魔法少女いろは☆マギカ 第2部 RE:Ms.Pain Planter(休載中 第二章一部完結済)   作:hidon

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 翌日の早朝。
 慶治町役場・地下――調整課・調整員執務室に戻ったキャバ嬢姿の二人……もとい、十咎ももこと、八重いずもはママから聞いた情報について話し合っていた。




『ケンカ?』

『ああ、行方不明者の内4人はうちの常連だった。みんな、いなくなる前々日くらいにうちで飲んでった人達だ』

『それで、その話を……?』

『彼女とか専属の客とか、奥さんとか子供とか……みんな大切な人と大喧嘩して、縁を切っちまったって嘆いてたな。一応、事情聴取に来た警察にも伝えといたんだが、どこまで真剣に取ってくれるか……』




「やっぱり、部長の言ってた“マギウスの翼”って連中の仕業なのかな……?」

「かも、しれないッスね……」

 犯人が魔女だった場合、調整員は出現場所を即座に察知して、結界で封じ込める事ができる。
 だが今回に限って、八重いずもは一切魔女の反応を感知できなかった。市内各地の調整員達も同様だ。
 つまり、今回の行方不明事件は、人為的に起こされた可能性が高いと、二人は見ていた。 

「でも、なんでケンカして、縁を切った方を攫うんだ?」

「さあ、そこまでは……? でもおっかないッスよ。まるで都市伝説か祟りの再現じゃないッスかっ?!」

 いつになく苛立ちの表情を見せるいずもの言葉に、ももこはうんうんと同意する。
 恐いのは、相手の思惑や目的が一切検討付かない、という点だ。
 ママが言うには、4人の常連は、それほど貯金が多かった訳でも無かったらしい。また、人柄も良く恨みを買われるような人物でも無いそうだ。
 つまり、都市伝説か祟り、或いは魔女の口付けを模倣した、ただの愉快犯の可能性がある、ということだ。

「それに、鏑 美奈子さんの事も気になるよな……アンタと仲良かったんだろ、調整屋?」

「あたしとは腐れ縁で、仲良しだったのは“()()”ッスよ」

 鏑 美奈子は、中央区の神浜総合病院で、院長秘書兼警備部門を担当していた女性だ。
 八雲みたま(タマ)とは同区の出身で、幼馴染の旧友でもあった。
 彼女は、みたまが“里見灯花”という少女について尋ねた数日後に、行方を晦ましたという。
 一応、ママにも美奈子の事も聞いてみたが、そちらについては全く知らない、と言われた。

「どっちも意味不明な事件だよな……。多分、近い内に警察からの協力要請は来ると思うけど……」

「それまで、こっちはこっちで情報収集しときましょ。また“この姿”でッ!」

「またキャバ嬢~? ……アタシは、今回のでちょっと自信無くしたんだけどなぁ~……」

「大丈夫、モモならいけるッ! あたしが保証するッスよ!」

「はいはい……推し活ありがと調整屋っ」

 サムズアップして笑顔を向けてくれる年上の相方に、ももこの心も少しは和んだのだった。

 ――全く。こういう時、アタシ一人だったら抱え込んでたよな。

 


FILE-2 #08 いざ、新しい町へ

 

 

 2018/11/01(日) 13:30――

 

 ――――慶治町・水名区。

 

 

 水名区役所―現・慶治町役場―の周辺は大きな街が広がっており、店も人も多くて賑やかだ。

 それもその筈。水名区役所は、神浜市役所として使われていた歴史がある……つまり、かつての水名区は市の中心として最も栄えていた街だったのだ。また、観光業も盛んで、多種多様な外国人旅行者の姿もちらほら見受けられる。

 そこに、2人の魔法少女が訪れていた。

 一人は、桃色の髪の毛を後ろに縛った、どこにでもいそうな優し気な雰囲気の少女、環いろは。

 もう一人は、金髪色白で背も高い西洋人風で、いろはとは対照的に、快活な印象を受ける深月フェリシアだ。

 二人は、役場近くにあるショッピングモールに来ていた。仲良く(?)並んで歩く二人は、目に映る店を忙しなく見まわしながら、通路を進んでいく。

 

 大賢者に会う為の試験を受けている二人。

 神浜町・神浜市役所では、治安維持部長・七海やちよと神浜市長・夕霧青佐から、その“鍵”となるマギアストーンを譲り受けた。

 残るは3つ……慶治町・立政町・明京町。

 二人がまず向かわされたのは、十咎ももこがリーダーを務める『チーム・イザナミ』が属する慶治町役場であった。

 

 ……つまり、これから3か月間お世話になる身なので、手土産を持参していこうと決めた訳だ。

 提案者はいろはで、ショッピングモールに向かうことを決めたのはフェリシアである。なんでも傭兵(ヤクザ)時代から馴染みの店があるらしい。

 

 

 

 

「なーんか、違うんだよなぁ……」

 

「また言ってる……オムライス、美味しかったじゃない」

 

「そーいう意味じゃなくってさあ……」

 

 先ほどから、腕を組んで悩ましい顔でブツブツ文句を垂れてるフェリシアに、流石のいろはも呆れ返る。

 理由は少し遡る。

 発端は昼食時。

 フェリシアが傭兵時代からお気に入りの洋食店に行った時の事――――

 

 

 

『なに!? ナポリカツができねーだと!?』

 

『すまんなぁフェリちゃん。専門だったうちのばーさんが腰やっちまってなあ……。変わりに上手いオムライス、御馳走してやっからよ』

 

 しばらくして。

 店主のじーさんが特盛のオムライスを二人前持って来てくれた。

 光沢を放つオムレツはスプーンで割ると半熟が溢れ出て、口触りが程よいトロトロのそれは、ほんのりケチャップの酸味と鶏ガラが効いたチキンライスとの相性抜群!

 

『もぐっ……うん! おいしいよ!! フェリシアちゃんっ!!』

 

『う~~~む……。うめえ、確かにうめえんだ……けどなあ』

 

 

 

 

「身も心もあのナポリカツになってたんだよなぁ~……」

 

「ええ……。とか言いながらペロリと平らげてたじゃん……」

 

「いやいや腹減ってたから飯は喰うけどよ。今日のオレはナポリカツの気分だったんだって。あの無意味にでっかいトンカツが乗ってて無意味にパスタがぶっとくってさー……あの下品で野暮くさい感じがなんともいえないんだよなぁ~……!!」

 

 そんなに悔しいのか。

 目に大量の涙をじわりと滲ませ、口から大量の涎をダラダラ垂らしながら、心底名残惜しそうにボヤき続けるフェリシア。

 あまりにもしつこいので、いい加減うざったくなってくる。いろははハッキリ言ってやった。

 

「もう。ほんっと、フェリシアちゃんって、面倒臭い奴……」

 

「え? オマエそれ特大ブーメランだぞ? 鏡見る?」

 

 が、言ったところで飄々とやり返してくるのがフェリシアである。

 結局、何も言い返せなくなり、「むう……」と頬を膨らますいろは。

 

「ん?」

 

 と、そこで。

 前方に人だかりができていることに気付くいろは。

 どうやらショッピングモール内の中心の広場に差し掛かるらしく、丁度そこで何かイベントを開催しているらしい。

 ワイワイガヤガヤと騒がしく、子供達の歓声も聞こえてくる――これはもしや……

 

 

『魔女め! 生命を掛けて人々を護る魔法少女を陥れる真似は許せん!! 変身!!』

 

 

 どこかで聞いたことのあるバリトンボイスの凛とした声が響き渡り、いろはは確信する!

 

「カミハマンショーだ! 行こ! フェリシアちゃん!!」

 

「っ!? お、おい! ちょっとぉ!?」

 

 フェリシアの腕を無理矢理引っ張り、いろはは人混みの中へ突撃するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――そんな訳で、急遽子供たちに混じって、カミハマンショーを観ることになった二人。

 舞台の上で、勇敢に魔女と戦う白いスーツの超人・カミハマン。

 

『行くぞ獄炎の魔女よ!!』

 

『現れたなカミハマン!! 俺様の炎で焼き尽くしてやる!!』

 

 魔女なのに男の声と口調なのはさておき、ガバリと開け放たれた魔女―というより戦隊モノでよく見る怪獣―の大きな口から火炎放射が放たれる。このままでは炎に全身が焼かれてしまう!! 危ない! カミハマン!!

 

『ウォーターウォール!!』

 

 床を拳で叩くカミハマン。

 炎が身体に到達するよりも早く、足元から水柱を噴水のように発生させて、火炎を完封する。

 『な、なにいっ!!』とビックリ仰天する男声の魔女。

 

(すごい……! あれって、CGか何かなのかな?)

 

『トオッ!』

 

 全身を水流に包まれたまま、勇ましい掛け声とともに天高く飛翔するカミハマン。

 新必殺技のお披露目だ!! 

 

『カミハマン・ウォータードラゴニックスプラッシュ!!』

 

 空中に留まったカミハマンの全身を包む水流が、“龍”の形に変化。そのまま魔女(怪獣)に向かって墜落!! 水龍の大きな口が開かれ、魔女(怪獣)の全身を呑み込んだ。

 

『うっぎゃああああああああああああ!!?!?!?』

 

 大量の水が弾け飛ぶと同時に、びしょびしょになりながら爆発四散していく魔女(怪獣)。

 やったぜカミハマン!!

 それにしても、舞台なのに、やたら手の込んだセットである。だが、CG?とエフェクト?を駆使しているだけあって迫力満点だ。

 木っ端微塵に吹き飛ぶ魔女を見つめながら、決めポーズを取るカミハマンに、いろははちびっこ達と共に称賛の拍手を送る。

 

「やっぱりカッコいいね、カミハマン! フェリシアちゃんもそう思わない?

 ………………………あれ? いない……??」

 

 隣を見て呆然となるいろは。

 そこにいた筈のフェリシアは、忽然と消えていた。

 同時に、携帯端末が鳴り響く。

 

「フェリシアちゃんからだ……?」

 

 アプリのLINEを確認すると、メッセージが届いていた。

 

<友達の家が近くにあるのを思い出した。ちょっと寄ってくる>

 

<先に役場行って挨拶しといてくれ>

 

「ええっ?! ちょっとっ!?」

 

 これからお世話になる役場の皆様の手土産すらまだなのに!

 フェリシアちゃんがいないと買いに行けないのに!?

 信じられない。

 フェリシアはいつも自分に相談もせず勝手なことばかりする。

 いろははカッとなり、つい「フェリシアちゃんの馬鹿!」と返信しそうになったが、

 

<http:**************.www>

 

<ここんちのこれなら間違いねーぞ>

 

 そのメッセージと共に添付されてきたURLには、市内でも屈指の有名店・オーガニックスイーツカフェ『木漏れ日の小屋』のHPが。

 確認すると、どうやら最近、このショッピングモール内に2号店が出来たらしい。

 同時に添付された画像には、人気商品『自然食材で育てたニワトリの卵を使ったツンとまろやか高級焼きプリン』が表示されていた。

 

「でもこれ、“週間20食限定”って……」

 

 呟いた瞬間、フェリシアからメッセージが届く。

 

<予約してあるからさっさと買いに行け>

 

「フェリシアちゃん、本当は良い子なのかな……?」

 

 環いろは、面倒くさい上にチョロい女である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、舞台裏では――――

 

 無事ショーを終えて、戻ってきたカミハマンの全身を水流が覆う。

 一瞬後に、現れたのはカミハマンの()()()

 

「どうだった?」

 

 それは屈強なバリトンボイスの逞しい男性ではなく。

 小柄で、桃色のシュシュを付けた青いツインテールが印象的な可愛らしい少女であった。フリルの付いた水色のドレス姿も相俟って、アイドルに見える。

 

「いやぁー!! 今回も良く盛り上がってたよ! アクションも最高だったし、さすがレナちゃんだ!!」

 

「ほんと!? ありがとう監督!」

 

「こりゃー将来は大女優決定だね!」

 

「ふふ、まあね」

 

「とか言ってるけど……本番直前までセリフ覚え切れなくて緊張でガクブル震えてたのは誰だっけ?」

 

「ちょっと! せっかく達成感を味わってたのに水を刺さないでよささら!!」

 

「うう……、最後のレナさんの大技の美しさに見とれてしまい、魔女の断末魔に合わせた演技を忘れてしまいました……。くぅ~! 自害」

 

「しなくていいから! ってか明日香。今回のアレはアンタの指導のお陰で完成した新必殺技なんだから! もっと自信持ちなさいよ……」

 

「自害……しません……。あっ! そういえば」

 

「どうしたの明日香?」

 

「レナさん、観客に気になる子がいましたよ!」

 

「え……? 誰よ?」

 

「あれは私の眼が間違いで無ければ、おそらく……」

 

 “魔女役”・竜城(たつき)明日香からその名を聞いて。

 “カミハマン役”・水波(みなみ)レナの瞳が、キッと鋭くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ちなみに魔法少女達は、全員私服です。
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