紫電奔る   作:浜騎士

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三重疾苦

11月16日 15:24

 仙台結界

 

鹿紫雲が仙台で待機し、やることが哲学書などを開くことしか無くなっていた頃、東京結界(コロニー)にて、二つの総則(ルール)が追加された。

 

“泳者は他泳者に任意の得点を譲渡することができる”

 

“泳者は身代わりとして新規泳者を結界外から招き100点を消費することで死滅回游から離脱できる”

 

以上二つは、虎杖と伏黒、そして別のコロニーに参画した乙骨が平安から現代、様々な術師との戦闘にて獲得し、追加したルールだ。

そして、伏黒の目的である姉の救出の為にその点数が譲渡される。

しかし、全ては伏黒津美紀に受肉していた平安術師”万”による計画であった。

 

更なるルール追加、”泳者は結界を自由に出入りすることができる”

このルールにより、結界を超え、万は東京から別の結界(コロニー)ーーー仙台へと向かったのだ。

その精神的な影響により、自我の地盤が崩れた伏黒恵の身体を奪い取った宿儺は、裏梅が禪院家の地下を使用した”浴”の空間へと足を踏み入れていた。

しかし、宿儺の計画である伏黒津美紀を十種影法術にて殺害し、伏黒恵の魂を地の底に沈める計画は泡沫に帰すことになる。

 

11月16日 17:09

 仙台結界 崩壊しかけたスタジアム

 

烏鷺、石流、ドルゥヴを葬った鹿紫雲は、知識を貪っていた。

呪術とはイメージの世界、そのイメージには元のアイデアが必要だ。

その為には、あらゆる知識を身につける必要はある。

戦国時代では戦闘に明け暮れていた時期であり、勉学などは殆どしていなかったが、地頭はいい方であり、また受肉した青年の記憶を読み取ることで大分とスムーズに進んでいた。

その場所に、一人の女がフワリと降りてきた。

黒い長髪をし、動きやすい軽装で身を包んだ女性、そして何よりもその女から流れる呪力が鹿紫雲に叩きつけられた。

 

「先客がいたのね、邪魔だから退いてくれないかしら」

 

「…、面白エ、丁度文字を読んでるのに飽きてきたんだよ。()ろうぜ」

 

「私、別に貴方はタイプじゃないんだけど…。私には宿儺という男がーーー」

 

ジュ!!!っと鹿紫雲の拳が万の頬を掠めた。

電気信号を加速させることで放たれた一撃は風を置き去りにして空間を叩きつけた。

避けられたのは運と勘、その二つがなければ、万のダメージは計り知れなかっただろう。

万もまた、目の前の術師が特異的な体質であることを即座に見抜き、液体金属を操り、中距離での戦いを開始しようとした。

 

「宿儺を知ってんだな?高専連中もひた隠しにするからよ、何処にいんだと思ってたが…、お前から聞けばいいな」

 

「チィ!宿儺は私の男よ!」

 

「何勘違いしてんだアバズレ!!!」

 

中距離など、鹿紫雲にとっては近距離も同じである。

踏み抜かれた地面を翔けた鹿紫雲は、肘を万の胴体へと突き刺した。

雷を付与し、痺れによる麻痺(スタン)状態が万の身体の動きを阻害する。

更に足での蹴り上げ、万を宙に浮かし、得意のラッシュが叩き込まれる。

しかし、万はかつて藤氏直属征伐隊”五虚将”を返り討ちにした経歴を持つ平安の猛者、地面に流れた血と液体金属を操り、鹿紫雲の身体を地面から突き刺した。

 

「チクチクしたな、マッサージか?」

 

鹿紫雲の呪力放出が半径6メートルを焼き、更に攻撃を仕掛ける。

 

ーーー万の術式は構築術式、呪力をそのまま物質に変換するまさに黄金錬成とも言えるその術式には、無視できないデメリットが存在した。

圧倒的な呪力効率の悪さ、燃費が最悪であり、それが原因で万は幾度も窮地に陥った過去がある。

それを解決する為にイメージの元となったのは、虫であった。

軽い体に内包された凄まじいパワー、生きた機能美を再現することこそが、彼女にとってのこの術式の極の番であると。

 

「(相手は電気ッ!相性は最悪ね…)」

 

虫の表皮には、皮脂(ワックス)に覆われており、電気を通しやすい代わりに、水を弾く性質を持つ。

その性質を放棄したところで、液体金属はどちらの状態でも電気を通しやすいのだ。

自分の身体を大きくする甲冑は得策ではない。

呪力総量も同格、呪力特性を打ち消すには、1.2〜1.5倍ほどの呪力が必要だ。

勝利への思考は止まらない、しかしそれを許す鹿紫雲ではない。

雷光が残像を残して万に迫る。

だが、万は部分的に身体を構築し、回避を行う。

高所からの攻撃によるアドバンテージで鹿紫雲を攻め立てる。

滑空しながら辺りに配置した液体金属を罠のように扱い、その雷獣を攻撃するが、その圧倒的なスピードと火力が罠を悉く破壊していく。

 

「どうしたどうしたァ!?その程度か!宿儺が夫だの凄え法螺ふくじゃねえか よッ!!!」

 

地面を沈ませ、身体のバネで大きく跳躍する。

その距離、200m、万より数十メートル上に飛び、呪力放出で万にタックルをかまし、地面へとまるで隕石が落下するように地盤を大きく破壊する。

馬乗りになった鹿紫雲はその腕を組み、ハンマーのように顔面に叩きつける。

なんとかその一撃を液体金属で防ぐが、それでも死が近いと万は感じていた。

圧倒的なスピードによる回避力、特異的な呪力特性によるガード不可、そして一撃の重さ!

万が相手にしてきたどのような猛者よりもこの男は輝いていた。

だが、このままで終わるわけにはいかない。彼女には、帰りを待つ男がいる!

 

「私の上から退きなさい!変態が!!!」

 

液体金属を地面に浸透させ、湧き出たソレが壁を作り出す。

視界不良に陥った鹿紫雲は、僅かな時間を万に与えてしまう。

それこそが、彼女の勝ち筋であった。

 

「見せてあげるわ!!私の宿儺への”愛”!!!」

 

領域展開

 

ーーー三重疾苦(しっくしっくしっく)!!!

 

「何だそりゃ、外国かぶれか?」

 

完全なる球体、理論上は存在しうる完全剛体が出現する!!!




本誌アチ‼️
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