紫電奔る   作:浜騎士

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てめぇは誰だよ

一人の青年と二人の男たちが睨み合う。

人数差は男たちが2倍、だが、彼らには隔絶した実力が存在していた。

呪力量、呪力放出、呪力操作、その他諸々

そして異様なのは、青年の呪力が雷と同等であること。

 

変質した呪力ーーー呪力特性。師匠九十九由基から聞いた特異体質だろう。

 

「好きな女?何でまたこんな時に」

 

如意を回し、穂先を向ける鹿紫雲。だが、その表情は困惑していた。

掌や顔にある口も何やら引き攣っている。

 

「気にするな。ただの品定めだ」

 

「(そして時間稼ぎ!今の俺たちではこの男に勝てない!中の特級は祓っている。そろそろこの帳を破壊してやってくる頃合いのはずだ)」

 

東堂はその卓越した思考を巡らせる。

彼らの勝利条件は一つ、現代最強の術師”五条悟”との合流。

 

「…、そんな者、いるか?」

 

唯我、隣に立つ者など必要なし。

生前も女を知らず、只々戦闘に明け暮れた。

どうでもいい。性癖思想悉くがどうでもいいのだ。

 

存在理由は闘いの中で見つける。

それが鹿紫雲一という男であった。

 

「お爺ちゃん。童貞だもんね」

 

「五月蝿え」

 

受肉してから魂の隣にいる青年。

老人とはその悉くが天と地ほども差がある。

しかし、青年は自分を信じ、ここまでのし上がってきた。

老人は笑う。自身の実力を弟子に喧伝する為に。

 

紫電が奔る。

 

「黙って見てろ」

 

不殺(ころさず)の誓い。破るつもりはないが、やり過ぎはよくない。

自身の実力で圧倒させる!

雷が鹿紫雲に落ちる。紫電が獣のように吼えた。

 

「(来るか!)」

 

東堂は特級呪具『遊雲』の三節棍を折りたたみ、簡易的な盾として運用した。

呪力付与による強化で、鹿紫雲からの打撃を防ぐ。

閃光が走る。東堂は大きくのけ反った。

 

「(なんてパワーッ!虎杖(ブラザー)を軽く超える!)」

 

その膂力は現在の虎杖悠仁の約3倍。その衝撃は東堂の腕を襲った。

脱臼寸前、自分の筋力で力任せに入れ直す。

ボコンと、嫌な音を身体で響かせながら、東堂は虎杖と共に鹿紫雲も攻略せんとしていた。

 

「(チョンマゲの呪力はまあまあだな、あの短髪は別に脅威じゃねえ。なら)」

 

東堂へとその凶手は迫る。跳躍と共に踵落としが炸裂する。

風切音が耳に響き、暴風が森を襲う。

砂が舞いながら、東堂はその手を打ち鳴らした。

喝采。拍手が響く。瞬間、東堂と入れ替わったのは、虎杖悠仁。

 

「あ?なんでテメェがーーー」

 

鬼神を宿す拳が鹿紫雲の顔面に炸裂した。

呪力で攻撃に回している状態、更に虎杖の事を特に警戒していなかったが故の大打撃(クリティカルヒット)

単純な膂力、それは鹿紫雲の本来持つ膂力を遥かに超えていた。

肉体のレベルが、存在が違うのだろう。

まるで幻獣を相手にするような感覚であった。

 

「いいんじゃない?」

 

ひしゃげた鼻と破壊された骨をじわじわと反転術式で治癒していく。

 

雷神と鬼神、その体術が激突する。

パワーは鬼神、スピードは雷神が上回る。

更には攻撃の練度が段違いであった。

徐々に虎杖が追い詰められる。

的確に急所を攻め立てる鹿紫雲は、その拳に呪力を込め、ラッシュを行う。

右顳顬、顎、左肩、右脇腹、鳩尾、腹筋。

掌打と雷撃が虎杖を襲うが、その痛みを集中力で押し潰し、鹿紫雲の体勢を崩す足払いが放たれた。

足を払われた鹿紫雲は体勢を崩しかけ、その勢いのまま、足を器用にカポエイラのように振り抜く。

虎杖は両腕をクロスさせ、それを受け止め、鹿紫雲の顔面を右足で踏み抜こうとする。

轟音が地面から聞こえ、土煙が舞う。間一髪で鹿紫雲はその一撃を回避していた。

土煙から現れた虎杖を腰を据えた雷掌で破壊しようと構える。

しかし、それを阻むように鹿紫雲の真後ろから放たれたのは、東堂葵の呪力で強化(ブースト)された膂力で振り下ろされる遊雲。

まともに受けるわけにはいかず、その構えを解き、雷吼を磁力で呼び寄せる。

レールガンのように放たれた如意の突きは、拍手の音と共に空を切った。

 

虎杖の蹴りが鹿紫雲を吹き飛ばす。呪力の総量や出力はこちらが圧倒的に上なのに対し、単純な膂力で鹿紫雲のガードを抜いてくる。

吹き飛ばされた場所に待ち構えていたのは、東堂葵であった。

サッカーボールを蹴るように鹿紫雲の身体を蹴り上げ、遊雲での一撃を狙う。

バチと、雷鳴が轟いた。

すぐさま、両手を合わせようと東堂は構えるが、それよりも前に電撃が襲った。

破裂するような音が東堂の体から聞こえた。

 

「安心しろよ、死にはしねえ。死ぬほど痛むがな」

 

電気ショック。心臓の動きが緩慢になっていく。

心室細動が東堂を襲い、崩れ落ちるところを気合いで耐え切る。

 

「東堂!」

 

「何処見てやがるッ!」

 

雷電、炸裂。

虎杖の脇腹に鹿紫雲の裏拳が突き刺さる。

バチバチと雷が虎杖の体を駆け回る。

だが、虎杖悠仁は止まらない。

その腕を筋力任せに弾き、自分の拳を握りしめる。

漲る呪力が拳に纏わりつく。鹿紫雲は口角を上げ、その一撃を真正面から受けようとしていた。

かつて、戦国より伝わる流派の構えを取る。

相手の攻撃を真正面から受けきり、その膂力を利用し、自身の技巧を叩きつける。

その名を、『戦国拳』。

どうやって俺を攻め立てる。どう攻略しにくる。

鬼神の拳が放たれる。

彼は、黒い火花に愛されていた。

 

黒閃

 

黒い火花が花開く。鹿紫雲の身体を、鬼神が如き拳が抉った。

だが、鹿紫雲は倒れる事はなかった。

自身の呪力を全てガードに回し、その一撃を受け切ったのだ。

卓越した戦闘技巧。そして、虎杖悠仁の身体に異常が起こった。

鹿紫雲の呪力は、電気と同様である。

そんな呪力の盾に拳を突っ込んだ虎杖は当然のように、雷に打たれる衝撃を感じることになる。

 

「悪くない」

 

雷の盾により行動が鈍った虎杖は、すぐさまその攻撃を受ける為、ガードの体制を取ろうとする。

だが、身体が思うように動かない。雷が筋肉への電気信号を阻害していた。

豪雷の音が響く。発勁が虎杖を大きく吹き飛ばした。

 

20メートルは軽く吹き飛び、木々を薙ぎ倒し、岩盤に打ち付けられる虎杖。

今までの戦闘の無理が祟り、彼もまた、意識を失いかけていた。

こんなもんかと鹿紫雲はガッカリし、次の標的へと向かおうとした。

その時であった。

 

漆黒の空が割れる。

空から現れた帳の破壊者が姿を現る。

 

「来たか、『五条悟』」

 

東堂が笑う。規格外が、その目隠しを取り、碧い眼で鹿紫雲を見下ろした。

 

現代最強、無下限の愛子。現代の異能ーーー。

 

五条悟が、その地に舞い降りた。

 

「てめぇは誰だよ」

 

「鹿紫雲だ」

 

感じたことがない感情を鹿紫雲は今、初めて獲得する。

 

現代最強と江戸最強。

 

鹿紫雲のボルテージが上がる。




次回、ごじょせん戦
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