貞操観念逆転世界へ変わっていく一般人たちの反応   作:ねこ次郎

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六話 積極的になった女子への対応に困ってます

いつも通りの残業をこなしてオフィスから帰ろうとした俺、坂上昌は、何の縁か、会社のエレベーターでばったりあった若いOLと近くのファミリーレストランに食事に来ていた。

 

「いらっしゃいませ〜」

 

夕食どきには繁盛するファミレスも、夜8時過ぎともなれば落ち着きを見せている。今日は金曜でも土日でもないので、こんな夜遅くまでたむろっているのは、まだ20前後の若者か、1人パソコンを広げて何かしているおっさんだけだった。

 

「いらっしゃいませ、何名さまですか?」

 

「ふ、2人です!」

 

「分かりました。お好きな席へどうぞ」

 

にこやかに営業スマイルを浮かべる女性店員に、彼女は緊張した面持ちで答えていた。それは、彼女が慣れないことを頑張ってやっているように見えた。

 

俺は周りを見回して、空いている席を探した。客は疎らでどこにでも席は空いているが、あまり騒がしくない方がいい。若者がたむろっている場所は避けるとしたら……、あの角の席がいいか。

 

「こっちにしましょう」

 

「えっ? あ、はい」

 

彼女も席を探してくれていたらしいが、俺が軽く指差すと、彼女は特に反対する様子もなく、トテトテと俺の後ろをついてきていた。

 

角の4人掛けの席で俺が店内中央側へ座ると、彼女は奥の角に座った。程なくして、女性店員がメニュー表を持ってきて、俺はメニュー表を机に広げた。

 

ここはイタリアン系のファミレスだ。パスタやらピザ、ドリアなんかのメニューが豊富で、そういえばここには最近来ていなかったな、と俺はメニュー表を見ながら思い出していた。

 

「サイゼリ屋ですから、やっぱりパスタがいいですよね! 何にしょうかな〜♪」

 

女性はるんるんとメニュー表をめくりながら考えている。

楽しそうな彼女を見ていると、微笑ましい気持ちになってきた。ほとんど初対面なのに、こうやって空気が和らいでくれるなら、俺としてもありがたい。

 

「よし。決めました! このカルボナーラにします! あっ。あの、………決まりましたか?」

 

少し気まずそうに聞いてきた彼女。メニュー表を彼女のペースでめくってしまっていたことを気にしているのだろう。

 

「ん? ……あぁ、そうだね。俺も決まりましたし、店員さん呼びますね」

 

そう言って、俺は机に置かれている呼び出しボタンを押す。店内に大きな呼び出し音が響いて、それほど待たずに女性店員が注文を受けに来た。俺はチーズドリアを頼み、彼女はカルボナーラパスタを頼む。

 

「ドリンクバーはいかがでしょうか?」

 

「なしで」「ありで!」

 

「「………えっ?」」

 

俺が彼女の方に視線を向けると、彼女はとても驚いた表情でこちらを見ていた。

 

ドリンクバーなんて勿体無いだろ、水ならタダで飲めるし、そんな、学生じゃあるまいに。と俺は思っていたが、そういえば今日は1人で来ているわけじゃないことに、今更ながら思い出した。

 

「ドリンクバー、頼みましょう」

 

「えっ!? いいですよ。ドリンクバーは高いし、勿体無いですよね〜。………なんて、あはは」

 

「今は気にすることないですよ。店員さん、ドリンクバー二つで」

 

「………畏まりました。あちらのドリンクコーナーをお使いください」

 

そう言って女性店員は離れていく。店員さんがすごい苦々しい顔をしていた気がしたが、多分見間違いだろう。

 

それより、ドリンクバーなんて久々だ。もう20も後半なのに少年心が湧いてくる。俺はドリンクコーナーへと向かうため立ち上がった。

 

「それじゃ、飲み物取ってきますね」

 

「あっ、わ、私も行きます!」

 

俺が席を発つと同時に、彼女も自分の荷物を片手に、ドリンクコーナーへと向かっていった。

 

 

…………

 

 

ドリンクコーナーの種類の多さに感激したことは、心の中に押し留めておいて、俺は、ウーロン茶が入ったグラスを片手に自分の席へ戻っていた。

 

少し時間を置いて、彼女が薄茶色の液体が入ったグラスを持ってきて、元の角側の席に座った。

 

「それは?」

 

俺はつい、彼女の持ってきた飲み物が気になって聞いてみた。

 

「これは、ミルクティーです。紅茶を濃いめに出してから、氷で薄めてミルクを足したんです。 私、ここに来たらいつも作ってるんですよ♪」

 

「へぇ〜」

 

彼女は上機嫌に話しながら、刺されたストローに口をつけて、ちゅるちゅると飲んでいた。

 

時間が掛かったのは、そういう訳かと納得すると同時に、彼女がこのお店、というよりもドリンクバー自体に余程慣れていると知った。

 

俺も、持ってきたウーロン茶に口をつけて腰を落ち着けていると、一つ気づいたことがあった。

 

「そういえば」

 

「んゅ?」

 

「名前、まだ聞いてませんでしたね」

 

「んぐふっ!?」

 

ストローを咥えて、美味しそうに自作ミルクティーを飲んでいた彼女が、途端に咽せた。何度か咳込み、まず先に始めるべきだった常識を失念していたことに気がついて、彼女は羞恥に頬を染めた。

 

「あ、あの……私は、樫 涼子(かし りょうこ)と言います。自分から誘っておいて、名前すら名乗らないなんて、本当にごめんなさい」

 

「こちらこそ。俺は坂上 昌。俺の方こそ、真っ先に話すべきでしたね。樫さん、で良かったですか?」

 

「はい。坂上さん。ほんと、急に誘ってしまい。ほんとにごめんなさい。坂上さんにも用事はあるでしょうし、明日も平日なのに、こんな夜遅くまで……」

 

なぜか、1人で落ち込んでいく樫さん。確かに、なぜ誘われたのかは気になるが、俺も、自分より若い女性から食事に誘われたのなら喜んで着いていくのだから、お互い様なのだ。この機会は、スーパーの半額惣菜よりも遥かに価値がある。

 

「気にしなくても大丈夫ですよ。家もここからなら30分と掛からない場所ですし、むしろ、樫さんの方はどうなんですか? 終電まで居座るつもりはないですけど、明日の仕事とか、家のこととか」

 

「私も大丈夫です! いつも寝るのは0時過ぎなんで」

 

あはは、と彼女は笑った。特に嘘をつく理由もないし、別段無理している様子もないようだ。

 

「それより。坂上さんもいつも残業でこの時間なんですか? 私もこの頃残業続きで、今夜も1人かぁ〜、と思っていたから本当にビックリしました」

 

「俺も驚きました。俺、家が近いからって、いつも職場の上司から戸締りを押し付けられて、まぁ、もう慣れたもんですけど」

 

「へぇ〜。家が近いって、坂上さんはこの辺の人なんですか?」

 

「会社から歩いて15分。戸締りを押し付けられてるけど、会社から近いのって良いですよ。朝はのんびり起きられますし」

 

「15分!? ひゃ〜。近くて羨ましいです! 私ももう少し長く寝れたらなぁ〜」

 

「樫さんは遠いのですか?」

 

「電車一本分ですね。近場で安い部屋が見つからなくって……。乗り換え無しな分、他の人と比べたら楽ですけど」

 

 

俺と樫さんは、しばらくの間、たわいもない話が続いた。時折、口を付けていたウーロン茶が無くなる前に、頼んでいた料理が運ばれてきて、樫さんは「わぁ〜」と嬉しそうな声を漏らしながらカルボナーラパスタを見つめていた。

 

香ばしいブロックベーコンと蕩けるチーズの香りが食欲をそそり、対面で見ている俺にも美味しそうなことが分かる。

俺のチーズドリアは時間が掛かるようなので、先に運ばれてきたのは樫さんのカルボナーラだけなのだが、樫さんは遠慮気にこちらを見るばかりで、カルボナーラに手をつけない。

 

「先に食べてても良いですよ。俺の方は遅れるみたいですし、冷めると勿体無いでしょ」

 

「あ、はい。では、お先に失礼します」

 

そう言って、樫さんはフォークとスプーンを取り出して、パスタをクルクルと器用に巻き取って口に運ぶ。途端に彼女の顔が綻んだ。「んん〜♪」と嬉しそうに彼女は料理を堪能していた。

 

俺は、そんな彼女の姿を見ながらウーロン茶を飲んでいると、グラスの中身が空になっていたことに気がついて立ち上がる。

 

美味しい料理に夢中になっている樫さんに「おかわり、とってきます」と一言告げて、俺はドリンクバーへと向かっていった。

 

 

 

 

………………

 

【教えて】積極的になった女子への対応に困ってます【偉い人】

 

1.1

聞いてくれ! 大学で同じ講義を受けてる女子との距離が近いんだが? 俺はどうすればいいんだが?

 

2.名無しのマダオ

2げt

 

3.名無しのマダオ

>>1 そうだね……、とりあえず爆発しとけば?

 

4.名無しのマダオ

1は疲れてるんだ。妄想の女の子に縋るより早く寝た方がいいよ?

 

5.1

だから、マジなんだって! こんな所で相談することじゃないのかもしれないけど、マジで困ってんの!!

 

6.名無しのマダオ

取り敢えず、スペックよろ

 

7.1

身長 171センチ

体重 60キロ

容姿 フツメン

友達 なし

 

8.名無しのマダオ

>>7 イッチのスペックとか誰得?

まず、その女の子のスペックだろ?

 

9.1

身長 158センチくらい

容姿 可愛い系の茶髪のボブ

美人というか美少女って感じで、めっちゃ可愛いの

あと、胸はDは確実にある

 

10.名無しのマダオ

>>9 ふむふむ。なるほど。……ふぅ。

 

11.名無しのマダオ

>>9 へぇ〜、妄想でないなら最高じゃん。

んで? 何で困ってんの? こんなの即オッケーじゃん。

 

12.1

>>11 実は、先月の講義でたまたま同じなったんだけど、その時に声を掛けられてさ。そこから毎回毎回隣に座ってきてしゃべってきたりさ。ノート見せて、って言ってきて肩が触れ合った時は脳がやられたね。気がついたら授業が終わってた。

 

13.名無しのマダオ

はぁーーー!! くそ!! 早く爆発しろ!!

 

14.名無しのマダオ

>>12 それの何が困りごとなんだ? もしかして、「女子に言い寄られて困ってる俺カッケーー❗️」ってことなら、スレはここらで終わりだぞ。

 

15.1

待ってくれ! 確かにそう思うかもしれないけど、そうじゃないんだ!

俺、実は、その女子と会うの先月の講義が初対面だったんだ。本当に知らない人! ホンマに初見やねん! だから困ってんねん!!

 

16.名無しのマダオ

>>15 もちつけ。ってか、それってマジ?

実は昔に助けた女の子です。とかじゃないの?

あと、スポーツか何かで一目惚れされた、とか。

 

17.1

>>16 それはない。なぜなら、俺は中高と帰宅部だったし、友達なんかいないし、あんな可愛い女の子を助けた覚えなんてあるわけないだろ。

 

18.名無しのマダオ

かぁーーーっ!! 初対面の女の子から「一目惚れです♡」か? それ何てエロゲ? 動機メチャクチャのクソシナリオやめや! 抜けるなら許すけど。

 

19.名無しのマダオ

ともかくイッチ。その子のことが嫌いじゃないなら、仲良くなっちゃえばいいじゃん。もう、コクっちゃえばいいじゃんwww

 

20.名無しのマダオ

抱けぇー! 抱けぇーー!! 抱けぇーーーー!!!

 

『泣きながら柵にしがみついて叫ぶ老人の画像』

 

21.1

あぁーー! もう! やってやる!

安価>>28

 

22.名無しのマダオ

アンカきたぁぁぁぁぁぁ!!

 

23.名無しのマダオ

アンカだ! リア充を殲滅せよ!

 

24.名無しのマダオ

行け行け! いきなりコクって玉砕しろ!

 

25.名無しのマダオ

1「出会った頃から、その……、ふふっ、下品なのでやめときますね」

 

26.名無しのマダオ

1「取り敢えずキスしていい? てかするけど。」

 

27.名無しのマダオ

1「キモいから近づかないでくれる?」

 

28.名無しのマダオ

1「好きです! カラダの付き合いから始めようぜ!!」

 

29.名無しのマダオ

1「取り敢えずナマで。」

 

30.名無しのマダオ

>>28 いった!? これは破局間違い無しですわ!

 

31.1

はぁーー!? なんだよ! カラダの付き合いって!? 俺はまだ童貞なんだぞ?

 

32.名無しのマダオ

>>31 一皮、剥こうぜ!

 

33.名無しのマダオ

一狩り、行こうぜ! みたいに言うなよww

 

34.名無しのマダオ

アンカは絶対。覚悟を決めろイッチ。

お前が始めた物語だろ?

 

『暗い雰囲気の長髪の青年が囁いている画像』

 

35.1

っ! あぁ! くそ! やってやる!

玉砕したら、このスレが終わるまで呪ってやるからなぁ!!

 

36.名無しのマダオ

行ってら。ノシ

 

37.名無しのマダオ

頑張れよー。俺たちも応援してるよーー

 

38.名無しのマダオ

そもそも、これ美人局の可能性の方が高くね?

イッチご愁傷様

 

39.名無しのマダオ

こうして、人生と脳を破壊されたイッチはリア充撲滅隊に染まることになるのであった。

 

 

49.名無しのマダオ

卵、牛乳、キャベツ、ベーコン、玉ねぎ、醤油、味醂、ポテチ、コーラ

 

50.1

ただいま。ここは買い物メモではありませんよ。

 

51.1

誰も見ていないみたいなので、一応、ご報告。

 

童貞、卒業しました。

俺は彼女と末永く一緒にいます。

 

以上。さようなら

 

52.名無しのマダオ

久しぶりにスレを覗いたけど、マジかよ………。

おめでとう。末永く爆発してくれよな!

 







登場人物

樫 涼子 (かし りょうこ)

前話から登場した一般OLさんの名前が発覚しました。ファミレスでもネカフェでも、必ずドリンクバーでアレンジ飲み物を作る系の女性26歳。年齢より若く見えるのは、あの薬を飲んだ効果であり、今回、主人公を誘ったのには、あの薬の影響もあるが、主に同じ残業戦士に共感を持てたからのようだった。独身女は寂しいのである。


大学生イッチ
行動を他人に委ねたくせに、自ら始めてしまった安価は守った律儀な性格の持ち主。馬鹿正直に彼女に告白した結果、なぜかオッケーをもらった。その後、自慢のEカップに魅了されたイッチは、お城のようなホテルに連れられて、そこで愛のプロレスが始まった。
終始、攻勢を取られ、6ラウンドTKOでイッチは敗北した。
イッチは、「女子に負けて出し切った男」略してマダオになったとさ。


彼女
イッチに助けられた一途な娘、茶髪に染める前だったことと、あの薬を飲む前だったこともあって、イッチは助けたことを全く覚えていなかった。猛烈なアタックの末、見事イッチの心と玉袋を掴んだ。その後もイッチの優しさを感じて、さらに好きになっていったという。



更新遅くなりました。次も遅くなるかもしれません。
ファミレスは次の話には引っ張りませんので、どうか、評価やお気に入り登録していただければ、と思います。
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