23:03
渋谷駅南口跡地
輝き。
地面を踏み抜くだけで世界が揺れる。
あくまで光に近い亜光速の状態でこの空間を駆け回っていた。
だが、羂索が何故それに対応できるか。それは、その領域が羂索の『胎蔵遍野』の空間内であった為だ。
領域には凄まじい重力が存在している。それを鹿紫雲は『幻獣琥珀』で踏み倒していた。
3秒
羂索の身体が電光に焼き焦がされ、腕を焼き切る。焼き切れた腕をパシリと羂索は掴み、その腕を傷口へと当てがう。
反転術式、失われた腕を生やすには凄まじい練度の反転術式の才能と、それに比例する呪力消費が必要である。
しかし、その腕があるなら話は別だ。傷口を修復し、繊維を繋ぐ。骨を密着させ、筋肉を縫い止める。神経が繋がり、腕が自由に動くようになる。
鹿紫雲の豪雷が地面を穿った。だが、羂索は無傷。代わりに煙を上げたのは奇妙な形状をした歪な藁人形。
「(おおかた身代わりの術式だろ!残り288秒!まだ攻めるね!)」
亜光速のヤクザキックが羂索に炸裂する。それを羂索は呪霊の壁でガードし、唸る呪霊を展開する。
その呪霊は叫び声を上げ、鹿紫雲の行動を一瞬阻害する。
戦国時代にて活動した山潜りの忍びが愛用した忍法「大吠」、超振動が雷神を襲う。
0.6秒の身体停止、瞬間繰り出されたのは巨大な象であった。
正確には、象とは呼べないがそれに似た顔を持ち、四本の腕を組んでいる。更にはその腕には仏教や密教の仏師がつけている数珠が贅沢に飾られており、身体の至る所に刺青が刻まれていた。
神威が辺りを支配する。その存在は、いるだけで世界にヒビが入るような存在感を醸し出す。
特級呪霊『ガネーシャ』、その術式、あらゆる障害の排除!特級の名を冠する呪霊が持つ概念への拡張術式!
「お手並み拝見」
羂索が揶揄うように挑発するように手をクイッと上げる。
雷神、閃光を残し、地面を焼き焦がしながら1億ボルトを纏い突貫する。
吹き飛んだのは鹿紫雲の方であった。
「!?」
自分の身体がひしゃげる。まるで、全てが反射されたかのようなーーー
「馬鹿だね〜、ただの肉壁を置いて私がこんな構えてると思うかい?このアジアの神の呪いは障害除去、即ちカウンターさ。真正面から来たんだ。光の速度とまではいかないだろうけど亜光速らへんだろ?雷への適応とその膨大な呪力のバリアでも唯じゃすまない」
その言葉に嘘はなかった。鹿紫雲へフィードバックしたダメージは確実に雷神の体を呪った。
両腕の解放骨折、頭蓋骨損傷、肩甲骨粉砕、鎖骨粉砕、頸椎捻挫、その他にも全身のダメージは生きていられないほどだ。
だが、それで止まるような男ではない。紫電が奔る。
「!ーーー反転術式か」
全身から湯気が立ち昇る。
「(残り194秒、呪力を消耗し過ぎた。あの象野郎の術式、障害排除か…)」
思考速度は既に光速に至っている。彼の思考能力は人智を超越していた。
なら、その障害の範疇を超えてぶち抜けばいい!
馬鹿みたいな結論、しかし、それしか超える方法が思いつかない。
そして、光速を超え、神速へと至った蹴撃が世界を揺らす。そして更に想定外が起こった。
閃光が歪んだ。極限状態での攻撃、そして覚悟がその呪力の扉をこじ開けた。
打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間 空間は歪み
呪力は黒く光るッ!
黒閃
その合計ダメージ、約30万km/s+膂力+呪力
それの2.5乗ッ!
ガネーシャはその身体を崩壊させ、渋谷の空間自体が崩壊する。
雷神の戦績、