紫電奔る   作:浜騎士

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オリジナル呪霊くん、活躍シーン


おい、あんまワクワクさせんなよ

「領域展開」

それは、あらゆる術師にとっての最終的に至る戦闘技術。

術式の最終段階であり、呪術戦の極致の技巧。

しかし、これを習得し自在に使いこなせる者はごく限られている。

それは、鹿紫雲でさえ同じである。

術式を使えば死ぬ鹿紫雲は、術式を成長させることすら出来ない。

世界を塗り潰し、自己の世界を上書きする。

それこそが、領域展開!

 

シャン!と鈴が鳴り、純白の空間が広がる。

そこには、あらゆるミイラが印相を組み、真言を唱え続けていた。

ミイラたちがテーブルを回転させるように廻る。

領域の内郭を廻り続けているのだろう。

異界律が展開され、鹿紫雲の身体から呪力が立ち昇る!

 

「なんだ!?俺の呪力が跳ね上がりやがる!」

 

「それこそが、私の領域の効果よ」

 

鬼が仁王立ちで鹿紫雲を見下ろしていた。

 

「私の術式は”長生者”。長く生き延びるだけの術式」

 

「(術式の開示!)」

 

領域の効果が跳ね上がる。相手に自身の術式を公開する縛りにより、目の前の存在の呪力が更に上昇する。

先程の呪力とは段違い。隔絶した力が暴風のように鹿紫雲に叩きつけられる。

 

「この領域の効果は簡単だ。鹿紫雲、貴様も感じているだろう。我々の呪力が上昇していることに…」

 

「それが何だよ。お互いベストな状態で殴り合おうぜって術式か?」

 

鹿紫雲はそう言うが、老人も青年も違うだろうことは把握できていた。

自身の呪力の上昇率と相手の呪力の上昇率、倍率が違うのだ。

 

「違う。この領域の中では、死者こそ尊ばれる。驚いたぞ鹿紫雲、貴様も死人だったとはな」

 

グウェイはそう鹿紫雲に問いかける。

 

「この領域は、我々(死者)が仏となる。そう言った領域よ」

 

それが、グウェイの領域展開。

その名をーーー

 

「即身仏界転輪」

 

「この領域の法則性は単純よ。死んでから生きてきた年月だけ、呪力を上昇させる。そしてーーー」

 

鬼が姿を消す。

瞬間、鹿紫雲は凄まじい打撃を胴体に喰らった。

吹き飛ばされる鹿紫雲、真っ白な空間の壁に激突し、破裂した臓器を必死に反転術式で治す。

 

「(何が起こった…!?生体電気を極限まで上げたんだぞ!?それでも見えねえって事はあり得ねえ…)」

 

空間の仏たちが回転を始める。仏の数は、十二。

回転と十二、そして瞬間移動のような力。

思考を青年は巡らせた。限りなく安直で納得できる答え。

青年がその答えを出す。

 

「時間の拡張!?」

 

老人はその答えを聞き、驚愕する。江戸で戦った強者にもそのような馬鹿げた術式は存在していなかった。

五百年余りを生き、思考してきた者に許される新たなる時間と術式の解釈は、グウェイの領域を更なる世界の拡張を起こしたのだ。

だが、老人には奥の手がある。相手が仕掛けるのを待つ。すぐさま、掌印を結べるように。

 

「よく気がついたな、生者よ。そう、この領域のもう一つの効果は時間の拡張!」

 

グウェイがそう言い放つ(術式開示を行う)と同時に迫る!

鬼の一撃が鹿紫雲に放たれる。迸る呪力と鬼の一撃、かけ合わされば、江戸最強の男もタダでは済まない。

更には回避不可能!領域の効果による必中効果は鹿紫雲に回避を許さない!

仏の回転が終わり、彼らが鎮座する。

真言が区切りを迎える。

 

「(来る!)」

 

時間を超越した一撃、鹿紫雲に迫る!

鹿紫雲は両手を重ねるように組み合わせた。

ーーーそれは、今は弱者の為の技として伝えられてきた奥義の原型。

領域の結界の中和を行う過去、存在していた奥義。

葛籠に自身を閉じ込めるように、虚空が満ちていく。

 

「彌虚葛籠」

 

領域の必中効果の中和。

時間の拡張には、待機時間(インターバル)が存在する。

仏が一回転し、真言を唱え終わる事が条件である。

この縛りによって、この領域効果を使用することができるようになっていた。

グウェイの拳が空を切る。

 

「あんまりワクワクさせんなよ!」

 

雷神の拳打が、グウェイの顎を撃ち抜いた。

雷を纏った拳、黒閃を体感した覚醒(ゾーン)状態、グウェイの慢心による防御に回さず、攻撃の為に拳に全て回した呪力、様々な要因が重なった結果、グウェイの身体は、崩れ落ちる。

グウェイと共に領域も崩れ出す。

 

「今の時代も悪くねえ、テメェみたいなのがわんさかいるならな」

 

嗜虐的な笑みを浮かべ、拳を振り上げた。

 

鬼 vs 雷神

勝ち残るは、鹿紫雲一であった。

 

 

グウェイが目を覚ませば、そこは墓地であった。

あの世界はもう目の前にない。

グウェイは負けを理解した。

 

「殺すつもりで殴ったのに、中々頑丈だな、グウェイ」

 

目の前には、墓に座った鹿紫雲がいた。

 

「約束通り、呪物は貰っていくが、テメェらの命も取らないでおいてやる」

 

グウェイにそう、彼は言った。

青年は老人に何度か話したのだが、老人は頑なに許さなかった。

 

「蟻を潰すのに何で俺が躍起にならねえといけねえんだ、師匠の言う事は絶対だろ」

 

「…、まぁ良いです。”縛り”ましょう。グウェイさん」

 

その縛りは、自分たちが害されない限り、人を害さない縛り。少なくとも、これである程度は問題ないだろう。

 

「それで、その戦国の呪物とやらは何処だよ」

 

「待っていろ、きっと気にいる」

 

グウェイが配下の屍喰鬼に持って来させたのは、如意であった。

かつて戦国にて存在した武士が扱った雷を宿す杖。

グウェイはそれを彼らに差し出すと、こう言った。

 

「我々の平穏を乱さないでくれて感謝する。そして、貴様のような強者と闘えて楽しかったよ。鹿紫雲」

 

「いつでも再戦しに来いよ、待ってるぜ」

 

「嫌、学校とか人目があるところではやめてくださいよ」

 

三者が言葉を交わす。三者とも違う笑い声ではあったが、今宵の闘いは満足できるものであった。

して、いきなり墓参りから抜け出しこんなに真夜中まで殴り合っていたことを知らぬ両親に凄まじい剣幕で説教されたのは、自明であった。

 

 

学校の始まる9月1日から数日が経ったとある日、奥多摩でいつもの修行の最中、帳の存在を鹿紫雲たちが確認する。

濃密な呪力が彼らを誘う。

紫電が、帳を貫いた。

 

雷神、森林の畏怖と邂逅する。

 

そして、親友(マイフレンド)たちもまた、雷神の躍動を見る!




京都姉妹校編、乱入!
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