赤木リツコは、愛する男の手にかかって死ぬ事を望んでいた。
代わりに、愛する男の最も大切なものを奪って。
愛する男の記憶に、心に、魂に、永遠に消えない傷を残したかった。
私を殺した後に、殺したことを必ず後悔するように…。
そうすれば、愛する男は私の事だけを思い出すだろう。
男が後悔の念に駆られるたびに、あの時、ああすれば良かった、と私のことを思い浮かべるのだ。
最も大切な愛する妻を思い出すたびに、その再会を邪魔した私の姿が上書きされる。
それは、なんて素敵な事だろう。
リツコは本気でそう考えていた。
リツコ自身がこの場で何かをする事はない。時間は十分にあった。もう既に、仕込みは終わっているのだから。
碇ゲンドウの補完計画は、もう絶対に叶う事はないのだ。
それなのに……。
この胸の虚しさは、一体なんなのだろう。
◇
ターミナルドグマの底、磔にされたリリスの足元に赤木リツコが待ち構えていた。
「何故ここにいる。赤木リツコ君」
ゲンドウの表情は変わらない。実に端的に、疑問を口にする。
「貴方の顔が見たかったから、ではダメでしょうか」
リツコは薄く笑みを浮かべてそう言った。晴れやかな笑みではない。どうすればいいか分からないから、とりあえず笑った。そんな顔だ。
「私の邪魔をするつもりか?」
ゲンドウの問いに、リツコは一度だけ目を閉じる。ややあって、リツコは目を開き、ゲンドウを見つめ返した。
「ええ…その通りです…」
「そうか」
ゲンドウが懐から拳銃を取り出す。
「赤木リツコ君」
それをリツコに向けて構える。
「今まで君は、本当に、良くやってくれた」
リツコはゲンドウを見つめたまま、何も答えない。
「愛していた」
その言葉を、何度も目の前の男に言われてきた。
かつてリツコの母、ナオコが他界した日、この男はリツコに縋ってきた。リツコの手を握り、跪き、「私を助けてくれ」と懇願してきた。
可哀想な人だ、と思った。
助けたいと思った。
助けられると思った。
だから全身全霊でこの人を助けた。
その証拠として、この人は何度も私を求めてくれた。私は間違っていなかった。この人を確かに救えていた。
それが嬉しかった。
だけど、本当は最初から気付いていた。
この男の目に、私は映っていない。昔も、今この瞬間も。
彼の中にある絶対的な存在。それを超えることは、私にはできない。いや、きっと他の誰であろうと、それはできないのだろう。
「碇司令…」
優しく語りかける。愛していた男に向けて。目に、別れの涙を溜めながら。
「ここから先は、あなたの思い通りにはならないわ…」
ゲンドウが僅かに眉間に皺を寄せる。
「思い通りにならないとは、一体どうするつもりだね?」
ゲンドウは銃を下ろさない。ゲンドウの中で、リツコを排除することは既に決定されている。
「どうもいたしません。もう既に、終わっていますから…」
「終わっている?」
「ええ…」
リツコは少しだけ視線を下げ、ゲンドウの後ろ、そこにいる綾波レイに視線を向けた。
「レイのATフィールドは、解けません。既に私が調整を施しました。次の調整は1週間後。それまではレイのATフィールドは保たれます」
「……なに?」
ゲンドウが僅かに銃を下げる。
脆弱な、リリスの魂の器たるレイ。その体を保つためには、定期的に調整を施し、外部的なATフィールドによって形を維持するしかない。それはレイの中にあるリリスのATフィールドに更に外付けのATフィールドを重ねる事で、二重の心の壁を形成するようなもの。
外付けのATフィールド、そしてレイのATフィールドがある限り、レイの中のリリスの魂とアダムは融合することができない。
「なぜ、そんな事を?」
「わかりません。きっと安っぽい女の、くだらない嫉妬ですわ……」
リツコとレイの視線が交わる。
(本当に、いつ見ても無表情な子…)
リツコは母である赤木ナオコの後釜としてネルフに入ってから、ずっと、ずぅっと、レイの世話をしてきた。
碇ゲンドウの妻、碇ユイを模しただけの人形を。
ゲンドウがどうしても忘れたくない、失いたくないものの象徴。
いつか失ったものを取り戻すために使われる、生贄人形。
無表情、無感動、無趣味、無知。
そんな人形を生かすためだけに、ずっと世話を見続けてきた。
その間に、何度空しいと感じたことだろう。
何度苛立ちを覚えたことだろう。
ヒトの形をしているのに、ヒトとして当たり前の事ができない。
それに何度、殺意を覚えたことか。
排泄ができない、食事の仕方を知らない、風呂に入らない、自己主張がわからない。
そして何より、世話し続けなければ死んでしまう。
薬を飲ませ、調整を施してやらなければ、ATフィールドが解けて、溶けて、死んでしまう。それが何よりも厄介だった。
少しずつ教育し、少しずつできなかった事をできるようにしてきた。リツコ自身の負担を少しでも軽くするために。
そういった長い長い時間をやり過ごし、それでもまだ終わりが見えない。
(結局最期まで、アナタには苦しめられたままだったわね・・・)
だから、だろうか。
(……?)
長い時間を共にしてきたリツコだからこそ分かる、レイの無表情に隠れる、僅かな感情。
(この子……)
スカートの裾を掴む、微かに震えたレイの指。
(…怯えてる?)
「赤木リツコ君」
ゲンドウの呼びかけに、リツコがハッと顔を上げる。
「そうではない」
「…?」
質問の意味がわからない。
「私が聞きたいのは、なぜ、『そんな無駄な事』をしたのか、だ」
「…!」
「見ろ」
ゲンドウが銃を一度下ろし、自分の右手につけていた手袋を外す。そして、リツコにもよく見えるように掌を前に突き出した。ゲンドウの右手に、気色の悪い胎児が埋め込まれていた。今にも蠢きそうな巨大な目を持ち、尻尾を生やした四足の胎児。
第一の使徒、アダム。
「すでにアダムは私とともにある。調整によってしか保てない脆弱なATフィールドなど意味を為さない。レイ自身が心の壁を開くだけで終わる。私の望んだ世界が訪れる」
ゲンドウが再び銃を構える。
「無駄な時間を過ごした」
今度こそ、ゲンドウは引き金を引くだろう。
(待って……)
そのゲンドウを前にリツコは、
(ちょっと待って……)
かつてない違和感に襲われていた。
(今、この人は、何と言った…?)
ゲンドウの計画を無駄にするために、リツコは少ない時間の中でレイの調整を実施した。結果として、リツコの策が無駄になったとしても、リツコ自身は構わない。リツコの想定をゲンドウが上回った。それだけの事。実験には付き物の、よくある失敗だ。当然、その代償はリツコの命によって支払われるだろう。それぐらいの覚悟はしていたつもりだ。
だから、そんなことはどうでもいい。今更、自分の命など惜しくはない。
問題はそこではない。リツコの違和感はもっと別のところにあった。
アダムと共にある?当然、知っている。その施術をしたのがリツコ自身なのだ。知らないハズがない。
脆弱なATフィールド?確かにそうかもしれない。ATフィールドはATフィールドで中和し、無力化できる。第一の使徒アダムのATフィールドならば、調整用のATフィールドを突破するなど容易い事だろう。
そうじゃない、そうじゃないのだ。
ゲンドウは『レイが心の壁を開くだけで終わる』と言った。
なぜ、レイがそうすると思うのか。
『あんなに怯えているレイが、なぜ心を開くと思うのか』
ゲンドウは、レイが心を開く事を前提に話をしている。レイが拒絶するなどとは微塵も思っていない。
唐突に、リツコは理解した。
この男は、
碇ゲンドウは、
『自分の望んだ通りに物事が進むと信じて疑わない』。
そして極めて厄介なことに、『悪気がない』。
恐らくゲンドウ自身には、自分は身勝手な人間だという自覚があるだろう。
だが、そうじゃない。それどころじゃない。外から見ればゲンドウは、ゲンドウが思うよりも何倍も、何十倍も身勝手なのだ。
ゲンドウが行動する事で、どれだけ周囲の人間が迷惑を被るか、どれだけの害を被るのか、どれだけ傷付くのかが、わかっていない。わかろうともしない。大人であれば当然できるハズの『相手の立場になって考える』事ができないのだ。
恐らく、その事をどれだけ丁寧に説明をしても、ゲンドウは絶対に理解しないだろう。なぜなら彼の行動は彼自身にとって『悪いことではない』のだから。逆に問い返してくるかもしれない。『これのどこが悪いのか』と。
かつて、母であるナオコからリツコは聞いた事がある。碇ユイはゲンドウのことを「可愛いヒト」と言っていた、と。当時は、いや、今の今までも「なぜ碇ゲンドウを可愛いなどと言えるのか」と疑問に思っていたが、この瞬間に、少しだけリツコにも理解する事ができた。
要は、子供なのだ、ゲンドウは。
それも、とびきり幼くわがまま盛りな、自分を中心に世界が回っていると信じて疑わない子供。
それがそのまま大人になってしまったのが、碇ゲンドウなのだ。
だから誰も寄せ付けない。自分の思った通りにならないから。
だから誰も寄り付かない。何を言っても無駄だと呆れられるから。
そうとわかってしまえば、ゲンドウの普段の態度、行動は、全て小さな子供が一生懸命に威張っているように見えて。
…ああ、なるほど。
そうやって考えれば確かにこの人は、
「本当、可愛いヒトね」
リツコの口から思わずこぼれた、何気ない一言。
それがゲンドウの逆鱗に触れた。
「死ね」
ゲンドウが引き金にかけた指に力を込める。
その時、ゲンドウの服の裾が引っ張られた。
「?」
ゲンドウが不思議に思い振り返ると、そこにはゲンドウの裾を弱々しく掴むレイがいた。
「ダメ…碇司令…」
レイは、自分でも困惑していた。
なぜ、こんな事をするのか。
なぜ、碇司令を止めるのか。
なぜ、体が勝手に動いたのか。
なぜ、この胸はこんなにズキズキと痛むのか。
そのレイの行動に、今まさに撃たれようとしていたリツコも驚いていた。
「レイ、アナタ…」
「わからない…。でも、殺しては、ダメ」
レイの言葉に、リツコもゲンドウも目を見開いた。
今、この場にいるレイは、『3人目』だ。
『1人目』は幼い頃、リツコの母に首を絞められ殺された。
『2人目』はつい最近、シンジを助けるために使徒を取り込んで自爆した。
ユイのクローンとして生み出された綾波レイの体に魂が宿ったのは、これで3人目。
綾波レイが生まれてから通算で14年。その間、レイは人間としてのマトモな生活を送ったことがほとんどない。
レイの中に宿る、リリスの魂。それに、人間の生活のなんたるかを教育する事に、なんの意味がある?最後は人類補完計画の生贄として捧げられるのだ。無駄な知識や感情など必要ない。必要最低限生きていければ、それでいいのだ。
家畜と同じだ。最後はただ屠殺されるだけ。
可愛がる必要は無い。本来であれば名前をつける必要もない。ただ呼び方に困るから、記号としての名前が与えられただけ。
途中で死んでも構わない。代わりになるモノはいくらでもいる。次の肉体に、新たにリリスの魂が宿るだけ。
自由に生きることも、自由に死ぬことも許されない。そもそも自由の意味すらわからない。
そんな人生を送ってきたからこそ、綾波レイの魂には『感動』が無かった。
だが、碇シンジと出会い、レイに少しずつだが変化が生まれた。
今まで感じられなかった事が少しずつ分かるようになっていき、レイの中に何かが生まれていた。
それは事あるごとに震え、もがき、血を流し、いつの間にか、息づきはじめた。
レイの中に、『心』が生まれていた。
そして、その『心』は魂に刻まれ、2人目が死んだ後、3人目のレイにも受け継がれていた。
レイ自身も気付けないほど小さく、しかし確実に。
狂おしいほどに人と繋がりたい『心』。
繋いだ絆を失いたくないと願う『心』。
それはまるで人間の赤ん坊のような、純粋な『心』。
その『心』が、これから起こるであろうことを全霊で拒絶していた。
ズキズキと痛み、レイ自身に訴えかけていた。
死にたくない。失いたくない。何も。誰も。
レイ自身が表現の仕方を知らなくても、レイの『心』は全力で泣き叫んでいた。
イヤだ、イヤだ、と赤ん坊のように。
「碇司令、ごめんなさい・・・。でも、ダメ。殺しては、ダメ…」
そんなレイを、ゲンドウはどこか冷めた目で見ていた。
(この表情、どこかで見たことがある)
記憶の中を探る。
ユイのものではない。ユイはいつもゲンドウを包み込むような愛のある眼差しで、傷付いたゲンドウの心を癒やしてくれた。決してこんな縋るような表情などするはずがない。
(では、誰だ?誰がこんな表情を私に向けた?)
そう、この顔。恐らくは、初号機起動実験の後。ユイとゲンドウが引き裂かれた後に見たような──、
そこまで思い出し、ゲンドウは驚愕に目を開いた。
「…………シンジ?」
「え?」
聞き返したレイの胸倉をゲンドウが乱暴に掴む。突然のことにリツコが悲鳴を上げた。
「レイ⁉」
「し、司令…、苦し…」
必死にもがくレイの額に銃口がぐりっと押し当てられる。
「レイ、お前もか。お前も私に縋るのか」
あの日。
シンジを置き去りにユイとの再会を誓ったあの日、シンジも同様にゲンドウに泣いて縋った。それを振り切ったからこそ、今のゲンドウがある。
鬱陶しかった。ユイとの再会を果たすため、全てを犠牲にしてでもと覚悟を決めたゲンドウにとって、シンジの泣き声は本当に鬱陶しかった。
何故、鬱陶しいと感じたのかはゲンドウ自身にもわからない。だがとにかく、シンジの泣き声はゲンドウの覚悟を大きく揺さぶった。「本当にこれでいいのか?」と自分自身が問い詰めてくるような気がして。
「レイ、ATフィールドを解き放て。ユイと再び逢うにはこれしかない。アダムとリリスの禁じられた融合のみだ」
ゲンドウがレイをギリギリと締め上げる。
「心の壁を解き放て。不要な体を捨て、欠けた心の補完を」
「……っ」
「すべての魂を、今ひとつに」
ゲンドウが拳銃を投げ捨て、アダムの宿る右手をレイにかざす。
「い…、碇…司令……」
「なんだ」
「司令にとって…、わたし、は…なんですか?」
レイの、最期の問いかけ。この答え次第で、恐らくゲンドウの補完計画の行く末が決まる。
「…レイ」
「司、令……」
「お前は、私にとっての光だ。ユイへと導いてくれる、希望の光」
「司令…」
「お前は、私の大切な娘だ」
ゲンドウの手が僅かに緩む。レイが苦しまないように。
「さあ、私をユイの所へ導いてくれ」
ゆっくりとゲンドウの右手がレイに近づく。
「ゲンドウさんッッ‼」
それを阻むため、リツコは咄嗟にゲンドウの銃を拾い、ゲンドウに向けて発砲した。しかし銃弾はゲンドウに届かない。ゲンドウの右手に宿ったアダムが自身のATフィールドを展開し、身を守ったのだ。
「レイを離しなさい!」
「赤木、博士…?」
「レイ、よく考えなさい!」
リツコが銃を構えながらレイに呼びかけた。
「司令が本当に大切だと思っているのはアナタじゃない、ユイさんよ!本当に大切に思っているなら、こんな事を強要したりしない…!思い出して!シンジくんは、アナタにどう接してくれた⁉」
「黙れ」
「いいえ!黙らないわ、ゲンドウさん!レイ、よく思い出して!アナタが嫌だと感じたとき、苦しいと感じたとき!シンジくんはどうしてくれた⁉そのときアナタは、何を感じていた⁉」
「黙れっ!」
ゲンドウがレイを放り出し、リツコに迫る。リツコは拳銃で応戦するが、銃弾はアダムのATフィールドにすべて弾かれた。目前まで迫ったゲンドウはリツコの首に手をかけ、ギリギリと締め上げる。
「あうッ!」
「赤木博士‼」
レイが悲鳴を上げる。
「レイ…、私、には、わかる、わ・・・。アナタをずっと、見てきた私、なら…」
「もういい」
「ぐえッ」
ゲンドウの手にさらに力が込められる。それでもリツコは止まらない。
「アナタ、は、怖いのね…?嫌、なのよ、ね…?」
「赤木、博士…」
「思い出し、て。アナタ、の中に、は…心が生まれているわ…その声を、よく、聞いてっ!…うごっ」
「黙れと言っている」
リツコの体が持ち上がる。リツコの首を支点にして。絞められた首がミシミシと嫌な音を立てる。リツコの顔がみるみるうちに青ざめていく。
目の前で次々と起こった事態に対し、レイは完全に混乱していた。
(自分の心?感じたこと?どういうこと?碇司令は?赤木博士は?碇くんは?わからない、何もわからない!)
このままではリツコが死んでしまう。
(でも、どうすればいいの?命令が無ければ私は動けない。それしか知らない)
(…でもさっき、わたしは碇司令を止めた。命令もないのに。なぜ?どうやって⁉)
そこまで考え、レイは思い出した。
(体が、勝手に動いていた……)
レイが自分の胸に手を当てる。
(碇司令が零号機から助けてくれたとき、ポカポカした)
(碇くんと話していたときも、ポカポカした)
(今は、ズキズキする。気持ち悪い、イヤな感じがする………イヤ?)
そこまで考えた瞬間、レイの足は地を蹴っていた。
何も考えない。心の思ったとおりに。
ただ勢いだけを乗せて、レイはリツコの体にしがみついた。
「おお⁉」
ゲンドウがバランスを崩し、リツコから手を離す。その反動で、リツコとレイは地面に放り出された。
「げぇほ、ごほッ!」
「赤木博士…!」
「何をしているんだ、レイ」
ゲンドウが再び銃を構える。銃口はレイに向けられていた。リツコが咄嗟に庇うようにレイを抱きしめる。
「よく考えろ、レイ。お前が心を開けば、赤木博士は助かる。人類全てに安寧をもたらし、永遠の幸福に導くことができる。私自身もユイと再会を果たせる。誰も不幸にならない、幸せな世界が生まれるのだ」
「そこにレイはいないわ‼」
「黙れ」
ダンッと銃声が響く。ゲンドウの拳銃が火を吹き、銃弾がリツコの左肩を貫いた。
「ああッ‼」
「赤木博士ッ‼」
「さあ、レイ」
ゲンドウが銃を構えたまま、右手をかざしながらレイに近づいてくる。
「全てを一つにする時が来た。私を受け入れろ」
ゲンドウの、アダムのATフィールドが展開される。レイのATフィールドを、無理やりにでも中和するために。
「イヤ……イヤァァアアアーーー‼」
レイが拒絶の悲鳴をあげた。
それに同調するようにレイのATフィールドが展開され──、
「なにッ⁉」
アダムのATフィールドをかき消した。
その反動はゲンドウの右手のアダムにまで跳ね返り──、
「ぐあぁッッ⁉」
衝撃が、アダムをズタズタに引き裂いた。
「バカな、何故⁉何故だッ⁉」
あまりの激痛に、ゲンドウがその場にうずくまる。
「レイぃぃいいいいい‼」
ゲンドウがレイに銃口を向ける。殺意を込めて。
その時、
『父さんッッッッ‼』
紫の巨人が降り立ち、レイとリツコの前にその巨大な掌を広げた。
つづく