貞操観念逆転世界へ変わっていく一般人たちの反応   作:ねこ次郎

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四十七話 新築ボロアパート(冷暖房Wi-Fi完備)とかいう建物

 

「未来人……ねぇ〜」

 

私、雨宮京菜の学生証を受け取ったおじさん警官が、訝しげな様子で摘んだ私の学生証をあらゆる角度から眺めていた。

その隣で、若い警官さんも同様に、私の学生証を覗き込んでいる。

 

若い警官さんの机の上には、私の財布の中身が散りばめられていて、マイナンバーカードやらポイントカード、偶々入っていたコンビニのレシートが几帳面に並べられている。同様に1000円札や5000円札、その他小銭なども。

 

「あの……信じてもらえましたか?」

 

真面目に話したものの、どうにも居心地が悪い。

そう感じている私に、おじさん警官は凝視していた学生証から目を離して、こちらを向いた。

 

「いや。正直、お前さん……あぁ、雨宮ちゃんか? 雨宮ちゃんが『そういったこと』に憧れて『全部手作りしました〜!』って言ってくれた方が信用できるんだが………」

 

「流石に、素人がコンビニのレシートどころかポイントカードまで偽装するのは無理があると思いますよ。………80年先もやってるのか、あのコンビニ……」

 

若い警官さんが、机の上にあるコンビニのレシートを手に取って、信じられない物を見るように眉を顰めて眺めている。

そのレシートは確か、以前に絵梨花のスポドリを立て替えた時の奴だ。レシートと併せて請求するつもりが、財布の陰に隠れていたらしい。お金もまだ貰ってなかった。

 

「そして、何よりも、だ」

 

おじさん警官は机の上に置かれた1000円札を、腫れ物を扱うように指先で摘んで私の目の前に持ち上げた。

 

「紙幣っていうのは、偽装防止策として定期的に刷新されるんだが、こんなテカテカしたお札は、俺も知らねぇ。

警察官ってのは、偽札を見分ける技術に関しちゃプロだ。だから分かる。こんな意味不明な印刷技術が緻密に組まれている紙幣は偽物じゃねぇ。見る奴が見れば、腰抜かしてビビるくらいの技術が詰め込まれている」

 

「はぇ〜」

 

「……ま、ただの学生が分かるはずもねぇか」

 

おじさん警官は鼻を鳴らして、手に持っていた1000円札を丁重に机の上に戻した。

 

小学生の頃、お年玉の絵が変わったな〜程度の認識だったので特に気にしていなかったけど、顔が動いてるように見える所だったり、ライトを当てて肖像画(立体)を浮かび上がらせて遊んでた気がする。

 

さっきも、おじさん警官も昔の私と同じように、カチカチと懐中電灯を点けてギョッとした顔をしてた。

 

「………ともかくだ。雨宮ちゃんが『未来人』なのは確かだとして、このままだと住所どころか戸籍も無いとなれば……ちょいと面倒だぞ」

 

「そ、そこを何とかお願いします」

 

「ん、まぁ、面倒なだけで出来ない訳じゃねぇよ。取り敢えず大学生ってことは20は超えてるんだろ? 未成年じゃねぇなら後見人さえ立てれば仮の戸籍くらいは用意できる。身分証も無ぇからしばらくは大人しくしてほしいが………」

 

おじさん警官は、私の顔を見てニヤリと不適な笑みを浮かべた。

 

 

 

「おい、金井。お前、雨宮ちゃんの後見人になれ」

 

 

「はぁ!?」

 

 

 

おじさん警官から『金井』と呼ばれた若い警官さんが、不意を突かれて大きな声で叫んだ。

 

だが、すぐに若い警官さんは、一瞬だけ私に視線を向けて口を噤む。

コホンと一つ咳払いして彼は感情を抑えた口調で話し始めた。

 

「矢沢さん。流石に僕じゃ不味いですよ。明らかに僕とそんなに年も離れていない女性の後見人になるなんて……、不純じゃないですか」

 

「ん? どこが不純なんだ? 後見人なんて別に誰がなろうと関係ないだろ? そんな頑なに断るなんて(やま)しい理由でもあるんか? えぇ?」

 

「や、疚しくなんか……、そも、後見人なら矢沢さんでも良いじゃないですか。丁度いいくらいの娘さんも居るし、女の子の扱いには長けていますよね。僕なんか弟が居るくらいで、彼女どころか女友達も居ないんですよ」

 

「だったら丁度いいじゃねぇか。ここいらでお前さんのお堅い真面目腐った性根を、お嬢ちゃんにほぐしてもらったらどうだ? なんなら、このまま結婚するか? 夫婦になりゃ後見人になるよりもっと簡単に問題は解決できるな! ははッ!」

 

「ふぅッ!?」

 

「ゔっ……むぅ………うぅ」

 

エぁっ!? ふ、夫婦ぅ!? それは流石に気が早いって言うか……。

それに、こんなドすけべ男氏(だんし)のお嫁さんとか、想像しただけで股下が大洪水になるわ! てか、もうなってましたわ! でも大噴水は我慢した私偉い。

 

前屈みになる私を他所に、ケタケタと笑う『矢沢さん』と呼ばれたおじさん警官と、顔を真っ赤にして私ともおじさん警官からも目を背ける若い警官さん。

 

ひとしきり揶揄い切ったおじさん警官は、「冗談だ、冗談」と言い手をひらひら振ってから、改めて姿勢を正して、私の方へと向き直った。

 

「まぁ、ほぼ未成年の娘の後見人になるなら、俺のようなしがないおっさんの方がいいのは確かだ。何も問題はねぇ。ただ……仮にも未来から来たお前さんを1人で放逐するのも不味い。ということで、金井。お前の所で世話してやってくれや」

 

「っ! だから、僕の所はダメだと……」

 

「まぁまぁ、良いじゃねぇか。お前が拾ってきた子猫の1人くらい、ちゃんと面倒見てやれよ。雨宮ちゃんが世間に馴染むまででいいからさ」

 

私、迷子の子猫な扱いをされてる……。

おじさん警官に肩を叩かれた若い警官さんは、困ってしまってわんわんわわん、と鳴くことはなく、私の方に、何やら申し訳なさそうな顔を向けて問いかけてきた。

 

「あ……その。雨宮さんは僕の所でも大丈夫ですか? もちろん、僕から手を出すことは絶対にしないと約束しますが、どうでしょうか?」

 

「………ふぇ? あ、だ、大丈夫ですぅ!!」

 

反射的に大きな声で返答する私。

特段、嫌だと思う理由が無かったからって、がっつき過ぎじゃないのかと、言った後で少し悲しくなった。

 

若い警官さんは、私の返答に困った眉をさらに深めて、おじさん警官の方へ向いているが、おじさん警官はケタケタと笑うばかり。

 

取り敢えず、私の身元は何とかなりそうだ。

これで私は未来人だけど、『雨宮京菜』として真っ当に生きることが出来るし、住む所も問題なく見つかって一安心、一安心。肩の荷が一つ降りて、私の気持ちが軽くなった。

 

例え、がっちり体型のノーペニどすけべ男性警官とドキドキ共同性活になってしまったとしても、何も問題ないよね。

 

……………。

 

………保つかなぁ……私の理性。

 

色々と話し合ってる2人に一言告げて、私は前屈みになりながらトイレへと駆け込むのであった。

 

 

 

 

 

 

【雑談スレ】新築ボロアパート(冷暖房Wi-Fi完備)とかいう建物

 

1.イッチ不動産

売れると思う?

 

2.名無し不動産

さぁ?

 

3.名無し不動産

ってか、ボロアパートって、おんぼろアパートの事だろ?

ボロいのに新築、これって一体?

 

4.名無し不動産

二つの相対する力がせめぎ合う。

強大な力の余波で世界に多大な影響を与える。

フロンがアームドコアの新作を発表する。

 

5.名無し不動産

>>4 アームドコアなんてもう何年前だよwww

 

もう思い出の中で眠っていてくれ。

 

6.イッチ不動産

今度、ファミリー向けの不動産企画の立案があって悩んでたんだけど、近頃は最新の施設やバリアフリーとか、どれもこれもパッとしないんだよね。目新しさが無いって言うか。

 

なら、あえて時代を逆行させたらどうかって思ったんや。

 

7.名無し不動産

それで思い付いたのが、新築ボロアパートか……

 

8.名無し不動産

>>7 なぜ新築なのに『ボロ』を付けるのか。これが分からない。

 

9.イッチ不動産

はぁ……、君たちは何も分かっていないようだね。

ワイは失望したよ。

 

10.名無し不動産

>>9 謎の上から目線で草ww

 

11.名無し不動産

>>9 そもそも、こんなゴミ掲示板に書き込んでる時点で大草原不可避なんだがwww

 

12.名無し不動産

>>9 実家暮らしのワイら自宅警備員には一生縁がない話だから聞くだけ聞いたるわww

 

13.イッチ不動産

昨今は新築なんか建てても誰も住まない所が、不動産投資の対象になってばっかりだろ?

そこで、敢えて『昭和の不便さ』を演出できるボロアパートを建てたら絶対ウケるんだと思うんだ。謎に軋む床とか、どこからともなく感じる隙間風とか、偶に途切れる白熱電球とか。壁も隣の部屋の物音が聞こえてくるのも乙だろ。

 

14.名無し不動産

>>13 事故物件なんですよ、それはww

 

15.名無し不動産

>>13 誰得ww

 

16.イッチ不動産

>>14 大丈夫。そこら辺の『不便機構』は任意で切れるから。

軋む床はあくまでそれっぽい音を鳴らせられるようにして、隙間風も本物じゃなくって換気扇とエアコンでそれっぽく演出して、隣の部屋の物音もマイクとスピーカーでオンオフできるんや。ちな、途切れる白熱電球は実はタイマー機能付きLED電灯な。

あと、超高速光回線のWi-Fiを各部屋に設置してるから通信ストレスは一切無いで。

 

17.名無し不動産

>>16 無駄に高性能な無駄な技術www

 

18.名無し不動産

>>16 そんな無駄機能付けるくらいなら、家賃安くしてクレメンス

 

19.名無し不動産

ふーん。ワイなら絶対に住まないけど、ちょっと興味出てきたわ。

間取りとかもう決まってるんか?

 

20.イッチ不動産

>>19 仮案だけど、ほい。

一階10部屋、二階建てアパートの予定やで。

 

『縦に長いの1DK(異様に浴槽が広い)の画像』

 

21.名無し不動産

>>20 あれ? この部屋、なんか変……

 

22.名無し不動産

>>20 窓も入口もない謎スペースがあるんだが?

 

23.名無し不動産

>>20 浴槽広すぎww

ラブホかよww

 

24.イッチ不動産

カップル向けアパートだから(震え声)

 

25.名無し不動産

>>24 正直にラブホテルって言いなさい、やくめでしょ!?

 

26.名無し不動産

ラブホテルって、条例によって新築も改装も出来ないらしいね。

だから、『ボロアパート』にする必要があったんですね。

 

27.名無し不動産

独身ワイ。昭和の哀愁漂う雰囲気に興味が湧いてきたけど、購入を諦める。……誰が好き好んで他人のギシギシアンアンを聞きたいねん。

 

28.名無し不動産

ま、でも面白そうだから完成したらスレ立て報告よろww

期待せずに待ってるわww

 

 

 

 

 

私が、過去の日本にタイムスリップしてから早くも2週間が過ぎた。

 

若い警官さん、金井 庄助(かない しょうすけ)さんが普段住んでいるアパートに転がり込んだ私は、この短い期間中に何度もムフフなハプニングに見舞われ、何度も下着をダメにしてしまった。

それはまるで、絵梨花が持っていたちょっとエッチな同人誌みたいな生活で…………、お、思い出すだけでまた下着をダメにしてしまった。

 

だが、流石に2週間も経てば慣れたもので、彼に連れられて役所へ往復する生活もひと段落着いた頃。アパートの一室に来客を知らせるチャイムが鳴った。

 

「ん? はーい」

 

今は日が明るい午後4時頃。金井さんはお仕事に出掛けていて、帰ってくるには早すぎる時間。

 

お届け物かな? そう思いながら私はTシャツと緩いジャージのズボンという明らかに、気が抜けた格好でソファに寝そべっていた身体を起こして玄関へと向かう。

 

掃除が行き届いた廊下をトタトタと歩いて玄関に向かい、玄関扉の鍵を開けるためにスリッパへ足を入れた途端『カチリ』と扉の鍵が回った。

 

「あっ?」

 

私が扉に手を伸ばす間も無く、外開きの玄関扉が開いた。

扉の先から、ブレザータイプの学校の制服を着た高校生くらいの可愛らしい女の子が家の中に入ってきて、一歩二歩と進んだ後に私と目が合って………

 

「えっ?」

 

その女の子は、私を見て驚愕に目を見開いていた。

 

 

 






登場人物


・雨宮 京菜

わたし、あめみやきょうな♪ 突然、過去の世界にタイムスリップしたら、もぉ〜大変っ!
手持ちのお金も使えないし、持ってたスマホも圏外だし、しかも逞しいどすけべお巡りさんに連れられたと思ったら、いきなり、そのどすけべお巡りさんのお家でお世話になっちゃうことに!むほほ♡
頑張れわたし!チンチンも逞しいどすけべお巡りさんの誘惑には絶対に屈しないんだからぁ!##♡

ちなみに、彼女の下着は、格安下着を金井さんのお金を借りてダース単位で購入済み


・金井 庄助 『かない しょうすけ』

若い警官さん。まさか、自分が助けた人が住所不定どころか戸籍無しの娘だとは思っておらず、あれよあれよという間に彼女と同居生活をすることに。
幼少の頃から警察学校を卒業に至るまで女性との関わりが一切無かった真面目系童貞の彼が、貞操観念逆転世界由来の処女と一緒に暮らすことになってしまって………、モゥオレノ女性観ハボドボドダァ!!


・矢沢 正信 『やざわ まさのぶ』

おじさん警官。雨宮ちゃんが未来人だと確定しても、その様子じゃ唯の一般女子大生だし何の影響もないだろうと楽観視している。ついでに、部下の堅物警官っぷりが多少抜けてくれればいいなと、面白半分に金井と雨宮ちゃんの同居を促した。
甘酸っぱい同棲生活の様子をネタに弄っては、ケタケタと笑い転げている。



・いきなり部屋凸してきた女の子

なにわろとんねん、クソ親父……(^^#)



・新築ボロアパート(冷暖房Wi-Fi完備)

木造に見える模様の鉄筋コンクリート製のアパートで、昭和のレトロな雰囲気が味わえる無駄に高度な技術を駆使して矛盾を極めたアパート。
郊外に建てられているのに家賃は月8万円と高めに設定してあるものの、その独特の雰囲気と家賃が安くなるカップル割を導入することで、若い男女から注目を浴びるはずだったのに昨今の不景気と嫌婚の影響で空き部屋が目立っていた。
数年後、とある薬の影響と、思い切った運用方法の転換により満室御礼の日々が続き、第二第三の新築ボロアパート(冷暖房Wi-Fi完備)が建てられつつあるとか。



お読みいただきありがとうございました。
お久しぶりです。長らくお待たせしました。

続きもポチポチ書いていきますが、相変わらず不定期ののんびり更新なので気長にお待ちいただけると幸いです。

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