紫電奔る   作:浜騎士

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モジューロいつもありがと、人の心がないマコラ爆撃は最悪なんだよな


三者其れ其れが120%の潜在能力(ポテンシャル)を引き出すに至る

黒い球体___領域の外殻に罅が入る。

中から現れるのは、三人の男たち。内部での激しい戦闘を物語る傷跡は、反転術式で癒えていく。即座に殴り合いへと発展する。彼らの構えは我流!そのすべてに通常の術士とは比べるべくもないエネルギーを内包している。

しかし今までの継戦は確実に鹿紫雲を蝕んでいた。

万、宿儺、八握剣異戒神将魔虚羅…その全てが鹿紫雲の命に届きうる敵であった。

 

「休んでていいよ、鹿紫雲」

 

「ざけんな、まだまだこれからだろ」

 

強がりだ。五条は鹿紫雲のコンディションを完全に理解していた。呪力もすっからかん、いままでの戦闘の負傷…、今ここまで動けているのも不可解なほどだ。だが、鹿紫雲の戦闘の意欲は収まっていない。逆にこの逆境を覆すタイミングを見計らっている。

 

「「領域展開」」

 

術式の焼き切れからの回復直後の六度目の領域展開。無量空処を伏魔御廚子が解体するまでのインターバルは約150秒!外殻に罅が入る音を聞きながら、三人の徒手空拳が空間の面を叩きながら弾ける。鹿紫雲は領域展延にてダメージを軽減しながら雷を纏う掌底を宿儺の鳩尾へ叩き込む。麻痺が宿儺を襲い、そこへ五条の蒼の正拳突きが顔面に叩き込まれ、黒い火花が散る。顔面への呪力の守護を容易く砕かれた顔面と吹き飛んだ異形の目を反転術式で急速に治癒する鬼神への猛攻は、領域が砕かれるまで行われる。

鹿紫雲の卓越した体術による膝蹴り、肘打ち、頭突き、踵落としで攻め、自分の領域展延が削りきられる前にこの魔人の体を撃ち抜く。その内、踵落としにて黒い稲妻が世界に響く!黒閃により鹿紫雲のポテンシャルは更に解放されていく。

彼らの戦闘が開始し、インターバルを含め9分21秒の時間が経過している。鹿紫雲は音速を超えた回し蹴りで顎を粉砕するために振りぬいた。瞬間、その足を右腕と右足で挟み込み、足を呪力放出によりプレス機の如く筋肉、骨ごと潰し、残された三本の腕でラッシュをかけ、鹿紫雲の意識を混濁させる。宿儺が空の面に足を置き、呪力放出で音速に至る爪先蹴りが、鹿紫雲の下腹部に突き刺さった。

それが、致命的な一撃となる。黒い閃光が火花を上げた。領域展延で軽減しているとはいえ、それは致命傷だ。臓腑へ突き刺さった爪先から噴き出した呪力放出で領域の外殻に叩きつけられる。

その衝撃で、外部から伏魔御廚子の斬撃を受け続けていたこの世界が崩壊する。

両面宿儺の領域展開『伏魔御廚子』が仙台を切り刻み、御廚子を中心に半径約200mの戦場を平地へと変化させた。

五条、宿儺は健在。五条家の特異体質である『六眼』は、原子レベルの緻密な呪力操作により、隔絶した呪力効率を誇っており、この三人の中で呪力量が一番少ないにもかかわらず、息切れすらもしていなかった。呪力の消費量が自身の恒常的な自己補完の範疇に収まっているからだ。宿儺もまた五条程とは言わないが、効率的に呪力を操作し、呪力切れは起きていない。それは宿儺が持つ圧倒的なほどの臓腑に刻まれている呪力量。この世界に生れ落ち、迫害され、臓腑を焼き焦がして千年。世界への憎悪とも言える怨念は、五回程度の領域展開で枯渇するわけがなかった。宿儺は既に平安時代の異形の姿を持つ。四本の腕、二つの口、呪術師としての圧倒的なアドバンテージが、この戦闘での宿儺のイニシアチブを齎した。この二人の実力は拮抗していた。

しかし鹿紫雲は、この二人と違い、圧倒的な呪力効率も、呪力総量も持ち合わせていない。加えて拡張術式『天命泥濘体』、領域展開、術式開放、反転術式…、これらの消耗は明らかに鹿紫雲へ劣勢を強いていた。

 

「(呪力も殆どねえ、あの式神はぶっ潰したが…)」

 

鹿紫雲の戦闘への執念は未だ枯れていない。自己補完の範疇で呪力は回復しているが、しかし継戦能力は他二人と比べれば、ウサギとカメだ。この場所で一番の脅威であった八握剣異戒神将魔虚羅を天命泥濘体による泥人形たちの絶命の縛りで粉砕した。肩で息をしながら空中で、鹿紫雲がいないものとして暴れる鬼神と神才、圧倒的な才能をまじまじと理解させられる。

突っ込めば死ぬ、当然の帰結の殺意の領域が目の前に広がる。

今引くべきだと自分の中の危険信号が脳に警笛を鳴らす。今引いてインターバルを挟めばいいだろう。

 

だが、それは雑魚の思考だ。

宿儺への致命傷を与える手段はただ一つ存在する。『幻獣琥珀』の術式解放のみである。

五条悟もまた、決定打を決めあぐねていた。

五条悟の持つ最大火力の虚式『茈』を無制限で放つことが必要だ。しかし無制限で放つ場合、呪詞、掌印が必要になる。戦闘でのそれは大きな隙になりかねない。

そして呪いの王である宿儺は、五条悟の無下限呪術の攻略を果たせていなかった。本来であれば、魔虚羅による適応で術式を無効化することを考えていたが、鹿紫雲ただ一人に完全に破壊されている。十種影法術もまた失われていた。現在の手札は『解』と『捌』…そして領域展開『伏魔御廚子』と『竈』のみ。

三者、立ち上がり、各々が掌印を構えた。

 

「「「領域展開」」」

 

閻魔天印、帝釈天印、不動剣印

 

「『伏魔御廚子(ふくまみずし)』」

 

「『無量空処(むりょうくうしょ)』」

 

「『碧輝殺風景(へきこうさっぷうけい)』」

 

黒閃は微笑む相手を選ばない。全員が全員、その火花の寵愛を受け、呪力の理解を深めていく。

 

これにより、三者其れ其れが120%の潜在能力(ポテンシャル)を引き出すに至る。

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