「で、虎杖…だったか。どういう状況だ?」
「味方なのか…?」
強者の風圧、さらなる圧力に圧力が追加され、呪力の暴風が吹き荒れていた。
現代の異能”乙骨憂太”、最速”禪院直毘人”、呪胎九相図”脹相”、”宿儺の器”虎杖悠仁、そして雷神”鹿紫雲一”、5人がその場で剣を抜き、拳を構え、武器を持った。
「今、
血を纏い、脹相が答えた。その答えと共に高速で直毘人が脹相へと蹴撃する。ヂリと頰を掠め、皮が捲れる。
「ほお、やはり『赤血操術』か。それも高度な…」
「俺の事はいい、悠仁を逃してやってくれ」
鹿紫雲はニヤリと笑う。何はともかく、乙骨という男との対戦カードを手に入れたのだ。虎杖の体をバンと叩き、声をかけた。
「俺がやる。お前はどっか行け」
雷光が空気を切り裂いた。バチチチチ…と
「頼む!」
虎杖の凄まじい跳躍、空を駆けるかの如く脚力で、この道頓堀から逃げていく。乙骨はそれを追おうとし、雷神はそれを阻止するために動いた。
鹿紫雲の翳した掌に紫電により手当たり次第、瓦礫やゴミが集まってくる。その全ては鉄筋や鉄骨が含まれており、歪な鉄塊と化する。
瞬
鉄塊と剣が切り結ぶ。磁場で形成された瓦礫でできた鉄塊を振り下ろし、乙骨の呪力を込めた刀がその鉄塊を一文字に切断。
真っ二つになった鉄塊は地面へ落ち、土煙を上げる。その煙を掻い潜り、如意が乙骨の刀を根本から叩き割った。
まるでガラスが割れるように、刀というリーチが乙骨から失われる。全身の筋肉の力を一瞬で抜いて、潜り込んだ鹿紫雲の閃電が乙骨に叩き込まれようとしていた。
が、その一撃が掴まれる。巨大な影のような式神ーーーリカが顕現する。
「なにしてるのォ」
「遊んでるんだ。リカちゃんもやろう」
鹿紫雲の頭を叩き潰す一撃がリカから放たれる。
リカーーーかつて乙骨に取り憑いていた特級過呪怨霊、呪いの女王とも呼称された圧倒的な呪力、そして術式により特急呪詛師夏油傑との激闘の末、成仏したはずの存在であった。
しかし、残された呪力の渦動は未だ失われず、今もなお乙骨のサポートに回っていた。
「おい、あんまワクワクさせんなよ!」
雷槍、投擲。鹿紫雲の雷電で構築された巨槍が空気を穿つ。
間一髪で乙骨はその一撃を避け、避けた先にある建物が貫かれるのを見た。爆風と雷光、雷が辺りに飛び散り、空気という絶縁体に浮く不純物を焼きながら地面へと消えていく。
乙骨は今この存在を見過ごすわけにはいかなくなった。手早く無力化し、虎杖悠仁を殺し、治さなければならない。
薬指に指輪をつけ直す。それが完全解放の合図。
「おいで、リカ。『全部』だ」
呪力の津波が鹿紫雲を襲う。文字通り、桁違いの呪力、存在感がその男の口角を上げさせる。
折本里香、五分間の完全顕現。
乙骨の呪力量が昔でも見たことがないほどの高まりを見せる。
外付けの術式と呪力の備蓄、指輪を通してリカに接続するとその間のみ、リカの完全顕現、呪力供給が可能となる。
更に乙骨はリカに様々な呪具を備蓄させている。
取り出すは、トンファー。真言と呪符が貼られた漆黒の枝を加工して作られたデザインの呪具。
暴風
鹿紫雲が呪力でガードを施した身体を、乙骨の拳が貫いた。約200m、飲食店、コンビニエンスストアの壁を破壊しながら鹿紫雲は地面を転がり、地を蹴り、体制を立て直す。体内電流を加速させ見えたのは、トンファーから溢れ出た莫大な呪力による速度上昇!
その呪具の名は「嶽割」。その効果、呪力によるブースト量の増加!!
乙骨は自分の莫大な呪力をロケットのように後方から吹き出し、全力で鹿紫雲を吹き飛ばしたのだ。
あくまで乙骨の現在の狙いは虎杖悠仁、鹿紫雲をここまで吹き飛ばしたのはその距離を縮めるためであった。
ジェット機の如くスピードで虎杖の背中を追う乙骨、虎杖は車を手に、その人知を超えた膂力で乙骨に叩きつけた。爆発と煙を切り裂き、乙骨のトンファーが虎杖の腕を叩き潰す。腕を呪力でガードし、その人間の数十倍の筋肉と骨の硬さでも、現代の異能の呪力での一撃は止められない!
ボキリと嫌な音が腕から聞こえた。ブランと左腕が本来向くべき方向と真逆の方向を向いていた。
だが、渋谷という地獄を超えた鬼神は、その痛みを噛み潰し、右手での一撃をお返しする。トンファーでのガード、腕一つが潰れ、バランスが取れないはずの虎杖の一撃が乙骨のトンファーを打ち抜いた。だがーーー、乙骨が距離を取る。鹿紫雲もまた、その現場へと乱入しその雷掌での骨法術を乙骨へ叩き込もうとする。
乙骨の掌が口を隠す。脳がアラートを鳴らす。鹿紫雲は本能に従って耳を塞ごうとしたがーーー
「『動くな』」
身体が止まる。蛇ノ目と牙、呪言が脳を侵蝕する。
虎杖、鹿紫雲の動きが蛇に睨まれたかのように停止する。たった数秒、しかし術師にとってその数秒がどれほどの隙であるかは、明白であった。
腰に携えた割られた刀を虎杖の心臓に突き刺す。虎杖の口から夥しい血が噴き出す。
だが何故か致命傷には至っていないらしい。血液の量がそこまで出ている訳ではないからだ。
疑問と共に割り切り、リカの乱打を呪力の放出でガードする。
鹿紫雲にはリカによる乱打。呪力のブーストにその巨躯、防御体制も取れていない鹿紫雲の身体を襲った。
未だ鹿紫雲が目覚め、1時間も経っていない。呪力の回復にはまだ数日かかるという中での戦闘が最強の足を掴んでいた。
虎杖が倒れる。乙骨はその目線を鹿紫雲へ向けた。その乱打に乙骨も参加する。打撃打撃打撃、鹿紫雲も自由を取り戻しそれに返すように鹿紫雲も雷を載せた乱打を放つ。
拳と拳が交わり、双方に傷が増えていく。手数では乙骨たちが、一撃一撃のダメージは鹿紫雲が優っている。
「まだまだァ!」
その雷掌が乙骨の鳩尾に抉り込まれた。体内で弾ける電撃、呪力のガードを貫き、乙骨の血が鹿紫雲の頬を濡らした。
「終わりだな…。楽しかったよ…」
鹿紫雲の身体に鮮血が吹き出た。訳もわからず鹿紫雲は乙骨を放り投げる。
乙骨が着地し、その手をパンと合掌した。そこから放たれるは、鮮血の閃光。
「『百斂』」
「『穿血』!!」
鹿紫雲の喉を食い破るのは、
乙骨の隠し札がこの闘いの勝利を齎した。
もりもりいこうか!