよ…!死にたくねえんだよまだ俺は…!起きろ!」

 

瞬間、この空間に現れる異物ーーー、天から全てを奪われ、全てを失ったからこそ全てを得た理外の怪物がこの空間へと現れた。

上階にて特別一級術師『禪院直毘人』、一級術師『七海建人』、四級術師『禪院真希』と戦闘し、その3人をその暴力で薙ぎ倒し、この地下へと参入してきたのは、天与の暴君ーーー

 

彼らは目撃する。全てを捨て去った者の剥き出しの肉体、その躍動を!!

 

禪院甚爾改め、伏黒甚爾という殺戮人形がこの戦場に君臨した。

そして、日下部の言葉から目を覚ますは、受肉体『鹿紫雲一』が立ち上がる。

 

術師としては三流、戦闘能力も呪力総量その他諸々も現在この戦場に君臨するどの人物よりも下の彼が、中に眠る老人が目覚めるまでの間、時間を稼ぐためにこの領域へとその足を踏み入れる。

 

「『領域展延』」

 

「シン・陰流『簡易領域』」

 

天性の呪術センスで領域展延を使いこなし、その領域での行動権利を彼は獲得する。

 

千年を生きる者 対 天与の暴君 対 雷神の弟子とシン・陰流免許皆伝

 

ここに三竦みが展開される…!

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