魔法少女いろは☆マギカ 第2部 RE:Ms.Pain Planter(休載中 第二章一部完結済)   作:hidon

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FILE-2 #13 黒き双斧、蒼き鉾槍

 

 

 

「結界を破るのは少々骨だったよ」

 

 そう言って、高層物から飛来する黒い影。

 いろはとフェリシアの前に降り立ったのは、黒装束の女。

 

(死神……!?)

 

 女の雰囲気から、ぞっとする程の冷たい印象を覚えるいろは。

 しかし、黒装束は黒羽根の纏うものとは違い、魔法少女の衣装だと一目で分かる。声色にも生気を感じられる。

 この人は、味方なの……?

 

「カエレか……!?」

 

「カタギになってすっかり腑抜けちまったかい? フェリー」

 

 凛とした低い声で、満身創痍のフェリシアを嘲笑う女。

 

「うるっせえッ!! こんな連中オレ一人で全員ブッ殺……げうっ」

 

「! フェリシアちゃんっ!!」

 

 粋がるよりも早く身体に限界が来た。

 血反吐を多量にぶち撒けるフェリシアに駆け寄り、回復魔法を掛けるいろは。

 桃色の魔法陣が、フェリシアの横たわる路面に発生し、ケロイド状の皮膚をゆっくりと治していく。

 その様子を横目で見た後、死神のような女は、黒羽根達の方へと向き直す。

 その数は6人。

 

「さてと……おっぱじめようか?」

 

【ツバメA。眼の前の魔法少女は“標的”ではない。データベースを確認…………検索完了。『カミハマヴィレッジ』経営者・三笠(みかさ)カエレと断定】

 

【スズメA。三笠カエレは“標的”ではない。紅羽根へ指示を要請…………スズメA:了解。現時刻より、三笠カエレを“標的C”として捕獲対象とする。抵抗するなら排除せよ】

 

【ツバメB:了解。標的Cへ警告、抵抗するなら排除する】

 

【ツバメC:了解。標的Cへ警告、抵抗するなら排除する】

 

【スズメB:了解。標的Cへ警告、抵抗するなら排除する】

 

【スズメC:了解。標的Cへ警告、抵抗するなら排除する】

 

「ワケ分かんないことをごちゃごちゃと……気持ち悪い連中だねえ」

 

「あの、気を付けてください……!! あいつら、只の魔法少女じゃ無いです……っ!」

 

「大丈夫、黙ってそっちの()かん坊に集中してな」

 

 いろはの心配に、微笑で答えると。

 スッと、カエレは背中から獲物を引き抜いて、構える。

 両手持ちのバトルアックス。鈍く光る銀刃と、全身を纏う禍々しい闇のアトモスフィアが彼女の“死神らしさ”をより強調させる。

 

【スズメA:標的Cと交戦開始】

 

 戦意有りと見た、黒羽根の一人が突撃を仕掛ける。

 ジャキッと右袖口から伸びる黒い剣。

 

【……?】

 

 刺突。

 カエレがアックスを振るうよりも早い一撃が、腹を貫通する!

 瞬間―スズメAの瞳が微かに揺れた。

 そこにいた筈のカエレの姿が、掻き消えた。

 

【】

 

「やっぱり。()()()()()()か」

 

 嘲るような声と同時に、大量の鮮血が噴水の如く宙を舞い散った。

 いつの間にかスズメAの背後に回っていたカエレの一撃!

 横薙ぎに一閃されたバトルアックスにより、スズメAの首が飛んだ。

 一瞬にして頭部を失った、スズメAの身体は、ぐらりと前に倒れた。

 

【スズメB:標的Cと交戦開始】

 

【スズメC:標的Cと交戦開始】

 

 だが、凶刃は迫っていた。

 スズメAの死に様を見届けるカエレの双方から、ツガイのスズメ達による同時攻撃。

 スズメBの黒剣が、カエレの頚筋に。スズメCの黒剣が鳩尾にそれぞれ突き刺さる。だが……

 

「フッ」

 

【】 

 

 それも、無駄だった。

 微笑を浮かべ、カエレが消える。

 瞬間、スズメBが機能停止した(即死)

 背後に回ったカエレが、お返しとばかりに頚筋を一閃し、頭部を斬り落とす。

 

【スズメC:標的Cの攻撃がわからない。分析中、分析中、分析中……】

 

「ハッ!」

 

 混乱したのか。

 立ち止まってそんなことを宣う彼女は格好の的だった。

 すぐに目前までカエレが迫りアックスを一閃、首を落とした。

 顔や服を返り血で染めながらも、カエレは愉快に笑う。

 

「生きてないのは、実に都合が良い。やりやすくて助かるよ」

 

「生きて、ない……?!」

 

「そこの君、いろはちゃんだっけ? こいつらは、使い魔と同じさ。魔力反応が無かっただろう。つまり、ソウルジェムが“ここには無い”ってことだ」

 

「え……!?」

 

 カエレは屈み、血塗れに斃れているスズメCのフードを剥いだ。

 魔法少女衣装、そして身体の隅々を確認して、「やっぱりね」と呟く。

 

「! 危ない!」

 

【ツバメA:標的Cと交戦開始】

 

「……!」

 

 いろはの叫び声と同時に、ヒュンと風切り音。

 カエレの背後に迫っていたツバメAが、首を斬り落とさんと黒剣を振り下ろす!

 だが、やはりカエレは掻き消え、ツバメAの背後に出現した。

 お返しとアックスを首に薙ぐが、ツバメAは振り向き様に薙いだ黒剣で受け止める。

 そのまま、鍔迫り合いになる二人。

 

「なるほど。魂は失っても反射神経はそのままって訳かい」

 

【ツバメA:標的Cの攻撃がわからない。分析中、分析中、分析中……】

 

「力も相当だね……! なら、優花!!」

 

『承知致しましたわ』

 

 カエレの掛け声。頭に響くのは、透き通るような女性の声。

 ドンッと、岩が落ちたような鈍い衝撃音が響いた。

 ツバメAの機能停止(即死)は、ほぼ同時。

 上空から飛来した“何か”がツバメAの頭部に墜落し、そのまま首を落とした。

 首ごと路面に突き刺さったのは、“槍”だ。七海やちよの獲物とは違う、より鋭利でゴツく、戦闘に特化した印象を受ける、蒼穹のハルバード。

 

『一丁上がり、ですわっ!』

 

「よし!」

 

 間違いなく笑顔でサムズアップしてるであろう、相棒の姿を思い描きながら。

 崩れ落ちるツバメAから、バックステップで距離を取るカエレ。

 周りを見ると、あっという間に、4つの死骸が出来上がっていた。

 

【ツバメB:標的Cと交戦開始】

 

【ツバメC:標的Cと交戦開始】

 

 残るは2()

 それぞれ黒剣を構えて迫ってきている。

 仲間の死には目も暮れず、ただ標的排除に向かって、一目散に。

 

「フン」

 

 鼻で笑うカエレ。“愚直”という言葉が似合う連中も、そうはいない。

 刹那――ツバメAの生首ごと路面に突き刺さっている“蒼穹のハルバード”を中心に、蒼い魔法陣が形成。

 全速前進で突き進むツガイのツバメ達は、魔法陣に足を踏み入れる――途端、二人の足元に水流が発生!

 

【ツバメB:相手の攻撃がわからない。分析中、分析中、分析中……】

 

【ツバメC:相手の攻撃がわからない。分析中、分析中、分析中……】

 

 ブツブツ言ってる暇など無いだろうに。

 だが、“優花の魔法”に困惑している様子だ。水流は魔法陣の中で、どんどん嵩を増し、二人の膝の高さまで満たされる。それでも標的Cの排除に向けて走り出そうとするツバメ達。

 だが、それは叶わなかった。

 

【……!】

 

【……!】

 

「はっ! ざまぁないね!」

 

 二人はバランスを崩し、横転! そのままざぷんと、魔法陣内のプールに身を沈める。

 まんまと罠に嵌まる様を、カエレが嘲笑う。

 

 これは人間の身体的構造を利用した技だ。

 人間は動物の中でも、極めて脆弱な部類。そもそも、四本脚の動物と比べて“不安定”な構造だからだ。

 人間が動くというのは体重を移動させているということ。その体重の移動を二本の足“だけ”で支えている――つまり、二本足が不安定なのは宿命であり、体重が多かろうが少なかろうが、この宿命から逃れられない。

 

 例として。

 災害が発生して、川の氾濫や津波により、水流が足下に迫ったとしよう。

 30cmも浸れば、歩行困難は確実。

 そこで、バランスを崩して倒れたら、どうなるか――

 

<ツバメB:呼吸困難。活動限界時間は残り10分。応援要請。応援要請。応援要請。応援要請…………>

 

<ツバメC:呼吸困難。活動限界時間は残り10分。応援要請。応援要請。応援要請。応援要請…………>

 

 溺れるツバメ達。

 バタバタと懸命にもがくも、息継ぎすらままならない様子だ。

 当然。

 これは、“魔法”で出来たプールだ。

 つまり、水の流れは“魔法の使用者”によって()()()操作可能。

 ツバメ達の鼻、耳、瞼や唇の隙間から水が侵入し、窒息を加速。

 大量の水が肺の中を満たし、やがて……、

 

<ツバメB:活動限界時間到達。機能停止>

 

<ツバメC:活動限界時間到達。機能停止>

 

 足掻きも虚しく、溺死。

 全身の力を失ったツバメ達が、プカリと水面に浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一石二鳥、ですわ」

 

 先ほどカエレが飛び降りた高層物の屋上。

 そこで様子を眺めていた、スカイブルーの髪と蒼き衣装の魔法少女――蜂貴院(ほうきいん)優花が、指を鳴らした。

 魔法陣と魔法のプールは一瞬で消滅。

 溺死した黒羽根達が路面に転がった。

 最早、人の形を成していない。

 水を吸収しすぎた為、全身が豚のように膨らんでいて、皮膚はふやけ始めている。

 水圧によって、血管が圧迫された影響だった。全身にガスが溜まって膨張。皮膚もやがて不気味な深い緑色に変わるだろう。そして、表面には腐敗ガスと腐った体液でできる水疱がビッシリと表れる筈だ。

 “ビッシリ”と……。

 

(うっ……)

 

 想像するだけで嘔気がこみ上げてくる優花。遺体処理は死ぬほど面倒くさい作業になるだろう。何より、臭いが凄まじくキツイ。

 

 ……それはさておき、もう、敵はいない筈だ。

 そう確信した優花もまた、そこから飛び降りて、皆の前に参上した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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