紫電奔る   作:浜騎士

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バチバチ弾けて、最高だぜ(コーラル中毒)


ガッカリさせんなよ

2018年8月ーーー

 東京都港区南青山 青山霊園付近

 

日本有数の墓所、様々な著名人がその体を埋めたその場所には、異様な雰囲気が漂っていた。

鹿紫雲がこの場所に来たのは、親の付き添いもあるが、第一に凄まじいほどの呪力を感じたのが原因であった。

墓とは、人が作り出した極上の死の世界。

そこに信仰なく足を踏み入れる事即ち、死地に臨むという事となる!

人格を老人に切り替え、青年はサポートに回る。

どうやら、この墓を起点に簡易的な領域が展開されており、術師のみがこの空間に踏み込むことができるようだ。

誘われている、と青年と老人は確信した。

 

「ガッカリさせんなよ」

 

嗜虐的に老人は笑う。青年はその戦意にため息を吐いた。

 

「あまり身体を壊さないでよ」

 

「どちらもありうる…。そんだけだ」

 

「ふざけんなジジイ」

 

軽口を叩き合いながら、その死地へと足を踏み入れる。

ゾアッと、自身の肌が異界律に晒されて、鳥肌が立つような感覚に襲われる。

死を直々にナイフとして突きつけられたような、濃密な雰囲気。

生得領域により外界は閉ざされ、暗黒と月、そして無数の墓が点在する空間を鹿紫雲は睨みつけた。

目の前に存在するのは、屍喰らいの鬼であった。

 

呪術総監部に、その呪霊の名が残されている。

アラビア圏における伝承の魔物。日本では餓鬼と呼ぶが、明確には違うらしい。

その名前を屍喰鬼(グール)と呼ぶ。

その名が示す通り、死骸を貪り喰らう鬼だ。

二級呪霊として換算されているが、彼らは大体、集団(グループ)で行動を行う。数の暴力による応戦により、経験不足の術師はなす術もなく殺されることもあると言う。

ただし、体術に秀でているならば、非術師相当でも一体くらいは倒すことができる程度だ。

この存在の奇妙な所は、非術師にもその存在が確認できてしまうことである。

呪いと死体が入り混じったことによる受肉体のような存在が彼らであった。

その為、総監部は見つけ次第、駆除を命じている。

 

しかし、目の前にいるのは、そのような雑魚ではなかった。

 

筋骨隆々の二メートルを優に超える体躯。その二の腕や太腿はまるで丸太の如く、隆起しており、ゴム質の皮膚はそれだけであらゆる攻撃へのクッションとして作用する装甲を成していた。

その顔は野生味溢れる獣のような顔つきでありながら、人間のようでもあった。

孕んだ呪力は凡そ、自分の2倍はあるだろう。

その屍喰鬼は、その口を開く。

嗄れた声と唸り声が混ざる独特の発音、しかし辛うじて日本語が彼から発せられる。

 

「術師か…、済まぬが我々を見逃してはくれないか」

 

屍喰鬼はそう呟き、その腰を墓に据えた。

奇妙な事に、その呪霊は人語を介し、ましてや契約を持ちかけにきた。

先日出会った真人という呪霊と同じ、人語を介する呪霊であった。

 

「我々は、元人間。死から蘇り、浅ましい獣となったのが我々よ」

 

自嘲するよう、その人獣は嗤った。

彼からの話はこうだった。

我々、屍喰鬼は元々人間であり、一度死んでから蘇った存在であること。

蘇った影響で魂の歪みにより、獣のような姿に成り果てたこと。

我々のグループは人を殺してはいないこと。

この三つを提示した。

 

「あん?つまりオマエら以外のグループは殺してるってことだろ」

 

老人がそう答える。青年はふむ、と考えるそぶりを見せ、鹿紫雲の手の甲に口を作り出し、屍喰鬼に話す。

 

「見逃す理由がありませんよね。何か提示できる物はあるんですか?」

 

「我々の秘宝をやる。戦国から伝わる特級呪具だ」

 

「ダメだ。もう一つ追加しろ」

 

老人がもう一つの縛りを提示する。

 

「俺と戦え。オマエ、中々やるだろ」

 

戦意上々、この交渉中、ずっと我慢してきた戦意を鹿紫雲は抑えることができなかった。

屍喰鬼はその雰囲気を悟り、頷いた。

 

「分かった。殺し合おう。しかし、一つ条件だ」

 

「なんだ」

 

「私以外には手を出すなよ」

 

屍喰鬼は立ち上がる。呪力が跳ね上がる。この簡易的な領域による死者への後押し(バフ)が更なる力を鬼に与えた。

鬼に金棒とはこのことだろう。

その立ち昇る呪力に反発するように、バチバチと紫電を激らせるのは、戦闘狂の雷神、鹿紫雲一。

 

「オマエ、名前は?」

 

「そうだな、(グウェイ)とでも呼べ」

 

「俺は鹿紫雲だ」

 

互いに、如意と拳を構える。

先に動くは、雷神。

鬼の巨大な体躯に入り込み、如意を空中に放り投げ、無手でのラッシュで攻める。

生体電気を増幅させたその乱打により、腹、鳩尾を貫き、五臓六腑を破壊するはずであった。

ましてや雷を拳に乗せているのだ。目の前の巨体は雷や打撃など、なんのそのと鹿紫雲を剛腕で掴みかかる。

 

「オマエの身体…、絶縁体(ゴム)かよ!」

 

「奮ッ!!!!!!!!!!」

 

鹿紫雲を掴み、全体重を乗せ、グウェイは背負いなげる。迸る呪力とその馬鹿げた筋力は、鬼の力を雷神に叩きつける!

呪力で護ったとはいえ、軽減できたダメージは微細。ダクダクと血が頭から流れるが、即座に反転術式を行使する。

 

「いいんじゃない?」

 

血を拭いながら、グウェイの身体を蹴り上げ、間合いを取る。

 

「だが、何処までその身体は耐えるんだろうなあ!?」

 

鹿紫雲は笑いながら、上に放り投げた如意を磁力で引き寄せる。

グウェイは丁度、鹿紫雲と如意の間に存在していた。

グウェイの体に、如意に貯められていた電荷(呪力)が炸裂した。

絶縁体にも電気が通る限界(リミット)が存在する。

輪ゴムが落雷を止められるわけがない。今放たれたその雷撃は、落雷の凡そ10倍に匹敵する!

 

「ぐおおおおッ!?オォ!?」

 

絶縁破壊。ゴム質の体を凄まじい豪雷が爆裂する。

雷神はその痺れによる緩慢な動きを見逃すことはない。

 

春雷(しゅんらい)!」

 

電気を纏わせた二連撃、沸る戦意に久々の強敵、鹿紫雲は今

 

その限界を越えようとしていた!

 

打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間 空間は歪み

呪力は黒く光る !

 

黒閃

 

豪雷が如きが、鬼へと炸裂する。

二度目の死が今すぐそこに迫っている。

吹き飛ばされ、領域内の墓を自身の巨体で破壊しながら、内殻へとその身体を叩きつけられる。

一度死んだ彼は、もう一度死へと向かっている。

意識が霞む。見えてくる。闇に呑まれる。

 

二度目の死により、彼は呪力の核心を掴んだのだった。

 

彼が死んでから生きてきた時間 五百年!

戦国の妄執がその手を結ぶ。

ひしゃげた身体を全力で治し、その回復力を腕へと当てた。

 

1秒。ここが鹿紫雲もグウェイの戦いであった。

 

両腕の回復、即ち、思考を加速させ、導き出された答えに鹿紫雲は全速力で地面を蹴り、内殻へと迫る。

グウェイ、両腕の回復完了。その手を、結び合わせる。

 

結ばれし掌印は、『来迎印』!!

 

「あんまりワクワクさせんなよ!」

 

「領域展開」

 

武士の本懐、霊園(ここ)に刻む!




グウェイ、とあるシナリオで自分が作ったボスだったりします。
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