貞操観念逆転世界へ変わっていく一般人たちの反応 作:ねこ次郎
私は幼い頃から人の頼みを断れない子だった。
『リョウちゃん。お皿取ってきてくれる?』
『は〜い。……と、お母さん、取ってきたよ!』
『ありがとね〜。リョウちゃん』
『えへへ〜♪』
人の頼みを叶えてあげれば感謝される。それが、何よりも嬉しくて、誰かの役に立っているんだと、幼心で誇りに思っていた。
『ねぇ、リョウちゃん。一緒に遊ぼ!』
『……うん!』
小学生の頃も、絵本の読書の途中だったとしても、その本を放り出して友達と遊びに行ったこともあった。
『クラス委員長に誰も成りたがらないみたいだし、……樫さん。お願いできるかしら?』
『はい。構いませんよ』
『ありがとう、助かるわ。じゃ、よろしくね。』
中学生の頃も、担任の先生から頼まれることが多かった。
『ねぇ、樫さん。ごめんだけど、今日の掃除当番変わってくれない?』
『え……うん。良いけど、どうしたの?』
『いや〜。急に国語の山田に呼び出されちまってよ〜。部活も遅れると不味いからさ〜。やっぱ樫さんは頼りになるよ!』
『良いけど、また今度、私の掃除当番変わってね。』
『おう! じゃ、よろしくな!!』
高校生の頃も、クラスの人から頼りにされることも多かった。
そして、順当に社会人になってからも同じだった。
『この仕事、良いかしら?』
『えぇ。大丈夫ですが……』
『あら、良かった。じゃ、それ今日中によろしくね』
『えっ? ……分かりました』
新人の私は、先輩から頼まれることも多くて、私はそれを抱えながらも、なんとか周りの協力も得ながら、少しずつ会社生活に慣れていった。
会社生活に慣れた頃には後輩も出来て、私はより一層、人から頼られることが多くなった。確かその頃からかな? 仕事を抱え込んだ私が残業しがちになったのは。
会社の中で1番長く仕事をして、自然と戸締りまで任されるようになって……。
小さな会社だから、オフィスを移転することも偶にあって、移転した先でも、私は1番遅くまで仕事を抱えて、毎日のようにオフィスの戸締りをしてから退社していた。
人の頼みを断れない私の性格。
断って失望させることが怖いから、というのも多分あるだろうけど、それ以上に、私は、誰かの役に立てている自分に安心感にも似た感情を持ってしまっている。
便利に使われてしまっている。そう分かっていても、私は使われることを拒否できなかった。
でも、あの日は………
『えっ? うぉっ!?』
『………あっ!?』
いつも通りの残業帰り。誰もいないはずだった新しいオフィスのビルで、私は『彼』に出会った。
私は突然の事で、とても驚いてしまって、何度も何度も謝っていた気がします。何を言ったのか、自分でも覚えていないくらいだったのです。
ですが、彼は私よりもずっと落ち着いていて、でも、私と同じで夜遅くまで残業していた彼に共感を覚えて、つい、食事に誘ってしまいました。
たわいもない話から始まり、職場の愚痴まで溢しても、彼は呆れることなく聞いてくれて、彼も同じような苦労をしてきていることに私も共感して……。
それから私と彼……『坂上昌さん』との関係は始まった。
とても楽しかった。
私の名前を呼んでくれることが嬉しかった。
悪戯に揶揄われて少しムッとしたこともあった。
一緒にいて、私への思いやりも感じて、互いに笑い合えて。
なにより、人の頼みを断れない受動的な私が、この人と一緒に居たくて、繋がっていたくて、初めて『寄りかかっても良い』と思えた相手で。
そのうち私は自然と、彼のことが好きになっていた。
それに十中八九、彼も私のことが好きだ。彼の視線は私だけを見ていて、その瞳には好意が色濃く映っていた。私も同じだけ……いや、それ以上に私の好意を彼に示した。
私たちは両想いなのは明白だった。だからこそ、私は安心して彼の傍らにいられた。まだ半年くらいしか経っていないのに、彼への好意は天井知らずに高まっていった。
好きの気持ちが高まれば、自然と次の段階を妄想してしまう。彼との結婚生活、家族計画、子作り……、となれば自然とエッチな妄想に浸ってしまい、ムズムズと疼く股下に手を伸ばしてしまう。
「んっ♡」
今や『生理』に成り代わってしまった『浄化』の行為は、女の自分から見ても、淫らでいやらしい物に感じていた。もしも、この『洗浄』を彼に見せたら、彼は興奮してくれるだろうか? 彼の股下にあるナニで私のナカを突き立て擦り付けて『洗って』くれるのだろうか?
その時の彼の姿を妄想して私は、
『んふぁぁ♡ ぁぁぁあ♡』
全身を硬直させて深い絶頂を味わった。
お腹の奥底にあった熱が降りてきて、ジュクジュクと股下を這わせた手も一緒に濡らした。閉じようとしても漏れ出す液体が体をつたい、下に敷いていたタオルに濃いシミを残していく。
『はぁー……♡ ふぅ……♡』
彼を妄想しながらの『浄化』は、彼に出会う以前の『浄化』や生理解消薬を飲むより前の『オナニー』の感覚と比べると、天と地ほどの差があった。
以前は充足感よりも虚しさや切なさが勝っていたが、今は違う。妄想なのに充足感が満ちて、その分、彼への好意に積み重なっていく気がして、彼からの『プロポーズ』が待ち遠しくなっていた。
それから………。
彼は私に『告白』してくれた。
今更な告白。困惑する私は、積み重ねた想いが独りよがりだったことに気がついて恥ずかしくなった。だが同時に、自分から踏み出さなければ、彼は私の想いを気づいてくれはしないのだと理解した。
だから、私は勇気を出して、その日のうちに私のハジメテを渡した。
そして、私たちは両想いで、相性抜群で、一生一緒に居たい存在だと分かり合えた。
それから、数ヶ月後。
私たちの『恋人』の関係は、とても短い期間で終わりを迎えた。
「おめでとう!!」
「おめでとうございます」
「樫さん、おめでとう!」
「いや、これからは『坂上』になるんでしょ」
「お、そうだった」
「リョウちゃん、おめでとう!!」
家族、友達、同僚や後輩からも祝福を受けて、私と彼は『夫婦』になった。着飾った白いドレスを身に纏い、彼も白のタキシード姿でとてもカッコよくて、また一つ『好き』を増やしていった。
教会の神前で、私と彼は指輪の交換をする。その時、そっと彼は囁いた。
「涼子」
「ん? なにかな? 昌さん」
「俺、涼子と出会えて良かった。これからも、俺と一緒に居てくれるか?」
「……ふふっ♡」
何を今更。そう思って呆れつつも、それが彼らしいと感じて自然と頬が緩んだ。だから私は悪戯っぽく微笑んで彼を下から見上げた。
「何を今更言ってるんですか? ここで私が嫌、って言ったら昌さんは諦めるんですか?」
「それは……そんな訳ないけど、その、あれだ、一種のお約束的な。これからもよろしくって伝えたくてな」
「それでもです。言葉も嬉しいですけど、偶には態度で示してくれた方が、女の子として嬉しいんです」
「………そうか」
そうして、彼は私の顔を隠していたベールを上げ、私の身体を抱き寄せた。私と彼の顔が至近距離まで近づく。キスなんて、恋人になってから何度もしたのに、今はまるで初めての時のように、私は緊張していた。
そんな時、彼は私にだけ聞こえる声で囁く。
「でも、これだけは言わせてほしい」
「はい」
「一生、俺の側に居てくれ」
「………はい♡」
そうして、互いの距離が無くなり、私たちは拍手喝采を浴びた。そして、誓いのキスが終わり、2人っきりの世界で彼は微笑んでいた。
「これから、よろしくね」
そんな、優しく微笑む彼に私は込み上げてくる想いのままに、彼に答えるのであった。
Marry Happy End !!
登場人物
樫 涼子
またの名を坂上涼子。人の役に立つことに喜びを覚えたことで、自分の事よりも他人の方を優先してしまう性格になっていた。1人で全部を背負い込むことはしないが、1人でも出来ることは多少無理してでもやってしまうため、中学以降の彼女は他人から便利屋的な存在になっていたとか。ただ、そのおかげで坂上昌と出会ったのだから、付き合い出した後の彼女はそんな自分の性格を好意的に捉えるようになった。
その後、彼女は、自分たちの子供には「人の役に立つのも大切だけど、周りに助けてもらうことの重要性もちゃんと覚えさせたい」と夫に話していたという。その後の晩もしっかりナカに仕込んでもらっていた。
坂上 昌
出会って1年以内で結婚してしまった男。別に1人の時間が好きという訳でもなかったし、彼女と付き合い出してからは仕事も捗るから、いっそのことさっさと結婚してしまえ、と覚悟を決めた。
件の分からせエッの後、恋人になってからも、何度も彼女と身体を重ねてきた。生理解消薬のことも、その頃に教えてもらったため、彼女がエッに積極的なことに驚きつつも納得してセッセと楽しんでいる。
ただ、3日に一回だった外食が、ほぼ毎日(涼子宅含む)に変わり、その後のハッピーセットも無料(半強制)で付いてくるので、自身の体力の衰えを感じて嘆いていた。
自分の子供には「思いやりがあって、ちゃんと気づける人」になって欲しいと妻との夕食時に話していた。その日の晩、妻の発情に気づけなかった彼の運命やいかに………。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。坂上昌の物語は、ここでひと段落とさせていただきます。次回からは、また別の視点。色々な人たちの変わってしまった日常をお送りできればと思います。
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