魔法少女いろは☆マギカ 第2部 RE:Ms.Pain Planter(休載中 第二章一部完結済)   作:hidon

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これまでのあらすじ……

 秘密結社・マギウスの翼は、
 計画の第二フェーズ、オペレーション【ウワサ】を始動。
 これに伴い、実働部隊の再編成が行われ、穏健派として慎重且つ平和的活動を目指していた梓みふゆは、里見灯花(トップ)の不興を買い、地位を剥奪。
 閑職に回され、実質軟禁状態となってしまう。
 後任として、【ミス・ペインプランター】こと、アリナ・グレイが新たな統括責任者(最高幹部)として抜擢された。

 一方、大賢者試験中の環いろはと、深月フェリシアは、神浜町を離れ、次の試験場となる慶治町に足を運んでいた。
 いろはは、フェリシアと別れるものの、“チーム・イザナミ”のメンバー、水波レナと出会い、親交を深める。
 だが、突然、行方不明になった筈の父が、眼の前に現れて……
 レナの事さえ見えなくなるほど、慌てて父の背中を追いかけていくいろは。

 しかし、それはマギウスの翼が仕組んだ、卑劣な罠であった。

 誘き出された先で、“黒羽根”と名乗る、黒装束の魔法少女達の襲撃を受けるいろは。
 フェリシアが助けに来て奮戦するものの、自爆攻撃を仕掛けられ、左半身を失う程の重傷を負ってしまう。
 絶体絶命の状況で、助けに来てくれたのは、フェリシアの友人の元傭兵達――
 『三笠カエレ』と、『蜂貴院優花』であった。
 二人は、圧倒的な実力で、黒羽根達を殲滅。
 チーム・イザナミのリーダー、十咎ももこが救援に現れた時には、
 既に、屍累々の光景が広がっていた……。

 だが、カエレは言う。
 黒羽根達は、生きていない。
 ソウルジェムを抜かれて、肉体を操り人形にされているのだと……。

 これで一件落着……かと思いきや。
 彼女たちの前に、カマキリ男・「パブロ・ディエゴ」が現れる。
 黒羽根達と同じく『マギウスの翼のメンバー』だと名乗るディエゴは言う。

 近い内にパーティが始まる。
 参加者は、いろは達魔法少女と、慶治町に住む一般人の誰かだ、と……。
 
 彼の目的。
 そして、マギウスの翼の目的とは、果たして……?


 



FILE-2 #16 これまでのまとめ / 未だ見えない敵

 

 

 ――――その後、慶治町役場(旧水名区役所)

 地下1F・八重いずもの調整施術室。

 

 

「どうだ?」

 

「ダメッス。全然ダメ」

 

「チッ、やっぱりそうか……」

 

 ベッドから起き上がり様に問いかけるフェリシア。

 首を振って断言するいずもに、腹ただしそうに舌打ちを鳴らした。

 

 ――――黒羽根との戦いの後。

 カエレ達と分かれたいろは達三人は、一旦、慶治町役場へ向かう事となった。

 ももこ曰く、いろはとフェリシアに、八重いずもを紹介したいのと、ソウルジェムを診てもらい、二人から詳しい事情を確認する為だった。

 

 しかし、結果は言わずもがな。

 ももこも同様だった。

 

「これは、粟根こころさんが、環さんのご両親をサンシャイングループに拉致されるところを目撃した時。環さんがサンシャイングループ会長に因縁を付けた時に、護衛のコルボーと神楽に脅された時と、全く同じッスね」

 

 八重いずもは、くしゃくしゃのベリーショートカットの白髪と、メガネの奥の切れ長の瞳が特徴的な美女だった。

 八雲みたまと全く同じ衣装を、引き締まったスレンダーの体に纏っている。

 どうやら、これが調整課の仕事服らしい。

 

「で、そのコルボーって魔法少女も“マギウスの翼”を名乗っていた、と……サンシャイングループと例の秘密結社の繋がりは濃厚になってきたよな、調整屋……」

 

 とはいえ。

 たった今、ソウルジェムを覗かれた三人が()()()()()()ように、サンシャイングループとマギウスの翼が起こした事件に関しては、全く見えてこないのだ。

 サンシャイングループは、その華々しい偉業の陰で、黒い噂もちらほら聞こえてくる。しかし、そこに事件性が見えてこなければ、警察は動けない。

 つまり、ももこ達が働きかけたところで、証拠が無い以上、警察を味方に付ける事は困難。

 一応、先の襲撃事件に関しては、信頼できる警察の方々に依頼して、現場を調べてもらってはいるが……。

 

「フェリシアは、前に連中とつるんでたことがあったんだろ? 何か知ってるのか」

 

 後頭部を掻きながら、バツが悪そうに困り顔で答えるフェリシア。

 

「あー……そう言われても、傭兵は、依頼主の事は詮索しないのがルールだからなあ。オレが知ってるのは、紅羽根って女が、黒羽根共を動かしてる“実働部隊長”で、黒羽根は末端のゾンビ兵ってことくらいだよ」

 

「カマキリ男については?」

 

「全然知らねえ。何なんだアイツ……? でも」

 

「ん?」

 

 フェリシアはそこで言葉を一旦切り、瞳を鋭くした。その様子をももこが見つめる。

 

「なんかスゲえ技術を持った奴が上にいるのかも……」

 

 魔法少女達を一律、ゾンビ兵に改造し。

 人型のカマキリ怪人を創り上げる程の存在が、マギウスの翼に。

 

「サンシャイングループは、落ち込み気味だったIT、ロボティクス、バイオテクノロジーの業績がここ2年で、飛躍的に上昇してますからねー。もしかしたら、“ブレーン”がマギウスの翼にいるのかもしれないッスねー」

 

 つまり。

 その“ブレーン”が、サンシャイングループに、技術力や人材を提供しているかもと、いずもは言う。

 

「ブレーンって、天才科学者みたいな奴のことだろ? そんな映画みたいな……っ!」

 

 そこであっ、と大きな口を開くももこ。

 

「そういえば、フェリシア言ってたよな? 黒羽根がボスの事を話してたって!」

 

「ああ、“ミス・ペインプランター”とか言ってたぜ」

 

「そいつが、ブレーンなのかな……?」

 

「どうかな? この手の組織犯罪の黒幕ってのは、徹底的に自分を隠し切るからな……。ただのスケープゴートかも」

 

「Pain Planter。直訳で“痛みを植え付ける者”……あからさまッスよね~!」

 

 フェリシアといずもの言葉を聞いて、ため息をつくももこ。

 結局、何も分かっていなかった。

 今の自分達では、憶測を言い合う他なく、埒が明かない。

 

「……とりあえず、今は無理言って現場検証してくれてる警察の人達が、証拠を見つけるのを祈るばかりだな……。それに」

 

 ももこはチラリと離れた方へ目を向ける。

 そこには、いずもに魂を覗かれてから、ずっと茫然自失状態になっているいろはがいた。

 幽鬼のように棒立ちして、首を俯かせ、生気を失った瞳を床に向けたまま、ブツブツ呟いている。

 

 

「お父さん…………、お父さん……………」

 

 

 折角、見つけた筈の父親は、只の幻でしか無かった。

 そのショックは計り知れない。

 それが分かっているからこそ、ももこ達は、何も話しかける事ができなかった。

 しかし、あまりにも不憫である。

 

「相棒だろ? なんとかしろよ、フェリシア」

 

「え、オレがっ?! ……う~む……??」

 

 流石のフェリシアも、頭を抱えるしかなかった。

 それだけ、いろはの落胆ぶりは凄まじく、フェリシアは一週間程、イジるにイジれなかったという……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神浜市警察は、県警本部にとっては、一部署(市警察部)という扱いでしかない。

 だが、320万以上の人が住む街を管轄しているだけあって、規模はかなり大きい。

 具体的に、中央区に本部があり、他に新西、水名、南凪、工匠、大東に所轄署を抱えている。

 約一年前の結城安里事件を教訓に、そして、大東区で頻発している海外難民による軽犯罪や麻薬密売などを摘発する為に、組織強化が徹底されている。

 所属する刑事は、塚内直正警部を始め、警視庁から出向してきた優秀な者もいるし、中央署、大東署には、特殊部隊も配属されている。

 

 

 後日。

 十咎ももこは、水名署に足を運んでいた。

 先の黒羽根襲撃事件の現場検証の結果について、話がしたいと、向こうから連絡を受けたからだ。

 

「……ごめんなさい、現場からは何も見つからなかったわ……」

 

 面談室にて、対面するももこに頭を下げつつ、そう話すのは30代半ばの黒髪の女性警官だ。

 鑑識課の金井朋子巡査である。

 ももこの事を、小さい頃から知っている顔なじみだった。

 

「そうですか……」

 

 金井巡査によれば、現場から検出できたのは、深月フェリシアの血痕と、黒羽根とカマキリ男()()の魔法少女達の指紋・足紋くらいだという。

 

 ちなみに、フェリシアのドスにも黒羽根の少女達の血液が付着していた筈だが、カマキリ男が去った頃には、綺麗さっぱり消えていた。

 つまり、証拠品として使えない訳であり、自分達に不都合な証拠は徹底的に根絶する秘密結社の技術力に舌を巻く結果となった。

 

「幻覚でも見せられたんじゃないのか?」

 

「っ」

 

 ももこがくっと歯噛みする。

 鋭い視線を向けて、威圧的な口調で言ってきたのは、金井巡査の隣に座る40代くらいの中年。

 捜査課の春川俊樹係長だ。

 階級は巡査部長。ダークブラウンのロン毛と浅黒い筋肉質な体付きが特徴で、どこかチャラい印象を受ける。

 

「サンシャイングループが悪だと君たちに誤認させるために、どこかの魔法少女が仕組んだ可能性は?」

 

「それは……っ」

 

「三笠カエレと蜂貴院優花、その二人が怪しいとは思わなかったのか?」

 

 そんな春川係長は、ベテラン刑事らしく、非常に慎重的で疑り深い性格だった。

 だが、そんなことを言われたら、元も子も無い。

 ももこは言葉に詰まり、俯いてしまう。見かねた金井巡査がキッと彼を睨みつける。

 

「係長っ!」

 

「……っと、言いたいところだが、実は市警本部の塚内課長から連絡があってな……」

 

 金井巡査を右手でどうどうと抑えつつ、春川係長は冷徹なまま説明する。

 

 ――実は、昨日の事。

 七海やちよ、都ひなの、常磐ななか。

 ももこ以外のチームリーダー達も、また、黒羽根達の襲撃を受けたという。

 無論、実戦経験はももこより多いベテラン三名。難なく撃退に成功。問題はその直後。

 

 カマキリ男の時と同じく、“幹部”が現れたのだ。

 

 やちよの前には“フクロウ男”が。

 ひなのの前には蒼羽根が。

 ななかの前には黄羽根と名乗る人物がそれぞれ現れて、“マギウスの翼のメンバー”を名乗り、宣戦布告をしたという。

 

「フクロウ男……?」

 

「これらが幻覚魔法とは思えない。余りにも大規模過ぎるし、何より前例が無いからな」

 

 つまり、ももこ達の推測通り、組織犯罪の可能性が高い、と春川係長は口にする。

 

「既にこれらの件は、塚内課長から県警本部の捜査二課長へ報告は済んでいる」

 

「っじゃあ!」

 

 ももこがテーブルに身を乗り出す。

 県警の捜査二課とは、『組織犯罪対策課』の事だ。

 知能犯を専門に扱う部署で、今まで数多くの暴力団絡みの難事件を解決してきた実績を持つ、エキスパート集団。味方になってくれれば、心強いことこの上ない。

 だが、春川係長は表情を険しくして言った。

 

「喜ぶのは早い。捜査二課は多忙な部署だ」

 

 春川係長曰く。

 県警の組織犯罪対策課が近年、力を入れているのは、一般市民を対象とした「振り込め詐欺」をはじめとする“特殊詐欺”である。年間の被害額数は数百億円に至ったまま、一年間の被害件数も優に一万件を超えている。

 それに比べれば、実態が無く、具体的な被害者も分からず、証拠も上がらない、秘密結社の捜査など、消極的に捉えるだけだろう。

 つまり、“見えざる敵”に余計な時間と人員を割ける程、暇では無い、という事だ。

 

「そうですか……そうですよね……」

 

 燃え上がった直後の火に冷水をぶっ掛けられたような気分だった。

 意気消沈するももこを、じっと見つめながら、春川係長は言う。

 

「十咎くんには恩義がある。俺達も伝手を当たってできる限り調べてみる。何かあったら君たちに協力を要請することになると思うから。当面の間、無茶はせずに、待機しててくれ」

 

「分かりました……」

 

 ――――何かあったら、か。

 

 煮え切らないが、今はこの感情をぐっと飲み込むしかない。

 ももこは軽く会釈すると、金井巡査に見送られる形で、水名署を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※おまけ


 ちなみに、いろはが無くした手土産問題だが、これはあっさり解決した。

「はい、コレ」

 役場に向かう途中、合流した水波レナが、差し出してきた紙袋に、きょとんとなるいろは。

「え……? これって……」

「アンタ、お父さん?を追う時、落としたでしょ。レナが拾ってあげたんだから、感謝しなさいよっ」

「あっ……」

「ちょっ……!? アンタ、何泣いてんのよ!?」

「ありがとう、ありがとう……っ!!」

 レナの優しさに、いろはは感極まって泣き出してしまった。
 瞳からポロポロと涙を零しながら、困惑するレナの両手を取って、何度も何度も頭を下げて、感謝を述べる。


 一方、その様子を隣で見ていたフェリシアは、

「寿命が縮んだぜ……」

 と、ぼやいて、がっくりと項垂れた。

 以上、生粋のトラブルメーカー・環いろはが起こした珍事。
 コイツには、二度と買い物は頼まねえ――後にフェリシアはそう心に誓うのであった。
  
 

 

 二週間ぶりに執筆したら難産でした。
 今回から毎週土曜投稿に戻ります。
 警察組織に関してはうまく描けてる気がしないので、詳しい方がいらっしゃいましたら、情報提供求めます。
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