葬送の魔法使いと創世の魔法使い   作:ぺてんし

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 人間は神の失敗作に過ぎないのか、
 それとも神こそ人間の失敗作にすぎぬのか


   【フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ】



第6夜 忌々しい存在

 

 

 王都にて、緑色の三角帽子を被った男と葡萄の葉のような髪飾りを付けた女性が向かい合い、話し合っていた。

 

「やあ、久しぶりだね」

「えぇ、あなたの方こそ」

 

 男は満面の笑みを浮かべながら頷く。その姿を見て女性もまた笑みを浮かべた。

 

「本当に驚いたわ。まさかユナン──貴方に会えるなんて」

 

 ユナンと呼ばれた男は笑みを絶やさず女性を見つめ、口を開いた。

 

「そうだね…、僕もそう思うよ。それで一つ質問してもいいかいシェヘラザード?」

 

 シェへラザードと呼ばれた女性は肩をすくめながらユナンの話に耳を傾けた。

 

「君は僕の知っているシェヘラザードで合っているかい?」

「……貴方がどう捉えているかは分からないけれど、以前の私と同じだと思うなら間違ってはいないわ」

 

 シェヘラザードの発言にユナンは少し考える仕草をした後、何度も頷き「やっぱりそうなんだね」と母親が子に優しく語りかけるかのように言葉を呟いた。

 

 なんとなく目の前にいる彼女は、以前の彼女とは違う気がした。雰囲気が違うとかではない。長い間、『死』と『転生』を繰り返してきた人間特有の匂い。僕と同じ……何度も新しい人生を送ってきた人間の。だからだろう…シェヘラザードの違和感に気づいたのは───。

 

 

 

「それで今の君は何人目(・・・)のシェヘラザードなんだい?」

 

 

 

 

※※※

 

 

「じゃあ、どうしてリュグナーを殺した奴の魔力があのマギと一緒なの?」

 

 ずっと気になっていた。こんな事は初めてだったから。どんな生物でも一定量の魔力は存在する。でも一人一人、魔力の性質は異なる。似たような魔力の波はあるにはある。けれどアレほど異様な魔力と全く同じと言っていい人間はそうはいない。だから違和感があった。

 

「さあね。私には分からないかな」

 

 のらりくらりと会話を流すフリーレンに対しアウラはため息を零した。

 

 ……どちらにせよあのマギが加勢に来ないなら別にどうでもいい事だわ。フリーレンさえ殺して仕舞えば後からどうにでもなることだし。

 

「そう。答えてくれないのね。まあいいわ」

 

 私の可愛い可愛い不死の軍勢を、消費の激しい解除魔法で自身の魔力量を削ってくれてありがとう、フリーレン。

 

「何か言い残すことはあるかしら」

「何も」

「……相変わらずつまらない奴ね」

 

 500年と言う年月を鍛錬に費やしてきた。だからこそ私には圧倒的な魔法の自信がある。それと同時に人間ごときには負けはしないと…そう自負している。けれど一度だけ人間風情に負けた私だ。だから念には念を……。いくらあの時とは状況が違うにせよ、あのマギが私の魔力探知の届かない範囲から狙っているかもしれない。

 

 嗚呼、本当に忌々しい存在だ。私の目的はフリーレンを殺すことなのに、チラチラと脳裏に過ぎるあのマギが──シェヘラザードが。

 

 でも今は勇者ヒンメルもいない。それどころかあの時から全く鍛錬を積んでいないフリーレンただ一人。ふふ……最初からこう考えれば良かったわ。何、今の私にとってフリーレンなんて敵じゃない。そうよ、私は500年以上も生きた大魔族なのだから。

 

「『服従させる魔法(アゼリユーゼ)』」

 

 アウラの手に持つ服従の天秤がお互いの魔力に反応し、ゆっくりと作動した。

 

「嬉しそうだね」

「えぇ」

 

 もう勝利を確信か。確かにアウラは強い。溢れ出す魔力から痛いほど伝わってくる。アウラが500年以上生きた大魔族であること。その生涯のほとんどを鍛錬に費やしたこと。体外の魔力の量だけでもこれだけの情報が手に入る。だからこそ、そのプライドが自信が───。

 

「哀れだ」

「その判断、後悔しないことね」

 

 葬送のフリーレン。あなたがどれだけ長く生きた魔法使いかなんてどうでもいい。あなたがどれだけ優秀な魔法使いかなんてどうでもいい。だってあなたの魔力が物語っている。手にとるようにわかる。鍛錬を積んだのだって精々合わせて100年程度、魔力総量もそれほどでもない。どうあがいても私には遠く及ばない。

 

「私の勝ちよ」

 

 アウラは自身の腰に身に付けていた黒い大剣を引き抜き、ゆっくりとフリーレンに近づく。その刹那、アウラの方に傾いていた天秤がキィっと音をたてながらフリーレンの方に傾きだした。

 

 ……なんだ?天秤がフリーレンの方に傾いていく……。

 

「私の魂を天秤に乗せたな、アウラ」

 

 なぜ?どうして?アウラはそう考えずにはいられなかった。フリーレンには魔力の制限特有の揺らぎや不安定さも僅かなぶれすらも見られなかった。なのに天秤が傾いた。それにフリーレンはマギではない。だからルフ達から無限に魔力を補給することはできない。はずなのにだ……天秤が傾いた。

 

「…どういうこと?」

「もう気が付いているはずだ。私は魔力を制限していた。アウラ、お前は見誤ったんだ」

 

 ……そんなはずはない。魔力の制限をこの私が見逃すはずはない。

 

「馬鹿じゃないの?なんでそんな訳のわからないこと…」

「たしかに馬鹿みたいだ。でも魔族に勝てる」

「ふざけるな。私は500年以上生きた大魔族だ」

 

 ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。あのマギに続き、今度はフリーレンまで。先の戦いで学んだはずなのに。

 

「アウラ、お前の前にいるのは、1000年以上生きた魔法使いだ」

 

 フリーレンが自身の魔力を解放したことにより、天秤が完全に傾いた。

 

「自害しろ、アウラ」

「…ありえない…この私が…」

 

 天秤の主導権を握ったフリーレンの命令でアウラは自身の大剣で首を落とした。

 

 正直、アウラよりもあの大剣の妙な魔力が不可解だった。ここでアウラを倒せたのは良かった。さぁ、あの黒い大剣を調べなきゃね。そう思考しながらアウラの身体を支える黒い大剣に近づく。

 

 そこでふとこの異常な状況にフリーレンは近づくことに躊躇いを感じ後ずさった。なぜアウラの身体が崩れないのか。なぜあの黒い大剣の八芒星が僅かに輝いているのか。そんな事が嫌な予感と共にフリーレンの脳裏に過った。

 

 

「うーん、どうしようかな……この状況」

 

 

 

※※※

 

 

 フリーレンが断頭台のアウラを討ち取った同時刻、首切り役人を無事倒したアラジン達は、お互いの身の上話をしながらフリーレンの居るであろう場所へ向かっていた。

 

「それじゃ、アラジンは違う世界から来たのか?」

「うん、そうさ」

 

 アラジンの言葉にシュタルクは宇宙を体感した猫のような表情で、世界って沢山あるんだなと何処か遠くを見つめながら呟いた。

 

「だからこの世界のことはまだ良く知らないんだ。でも偶然僕を乗せてくれた馬車の運転手のおじさんからは少しだけ教えてもらったんだけどね」

 

 ポリポリと頭を掻きながら照れくさそうにそう話すアラジンに、そうなのですねとフェルンは呟いた。

 

 そんな仲良さそうに話し込む三人は陽の光が少しずつ登るのを見ながら、グラナト伯爵が手配した馬車で移動するのであった。

 





 時間が経つのは早いですね。ずっと投稿しようとしていたんですがシェヘラザードの口調がいまいち掴み取れないし、他のキャラの口調も掴み取れないしで投下できませんでした。それと感想等をくれた方々、本当にありがとうございます。どんな感想でも嬉しいしモチベが上がるのでほんと感謝です!

 それではまたの機会に。
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