魔法少女いろは☆マギカ 第2部 RE:Ms.Pain Planter(休載中 第二章一部完結済)   作:hidon

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FILE-2 #15 怪人パブロ・ディエゴ

 

 

 

 

 ――――妙な気だ。

 

 そこにいる魔法少女全員が、そう感じた。

 路地を覆う黒い霧のような瘴気がより濃くなっていき、宵闇の世界へと徐々に映り変わっていく。

 

 

「はじめまして。魔法少女の皆さん」

 

 

「「「「「!!!!?」」」」」」

 

 刹那。

 その“声”と、目に見えた光景に、全員が驚愕した。

 経験豊富な傭兵であったフェリシア、カエレ、優花さえも仰天せざるを得なかった。

 結界(この場)には決して有りえない筈の、“男”の声――!!

 彼の挨拶と同時に、黒羽根達の骸と生首は、黒い霧と化して、宙に舞い散り――そして、消滅。

 

 だが、呆気に取られてる暇など無かった。

 ここに向かってくる以上、間違いなく敵だ。それも、魔女と同等の。

 挨拶の方向に、全員が振り向き、武器を構える。

 暗黒と化した路地の奥から、カツ、カツと靴音を響かせて、黒い影がゆるりと姿を現す。

 

「誰だ?」

 

「クックック……!」

 

 皆の先頭に立つカエレが、“彼”に尋ねる。

 タキシードを纏った、中世イギリスのジェントルマンの様な長身の―しかし、シルクハットを深く被って素顔が伺えない―“彼”は、くぐもった笑いを響かせる。

 そして、

 

 

「俺は、『マギウスの翼』のメンバー。パブロ・ディエゴ……!!」

 

 

 “彼”が名乗り、同時に、白い手袋を填めた右手で、シルクハットを外す。

 その顔が露わになった瞬間――魔法少女達に、ぞっと悪寒が走る。

 “彼”は、人間では無い。

 魔法少女でもなく、ましてや“魔女”とも形容し難い姿。

 

 

「か、カマキリ男……!?」

 

 

 ももこの震えた声。

 濃緑色の三角形に近い、よく見知った昆虫の顔面が、眼の前にあった。

 パブロ・ディエゴと名乗った、“ジェントルマン風のカマキリ男”は、複眼に覆われた大きな丸目をギラギラと瞬かせながら、話し出す。

 

「さっきは俺の仲間たちを、よくも酷い目に遭わしてくれたなあ……! クックック……! 俺に対する宣戦布告と取るが、良いのか?」

 

「ああん?!」

 

 喋る度に、大顎をバクバクと開閉させるのが気色悪い。

 彼の挑発に、真っ先にメンチを切るフェリシア。

 

「テメーらが勝手に襲ってきたんだろーが!!」

 

「大人しく捕まってくれれば、攻撃する気は無かったよ……」

 

「おい……、()()、アンタだろ……っ!?」 

 

「……おや、何の事かな? お嬢ちゃん」

 

 震える声の方へ、カマキリ男は不気味な複眼を向けた。

 ももこが脅えながらも、鋭い視線を向けてくる。

 質問に、カマキリ男が首を傾げた瞬間だった。

 

 

「さっさと吐きな。行方不明者の居場所を」

 

 

「ッ!?」 

 

 カマキリ男が愕然となる。

 カエレの姿が視界から消えたのと、背筋がぞくっとするような脅し文句が聞こえたのは同時。

 一瞬で背後に立ち、バトルアックスを頚筋に突き付けられた。

 カマキリ男も流石にヒヤリとしたようだが……、

 

「残念だが……俺は何も情報を持っていないよ」

 

 ふう、と溜め息を付き、背後のカエレにそう返した。

 

「じゃあ、黒羽根(あの子ら)の魂を返してもらおうか」

 

「それは難しい相談だ。だって、あいつらの命は、俺の管理下に無いし――」

 

 言葉は、そこで途絶えた。

 カエレがアックスを一閃し、彼の首が吹き飛ぶ!

 鮮血が噴出し、周囲を濃緑色に染め上げていく!

 

「なっ……!? カ、カエレさんっ!! 何も、殺さなくたって……!」

 

「モモ……」

 

「バーカ。こんなバケモン、生かしておけるかよ」

 

「だ、だけど……!」

 

 目を見開き、驚愕するももこの肩をポンと叩き、そう宥めるフェリシア。

 頭部を失い、緑血塗れで斃れゆくカマキリ男の骸に、冷ややかな視線を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そんなに俺と殺し合いたいのか?』

 

 

 カマキリ男の声が暗黒に木霊した。

 頭を失った彼の骸の上に、新たなカマキリ男が降り立ったのは同時だった。 

 

「「「「!!?」」」」 

 

「……アンタ一体、何者なんだ?」

 

 全員がギョッと目を見開く中で、冷徹に問い掛けるカエレ。

 カマキリ男は、ふふん、と得意気に笑みながら指をパチンと弾くと、踏んでいる骸が黒い霧となって宙に舞い上がり、消滅していく。

 殺した筈なのに、一瞬で復活したカマキリ男に、得体の知れなさを覚えるカエレ。

 

「俺は仕掛け人だぜ。初っ端からネタバラシすると思うか?」

 

「仕掛け人だと……?」

 

 カエレが鋭い視線を向ける。

 再び、バトルアックスを頚筋に突きつけるが、カマキリ男は余裕の笑みを崩さない。

 寧ろ、やれるものならやってみろ、と言いたげにふんぞり返っている。

 

「これから楽しいパーティが始まる。参加者はお前ら魔法少女と、慶治町に住んでいる誰かだ」

 

「ッ!!」

 

 キッとももこの目が剥いた。

 怒気を顕わにした鬼の形相で、カマキリ男を睨みつける。

 

「……やっぱり、お前が……!!」

 

「お嬢ちゃん、犯人が俺だと決めつけるのは早とちりだぜ? ただ、もしかしたら……そのパーティに、ヒントがあるかもしれない。みんなで頑張って、協力して、俺の正体を明かしてみな? 豪華なプレゼントが貰えるかもよ?? クックック……」

 

 ――アーッハッハッハッハッハッ!!

 

 カマキリ男の姿が頭から霧状化し、消滅していく。

 暗黒に満ちた狭い路地に、下品な狂笑を響かせながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気色わりー奴だったなー。勝手に一匹で盛り上がってよー」

 

「ああ。だが、只者じゃなさそうだ……そういや、優花は?」

 

「アイツなら後ろのゴミ箱の裏でガタガタしてるぜ」

 

「……あ~、優花、虫ダメだからねぇ……」

 

 親指で後ろをクイッと指すフェリシア。カエレが向くと、げえげえ嘔気付いてるいろはの隣で、ゴミ箱の裏に隠れて、ムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイ……と、体育座りで小刻みに震えてる涙目の優花がいた。

 何故か、この二人のいる空間だけギャグアニメ染みている。

 

「カエレさん!」

 

「モモ?」

 

「さっきは悪かった!」

 

 そこで、不意に名前を呼ばれたので振り向くと、頭を深く下げて謝罪するももこがいた。

 先程、カエレを殺人者と決めつけた事は勿論、カエレが根っからの悪人ではないと気づいたからだ。

 先のカマキリ男に対する言葉を聞いて、そう思えた

 カエレは自嘲気味にふうと、溜め息と付き、

 

「モモ……、できれば私の言葉で、誤解を解きたかった……」

 

 そう呟いた。

 ももこが頭を上げて、怪訝な顔で問い掛ける。

 

「なあ、どうしてそんなに手を汚してまで、傭兵なんてやってるんだよ?」

 

「モモ……あの」

 

「なんだよ? カエレさん程の魔法少女だったら、()()()()でも十分……」

 

「モモ、いや、それは……、ごめん」

 

「また謝った!! あーもうそういうところ!! ハッキリしないんだよなあ!?」 

 

「あっ、モモ……ごめん」

 

 

 ――――ちなみに、フェリシアの方は。

 

「おい、いろは。大丈夫かー?」

 

「うっぷ、だいじょばない。けど……大丈夫……っ」

 

 左足を引きずり、いろはの方へ寄っていた。

 様子を見るに、もう吐くものが無さそう……。

 差し伸ばされた手を取り、未だ治まらぬ嘔気と戦いながらも、どうにか立ち上がるいろは。

 

「うわ、ゲロ臭っ!?」

 

「ううっ、ごめん……」

 

「……あれ?」

 

 ――――と、そこで、いろはに対し違和感を覚えるフェリシア。

 

「ん? んー?? ……そういや、お前、土産はどうしたんだ?」

 

「え? …………………あっ!!」

 

 いろは、ビックリ仰天!!

 一瞬で気持ち悪さが吹き飛んだ――と、同時に大量の冷や汗がいろはの額に溢れ出す。

 この反応は、まさか――!?

 勘づいたフェリシアの顔面が、見る見るうちに真っ赤に染まっていく。

 

「もしかして、お前……!?」

 

「ごめんなさい……」

 

 ぺこりと、いろはが謝った。

 つまり、“そういうこと”である。

 

「っ!! お~ま~え~!! そういうところがッ! そういうところがさああああああああああッッ!!?」

 

 怒りが大爆発するのも無理無かった。

 いろはの胸ぐらを掴み上げて、怒鳴り散らすフェリシア!! 

 いろははただ、青褪めた顔で、「ごめんなさい」と繰り返すしか無く。

 

「アレ予約すんのにどれだけ苦労したと思ってんだよ、オイ!!?」

 

 ごめんなさい。悪かったから、揺らさないで……。

 力任せにブンブン体を揺すられて――喉元に再び胃酸がこみ上げてくる!

 

「うぅっぷ!?」 

 

「おおっとぉ!? ……たくっ。なんでお前、こんなところにいるんだよ?」

 

 いろはの頬が膨らんだ!

 慌てて解放&バックステップで距離を取るフェリシア。 

 が、空振り。とりあえず、被害を受けずに済んだ。

 いろはは、口元を抑えながらも、フェリシアの問いに答える。 

 

「うっ、だって、いたんだもん……」

 

「いたって、誰が?」

 

「お父さんが……」

 

「お父さん? いなくなったっていう……? かー! お前言い訳するならもっとマシな嘘考えろよ!!」

 

「嘘じゃないよ……! 本当に、見たんだもん……!」

 

「お前なあ…………ったく! しゃーねーなー……」

 

 青褪めた顔ながらも、いろはの目は真剣そのものだった。

 確かにコイツ、たまにトンチンカンな事を言うが、そういう時は、大抵大マジなんだよな……。

 フェリシアは、はあ~、と深い溜め息を付きながらも、諦めざるを得なかった。

 

 

 

 だが。

 

 この土産問題。

 二人にとって思いもよらぬ形で収束することになる……。

 

 

  

 

 

 

 

 

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