紫電奔る   作:浜騎士

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カッシー蹂躙ターン


不死身のオマエを殺してみせる!

奥多摩での雷撃テストから5日経過した。

青年は老人に、術式についてを聞いた。

 

鹿紫雲一の術式『幻獣琥珀』。

あらゆる雷による事象を再現し、人を超越する術式。

正に雷神として目覚める神成(カミナリ)の術式。

しかしその術式には縛り(デメリット)が存在する。

使えば、死ぬ。

絶命の縛りにより神域へと踏み込む事こそ、鹿紫雲一の術式であった。

恐らくは、その術式は青年にも刻まれているだろうとも老人は話す。

 

「使うなよ」

 

「フリ?お爺ちゃん」

 

「違う。使ったら殺すからな」

 

青年としても、死にたくはないので、術式の行使は諦めた。

しかし、青年はこうも考えた。

術式を使えば死ぬのであれば、その術式を使うまで、基本的な能力(ステータス)を強化するのに回せばいいのではないだろうかと。

そうして、縛りを老人の許可と共に追加した。

 

1.術式を使用しない代わりに、基本的な能力の底上げを行う、この縛りは術式を使用した場合、失う。

 

自身の魂に刻むような感覚と共に、その鎖を巻き付ける。

まるで破れたホースの傷を一つ修復し、別の場所に水が流れるような感覚に包まれる。

 

「よく考える。確かに使えば死ぬ術式ならば、使わなければいいだけだ」

 

「お爺ちゃん、戦闘一辺倒だからね。このくらい孫にさせてよ」

 

「貴様のような孫はいない」

 

まだ、何かを縛れば、新しい力を得られるだろうか?

その前に身体能力の底上げは必要だ。人並みには鍛えているつもりだが、老人は物足りないらしい。

生体電流を増幅させ、敏捷性(アジリティ)筋力(ストレングス)の向上や、磁力による壁張り付きや武器の吸引、電気とは我々人類にとっては原初の光なのだろう。

 

2018年7月29日

東京都千代田区

 グランスタ丸の内 地下下水道。

 

雷神は、後の呪霊の王と出会う。

 

「お爺ちゃん、アレ。強い方だよね?」

 

「あぁ、代われ。儂が殺る」

 

頷きと共に、青年の意識は闇に沈み、もう一人の老人が口角を上げながら、浮上する。

雷神、鹿紫雲一の意識の浮上と覚醒が完了する。

最初とはまるで違う彼の呪力は凄まじいほどの立ちのぼりをみせる。

 

「呪術師?」

 

継ぎ接ぎだらけの顔を悍ましいほど歪めた少年のようなあどけない顔をした青年が、その肉体を揺らめかせる。

 

「ちょうど良かった。テストしたかったんだよね」

 

「オマエ、名前は?」

 

鹿紫雲は好戦的に笑い、その質問と共に構えを取った。雷が迸る。久々の強敵に、400年ぶりの肩慣らしが始まろうとしていた。

 

「真人」

 

「鹿紫雲だ」

 

閃光。雷鳴の如き轟音が地下を揺らした。

真人は意味も分からずに自分が壁に叩きつけられていたことを把握する。

 

「(早いな。それに痺れる。なんだ?分からないな…。理解できたのは…)」

 

「(この術師、強いな!)」

 

「だけど、お前の攻撃、魂に響かなーーー」

 

吐血、鼻血がダバダバと流れ始めた。

魂へのダメージ。それは真人が予想だにしていない現象であった。

 

「(魂を、無意識に知覚してるのか!?)」

 

天敵、いずれ出逢うであろう鬼神と呼ばれた少年と同じく、だが、それでも真人は自分がどこまで通用するかを試しておきたかった。

 

真人はその顔を口まで避けるように歪ませ、両手を鎌のように変形させ、辺りを切り裂く。

コンクリートを容易く切り裂き、飛沫が上がる。

風切音だけで、その斬撃が人を容易に切り刻めるだろう。

人体に雷を落とす、帯電状態となり、生体電流を爆増させ身体能力を一時的に跳ね上げる。

伸縮する鎌腕を如意で受け流し、近接の間合いに入る。

如意で真人の顎を吹き飛ばし、その手を離す。

如意は宙を回転しながら、自由落下するのを待つことになる。

無手となった両腕で二発の拳撃を真人の顎、鳩尾に放つ!

打撃と雷撃が内部で炸裂し、血が吹き出す。人間の焼けるような匂いが鼻をツンとつくが、そのラッシュは終わらない。

左手で首を掴み、握り潰しながら地面に向かって思い切り叩きつける。

地面が大きく揺れ、横の下水が大きく凪いだ。

そのまま足で踏み躙りながら溜まった電荷(呪力)を炸裂させる。

正に大気を裂くが如く一撃、不可避の一撃が真人の体を焼き滅ぼす!

 

「(速すぎる!目も体も追いつかない!だけど、俺の強みはそうじゃない!!)」

 

頭部、胴体が焼けこげ、残ったのは両腕と下半身、しかし、いきなり背中が奇妙な形に変形し、立ち上がる。

そしてその両腕を鹿紫雲の胴体へと掴みかかる。

 

『無為転変』

 

魂を捩れさせ、歪める最悪の術式、鹿紫雲に行使される。

 

「!」

 

即座に間合いを取る為に鹿紫雲は電荷を辺りに放出し、全体を焼き払う。

真人もそれに焼き焦がされるように、後ろへとバックステップする。

 

「何でお前…、変わんないんだよ」

 

「なるほどな、魂への攻撃。真面目に食らったらヤバかったな」

 

真人が鹿紫雲に接触し、観測した魂の総量は通常の術師を遥かに超えていた。

 

鹿紫雲は笑いながら、再度、構える。

 

「俺たちは特別製でね。魂の総量は合計値って所みてえだな」

 

真人も同じく構えを取るが、その思考は別に巡らせていた。

 

「(勝ちの目が薄いな。さっきは不意をついて触れたけど、次はないだろうなあ。どうやってもアイツのスピードにはついていけない)」

 

鹿紫雲の攻撃は真人を殺せる。受肉体特有の無意識の魂の知覚。

しかし老人も青年も、真人の異常さに気づくことはなかった。

彼のような存在と戦ったのは初めての経験だったからだ。

通常の呪霊とは一線を画すまさに特級呪霊。

どちらが先に仕掛けるかを見極め合う。

 

ーーー先に動いたのは、真人であった。

口をいきなり押さえ、嘔吐する。

それを阻止する為、神速で真人へ拳を放つ鹿紫雲。

 

「しゃらくせえ!」

 

『多重魂、撥体!』

 

口から取り出したのは、改造された人間。それを掌で合掌するように叩きつける。

怨嗟の声と共にその魂は膨張し、魂と魂が混ざり合うことにより発生した拒絶反応は爆弾のように呪力を放出し、辺りを吹き飛ばした。

鹿紫雲の雷を宿した雷拳は改造人間の壁に阻まれ、真人に届くことはない。

コンクリートが崩れ、天井が落ちてくる。土煙と共に入水する音が聞こえた。

 

「君はまた今度殺すことにするよ、ビリビリ術師」

 

その魂を水のように変質させ、真人は下水を流れていく。

鹿紫雲は下水に電気を通し、一気に蒸発させるが、真人の姿はそこにはなかった。

 

「やられたね、お爺ちゃん」

 

「クソ、逃した」

 

イラつきと共に笏を地面に突き立てる。

 

「反転術式じゃねえ、魂の変質、変形を肉体に作用させる術式か」

 

「お爺ちゃんじゃ倒せないってこと?」

 

青年は疑問を老人に投げかける。

老人は紫電を体に激らせ、青年に放つ。

 

「一瞬で全部吹き飛ばせば同じだ。細胞丸ごと崩壊させちまえば死ぬだろ」

 

「…、脳筋じゃない?」

 

青年は呆れたように呟いた。

魂の知覚を理解していない為、真人に攻撃が効いているのか未だ彼らは判別できなかった。

初戦、真人vs鹿紫雲の勝敗は引き分けとして終わった。

 

後日、残された残穢から、呪霊の存在を確認。

一級術師"七海建人"が、対応を行うこととなる。

 

下水道にて、先日の事を思い耽る真人。恐怖と死が彼の身体に張り付きながらも、新しいインスピレーションを与えていた。

 

「魂の六割をあの短時間で削られた…。天敵だな、本当」

 

その言葉を呟くと共に、目線を歩いてきた男へと向ける。

 

奇抜なサングラスを装着したがっしりとした身体。

端正な顔立ちを感じさせる金髪の男。

七海建人が、真人の前に立った。

 

「今度はちょうど良さそうだね。やっぱ強すぎると実験にならないや」

 

未だ、特級呪霊は健在。削られた魂の損傷を自己補完の範疇で運用する。

この程度、先ほどの異常事態(イレギュラー)と比べたら容易いだろう。

 

「貴方ですね。人を改造して我々に差し向けた呪霊は」

 

七海は首をこきりと鳴らし、鉈を構える。

真人にとっての第二ラウンドが始まろうとしていた。




ちょっと手直し。殺せるように成りました。
そっか!受肉体はみんな真人特攻みたいな感じなんだなあ〜。
追加でナナミンのシーンも挿入しました。
カッシーの強さを表すシーンでした。強すぎたか?いや、まだまだだぜ。
書き手による、そんだけだ
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