紫電奔る   作:浜騎士

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生前葬

鹿紫雲の呪力()が凪ぐ。

合計230秒の開放状態、徐々に電気で形どられた獣の姿が霧散していく。

残された瓦礫と崩落したビル、押し潰された周囲の空間に焼け焦げた土地、まるで空爆が落とされたかのような世界に、鹿紫雲はフラフラとしながら立っていた。

 

死が近い。腕と足の喪失と出血、複数の拡張術式、反転術式による膨大な呪力消費、そして限界を超越した反動(フィードバック)が雷神の身体を焼き切っていた。

 

思考

 

鹿紫雲一は、平凡な大学生だった。小学、中学と特に病気で休むこともなく、高校は工業科を学び卒業していた。部活動での活躍もそこそこ、インターハイに出場して初戦で敗退したくらいしか覚えていない。

決して何処にでもいるわけではないが、何処にでもいそうな人生。

彼の転機は三ヶ月前、老人との出会いであった。

雷に打たれた時、自分のこの平凡な人生が終わることを、第三者視点のように見ていた。

 

「(あーあ、これで終わりか)」

 

ぼうっとそう考えていた。そこに入り込んできた謎の存在。江戸時代の名も知らぬ英傑、まるでアニメや映画のような設定が、彼の平凡を押し潰したのだ。

若干ファンキーで、チンピラの如き言動が飛び出す老人との生活はいつしか、自分の生活に馴染んできた。両親、友人の時間もそこそこ楽しかったが、老人との生活はその20年にも勝らんとしていた。

自分の二十年がたった三ヶ月に容易に覆される。その退屈が裏返る予感が、いつしか青年を大きく変えていた。

 

「お爺ちゃん。おはよう」

 

「馬鹿弟子が」

 

雷神、脈動。青年の掠れ切った魂を撫で、老人はその草原にて微睡から目覚める。

平凡な命が失われていくのをその手で感じ取っていた。

 

「眠ってろ、すぐ行くだろう」

 

「早死は勘弁」

 

「生前葬にしてやろうか」

 

軽口の叩き合い、鹿紫雲の孤独が生み出す生得領域(精神世界)には、いつのまにか小さな木が生えていた。

 

「任せろ、相棒(ガキ)

 

背中を預ける。その木の硬さを感じながら。

いつしか、老人の顔は、精神世界でも青年の顔となっていた。

 

絶命の縛り、全てを老人に託し、青年は眠る。

 

10月31日25:53改め、11月1日01:53

 鹿紫雲、渋谷スクランブル跡地、地下通路にて覚醒。

 

「高専の奴ら何処いった?日下部とかパンダは無事かよ」

 

鹿紫雲が倒れてから既に二時間が経過していた。

地表に出た鹿紫雲は、辺り一面がクレーターとなっているのを確認する。自分たちが暴れた凸凹ではなく、明らかにそこら一帯だけ原子レベルまで切り刻まれたのだ。

宿儺の力だろうと鹿紫雲は推測しながら、歩く。東京は壊滅状態、呪霊も跋扈していた。

更には少し先に見える天空を貫くほどの結界、あの一撃をどう凌いだのか、羂索は未だに活動を続けているらしい。

無駄死に…というわけではない、あそこまで強力な呪霊を刈り取ったのだ。羂索も表立って闘うことは多少は難しくなっただろう。

 

東京23区、雑魚呪霊を片手間に祓いながら場所を後にする。

クレーター付近から凸凹した足場を軽々と跳躍しながら、斜めに曲がったセルリアンタワーの頂上へと登り、俯瞰する。

遠目から結界は東京付近に2個存在するようだ。そして、鹿紫雲の聴力が拳撃の音と空気が弾ける音を拾う。

 

2:32

 東京港区道頓堀川

 

虎杖悠仁、脹相、乙骨憂太、禪院直毘人が交戦中

 

2秒、相棒失えど、性格は変わらず

 

「俺も混ぜろよ」

 

虎杖悠仁は、交流会に乱入した術師に驚き、脹相、乙骨、直毘人はそちらに目線を向けた。

 

「鹿紫雲一…、五条さんお抱えの一級術師で、現在執行対象の術師ですね」

 

世界が淀んだ呪力に包まれる。

乙骨憂太の放つ圧倒的な呪力によるプレッシャーが鹿紫雲、虎杖、直毘人、脹相の背筋を凍らせる感覚を与える。

 

「貴方も殺します」

 

現代の異能が刃を向ける!

雷神 対 現代の異能

 

『死滅回游』 開幕




戦績
花御、陀艮の除霊、羂索の特級呪霊数体の除霊、その他呪霊合計数百を排除。
羂索の閉じない領域の情報獲得、及び術式内容を獲得。
禪院班の生存(甚爾との交戦により打撲により大怪我するが存命)
パンダ、兄と姉の魂の消滅。
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