ターミナルドグマを離れた綾波レイは、行くあてもなくフラフラと彷徨い歩いていた。
「わたしの、こころ…」
気付けばレイは、エヴァの試作機たちの廃棄場所まで来ていた。
「わからない…。こころって、なに…?」
今のレイにあるのは焦燥感。この緊急事態に、自分も何かしなければと焦る気持ちがある。
一方で、それを上回るほどの虚無感もあった。先程の碇ゲンドウの発言で、『綾波レイ』という存在に価値がなかったのだとレイは認識してしまった。赤木リツコがどれほど慈愛をもってレイに接してくれようと、その傷はすぐに癒えるものではない。
自分の生きてきた14年間。それが全て無駄だったと、ハッキリ言われたのだから。
レイはエヴァの試作機たちの残骸を見渡す。
無数に打ち捨てられたエヴァの残骸たちはまるで、ドグマに行く前に覗いてきた『アヤナミレイ』の水槽のようで。
散らばった残骸が、無惨に、無造作に打ち捨てられていた。
「あなたたちは、わたしと、『わたしたち』と同じ。だから、捨てられたのね…」
わたしも結局、失敗だった。
碇司令の役に立てなかった。
だから、捨てられる。
今じゃなくても、この先、必ず。
「わたしは、なに…?」
その答えは出ないだろう。
少なくとも今はまだ。
ふと、視界の端に何かが映った。
「……?」
レイがソレに視線を向ける。
ソレは、エヴァの残骸だった。
だが、この辺りに打ち捨てられていたモノとは違う。ソレはエヴァの残骸を寄せ集め、無理矢理に繋ぎ合わせたような、歪な作りになっていた。
右腕と、右脚がない。いや、あるにはあるのだが、酷く不恰好だ。
右脚は歩く事を完全に放棄して、砲撃のための固定台座のようになっている。長さも、本来の脚の半分程度しかない。移動自体はできなくはないだろうが、かなり難儀することだろう。
右腕は、更に異様な形状だった。肩から伸びた腕は、エヴァ特有の生態部品を用いたような滑らかさを持ったものではなく、まるで建設用重機のような無骨なモノへと代えられている。肘から先は更に異様。腕は無く、取り付けられているのは大砲、いや、ライフルか。エヴァの身体と同じくらいに巨大な射撃用兵器が無理矢理取り付けられていた。
それが何という武器なのか、レイは知らない。だがその武器の銃身から、どこか見覚えのあるものが覗いて見えた。
「エヴァの、背骨……?」
レイの言うとおり、それはエヴァの背骨だった。何のためにそれが取り付けられているのか、全くもってわからない。
だが、レイはこの継ぎはぎだらけのエヴァ試作機、黄色いボディをした零号機に、どこか親近感を抱いていた。
レイが少しずつ零号機に近づいていく。
「あなたは、なぜ、そんな姿なの…?」
エヴァからの返事は当然、ない。
だが、エヴァの継ぎはぎだらけの体が、雄弁に物語っている。
まだ、終わりたくない
まだ、やりたいことがある
「そう。あなたはそうなのね…」
レイがそっと呟く。
なにがやりたい、とか。どうしたい、とか。
そんな細かいことは、レイにもわからない。
ただ、まだ終わりたくないという気持ちはある。それは目の前の零号機も同じ。
「似てるのね、わたしたち……」
レイが涙を拭う。
「できるかしら。わたしたち」
レイの言葉に、零号機が反応する。
武器と化していない左手を、ゆっくりとレイへ伸ばす。
レイは少しだけ驚いて目をパチクリとさせたが、その顔に優しい微笑みを浮かばせた。
「そうね、『わたし』たち。わたしとアナタは同じモノだから」
差し出された掌に、レイは乗った。
「きっと、なにかやれるわ」
レイを迎え入れるように、零号機のエントリープラグのハッチが開いた。
◇
痛い
痛い
痛い
『アスカ!アスカぁ‼』
痛い
『アスカッ!逃げなさい‼』
痛い
『くそ、ちくしょうっ!何か、なんかないのかよぉ⁉』
痛い
アタシが、削られていく…
アタシが、削ぎ落とされていく…
アタシが、引き裂かれていく…
『アスカ!ここは引け!戦わなくていい、逃げるんだ‼』
に、げる………?
逃げて、いいの……?
そうすれば、この苦しみから解放される?
ふふ、なぁんだ。それなら、楽勝じゃ無い。
『そんな…アスカ、なんで!?』
でもね
痛い
逃げられない
痛い
だって逃げたら
痛い
全部、終わっちゃうでしょ?
「ああああああああああああああッッ‼」
弐号機がパレットライフルを乱射する。
空に向かって。
空から襲い来るエヴァシリーズに向かって。
弐号機の全身は傷だらけで、もはや損傷していない部分を探すほうが難しいという有様だ。身体のあちこちから血を流し、それでもアスカは戦うのをやめない。
対して、空を舞うエヴァシリーズに目立った外傷はない。ライフルの弾に当たろうと、時間をかければS2機関が修復してしまうからだ。
エヴァシリーズが交互に弐号機を襲う。手にした諸刃の剣で。ニタニタと笑う口で。弐号機を切り裂き、引き裂き、噛みちぎっていく。
降下してきた量産型をアスカは狙う。だが、アスカが狙いを定めた量産型はソレを察知すると、スッと降下をやめて舞い上がってしまう。そして弐号機の死角から、別の量産型が襲いかかるのだ。
元来、人の体は鳥に勝てない構造をしている。肉体に搭載されている筋肉量だけを比較すれば、取っ組み合いの戦いにまで持ち込めれば人が勝つかもしれない。だがそれ以前の問題として、鳥が人を襲う場合、鳥は人の領域まで絶対に降りてこない。空こそが絶対的に安全な領域であると理解しているからだ。
人の体の構造上、もし上から襲ってくる敵に反撃をしようとする場合、何ができるか?
何も手にしていない状態であれば、当然両腕が武器となる。だが、上に向かっての攻撃を、人はどこまで強力にできるだろうか。背伸びをして、拳に体重を乗せる事もできず、手を伸ばしても届くかどうかという高さにいる敵に対し、有効な攻撃手段が人間にあるだろうか。
断言できる。無い。
せいぜい、爪で引っ掻く。その程度だ。それだって、獣のように発達していない人の爪で、どれだけの効果を望めるだろうか。
蹴りなど論外。格闘技の達人であれば、威力を高めた蹴りを頭より高く上げられるかもしれないが、それでもせいぜい一度だけ。うまくいっても二度だ。それだって当たらなければ意味がない。大振りの蹴りが、空を自由に飛び回る鳥に当たるわけがない。
古来より、人が鳥を狩る際に注意していた点が二つある。一つ目は当然武器を、それも弓矢のような、遠くから鳥を一撃で殺傷できるほどの威力を持った武器を携帯すること。二つ目は、群れを狙わないこと。この二つの注意点は、即ち「人が単体で鳥の群れに挑むのは自殺行為であり、一羽を狙う場合でも反撃を受けないように一撃で仕留める必要がある」ということを示している。現代人がゴミ捨て場のカラスに安易に手を出せない理由がコレだ。
では、今のアスカの状態はどうか。
携帯しているパレットライフルは有効打足り得ず、数の上でも不利。オマケにエヴァシリーズは一体一体が弐号機と同等かそれ以上の性能を有しており、S2機関による活動限界の克服も果たしている。更に、翼を生やしたことによって空からの一方的な攻撃まで可能な状態である。弐号機の敗北は火を見るより明らかであった。
だがそれでも、アスカは戦うことをやめない。
「こん、ちくしょォオオオオ‼」
パレットライフルの弾が切れる。
ガチ、ガチと引き金を引くが、弾は出ない。
その隙を見逃すエヴァシリーズではない。
アスカの死角から音もなく急降下してきた量産型が、諸刃の剣を弐号機の背中に深々と突き刺した。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
アスカの背中に激痛が走る。アスカの絶叫とともに弐号機がよろける。
「うぅ、があああああああああああああ!」
弐号機がパレットライフルを放り捨て、駆け出す。
『そうよアスカ!そのまま逃げて‼』
ミサトの声が弐号機のエントリープラグ内に響く。だがアスカの目的は逃げることではない。唯一残った武器、スマッシュホーク。それを取りに走ったのだ。弐号機がかきむしる様に武器を手にする。
中遠距離の武器は効果を十全に発揮しない。だがこの武器であれば、アスカが集中して降下してくる敵だけを狙い打てば、上手くいけばカウンターで敵を叩き落とせるかもしれない。
弐号機が振り向く。
「はぁっはぁっはぁっはぁっ、来てみなさい!一匹残らず叩き潰してやる‼」
斧を構える弐号機。
しかし、エヴァシリーズはアスカを追わず、空高いところで弧を描くように飛んでいる。
「はぁっ、はあっ、くそ、ちくしょう!降りてこい‼」
斧を構えたまま、アスカはエヴァシリーズを睨みつける。半ば朦朧とした意識の中で、それでもアスカの戦意はまだ衰えていない。
(シンジが、来なくてもいいように…。シンジのパパと、きっちりと話ができるように……)
アスカは歯を食いしばる。
(だから、ここでアタシがやらなきゃ。そうじゃなきゃ…、人類は終わる!)
シンジを思う気持ち。人々を思う気持ち。母の愛を認識できたアスカは、今まで以上の視野の広さでもって物事を判断できるように成長していた。
本来、それは喜ばしいことだ。しかし、今この場ではそれが仇となっている。逃げるべき局面で、逃げる事ができない。アスカのその想いが逆に足枷となり、アスカ自身を戦地に縛り付けていた。
そんな局面の中で、エヴァシリーズは驚くべき行動に移った。
「え…?」
今の今まで1つの群れとして動いていたエヴァシリーズが、突然その連携を止めて、各々が好き勝手に飛び始めたのだ。
『…っ!いかん!!弐号機パイロット、ケーブルを守れ‼』
異変を察知した冬月が慌てて指示を飛ばす。
だが、もう遅い。
9体のうち5体の量産型がそれぞれ別の場所で急降下する。
目的はアンビリカブルケーブル設備の破壊。
それに気付いた弐号機が慌てて走り出そうとするが、3体の量産型が行く手を阻む。
「どけっ!どけぇっ!」
焦ったアスカは闇雲にスマッシュホークを振り回す。しかし当たらない。
『ダメ、アスカ!自分のケーブルを・・・!』
「守って!」とミサトが叫ぶより前に、弐号機の後ろでぶつりと嫌な音が聞こえた。
アスカの動きが止まる。恐る恐る後ろを振り返る。
(うそ、うそでしょ…)
見たくはない。だが、確認せねば。
量産型の残りの1体がニタニタと笑っている。
その足元には切断されたケーブルが……
「うああああああああああああああああ‼」
絶望が、アスカを包み込んだ。
『アンビリカブルケーブル切断ッ!』
『内部電源に切り替わります!』
エヴァシリーズはここにきて、更に一段階上の連携を見せた。即ち、数に任せたゴリ押しではなく、数の有利を活かした多方面攻撃。弐号機の生命線を正確に理解した上で、それを潰しにきた。アンビリカブルケーブル設備を壊す役、アスカの注意を引きつける役。各々が自身の役割を完全に理解し、一つの集団として得られる最大限の利益確保のため、取るべき行動を完璧に遂行したのだ。
そして、冬月によって用意されていた全てのケーブル設備は、無残にも破壊されてしまった。
(これが、本当にダミーシステムの能力なの⁉)
発令所でモニターを凝視していたミサトは、エヴァシリーズの動きの変貌ぶりに動揺を隠せないでいた。
常にゴリ押しであった使徒とは違う。この動きはもはや人間のそれだ。動きだけではない。その思考回路さえも。
もはやこれは、新しい種族だ。人類に取って代わる、新人類。
白亜の巨人が、再び弐号機に殺到する。
「ああっ!あああああああああ!!」
エントリープラグ内に、内部電源の稼働時間が表示される。それはまさに、アスカの命のカウントダウン。
刻一刻と明確に近付いてくる死の恐怖で、アスカは無茶苦茶に武器を振り回すことしかできない。
「来ないで、来ないでぇぇッ」
振り回される武器を躱しながら、飛翔した量産型が弐号機の肩をすれ違い様に切り裂く。
「ぎゃうッ」
背後から舞い降りた量産型が、弐号機の首筋に噛み付く。
「いやぁっ!痛い痛い、離してぇっ!」
仰け反った弐号機の腹に、諸刃の剣が深々と突き立てられる。
「あぶっ」
突き立てられた刃を、グリグリと押し込まれる。
「ぐぎゃああああああいああああああッッ」
恐怖と痛みがアスカを支配していく。アスカの腹部をかつてない痛みが襲っていた。
「あぐ、うげぇ」
あまりの痛みに、アスカは反射的に胃の中のものを吐き出そうとした。しかし長く意識を失っていたアスカはまともな食事を取っていない。出てくるのは胃酸だけ。迫り上がった胃酸がアスカの食道を焼く。
それでも痛みは終わらない。
突き立てられていた剣が引き抜かれる。
「あ……」
アスカが一瞬和らいだ痛みに安堵し、
「グギィっ⁉」
別の箇所に突き立てられた刃に仰反る。
ニタニタと笑い続けるエヴァシリーズ。
胸に、背中に、腕に、足に、指に、致命傷にならない程度に傷が刻まれていく。
アスカの苦痛の叫びがジオフロントに木魂する。
それはまさに陵辱。嬲り殺しだった。
(このままじゃアスカが殺される…!)
ミサトは通信をエヴァ初号機に繋ぐ。
「シンジ君!聞こえる⁉」
『ミサトさん⁉』
応答はすぐに返ってきた。
しかしこのやり取りの間も、モニターの向こう側では凄惨な拷問が続けられていた。
『良き
暗闇に浮かび上がる12枚のモノリス、ゼーレが弐号機の惨状を満足気に眺めている。
『神へと捧げる儀式の贄。生命の実と、知恵の実の両方を宿した初号機が適任かと思ったが…』
『なに。替えは多ければ多いほど良い』
『いましばらく、この娘に絶望を刻もう』
『仕上げだ』
「ママ…たすけて、ママ……」
永遠に続くかと思われる拷問は、アスカが気を失う事を許さない。アスカが気絶しそうになるたびに、エヴァシリーズは緩急をつけて痛みを与え、失いかけた意識を無理やり呼び起こす。
「ママ…、マ…マ……」
かつてアスカの精神を食い散らかした第15の使徒アラエル。アスカのトラウマを呼び起こし、心を蹂躙しつくされたことにより、アスカは一度、廃人となった。
だが、その時と今では状況が違う。
アスカのトラウマは、弐号機の中に眠る母との再会によって克服され、ATフィールドによって自分が守られていたと理解できたアスカの心は、今まで感じた事のない充足感を得るに至った。
その上でエヴァシリーズは、「そんなものは無意味だ」というように踏み躙る。アスカの心身にもたらされるダメージは、第15使徒の比ではない。
「いや……もういや………」
だからこそ、アスカはそれを拒絶する。
「いやァァアアアアアアアアアッ!!」
絶望しかない現実を、アスカは全力で拒絶した。
弐号機が赤く発光する。
赤い閃光が周囲を貫く。
『なに⁉』
ミサトたちの驚きの声が上がる。
その光はATフィールド。全てに絶望した少女が、全てを拒絶するために作り出した、かつてないほど巨大な絶対領域。
何者にも侵されたくないという、心の壁。
その巨大なATフィールドから生み出された強大な斥力は、弐号機に群がっていたエヴァシリーズをまとめて弾き飛ばした。
『アスカのシンクロ率が250%を超えています!』
『なんですって⁉』
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ‼」
アスカのATフィールドが徐々に広がっていく。
『ダメ、アスカ!これ以上は…!』
ミサトの悲痛な叫びは、アスカには届かない。
『シンジ君みたいに、戻れなくなるわッッ‼』
痛みと、絶望が、アスカの心を塗り潰していく。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
『素晴らしい。弐号機はコレを以って、神の贄となる資格を得た』
空に舞い上がったエヴァシリーズのうちの一体が、手にした諸刃の剣を弐号機に向けて投げ付けた。
諸刃の剣はアスカのATフィールドに阻まれ、その動きを止める。
しかし
諸刃の剣はその姿を、長大な槍へと変化させた。
『まさか、ロンギヌスのコピーか⁉』
加持の驚愕と共に、ATフィールドが砕け散る。
槍はその勢いを殺さず突き進み、
そして、
弐号機の頭部を刺し貫いた。
「ッッッッッッッッ!!?」
一瞬の静寂の後。
「ぎいいいいいいいいやああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・!!!」
人のモノとは思えない、壮絶な絶叫がジオフロントに響いた。
◇
発令所のモニターに映し出されていた弐号機の内部電源が『00:00:00』を示す。
「内部電源、終了…、活動限界ですッ‼」
マヤが顔を涙でぐしゃぐしゃにしながらも報告を上げる。
「オプション電源ですぐに神経接続を切って!急いでッ‼」
ミサトが我に帰り指示を飛ばす。
『ひぃっ、ひぃあっ、ああああ、アアアアアアアアアアッ、ぎあああああいああ』
発令所に流れる、完全にパニックを起こしたアスカの悲鳴。
「弐号機、神経接続を切断!」
「やりました!受け付けました!」
「鎮静剤投薬‼」
日向とマヤから報告が上がり、ミサトが次の指示を飛ばす。
『アアアアア……あ、あ、ああ…?はあっはあっはあっはあっ……あぁ』
アスカの声が少しずつ落ち着きを取り戻していく。
『……ッ⁉いや、いやァァ‼来ないでえぇぇえ‼』
そのアスカが再び悲鳴をあげる。
何が起こったのかとミサトたちはモニターを見上げた。
そこには頭部をロンギヌスの槍で刺し貫かれ、地面に縫い付けられた弐号機と、
その側に舞い降りてくる、エヴァシリーズが映し出されていた。
「なんなのよ……」
ミサトが絶望と怒りに体を震わせる。
「なんなのよ、なんなのよ、なんなのよ!アンタら一体、これ以上アスカに何するつもりなのよォッッ‼」
ミサトがコンソールを殴りつける。何度も、何度も何度も。
「それ以上アスカに近寄るなァァ‼」
画面の向こうで、これから子供が嬲り殺しにされる。
それを黙って見ていることしかできない、無力な自分。
怒りで、悔しさで、悲しさで、情けなさで、ありとあらゆる負の感情によってミサトの視界が遮られていく。
「もう見れません!…見たくありませんッ!」
マヤがこれから起こる惨劇を見るまいと、とうとう顔を手で覆った。
「ふざけんな、ふざけんなァァアア‼」
ミサトがどれだけ叫ぼうと、画面の向こうの量産型は止まらない。
『いやあああああ‼加持さん!ミサトッ!助けて、助けてえええええええ‼』
「アスカああああああああ!」
ミサトの叫びも虚しく、弐号機はとうとうエヴァシリーズに取り囲まれた。
「やめて‼お願いッ、やめてええええええええええええええええええ‼」
量産型がそれぞれの武器を掲げる。
それがまさに振り下ろされる瞬間であった。
『アスカから』
エヴァシリーズの背後で、地面から十字の光が立ち昇る。
『離れろ………っ‼』
光と共に、地面から初号機が飛び出してくる。
その手に長大な太刀、F型装備『マゴロク・E・ソード』を携えて。
『うおおおああああああああああッ!!』
初号機が、エヴァシリーズに斬りかかった。
つづく