「
「胎蔵遍野」
現在のこの領域内は、月の重力——————地球の約1/6——————と同等である。これは九十九が領域に付与した超重力と羂索が領域に付与した反重力が混じりあったゆえに起きた領域内の法則であった。九十九の狙いは術式なしの
だが、羂索は余裕の笑みを浮かべた。鼻から漏れ出た血液を親指で拭いながら思考する。
「(問題ない。私はこの状況を耐え抜くだけ。術式効果による圧殺は私の反重力機構で無効化できる。恐らく殴り合いの土俵に私を持っていこうとしている)」
羂索の勝利への道筋はこの閉じない領域を拡張し、敵対勢力をすべて吞み込み、術式反転で圧殺する!恐らくは領域勝負は1分以内に私の勝利に終わる。
「(1分耐え抜けば、私の勝ちだ)」
勝利の確信!九十九由基は私の敵ではない!呪力量も、術式運用も、呪力効率も!
ゆえに、羂索は見誤っていた。目の前に迫る1億人呪霊が目の前に見えている!
それに、目が眩んだ。その黒い星の輝きを!
本来、領域に術式を付与した場合、術者本人はその術式を使用できない。
ならば、術式が練り歩いている目の前の存在は?
その答えは—————————握られた右拳にある。
超重力が生み出す破壊の本流。星すら打ち砕く一撃が、この
両者の領域展開から、わずか19秒。
仙台の一角が文字通り、消滅した。
「…なるほどね。甘く見ていたよ」
夏油傑の身体を操り、渋谷事変、死滅回遊という大規模な呪術テロを巻き起こし、60年後にも夏油傑の名前を世界に刻んだ平安術師、羂索は敗北した。既に下半身は吹き飛ばされ、右腕も肩から先が存在せず、左手も超重力を堰き止めた影響でぼろくずのように見える。
「術式こそが九十九由基。だから領域も君本人だったわけか」
残念そうに、そして面白そうに笑う。
「羂索、面白かったかい?私は面白くはなかったけど。天元への借りは返した」
「ああ、超面白かったよ」
羂索は笑う。そして嗤った。
羂索は短時間で領域は展開できない。五条悟や両面宿儺のような超越者ではない。反転術式で焼き切れた脳を治癒することは幾度も手順を踏む必要があったし、まず領域を数回も展開することなどもできない。
だが、術式が死んだわけではなかった。
嫌な予感はしていた。呪力が領域展開ですっからかんになっていた九十九は肉体と微細な呪力強化で羂索の脳を破壊しようとした。
「残念だよ、世界が大きく変わる時代のうねり、その起点を見られないなんてさ」
1億人には及ばない、5000万の濃縮された悪意———人間の本質が産み落とされた。
絶命の縛りが織りなす最悪が出現する。
「ハッピーバースデイってやつさ」
継ぎ接ぎされた顔が空に浮かぶ。まるでうずまきのようにねじくれたそれに見覚えがある。見覚えしかない。あらゆる死を齎し、魂を歪め、弄んできた奴に…。
虎杖悠仁に更なる戦慄が走る。
それは、悪意であり、恐怖であり、叫びであり、悲哀であり、絶望であり、虚無であり、そして愉悦であった。
「なんで生きてるんだ…、真人ォオオォオォォオオォオオッ!!!」
真なる人が、悪意とともに帰還する。
2000人のお気に入りを呪力に乗せろ!ありがとう、ハーメルンのみんな1俺は一人じゃない!勝てる!次回は宿儺戦最終!そして再誕真人戦!