戦闘描写の練習に。まだまだ精進します。
アークナイツが楽しい。
ふと振り返れば、必ず思い出す光景がある。
エゾムラサキの群生地。
見上げれば夜明けの瞬間。
朝日へ落ちていく一筋の空の涙。
ああ。
感嘆を呻く間もなく、滲むものがそこにはあって。
届かないものを、ただ眺めるだけに美しさは映えて。
そこに
されど、祕められたのはまるで怒りのような熱だった。
あの日、宇宙より降り注いだ含光基子は全てを焼き払い。
残るものは、過去の依代のみである。
2017:07/19:AM11:00
第56学区・末梢
廃棄区域・雑居ビル跡/裏通り
気温 40℃ 屋外
含光基子濃度 +4.09
帰り道。
なかなかに処理に手こずり、朝ならぬ昼帰りとなってしまった。
お陰で寝不足だ。
人目と太陽光を避けつつ、駆け足でコンクリートジャングルを抜けていく。
これから更に基子濃度が上がっていく。昼頃のピークとなれば、中和装置の負荷がヤバい。携帯用....最新鋭レベルとなれば整備費も馬鹿げた桁だ。社長に怒られる。
まあ、そんな風に。油断していたのがいけなかったのか。
汗が滲む。
少し目に染みて、顔を振ったからだろうか。
干からび、白く輝くコンクリートに佇む、
場違いな、黒い外套を幻視した。
小さな、布の擦れる音。
己のテンポと違う、途切れ伝う軽音。
切り取られたかのような嫌な予感。
知覚、認識、判断、指示、行動。
その一連の活動を終える前に、誰かはそこに動いていた。
一つ、腕を絞られる。それは知覚できた僅かな予備動作。
二つ、足はテンポを刻むように。
歩幅に合わぬ速度、空気を切り、
地を押し流すように視点は滑る。
はためく袖の影からのぞく刃物。
逆手から順手へ。
滑らかな回転はまるで刃が生えたかのように思わせる。
三つ、
私はナイフを見た。
「___フッ」
浅い息。
必要最低限のみの生体活動が、
それが私を殺すために生きているだけのように感じさせた。
一瞬、身が凍る。
理不尽極まる速度からさらなる突出をみせる斬撃を、
避けようとして、避け足りなさを直感して、
その不足を重力で賄おうとして、
無様。尻もちをつくような回避。
生まれた負債は、次なる行動を阻害する。
四つ、追撃。
強張った足。重心が下がりすぎた。
無茶な回避は詰みを示す。
改めてナイフは胸へと進む。正確無慈悲。
臓器と主要血管を傷つけるルート取りも最適。
ナイフは避けれない。
まあだから、腕をどうにかするに限る。
私より上にある体に合わせるように腰を這い浮かす。
振るわれた腕に蛇のように腕を絡める。
刺さるナイフ。痛み、我慢我慢。
腕全体を引き締めるように筋肉と骨で圧迫、振るわれた勢いを利用して相手の腕を捻る。
コキリと、割れた音。剥離まで行ってくれたか?
五つ、ナイフを刺す。
同時に迫るもう片方の腕と、携えたもう一本の凶器。
足が動く気配。すかさず股を絡め可動域を限定、相手の動きをひらくように誘導。
さすればコンと、なかなかの股関節の柔らかさ。
唐突に動きを止める両脚。勘がよろしい。これ以上動けば脚部関節が解体沙汰だ。
耐性稀な痛みに横穴からの頭蓋内侵入を狙った腕も乱れたようだ。こちらのナイフには間に合った。
体を後ろに反らし、腰を落として重心を下げつつ地面を強く叩き足を跳ね上げさせる。
速度は落ちているものの、それでも自然落下の初速より速いナイフは、体の捻りで対処、軸足を踏ん張り、振り上げた足を。
回り込むように、相手の背中に引っ掛ける。
誘導。それは地面へと。
下にある私の重心、下を向いていた相手の重心。
テコの原理、筋肉の動き。相手の判断と足の機能不全。
以上を以て、私は相手の上を獲る。
横向きの視界。フードから溢れた目の輝き。
うつ伏せの体制で落下する身体目掛けて、引っ掛けた足をさらなる踏み込みの起点とし。
「よいっしょっ」
変則裏蹴りならぬ踵落とし。
狙うは首上。顎を跳ね上げての脳震盪。
「ハッ」
が、狙いがそれる。
関節を外したとはいえまだまだ動く腕が、無理矢理私の体を押したからだ。
たたらを踏む私。
私のの下からゴロゴロと退避する相手。
股関節も抜いたのに、中々の速さ。そして小ささ。
奇襲及び刺客については驚愕の余地は無い。
仕事柄恨まれることも多いし、元々グレーな身分だから。
そんなことより状況の把握だ。仕事道具の入ったアタッシュケースはヤツによって遠くに蹴飛ばされてしまっている。まあそれも問題無い。
基子中和装置へのダメージ、皆無。まあ首に着けてるし問題無し。
胸に刺さったナイフは....痛いだけ。この暑さの中いやいや着ていた仕事着様々だ。深くは刺さったが、特殊製法による斬撃誘導で上手い場所に刺さっている。動くには支障はない。痛いけど。
突然のアンブッシュとその対応で気が付かなかったが、お相手さん中々に体が小さい。そして多分軽い。
その軽さは、私にとってメリットにもデメリットにもなる。
力では優位が取れる。だが威力が出しにくい。効率的なダメージを出すには、正確に細い体の芯を捉えねば有効打になり得ないだろう。はためく紙に刃を通すが如く、なんてな。
刺さったナイフはまだ抜かない。
微かな骨の擦過音。外れた関節を直したのだろう。ゆらりと低い姿勢で起き上がる相手。
仕切り直しというべきか。
構えは無い。またもナイフは深い袖に隠れる。
重心を診るに最初に外した腕も直したようだ。中々の対応。
直された腕が動く、腿のホルスターから引き抜かれたそれは。
慌てるより先に体が動いた。
銃口が向けられる前に物陰へ転がり込み、走り出す。
材質はプラスチックだろうか。表面を暗色に塗装加工されたコンパクトガン。
オモチャみたいな見た目、威力も低そうに見えるが油断はできない。
弾丸が特殊なものであるのは高確率でそうだ。
当たれば一発でも行動不能にされると考えろ。
立ち止まる。
足音。振動の感覚は遅い。
首筋を掻くイヤな感覚。私と同等の走速且つ、銃が構えて。
横っ飛びと同時に湿った銃声。消音もされているか。
路地の壁に火花。いや違うあれはショートによる発火だ。
新手のテーザーガンか何かか。何アンペアなのか考えたくもない。
物陰から背を縮めて顔を一瞬出す。
引っ込めたと同時に風切る質量の残り物。
粗悪なコンクリートが電熱で弾ける。
フードで遮られた視線を思い描く。
弾速は遅いのが幸いだ。あとは_______
この裏通り一帯は、気温差と経年劣化で崩れたコンクリート、瓦礫が多い。
その一つ、私の顔サイズのを物陰から放り投げ、
それに釣られた銃声と同時に走り出す。
拍を乱すタイミングが重ねられたのは僥倖。最初の接近戦でリズムを大体掴んだ。これがブラフでは無いことを祈って.....一瞬の硬直と銃口の迷い、そして僅かな筋肉の力みを予想してノールック&ノーモンションで握り込んでいた瓦礫を指投げ。
微かな風切りと鈍い衝突音。狙い通り利き腕。
発射タイミングを大きく逃し、衝突で乱れた銃口から弾が飛ぶ。
当たるか。
更に身体を縮め、芯を確定させる。
相手の足が一歩下がる銃口が修整されるあれは当たる再度筋肉の動き連動して指が_______
劣化しつつある靴のグリップを信じて、縮めた体を横へと倒す。
右足でコンクリートを強く叩き、伸ばした左足で掬うように腕を払う。軽い感触。コンクリートに投射された拳銃の影______
右手で頭を擦る地面を押す。跳ね上がる身体。
立ち上がる暇は無い。体勢は構わない。
左手で相手の顎を上へかち上げる。
銃を空に失い、本来有効打になり得ない筈の回し蹴りと、顎のかち上げで大きく体勢を崩した小さき相手に、倒れ込むようにナイフを。
歯で噛み締めて固定したナイフを、腹の横から首の力で、
刺し叩いた。
とった。
暴れる体を右手で押さえつけ、更に深く抉るように刺し捻る。
破裂するかのような呼吸音。コンクリートの熱気に負けない顔のドロリとしたぬるま湯。歯を離し、腹の横に刺さったそれを靴でおもいっきり蹴って更に刺す。
悲鳴。
右手を両足で代行。服の上から挟み込むように圧迫。暴れ狂う腕を両腕で掴み上げて関節を抜く。うん、力では勝てる。
ぶらんぶらん状態になった腕を放置し、真夏なのに被っている外套で首を_________
布量を確保するために引っ張る。
そうすれば当たり前、ヤツの顔が見れる。
見れてしまう。
子供かよ。
咄嗟に、腕が動いた。
少女の四肢の力が抜けて、落ちた。
2017:07/19:PM3:00
第40学区・接続部
低価値商業区域・雑居ビル/地下6階
気温 25℃ 屋内
含光基子濃度 +0.0045
真夏の雨。
遠くで響く含光基子濃度警報。
「災難だったな。」
ああ、災難だったよ。
心の中でそう呟く。声を出す気力も無い。腹の傷も痛む。
ソファに接する皮膚が汗ばむ感触をうざがりつつ、それでも動こうとしない体に正直になる。
「その....何だ、お前さんああいうのが趣味なのか?」
「何が?」と、億劫だがそういう視線を送る。
相棒の煮えきらない態度は、様々な勘違いを含有する場合が大変多い。例えば______
「いやね、推定9歳の少女の四肢を完璧に外した挙げ句、窒息で失神更に肺にナイフで穴って.....」
このように。
言葉はいらない。ソファーの前の机、その上のペンを手加減抜きで射出する。
首を引っ込められた直接座標にビンッと良い音をたてて突き刺さる凶器。ッチ
「うおっほっい!! わかったわかってますそんなわけ無いって!! ただの確認、確認だから! ただ〘掃除屋〙がビビってたからさほらー。〘解体屋〙ってわわわ私も対象ですかっ!?って。」
そんなわけないやろー。小児性愛者で同性愛者で嗜虐症ってどんだけヤバい人なんだよ私は。
力が抜ける。多分好感度下がったなー。面倒だなー。機会あればケーキでも奢るかー。
うー怠い。
.......。
相棒が音もなく向かい側のソファに座る。
微かなコーヒーの匂い。氷が崩れる音。
扇風機の首が回る。重しにしていたペンが消えたせいで、机の上の書類が一枚空を舞う。
近日の社員への襲撃事案。その顛末。
記録として残る堅苦しい文字を読む気は起きず、惰性で読んだふりをしていた書類の中の一枚。
天井に向けていた視界に滑り込んだそれを、何気なしに目で追った_______
『人員補填。〘解体屋〙代行案。』
収容室に続く道を歩く。
収容室のあるエリアは、元々廃墟だった地下施設を改修して利用しているため、水の匂いがすごい。また湿気取りをしなければ。
そんなことを考えていても、やはりさっきの書類が脳裏を過る。
「新しい人員。あの子を?」
そうあった。社長が何を考えているのかまるで読めない。
社員への襲撃犯を普通スカウトしようとするか? 二重スパイに仕立て上げるたいのかとも思ったが、コスパが割に合わない。任務失敗した駒なんて
子供顔な社長の不敵な笑みを思い浮かべる。うーんまあ社長のことだしなんかあるなこれ。
主に私たちに負担がめちゃくそかかる系の。
そんな嫌な予感に震えつつ、エレベーターを待つ。
ここには、社長を除いて五人の社員がいる。
私。解体業を担っている。本来の仕事としては、崩れつつあるここ、第56学区廃棄区域の建築物の安全な解体だったのだが....だいぶ内容が変わってきた。変わってきてしまっている。有機生命体の解体まで任命された時は卒倒しかかったが、やってみればやれた。才能があるらしい。そういうことで着いた名前は〘解体屋〙。確実に皮肉だ。
エレベーターが昇ってきた、と思ったら内部から悲鳴が聞こえた。
無情にも開く扉。扉の前で立ち尽くす私。エレベーターという半密室の中、精神的に追い込まれたのは彼女、〘掃除屋〙だ。横にずれれば、弾丸のように横をすり抜け飛んでいくナニカ。そこに彼女がいたという痕跡さえもなくなっていた。流石。
〘掃除屋〙。廃棄区域で普通にほったらかしな危険物_______むきだしの含光基子燃料殻や、含光基子によって変質した生物の遺骸などの処分を担っている。半減期とかの概念のない含光基子類をどうやって処分しているかは秘密らしい。かわいい顔してミステリアス。いやただ恥ずかしがっているだけかアレ。
改めてエレベーターに入り、ボタンを押す。
降りていく箱。相棒曰く、私は現在進行形で小児性愛者で同性愛者で嗜虐症という風評被害にあっているらしい。勘弁してくれ。そのことをにやにや笑いながら話す彼に、イラつきを再燃させつつ、地下五階まで下がる。
〘運送屋〙。〘解体屋〙が解体したものを〘掃除屋〙に運ぶプロセスを担うのは彼だ。最も長い付き合いであり、今も相棒としてチームを組んでいる。プロセスの関係上〘掃除屋〙とも仲がいい。あっちでは「お兄さん」として慕われているらしい。まんざらでもなさそうだし、あちらこそが"そう"なんじゃないかと踏んでいる。
〘情報屋〙にでもリークしてやろうかな。ああでも報復が面倒だ。下準備してからやったるか。まあばれてもそれはそれで。
軽快な音を立てて止まるそれをでて、奥へ奥へ。
曲りくねり継ぎ接ぎな通路を抜けて、嫌に清潔感漂う収容室の前に立つ。
社員証を通して開ける。更に奥へと。
使うことの少ない収容籠が並ぶ最後尾の区域に、ヤツは繋がれていた。
「おはよう。元気?」
白い光で照らされた籠。正方形に分けられた部屋。
白い敷布と白いトイレのみの内装に、同じく白い服の少女が1人。その首元に酷く目立つ、青紫色の枷が輝いていた。
「.........さいあく。」
From :〘情報屋〙
情報料:経費計上
正式名称:含光基子構造変質体/第三段階実証実験体仮称
コードネーム:ウィスパー
概要:非提唱者にして反復者。長時間の収容室での拘束には含光基子作用抑制合成器具への負荷が大きい。情報の抜き取りには失敗。忘却済み。
含光基子(Illuminexite)
同物質同士の結合と波形同調による共鳴現象とエネルギー環の増加による自己拡張機能に加え、情報導体、量子結晶化による擬似的な動的秩序化すら実現した万能物質。自己拡張機能による構造形成と外部刺激による環境記憶での高度な適応性、融和性を誇る。
簡単にいえばコーラルとオリジニウムの可能性の総取り。
#夢の万能物質だ。これで社会復興できるぞ。
アース・スパーク
流星と共に地球に飛来した休眠状態だった含光基子が隕石衝突時の運動エネルギーを吸収し覚醒、急速に自己拡張、ホウセンカのように弾けて全世界に飛び散りながら爆発した現象。
人工衛星はその瞬間、地球表面での拡散的発光現象を観測した。
#全世界で何人の目が潰れ、焼け死んだ?
含光基子構造変質体
新たな生命のカタチ。可能性の灯火。
#バケモノ