雷のような音が遠くから聞こえた。
宿儺は、別の場所で呪力が爆発的に増幅するのを感覚で把握した。
「(変質した呪力、特異体質か。あの
ガゴンッ!
目の前の存在がそのダメージに適応し、蘇る。
伏黒恵により召喚された十種影法術、その中で異端中の異端の式神。
調伏できた術師は過去存在せず、十種影法術にて奥の手、自爆技として伏黒はその存在を召喚した。
宿儺と伏黒がその儀式に巻き込まれる。
現れた異形の巨人、影絵の狼たちが遠吠えと共にその存在の降臨を祝福し、宿儺へその退魔の剣を振り下ろし、36秒が経過していた。
「はぁ…ッ!はぁ…ッ!」
その制御は不可能であった。宿儺に対して振り下ろされた剣を弾かれ、宿儺がその指をピッと横に切る。
魔虚羅と共にビルが切断される。両者、規格外。自分はこの存在たちにとっては蟻であった。
ガゴンッ!
修復、再生、適応。方陣が回転する。
魔虚羅のその術式は単純でありながら強力!あらゆる事象への適応!
宿儺の斬撃もまた、その事象の対象内であった。
伏黒はこの場から逃げるように鵺を召喚し、宿儺の妨害へ回っている。
「逃げていいとは言ってないぞ?」
鬼神の軽い蹴りが伏黒に突き刺さる。それだけで伏黒は高層ビルの窓を破壊しながら中のオフィスの壁に打ち付けられる。
「がんばれ、がんばれ」
宿儺の凶悪な笑みが月明かりに照らされる。
陸
三節棍が羂索の鼻を掠める。ジッと鼻先が摩擦熱で焼け焦げ、その風圧だけで鼻骨が折れた。鼻血を拭い、羂索はその膨大な知識で暴君の対抗策を研究し、進める。
「(
浮遊能力がある呪霊を足場に空中へと飛び上がる。結界術の応用で空中の空気に指向性を持たせ、滞空する。空中戦では圧倒的に羂索が有利な筈だった。
その殺戮人形はあろうことか、三節棍をコンクリートに打ち付け、棒高跳びをするように繋ぎ目と繋ぎ目を超次元的なバランスで合わせ、飛び上がる。羂索もそれを見逃すほど馬鹿ではない。無数の呪霊を展開し、それを雨のように甚爾へと向かって降り落とす。
羂索はその眼を見開く。その男が空中を翔け巡るのを。
「キッショ、なんで動けんだよ」
三節棍が呪霊の大群を屠り、振り下ろされようとしていた。
瞬間、世界に柱が立ち上がる。異形が組み合わさり、悲嘆と叫びに満ちた人間たちが木の幹に刻まれ、シンボルのように首のない妊婦が飾られたトーテムがそこに現れた。
既に戦闘時間は7分を超えていた。羂索の焼き切れた術式が回復したのだ。
「領域展開『胎蔵遍野』」
呪霊や崩れ落ちたマンション全てを押し潰すかの如く超重力が辺りに炸裂した。
「君が対象にならないんだったらさ、じゃあ空間ごと押し潰せばいいよね」
暴君が30mの高所から地面へと叩きつけられる。だが、その暴君は立ちあがろうとしていた。
しかし…、凄まじい巨体が暴君の上からその呪霊が現れる。
「
現在の超重力に加え、達磨の隕石に至る衝撃、渋谷に更なる地震が放たれた。
達磨が崩れ、その男がゆっくりと立ち上がるが、その男の顔は口に傷がついた美丈夫ではなく、何処にでもいそうな老けた青年の顔となっていた。
「
くつくつと嗤う。そんな羂索の顔に電光が走った。
崩れ落ちた渋谷駅から数百メートルを宙で回転しながら、ビルを2棟を貫く。獣の雄叫びが地面を踏み抜き、第三宇宙速度が暴風となって辺りの窓ガラスを破壊し、瓦礫を吹き飛ばす。
半身に雷を奔らせる青年、鹿紫雲が羂索に更なる追撃を行う。
羂索が叩きつけられたビルごとその蹴りで粉砕し、羂索の身体を掴みながら全力の放電。
焼け焦げた匂いが羂索から香る。
だが、目の前の男は千年も生きてきた術師である。
即座に反転術式と共に治癒を完了させ、鹿紫雲の身体を羅穿にて貫く。
体内の爆発、血が噴き出るがそれも雷として辺りに撒き散らされる。
「(タイムリミット、6分!300秒で縫い目を仕留めるッ!)」
半人半神、