魔法少女いろは☆マギカ 第2部 RE:Ms.Pain Planter(休載中 第二章一部完結済) 作:hidon
――――一週間後。
2018/10/28(水)。慶治町・北養区。
風俗店と聞くと、ヤクザのイメージが強い。
実際、暴力団がバックに付き、経営しているケースも多々ある。
だが、以外にも警察との付き合いの密度は濃い。
“重要な情報源”、というのも勿論だが、それ以外にも風営法によって、店は警察の生活安全課に登録を届け出る必要があるからだ。
よって、風俗担当の刑事が度々店に足を運び、店主等から情報収集を行っている。
大体は、○○はクスリをやっているだの、ライバル店は未成年者を雇っているだの、そんな話だ。要は福祉犯罪を検挙する為の情報源として優秀なのである。
そんな訳で、キャバ嬢やホスト、スナックのママ、バーのマスターなどは必然的に、あらゆる情報に精通していなければならない。また、うっかり零した情報を誤れば、自分たちが警察の標的にされかねない。非常にシビアな職業といえる。
「…………」
北養駅前にスナックを構えるこのママも、そんなシビアな環境で生きる猛者の一人だった。
年齢は40半ばだが、その見た目は麗しい。艶のある黒髪と着物姿も相俟って、“夜の女”というよりは、有名な料亭の女将に見える。
「いらっしゃい」
「こんばんは~♪」
陽気な笑顔と共に一人のキャバ嬢が表れる。
温和な笑顔で迎えながらも、初めて見る子だな、とママは思う。
腰まで伸びた金髪は緩いウェーブを巻いていて、端正な顔立ちだ。ワインレッドのドレスも露出が目立ち、プロポーションの良さを見せつけている。豊かな胸部に、丸みのある腰つき。シルバーのアクセサリーと濃いめの化粧で身を飾っているが、そんな物が無くても、男を惹き付ける逸材だろう。
ただ、上腕と膝上が―キャバ嬢にしては珍しく―日焼けしていて、夜中にも関わらずサングラスをしているのが気になった。
「ご注文は?」
「バーボン、ロックで」
金髪のキャバ嬢は座るや否や、得意げにそう注文する。
しかし――
「バーボンって、何だか知ってる?」
ママの眼が鋭く光る。
言われた途端、表情が曇りだす金髪のキャバ嬢。
「!? え、えっと……?」
「ロックって、どういう意味?」
「え~~~~と……あ~~~~???」
露骨に眼が泳ぎ、しどろもどろな様子の金髪のキャバ嬢。そこでママは察した。
「分かった。“ももちゃん"だろ?」
「うぇえッッ!?!?」
ママ、大正解!
瞬間、椅子から転げ落ちるほどびっくり仰天する金髪のキャバ嬢、もとい――
「くっそぉ~~、いけると思ったんだけどなぁ~~!」
「業界20年を舐めんじゃないよ、“十咎ももこ”ちゃん」
倒れた椅子を戻しつつ、腹の底から悔しがる少女に対して、ママは勝ち誇った笑みで言う。
「ちぇっ……」
不貞腐れつつサングラスを取ると、純朴そうな丸目が表れた。
彼女――十咎ももこの正体はキャバ嬢ではなく、16歳の少女である。
当然、“夜の女”の眼では無いと、ママはサングラス越しに直感したのだった。
「子供がこんなところ来ちゃいけないよ」
「スタイルには結構自信があったんだけどなぁ……」
露出した胸を寄せて見せつけるももこ。
確かに年齢の割には豊かに成熟していると思うが、それはそれ、これはこれである。
「負け惜しみはいいからとっとと帰んな」
「でもさぁママ、アタシらも情報が欲しいんだよ」
「情報って?」
「最近、この町で行方不明者が続出してるだろ。一週間で12人もだ」
「何かあれば警察から連絡来るだろ?」
「待ってる間に何かあってからじゃ遅いんだよ……」
警察が魔法少女を頼るのは最終手段だ。
彼らにもプライドは有る。塚内直正警部のように積極的に
情報漏洩防止徹底と規律遵守の姿勢は敬意に値するが、協力要請が来る前に被害者が増えていく状況を、見過ごすことはできなかった。
恐らく、ももこのみならず、他のチームリーダー達も同じ気持ちになる筈だ。
「ママ、なんか知らない?」
ママは、この町では屈指の情報通だ。
「さぁね、ただ……」
「ただ……?」
ママは、凍えさせるほどの“良い笑顔”を浮かべて、冷たく言い放つ。
「ももちゃんだけじゃあ、無いよねえ」
「うっ……」
顔が青ざめ、息が詰まるももこ。
流石のママである。
以前から知り合いである十咎ももこの性格は良く知っていた。っというか、完全に見抜かれていた。
根は真面目で純情なももこが、一人でこんな不埒な格好をして、夜の世界に来るはずが無い。そもそも度胸がない。
つまり、必ず協力者がいる。真犯人が誰か、すぐに察した。
「そこにいるんだろ! いずもっちゃん」
「……ッ」
店の奥のテーブル席で、一人飲んでる女性を呼びつけた。
女性の肩がビクリと跳ねる。そして、観念したように立ち上がった。
「あ~もお~! バレちゃあしょうがないッスねぇ~!」
文句を垂れながら優雅に歩み寄って来る。
純白に近い銀髪をハーフアップに編み込んだ、露出の高いダークブルーのドレスを着た細身の美女。
彼女は両手でヘアスタイルをワシワシと崩し、メガネを掛けて、正体を明かす。
――慶治町の調整員・八重いずもであった。
「おい調整
「勉強不足のモモがいけないんでしょ? あと何度も言うけど屋じゃなくて
普段酔った客同士の醜い争いを見ているだけに、ももこといずもの言い合いは随分微笑ましいものだと、ママは思う。
しかし、これはこれ、それはそれである。
「はいはい喧嘩はいいから。あんたたちいつまでも人の店でふざけてると、役所に訴えるよ」
「うっ、ごめんなさい……でもふざけてた訳じゃあ……」
慌ててママの方を向き、深く頭を下げるももこ。
シュンとなる彼女の肩をぽんぽんと叩き、目配せしながらいずもがママに言う。
「ママ、ここはアタシの顔に免じて許して頂けないッスか? せめてモモだけでも」
「まあ、素直に謝ってくれるんなら大事にはしないさ」
ママはフッと微笑んでそう言った。いずもは深くお辞儀して、感謝を述べる。
「どうもッス。じゃあ、アタシらはこれでお暇致します。モモ、帰るッスよ」
「う、うん……」
情報が入らなかったのは残念だが、ママに迷惑を掛ける訳にもいかない。
キャバ嬢姿の二人は背を向けて、その場から去ろうとするが……
「ちょっと待った」
「「え?」」
店を出ようとする直前で、ママに呼び止められる。
きょとんとした顔で振り向くももこといずも。
「一つだけ、教えられることがあったよ」
一部で、諸々の設定深く調べずに勢いで書いてきたツケが今になって回ってる……。
ちなみに、設定として。
神浜町→中央・参京
慶治町→水名・新西・北養
立政町→南凪・栄
明京町→工匠・大東
となります。
なお、設定の都合上キャラクターの住所が何名かは原作と異なりますが、ご了承ください。