偉大な人間には三種ある。
生まれた時から偉大な人、
努力して偉大になった人、
偉大になることを強いられた人。
【シェイクスピア】
「いつまで持つか見ものだな」
リュグナーが放った極大魔法がフェルンに襲い掛かる。何十何百と降り注ぐ血槍。圧倒的な速度と物量。幾ら万能な防御魔法と言えど全身魔装を終えた相手との魔法の出力の差は歴然だった。
耐えるのは数秒が限界。フェルンの防御魔法にヒビが入った。
(これ以上は……!)
「もう終わりにしよう小娘」
防御魔法の崩壊と同時に腕をフェルンに向け、魔法を唱える。
「
「っ………!」
リュグナーの魔法がフェルンに当たるその瞬間、フェルンの前に人影が過った。
ギュッと目を瞑りこれからくるであろう衝撃に身構えていたフェルンだったが一向に来ることのない痛みを不思議に思いそっと目を開けた。そこに居たのは目の前で優しく微笑む青い三つ編みが特徴的な青年が一人。
「大丈夫かい?綺麗なお姉さん」
「は、はい。……大丈夫です。助けて下さりありがとうございます。 貴方は一体…?」
「お姉さんそれは後にしておくれ。 今は…」
青年の言葉でフェルンは改めてリュグナーに視線を向けた。助けてくれた青年の事も気になるが先ずは目の前の敵を倒すことが最優先事項なのは変わりない。
「…お前はなんだ?」
リュグナーは目を細め青年を凝視した。
「初めましてだね魔族のお兄さん。僕はアラジン。通りすがりの旅人さ。ねぇ、この街で暴れるのをやめてくれないかい。街の人たちが怖がっているよ」
いきなり現れ流暢に話し出すアラジンに対しリュグナーはアラジンの魔力量を見定めていた。小娘と同程度…いや、それよりも少し多いくらいか、と思考していたリュグナーだったがとある疑問がリュグナーの脳裏を過った。
───目の前の小僧から感じる得体の知らない魔力はなんだ?
決して魔力量が多い訳でもない。それでもリュグナーは考えずにはいられなかったのだ。それほどまでに今まで戦ってきた者から感じたことのない奇妙さがそこにはあった。
「お前の指図をなぜ私が聞かなければならない」
「……そうかい。君が攻撃をやめないなら僕は君を傷つけなくちゃいけない。 ねぇ、お姉さん?」
突然、声をかけられたフェルンは少し動揺しながらもアラジンに返事を返した。
「な、なんでしょうか?」
「下で倒れているお兄さんは仲間かい?」
アラジンの言葉でフェルンはシュタルクの方へ視線を向けた。先ほどまで、もう一人の魔族と戦っていたのであろうシュタルクはただ一人、力尽きたように地べたに寝っ転がっていた。もう一人の魔族がいなことから分かるのはシュタルクが倒したか、或いは逃げたかのどちらかであるかだけである。
「シュタルク様!」
「仲間なんだね。なら彼を連れて少し離れていてくれないかい?」
「貴方はお一人で大丈夫なんですか?」
「僕は大丈夫さ。僕よりもお姉さんは自分の心配をした方がいいよ。さっきの魔法でだいぶ魔力を使い切ってしまっただろう?」
アラジンの言う通りフェルンは魔力をかなり使い切ってしまっていた。
「………ありがとうございます。 …どうかご無事で」
フェルンの言葉にゆっくりと頷いたアラジンは再びリュグナーと視線を交えた。
「話し合いは終わったか?」
「うん。終わったよ。もう一度聞くけど攻撃をやめてはくれないかい?」
「愚問だな」
「……そうかい」
刹那、両方の魔法が発動した。
「『
「『
朱と緋がぶつかり合う。アラジンの放った赤き奔流が、螺旋を描きながら天へと駆け上がっていく。
「小賢しい真似を……!!」
リュグナーは喰らったらひとたまりもないと判断したのか後方へ下がった。そして両手を前方へと突き出す。するとその足下に魔法陣が展開された。同時にアラジンも杖を振りかぶる。
「魔族お兄さん!これで終わりにしよう…!」
「こちらのセリフだ小僧!」
▼
「……すごい」
リュグナーとアラジンの戦いをシュタルクを背負い観戦していたフェルンの口から無意識に漏れた。
「うぅ……」
「シュタルク様?」
シュタルクが薄っすらと目を開け、目の前で繰り広げられている戦いに目を向けた。
「おいおい。なんだよアレ!てかアイツなんかゴツくなってねぇーか!!」
「シュタルク様、起きたなら自分で立ってください」
そう言うや否や ドスっ、と地面にシュタルクをフェルンは放り投げた。
「もうちょっと優しくしてよ〜」
「十分優しくしました」
「……なぁフェルン。」
「なんですか?シュタルク様」
「ずっと気になってたんだけど…、あの魔族と戦ってるのは誰だ? 戦ってたのはフェルンのはずだったよな?」
「それは… 分かりません。ただ…急に現れて助けてくれた人だと言う事は確かです」
「ふぅーん」
「他に聞かないんですか?」
フェルンの言葉にシュタルクは軽く微笑んだ。
「いやまあ、あの戦いが終われば聞けるしなって思ってさ」
「あの人が勝つかは分かりませんよ?」
「多分勝つと思うぜ。フェルンを助けに入ったのはきっと勝てる余裕があったからだと思うしな」
▼
リュグナーが腕を振り下ろし、アラジンも杖を振り下ろす。お互いが強力な魔法を打ち合う。
リュグナーの極大魔法がアラジンを襲う。だが最後までリュグナーの極大魔法がアラジンに届く事はなかった。なぜならリュグナーの極大魔法はアラジンによって跳ね返されていたからである。
「なに!そんな馬鹿なことがあってたまるか!」
驚きの余りリュグナーは一瞬体が硬直した。だがその隙を逃す馬鹿はいない。その瞬間、
───一寸の狂いのない白い閃光が一つ。
リュグナーを貫いた。