紫電奔る   作:浜騎士

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一か八か、『幻獣琥珀』の限定解放!

領域展延という技術がある。

簡易領域とは違い、術式自体を中和する技術だ。

しかし、この技術を扱えるものは領域展開が可能であること。

その領域自体を自身に水のように膜を張る技術こそが必要なのだ。

鹿紫雲は、今ここで彌虚葛籠という枠を超え、領域展開を習得しなければならなくなった!

 

「(領域展開、考えたこともなかった。俺の術式は使えば死ぬ。術式を使わなけりゃ成長しねえんだ、俺には使えねえと思っていたが…)」

 

簡易領域と領域展延は共通する所が多い。

才能があるのであれば、習得するのは容易い筈だ。

鹿紫雲にとっての壁はまさに自分自身の術式であった。

 

「お爺ちゃん、領域展開できる?」

 

「出来ねえ、俺は術式なんて使ったことがねえ」

 

自死の術式『幻獣琥珀』を領域展開することなんて考えたことがなかった。

だが、やってみなければ分からない!

領域展開を経験せず、領域展延を習得するしか勝ちの目はない!

 

「考えてるとこ悪いけど、攻めさせてもらうよ!」

 

術式順転”蒼”が辺りの空間を削り取る!

ゴリゴリと岩盤、大木、地面が消えていく!

空間の掘削を、地面を蹴りながら収束範囲から逃走し、活路を見出す。

彌虚葛籠は自身の周りを球体のような簡易的な結界を作り出し、呪力で満たすことで呪力と呪力で打ち消すことを目的とした技法だ。

展延はその球体を取り除き、他の術師の呪力を流し込むことで中和すると言った解釈ができる。

解釈ができるならあとは実践、青年はその解釈を老人に伝える。

 

「彌虚葛籠の膜!開けるお爺ちゃん!?」

 

「やるしかねえだろ!『領域展延』ッ!」

 

雷獣が地面を蹴り砕き、現代最強の目の前にその拳を構えた。

その拳は五条悟の無限を貫く為に殴る!音速を超えた打撃と雷が術式の中和を目指すために弾けた。

 

「効かないよ。簡易領域で僕の術式を中和しようとしてるんだろ?残念だけれど、必中の領域以外には効果がない」

 

「それはどうだろうなあ!」

 

雷の閃光が放たれる。

単純な呪力放出で五条を視界を遮った。

考えるな。呪力を腹で回せ!

その拳を無限へと発射する。

 

黒い火花が微笑む。鹿紫雲の理解力が高まり、視界が白黒に染まった!

 

黒閃

 

花火が上がる。

圧倒的な才能への挑戦。雷神と謳われた四百年前の最強は、黒閃を体感したことによる超集中(ゾーン)状態へと陥った。

かつて、戦国にて名を馳せた座頭衆の真骨頂。

彼らはその状態をこう言った。ーーー逆覩(げきと)と。

世界の真実と呪力への理解力、そして精神の中に潜む思考の怪物、鹿紫雲一という青年は一つの活路を作る。

 

「(領域展開の技術が必要なら、させてやろうじゃないか!)」

 

青年の賭けが始まる。

一か八か、『幻獣琥珀』の限定解放!

 

「ーーー限定『術式解放』ッ!」

 

右手の五本指のみの限定解放。五本の指を捨てる代わりに、自死の縛りを踏み倒す!

五本指を失う縛りは、鹿紫雲が治せる範囲で行った。

電気という事象の再現、術式の解放が今、鹿紫雲の覚醒を促した。

解放の目的は、生得領域への術式付与、その感覚を掴むための賭けであった。

 

「『領域展延』ッ!」

 

感覚は掴めた。天才、鹿紫雲は”理解”した。

右手の五本指だけに展開される術式の中和現象。

そこから吹き出した鹿紫雲の呪力が、無限を中和していく。

その雷と化した指を獣のような爪へと進化させ、横薙ぎに振り抜き、無限を切り裂く。

 

「驚いたね。中々やるじゃない。中の子もさ」

 

五条悟の顔に傷が一筋ついた。

薄皮一枚、それでも五条悟は自分がダメージを受けたことを楽しんでいた。

 

「当然だろ。俺の弟子だからな」

 

今しかない。攻める!紫電と共に獣は駆ける。

幻獣琥珀の限定解放、右手五本指のみでも、凄まじい電撃と無駄を削ぎ落とされた戦闘技術が五条を襲う。

右手を翳してその周辺を原子ごと崩す電子レンジの応用技で五条の無限ごと破壊を目論む。

術式反転”赫”による発散の効果で磁場の崩壊、小石を電磁気力(ローレンツ力)で放つレールガンは無限に阻まれ停止する。

単純な電撃に暴走するが如くの疾駆が、五条を追い詰めていく。

無限の壁を崩しかける電光石火が、五条の無限を削り切らんとしていた。

だが、そこで仕留められるなら、最強などという肩書きは背負っていない。

 

「やるじゃないの。でも、まだまだ負けられないんだよね、僕はさ」

 

五条悟がその指を組み合わせる。

その掌印が表すのは『帝釈天』。

天上天下唯我独尊とはまさにこの男に相応しい。

彼の精神世界、生得領域が世界を塗り潰していく。

 

「領域展開ーーー『無量空処』」

 

「『彌虚葛籠』ッ!」

 

その掌を組み合わせ、葛籠を自身の周りに構築する。

だが、その葛籠が一瞬で解体される。

領域の練度が段違いであった。塗り潰された世界には暗黒、ブラックホールに吸い込まれるような感覚、その宇宙全てを塗り潰す飛沫が世界を形作る。

思考が停止する。いや、違う。

 

ーーー思考が完結しない!

鹿紫雲師弟共に、無量空処の領域に付随する能力『無量空処』、その膨大な情報量が脳を押し潰す。

僅か0.6秒の領域展開、手加減してこの威力。

最後の決め手は、指パッチンと共に放たれた赫の発散であった。

岩盤に打ち付けられ、負けを悟る。

雷神、四百年余り生きてきた中での、初めての敗北であった。

しかし、その敗北の顔は、満足げでもあった。

 

五条悟、まさに最強。

 

「くっくっくっ、強過ぎだろ。現代最強」

 

「よく喋れるね、一般人なら一年くらいは放心してるはずだけど」

 

井の中の蛙大海を知らず、自身が感じていた孤独(最強)など、過去や未来に簡単にひっくり返されていたらしい。

清々しい気分だった。負けとはこんなにも悔しく、そして自分の糧になることも。

 

「じゃ、僕の勝ちだから、約束は守ってもらうよ」

 

「わかった。でも分かってるな?」

 

「分かってるよ。宿儺だろ?」

 

「あぁ、戦わせろ」

 

「ちょっと先になるだろうけどね。気長に待っててよ」

 

「はぁ!?約束したろ!」

 

「縛りを結んでないでしょ〜、因みに断ったら『死刑』だから」

 

鹿紫雲は目の前のどぐされをどう処分しようかと考えた。青年もこんな大人になりたくないと思った。

この目隠しは最強ではあるが、最低でもあったのだ。

だが、コネクションが出来たことはありがたいと、老人と青年は思っていた。

術師のコネクション、それは彼らにとって後ろ盾になる筈だからだ。

五条悟の推薦により、鹿紫雲一は一級術師へと昇格試験を受けるが、数日足らずでその試験を通過することになる。

トイレの花子さん、呪詛師”解体者”、産土神を軽々と屠る毎日、一ヶ月という時間は過ぎていった。

 

2018年10月31日

 JR渋谷駅 新南口

 

日下部篤哉(一級術師)、パンダ(準二級術師/昇級査定保留中)の元に

 

「なんだ?上野から脱走したのか?」

 

鹿紫雲一、合流

 

『渋谷事変』開幕




このバトルはうんこ我慢しながら描きました。焦燥感が見える!(見えるか?)
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