魔法少女いろは☆マギカ 第2部 RE:Ms.Pain Planter(休載中 第二章一部完結済) 作:hidon
カミハマヴィレッジ。
通称“租界”と呼ばれている組織。
オンラインカジノの運営。
競馬の予想屋集団による当たり馬券の考察と、その情報の売買といったギャンブル的なものを始め。
捨て犬・捨て猫の里親探し、恋人の浮気調査、行方不明者やペットの捜索といった探偵的なもの。
ホームレスの炊き出しや、地域のゴミ拾いといったボランティア活動。新西、北養駅前で風俗店や金融業の運営など、その業態は多肢に渡る。
表向きは、企業として登記されているらしいが、そこで働いている者達は、元アウトローが勢揃いしているとの噂だ。
窃盗・詐欺等の犯罪者、麻薬常習者、生活保護受給者、精神障害者、フィリピン・メキシコ等の海外難民、傭兵……こういった世間から外れてしまい、孤立していた者達を取り込んで、下っ端として上手く利用し、組織を拡大してきた背景があるという、正に“集落”。故に、決して表に返り咲けない者達の居留地=“租界”と呼ばれている。
つまり、ヤクザのフロント企業の疑いが濃厚だった。
“その筋”からの情報によれば、広域暴力団に指定されている大組織の三次団体という噂だ。
とはいえ、やっている収益獲得法は、上記の通り、合法の範囲内である。
これは、2008年から施行されている暴力団新法の兼ね合いもある。これまでハイリスクだが儲けはでかい、違法スレスレのグレーな収益法が実質不可能になったのと、それに伴い、経済ヤクザと呼ばれる法に詳しい者が増えてきた為だ。
三笠カエレと、蜂貴院優花は、そこのツートップだ。
24歳と、25歳という若さだが、魔法少女としての経験値の高さから、計算高く危険察知能力に長けており、全く付け入る隙が無かった。
基本的にカエレが、その力強さと姉御肌的カリスマ性で、下っ端達をまとめて。
優花は、ブレーン役として、新しい合法な収益獲得法を思案し、カエレ達に実戦してもらうという形で、組織を支えている。
「そー考えると、あいつらも随分偉くなったもんだよなー」
「おっ、傭兵になったばっかのカエレを知ってるんッスね~? どんな感じだったッス?」
「出会った時は、ヒッッデェーコミュ障だったぜぇ~! 優花と出会わなけりゃ、一匹オオカミのまま、どっかの組に噛み付いて野垂れ死んでたかもなっ!」
ヒヒッとニヤケながら、フェリシアは
あのおっかない見た目で、モニョモニョと喋るんだから、思い出す度に可笑しくて仕方ない。
まあ、今は経営者として経験積んだからか、大分改善されてきたが。
2018/11/03(火)AM10:00
「……ところで、調整屋」
「屋じゃなくって課。なんスか?」
「何でオレがこんなことしなきゃいけないワケ?」
澄んだ蒼天の下。
水名区・慶治町役場の向かい側、道路を挟んだ先の建物――昭和時代の情緒が感じられる古き映画館・『神浜ミレナ座』である。
そこの駐車場に、深月フェリシアと八重いずもはいた。
呑気にスマホを弄ってる黄ジャージ姿のいずもに、“作業”の傍ら、睨みを利かせるのは桃色ジャージ姿のフェリシアである。
彼女は、職員用駐車スペースに停められた、ハイエースのオイル交換をしていた。
「だって、自分で言ってたじゃないッスか。“経験豊富”って」
「まあ、そりゃそうだけど……でもこういうのは、普通業者にやらせね?」
時期は11月だが、温暖化の影響か、長く陽の下で動くとじわりと服の中が汗ばんでくる。
そのせいか、あからさまにイラついてるフェリシアだが、その手際はテキパキと器用なものだ。
さっきも洗車やライト交換をパパッと仕上げたし、やはり、手慣れている。
「ウチも予算が厳しくってねー、節約ッスよ節約」
しかめっつらのフェリシアの疑問に、へらへらと答えるいずも。
調整員は何故か個別に、お店を経営している。
例えば、八雲みたまはバー。八坂おけらは、定食屋と言ったように。
いずもも、この映画館を経営しているが、他二名と比べて、維持管理費がバカにならないのだろう。
ちなみに、この整備中のハイエース。
車椅子も1台は乗れる、謂わば“お年寄り専用”だ。
いずもが業務提携している町中の福祉施設から、映画館の利用希望があった場合、希望者のお年寄りを乗せていく、という仕組みだ。
「他にも大型バスを改造して、運転中もお客様にスクリーンで映画が見れるようにしたかったんスけどねー。そっちも予算が無くて断念無念ッス」
「ヘイヘイ……」
至極どーでもいいので、テキトーに流して整備に没頭する事にしたフェリシアであった。
そう。
環いろはが、『おもちゃ診療所』専任なのに対して。
フェリシアは、“各調整員の補助”が、大賢者試験中の主な公務員業務となった。
☆
――――1時間後。
整備が終了したハイエースに二人は乗っていた。
向かう先は、北養にある障害者施設。映画が観たいと希望する利用者達を迎えに行く途中だった。
閑静な町中の、空いた道路を走るハイエースの中で運転手のいずもが、助手席のフェリシアに話しかける。
「そういえば」
「ん?」
「いろはちゃんとは上手くやれてます?」
「まあな」
「どう思ってるんスか?」
「しょーもねー奴だよ。何も知らねー癖に、思い込みだけで突っ走っちゃあトラブル起こして……」
後頭部を掻きながら、フェリシアは思い出していた。
黒羽根襲撃直後の事を。その後、寮に行った直後の会話を――
『いろは、お前さー』
『ん?』
『何で逃げなかったんだよ?』
オレは呆れながらアイツに聞いたんだ。
『“逃げろ”って、オレ言ったよな?』
『……っ』
アイツはずっと、雨の中の子犬みたいに体を震わせていた。
目を泳がせて、下唇を噛みしめてオレを睨んでいた。
『オレのこと嫌いだったんだろ? 見捨てりゃ良かったじゃねーか』
『……だって――』
「『助けてくれって言われた気がしたから』ってよ。……で結局、何もできねーでグズグズしてやんの……ったく」
確かに、そんなこと言ったかもしれない。
しかし、いろはは生きなければならない理由があり、選択する事ができた筈だ。
逃げなければ、フェリシア諸共嬲り殺されていたのは、分かってた癖に……。
「いい子じゃないッスか」
「うーん……」
いずもが笑顔で言うも、フェリシアは後頭部を掻きながら渋面。
経験豊富な彼女から見ても、“環いろは”という人間は、結構訳が分からない奴、という認識のようだ。
「向こう見ずなバカなだけじゃね? ただ」
「ただ?」
「アイツ、どうも“こっち側”じゃないような気がするんだよなー?」
「“こっち側”、ね……」
フェリシアは寝食を共にしてるから。
いずもは、みたまから話を聞いているから、察しはついていた。
環いろは。
あの少女の中には、底知れない“闇”のようなものが沈んでいる、と。
だが、どんな状況においても、それが表面化することは無かった。
彼女はどんなに追い詰められても―例え命の危機が迫ろうとも―どこにでもいる普通で、まっすぐで素直な、優しい少女に見えた。
だからこそ、余計に不可解だった。
汚れたものが無さすぎて、逆に、薄ら寒さすら覚える程の、違和感。
普通の人としてごくごく当たり前の善良さ。
だけど、それが
「……って、
その意味を察したフェリシアはすぐに首を振った。
「オレはヤクザもんだけど?」
「今は公務員でしょ?」
「だって、オレは――」
「っ!」
――と、そこで、ブレーキを踏むいずも。
前方に見えたのは、道路の真ん中で転がるサッカーボール。左に見えたのは、塀の低い球技練習場で、十人程の小学生達の内2名がこちらに向かっていた。
どうやら練習中に勢い余って蹴ったボールが道路まで飛んでしまったらしい。
「ったく、ガキが……。ちょっと言ってくる」
「ケンカしちゃダメッスよ~」
「わーってるって!」
停止したハイエースからフェリシアが降りて、サッカーボールを拾いに行く。
その間にいずもは、ハイエースを路肩に停めておいた。
サッカーボールを抱えたフェリシアは、球技場に入り、向かってくる男の子達に言う。
「オラッ、ガキどもー! 気をつけろよー!」
公務員とは思えぬ口の悪さである。
男の子達は走りながら、元気いっぱいな大声で応えた。
「ごめんなさーい!!」
「おにーちゃんありがとー!!」
「あうっ!?」
思わずズッコケそうになるフェリシア。
慌てて態勢を直し、男の子達を叱りつける。
「こんのクソガキッ!! オレのどこがにーちゃんだっ!?」
「だって、オレって言ってるし……」
「よく見ろ。ここにあんだろ、おっぱい」
「え……にーちゃんじゃなくてねーちゃんなの?」
少年Aの言葉に、うんうんと頷くフェリシア。
「ってことは……チンチン切っちまったのか?」
「だあああああ!?!?」
だが、続けて放たれる少年Bの言葉に、ズッコケた拍子に後頭部を地面に強打!!
「えー!? ってことはおっぱいもかよ!? にーちゃん若いのに苦労してんだなっ」
「お前あんまそういうこと言うなよ! 今はタヨウセイ?の時代なんだから、ハイリョ?ってのをしないと怒られるぞ!」
「あ、そうだった……ごめんよ。オネエのにーちゃんっ」
「~~~~~ッ!?!?」
違う、そうじゃない。
でっかいタンコブを作ったフェリシアは体をワナワナさせながら、立ち上がる。
「ケンカ売ってるなクソガキども……!! ならいいぜ、お前らオレと勝負しろよ!」
「「勝負?」」
サッカーボールを小脇に抱えて、不敵な笑みで言い放つフェリシア。
突然の申し出にポカンとなる少年A・B。
「先にゴール入れた方が勝ちだ! お前らが勝ったら……おっぱいが本物かどーか、見せてやる!」
そういって、15歳にしては健康的に実った胸をずいっと張るフェリシア。
普通の
少年A・Bはあからさまに、嫌な顔をした。
「うげっ、マジかよ~……」
「おれ、そっちの趣味はねーし……おぇぇ」
「流石にちょっと悲しくなってきたぞオレ……」
青褪めて嗚咽を吐く少年ABに、テンションだだ下がりのフェリシア。
しかし、自分で申し出た手前、引き下がれなかった。
「……その代わり、オレが勝ったら。オメーら全員チ○コ見せろよ!!」
ニッと猟奇的な笑みを浮かべて目を光らせるフェリシアに、少年A・Bの背筋がゾクッとなる。
「うわっ!? にーちゃん、やっぱそっちの趣味がっ!?」
「このオ○マやべーぜ!! 逃げろおおおおおおおお!!!」
「オラー!! もう勝負は始まってんだ! 覚悟しろクソガキどもー!!」
「「ひいいいいいいいいいいいいいい!!!?!?!?」」
ドリブルしながら猛烈な勢いで迫ってくる金髪オ○マ怪人に、全力疾走で逃げ出す少年達。
――その後、少年達とのサッカー勝負は意外と盛り上がった。
少年達は、チ○コを狩られる恐怖から絶対負けられないという意地を見せたが――結果はフェリシアが勝利。
「中々やるじゃねーか、ガキンチョども!」
「にーちゃんも、カッコ良かったぜ!」
「今度おれたちに教えてくれよ! いつもここで練習してるからさ!」
「ははっ、いーぜ! また今度なっ!」
お互いに称賛しあってる内に、チ○コ披露はうやむやになったそうな。
「やっぱり。みっちゃんも十分“こっち側”じゃないッスかっ」
運転席の窓から、その様子を微笑ましそうに眺めながら、いずもは独りごちるのだった。
「そういや……次の上映は『すばらしき世界』だったッスね~」
殺人を犯した元暴力団員の男が、出所後、人々の助けを借りて、社会を前向きに生きていこうとする話だ。
主人公と、フェリシアの姿が、少し被っているように思えた。
※おまけ
フェリシア
「そういや、みたまは、味覚がダメだったけど、オマエもどっかダメなのか?」
いずも
「あーアタシは耳ッス」
フェリシア
「はっ?」
いずも
「全ッッ然聞こえないンスよね~!」
フェリシア
「いや、どー見ても聞こえてんじゃん……。嘘付くなし」
いずも
「ああ、これは読唇術の修行の成果ッス。相手の口を見ると、何しゃべってんのか大体分かるんス」
フェリシア
「」
……ちなみに、描写はしてないですが、いずもはいつも骨伝導ヘッドフォンを付けてます。
↓(ジャージ姿の二人のイメージ:カスタムキャストで作成)
【挿絵表示】