帳から現れたのは、青緑色の髪をした青年だった。
東堂葵に戦慄が走る。
「(なんだこの術師は…!呪力のブレが無い!)」
呪力のブレ、少なからず様々な術師には癖が存在する。
これは、自分の知る東京校の乙骨ですら例外では無い。
「(呪力総量は乙骨は超えないが、操作能力は段違いだろう)」
東堂は構えを取る。
虎杖悠仁が黒閃を経験し、更に連続して発動したタイミングでの乱入。
花御、虎杖も同じように、新たなる闖入者を警戒していた。
「『何者ですか?』」
「何だこの声、気持ち悪いな」
鹿紫雲はそう吐き捨て、地面を駆ける。
残光が残され、花御の目の前に雷神が現れる。
凡そ10mを一瞬で距離を詰めた。
鹿紫雲の手に握りしめられていたのは、特級呪具『雷吼』。
紫電が迸る如意を花御へと突き出した。
「一番強いのは、テメエだろ!『神槍』ッ!」
神速の突きが花御の胴体を貫く。
落雷が如き轟音、バチバチと花御の身体が弾ける。
「あ? おいテメエ呪力がねえのか?ガッカリさせんなよ…」
舌打ち混じりで如意を器用に振り回す。パリッと電気が弾ける音がした。
鹿紫雲は呪力によるサーチでこの辺り数百メートルを索敵する。
そこにもう一つの呪力を感じる場所がヒットした。
「別の場所に行くか?」
その言葉に反応したのは、二人の男たち。
虎杖悠仁と東堂葵、両者が構えを取った。一人は黒閃を経験した
かなりの手練れだろう。鹿紫雲は笑い、構えを取る。
そこを狙う花御、自身の呪力の流した木々での全体範囲攻撃が辺りを根こそぎ揺るがす。
崩落する地面、舞い散る砂埃が3人を襲う。
「見逃してやったんだぞ、オマエ」
紫電が迸る。花御へと雷撃と拳打、そして如意が放たれる。
生体電流の増幅、そして花御の巨体が掛け合わさり、鹿紫雲にとって花御はサンドバッグに等しかった。
豪雷の乱打が花御の身体を破壊していく。
「『抜け出せないッ!早すぎるッ!!』」
「遅いなぁ、テメエ!」
濃密に練り上げられた呪力、黒閃を放った虎杖と同等、もしくはそれ以上の膂力で花御を攻め立てる。
殴られるたびに増幅する麻痺、増していくスピード、昂る戦闘欲。
花御は絶対的な境地に晒されていた。
苦し紛れの呪砲で鹿紫雲を撃ち抜くが、閃光と共に放たれた如意の薙ぎ払いでその砲撃はかき消される。
だが、如意を持ち直したことで拳打の連撃が止んだ。
ここで、花御は自分にとっての禁じ手を使用することを決めた。
花御は、自身の腕を地面へと置く。
瞬間、辺りの木々が枯れ始める。
「『植物は呪力を孕みません』」
生命力を吸収し、花御の呪力とする。
凄まじい呪力が辺りの空気を圧迫する。
「『これは、貴方たちへの供花です』」
「オマエの為の間違いだろ」
“供花”は、花御にこの戦闘を有利にする手札であったが、花御にとって、
それと共に3名を巻き込み、更なる決定打とする為、掌印を組む。
東堂葵の術式の警戒、そして鹿紫雲を殺すための一撃だ。
呪力が廻る。木々が咲き乱れ、青空が広がる。
「『領域展開』」
「
「遅えッ!」
雷神はそれを許すほど優しくは無い。
領域展開の対策は複数存在する。
先日使用した彌虚葛籠やシン陰流簡易領域、落花の情やより洗練された領域展開での塗り潰し。
だが、鹿紫雲にとっては領域展開をされた所で、上記以外に二つの解決方法がある。
鹿紫雲のスピードであれば、外郭が形成される前に領域外へ逃げる事も出来るだろう。
「(それは、雑魚の思考だ)」
もう一つは最速で殺すこと。領域が全てを塗り潰し、異界律が展開される前に術師を殺し切る事。
鹿紫雲には、それが出来る。
領域が広がり、青空と螺旋状の木々が作り出されていく。
だが、全てが完了する前に、花御に豪雷が炸裂した。
花御のタフさは異常であった。先日出会ったグウェイを容易に超えるタフさ。だが、ここまでの戦いの疲弊、呪力の喪失、そして
「『打雷』」
鹿紫雲の実力が花御を圧倒していたのだ。
雷鳴が轟き、地面が抉れる。
そこには、花御は存在しなかった。
ザフッと、聞き慣れた呪霊の消失反応。
あそこまで苦戦した相手をこうもあっさりと祓われ、虎杖と東堂は冷や汗をかく。
「(なんて膂力と呪力操作、しかもこの男…)」
「(術式を使っていないッ!)」
東堂は驚愕した。あの怪物を術式なしで下した相手に今の俺たちで勝てるのかと
「次」
鹿紫雲が好戦的に笑う。
中にいる青年は、こうなった老人を止める術を思い浮かばなかった。
「流石に殺さないでくださいよ。縛りもあるんですから」
青年も、二ヶ月ほど共に生活すれば嫌でも慣れてくる。
青年は、老人へ警告と愚痴を呟く。
その状態を虎杖と東堂は目撃した。
「
「おう、主導権は呪物の方にあんのかな」
「だろうな」
東堂の脳は正解を導き出す。
青年と老人は協力関係であるが、あくまでも主導権は老人の方にある。
縛りを結んだとなると、友好的ではあるのだろうが、どうやら欲望はそうではないらしい。
「オマエらも消耗してんだろ?さっさと消えろ。雑魚に用はねえ」
東堂は確信した。目の前の雷神は、戦闘狂だと。
別の場所へと向かわせない為には、自分たちの価値を示すしかない。
東堂はこの短時間でこの感覚を何度も体験していた。
“退屈が裏返る予感”だ。
練り上げられた呪力で遊雲を握りしめる。こんな場所で死ぬ気も毛頭ない。
「男、オマエの名前は?」
「鹿紫雲だ。オマエは?」
「そうか。俺は東堂葵、オマエに一つ、聞きたいことがある」
「何だよ」
鹿紫雲は東堂を、敵として認識した。
両者が構えを取る。戦意と共に紫電が鹿紫雲から放たれる。
「どんな女が
「は?」
青年の思考は停止した。
「春雷」
二連続の拳打。あらゆる状況に合わせて弱点を貫く。
「打雷」
雷パンチとかの打撃、内部から爆散する
「神槍」
凄まじいスピードでの貫手、如意での突き
そんな感じです。
ちなみにカシーモ(老人)は、精神世界だとお爺ちゃんですが、外に出てくるとバリバリ原作口調になります。
多分、器と適合しちまう…。そんだけだ