打撃音がこの世界に響いていた。
魔虚羅と宿儺を徒手空拳で攻める鹿紫雲は、そのボルテージを黒閃により爆上げしていた。
「スワンプマンの仮説を組み込んだこの拡張術式…『天命泥濘体』は沼から俺を作り出すことができる。沼から這い出てきた俺は、今の俺の知能、記憶、経験値全部を引き継ぐ」
術式の開示ーーー宿儺は数を捌きながら電撃を呪力を纏い、抵抗していた。
鹿紫雲たちの連撃により、掌印の組み直しもままならない状態が続く。
今でもまだこの怪物が倒れていないのは、呪術の圧倒的才覚と戦闘センス、そして圧倒的なタフネスのおかげである、
「ほう、術式の開示なぞ、小狡い真似をするな?」
『解』
磨き上げられた『解』が鹿紫雲たちを襲う。死を恐れぬ兵隊と化した彼らは、自分の命すらコストに変換しながらその凄まじい威力を分散させ、数を増やしていく。
「なぁに、別に使える技術を使ってるだけだ。今の時代は便利なもんだよな?知識は変な板から採取できるし、タダで本を読み漁れる。俺の術式は今の時代にピッタリと合ってる…例えば、こんなふうになッ!」
指に挟んだ鉄屑をローレンツ力により撃ち出された。
ジュアッと一瞬の閃光が宿儺の身体を貫いた。
焼け焦げた胴体からは血すらも蒸発し、宿儺の身体のバランスが崩れる。
「電磁投射砲ーーーレールガン!呪力のバリアなんざ、クラック済みなんだよ!」
電気加速により怒涛の攻めを駆け出そうとしたーーーしかし、鹿紫雲たちはその半数が一瞬で泥濘へと帰る。
宿儺は、その肉体を大きく変容させながらその指を世界に向けていた。
「ようやくだぞ、魔虚羅…。この領域に、適応したな!!!」
『ガゴンッ!』
バリバリと世界が崩れ始める。しかしこのまま終わる鹿紫雲ではなかった。
一人の鹿紫雲を残し、その他の沼男たちが雷と成る!!!
「術式解放『幻獣琥珀』!!!」
完全解放された術式により、世界を閃光が埋め尽くす。数十は空から星が落ちるように、もう数十体は地面を蹴り穿ち、戦車砲のように、残ったものは雷のエネルギーを濃縮させ、他の鹿紫雲を巻き込みながら世界を焦がす。
その狙いは、宿儺とその後ろに存在する巨躯の式神。
閃光が領域を貫いた。
煙が舞い上がる。鴉が雷と轟音で数十体が地面へとボトボト落ちる。
その煙を掻き切って、生身の鹿紫雲が煙の人影を掌底せんと迫る!
しかし、その拳は煙から出てきた四つの手のひらに阻まれた。
顔面を掴み、掌底を繰り出した拳を掴み、残った2本の腕でラッシュをかける。
内臓が潰れ、骨が砕け、そして最後のお見舞いと言わんばかりにその呪詛が
本来あるべき臍の部分に大きな口が舌を鳴らす。
宿儺に残されていた切り札の一つーーー受肉の再開により、宿儺の消耗はゼロとなった。
「『捌』」
顔面を膾に卸された鹿紫雲は、まるでカットトマトのように顔面がズレるのを残った掌で抑え、反転術式で脳だけは瞬時に直しきる。しかし、掴まれた腕を宿儺はボキリと本来向くべきではない場所に折り、地面に叩き伏せ、更に『捌』により切り刻む!
まさに輪切りと言った形で地面へとボトボトと落ちた。
右腕を喪失した鹿紫雲は、満身創痍と言った形で地面に崩れ落ちていた。
「天晴れだったぞ。鹿紫雲一…、お前との闘いを生涯忘れることはないだろう」
煙からその姿が見える。四本の腕、二つの口、呪術師としての圧倒的なアドバンテージが総計二倍!まさに術師の頂点の姿に鹿紫雲は、サーモグラフィのように変化させたなけなしの呪力で把握した。
術式の焼き切れと共に理解する。なんて美しいと。
しかし、感動している場合ではない。今死ぬべきではない。
俺には、まだ
雷の呪力が鹿紫雲のボロボロの顔面を焼き切った。自害とも言うべきそれの目的はーーー
「『反転術式』か…」
「正ッ解!」
指を弾くとともに、小石が雷速で放たれた。
「(術式の焼き切れが終わっている!?早すぎる!まさか脳を焼き切って反転術式を回したのか!?)」
「エクストラターン!楽しんでいこうぜ…!宿儺ァ!」
掌底による打雷が宿儺を穿ち、黒い花火が仙台に響く!
「クソガキが…!」
その轟音にかき消されていたが、一人の男の呪詞がこの戦場に向けて放たれる。
「避けてよね。『九網』『偏光』『烏と声明』『表裏の狭間』ーーー」
膨大な呪力が、領域崩壊した世界に混じり始める。
「テメェ!」
「貴様…!」
「「五条悟!!!」」
二人の声が合わさった。その言葉と同時に放たれる現代最強の120%の大技。その名もーーー
「虚式『茈』」
ボッ!という音が仙台結界を呑みこんだ。この世界に新たなる伝説が刻まれる!
現代最強!五条悟!エントリー!