魔法少女いろは☆マギカ 第2部 RE:Ms.Pain Planter(休載中 第二章一部完結済)   作:hidon

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FILE-2 #21 マギウス・ザ・プレイヤー

 

 

 

「都市伝説って……?」

 

 みんなが集まっている会議室で。

 席に座るなり開口一番、七海部長からぶつけられた言葉にアタシは困惑するしか無かった。

 

「マギウスの翼は恐らく、“祟り”の力を利用していると考えられるの」

 

「また、荒唐無稽な……」

 

「いえ、可能性は有りえます」

 

 呆れるひなのさんの隣で、ななかが眼鏡を光らせて端末を見ていた。

 

「二課長のお話をかこさんに伝えた所、夏目書房に古い文献がありました。確認して頂いたところ、全国でマギウスの翼が起こしたと思われる未解決事件に関しては、やはり、その土地の古い伝承、言い伝え、わらべ歌、都市伝説等が密接に関わっているようです。これらを更に詳しく調べてみた所……」

 

 ななかは会議場所の奥に有るディスプレイに、端末を接続して、皆に画面を見せた。

 

「やはり、その土地神に纏わる“祟り”に繋がります」

 

「んなバカな……」

 

 アタシは呆気に取られたが、ひなのさんはまだ信じ切れないと言った様子だった。

 というか、真剣に非現実的な事を話す二人に呆れていたみたい。

 部長は、ななかの言葉に頷いた後、ひなのさんを見つめて強く言った。

 

「市長は、教授から教わった風水術に則って都市開発を進めてきた……」

 

 部長が説明する。

 風水というのは実に微妙なものだ。

 例えば、石ころひとつ置くだけで家の運勢が変わったりする。

 神浜市のような、大きな街を風水で見る場合、大地の気の流れを読む。

 基本的には、山から平地に向かって流れ、海に出る気を観る。

 

 ――――こうした流れを、『龍の通り道』という。

 

 つまり、龍の通り道をうまくつくってやることで、家も繁栄し、街も発展する、という訳だ。

 逆にビルが多く建設されている街の場合、龍の道が閉ざされ、エネルギーが入り込まなくなる――つまり、その地は争いが絶えなくなり、活気もなくなり、衰退していくだけになる。

 

 男尊女卑の風習が根強い、工匠区。

 浮浪者が溢れるドヤ街と呼ばれた大東区。

 現在では、かなり過ごしやすい街に生まれ変わったのも、風水の力の賜物だと。

 

「これらの事象が意味する所はつまり、神浜市の今日の平和は、風水による土地神の力の再生或いは活性化だと考えられるわ。この技術を悪用したのが、恐らくマギウスの翼……」

 

 そこで七海部長は、平将門の首塚の話を例に出した。

 有名な偉人だ。

 アタシも、歴史の授業でなんとなく聞いたことがある。

 

 部長の話によると……。

 

 平将門は平安時代に、関東を治めて親皇を名乗ったという。

 でも、当時の政府=朝廷からは逆賊扱いで、二ヶ月後に藤原秀衡や平貞盛らに討たれてしまう。

 将門の首は現在、東京都千代田区大手町にある首塚に埋葬されているが、その『怨霊』にまつわる都市伝説が今に至るまで語り継がれている。

 

 ・関東大震災の直後、首塚を整地して大蔵省の仮庁舎を造ったが、そこで謎の病気が流行り、大蔵大臣をはじめとする官僚など14人が死亡。その17年後、火事が起きてこの仮庁舎は全焼。

 

 ・第二次大戦後、GHQが首塚の周辺を駐車場にしようと作業していたところ、突如ブルドーザー転倒。運転していた作業員が死亡。平将門の呪いの話を聞いたGHQは、ただちに工事を中止した。

 

 ・現在でも、周囲に建つビルから、首塚が見下ろせないように、そちらの方向には窓が無いという。また、ビル内の机の配置も、首塚に失礼がないように特別な配置になっている。

 

 以上の話をした後、部長はまとめた。

 

「土地神の“祟り”とは、それだけ凄まじく恐ろしいものよ。つまり、私達その土地に住む民が誠意を持って崇めれば、土地に活気と繁栄を呼び、無礼を働けば、土地に破壊と死を招く……」

 

「ただの都市伝説だろ。裏付けも何も無い……」

 

「平将門の怨霊伝説は、そういうものに命を掛けている人たちが居ることが裏付けになるわ、ひなの」

 

 部長がごり押そうとするが、ひなのさんは未だ煮えきらない態度だ。

 

「ってかそもそも、何で教授の技術を“マギウスの翼”が知ってる前提で話してるんだよ?」

 

 至極ご尤もで、それはアタシにも気になった。

 部長は間髪入れずに答える。

 

 

「里見灯花」

 

 

「「「!!!」」」

 

 突然、口から出たその名に、アタシを含めた三人が驚愕した。

 

「里見灯花さんって、環いろはさんの、親友だったっていう少女のことですよね……?」

 

「ええ、そしていろはは、柊ねむ(教授)とも親友で、“自分の妹を含めた4人は仲良しだった”、とも言っていた……教授と里見灯花は過去に関係があったのは間違いないわ」

 

 二人の関係を教授に問いただしても、答えてはくれないだろう。

 それは、決して意地悪な訳ではなく、特別な理由があるからだが――なので、それはさておき。

 

 いろはちゃんの記憶によると、里見灯花は大病を患っていて、神浜総合病院に入院していた――というが、病院にはカルテ(記録)が無かったそうだ。

 それは教授も同様で、教授の方は“楽園”で生きている。

 だから、里見灯花も、どこかで生きていると考えても不思議じゃない。

 

「いろはによれば、二人は“天才”と呼ばれていたそうよ」

 

 そして、現在。

 片方は、その頭脳を人々の生活の為に費やし、もう一方は……。

 

「魂を抜かれてゾンビ化した魔法少女達……! カマキリ男、フクロウ男……!」

 

「まるで、ロックマンのライト博士とドクターワイリーみたいッスね~」

 

 人間とロボット共存の未来を追求する正義の天才科学者と、ロボットによる世界支配を目論む悪の天才科学者。

 マジでその通りだ。まるでゲームか漫画の世界みたいだ。

 苛立つアタシの隣で、そう呟いたウチの調整屋に、部長は目を光らせた。

 

「いずもさん言ってたわね。マギウスの翼には“ブレーン”がいるって。そいつがサンシャイングループに技術提供してるかもって」

 

「まあ……」

 

「その里見灯花が、そうだっていうんですかっ?」

 

 アタシが問いかけると、部長はうんと頷いた。

 

「今は憶測だけどね……。でもみたまの話を聞いて怪しいと思ったの」

 

 みたまは、顔を俯かせ、拳を震わせていた。

 思い出すだけでも辛く、悔しい記憶だったのはアタシにも見て分かった。

 神浜総合病院にて、鏑 美奈子に里見灯花の事を訪ねたところ、彼女はこう答えた。

 

 “誰も近寄ることのできない。深い暗闇の底に、その子は居る”と――――

 

 そして、後日、美奈子さんは失踪してしまった。

 みたまどころか、職場や家族にも、一切の連絡は無く。

 

「美奈子さんの発言は里見灯花にとって不都合だった。だから、消されてしまった……」

 

「「「…………」」」

 

 真実はどうなのか、失踪した美奈子さんにしか分からない。

 でも、部長の話は妙な信憑性があって、アタシ達は黙って耳を傾けていた。

 

「そして、いろはは、里見灯花から宣戦布告を受けた。そうよね、みたま?」

 

「ええ、確か――」

 

 みたまは以前。

 いろはちゃんに美奈子さん失踪の件を連絡しようとした時、携帯が“彼女”に電波ジャックされたという。

 その時ーー

 

 

【人の生命とは無限に有限。だから価値は無い。

為れば、私はこの生を掛けて、有限を無限へと創り代える。

私の人生の価値を、絶対的な唯一にする】

 

 

「――こう言われたって、だから、止める為に力を貸して欲しいって、いろはちゃんに言われたわ……」

 

 初めてその話を聞いてアタシ達は驚いた。

 里見灯花って奴は、マジで悪の天才科学者そのものじゃないか!?

 

「う~ん、そこまで言われると、里見灯花って奴は大分怪しいな……」

 

「確証はありませんが……鏑さんの失踪を始め、サンシャイングループ系列のテクノロジー系企業の業績の急上昇、ジェントルマン風の怪人達や、不死身の黒羽根達も、その里見灯花が関わったと言われれば納得してしまいそうですね」

 

「でも、そんな奴と親友だったっていういろはちゃんは何なのかな? どうみても、普通の女の子なんだけど……」

 

「「「…………」」」

 

 何気なく聞いたつもりだったが、黙る三人を見て、マズイ、空気を読み違えたと直感した。

 でも、アタシは――

 

「そもそもいろはちゃんって、何者なんですか?」

 

 部長に目を向けて、問い詰めた。

 気になって仕方が無かったからだ。

 柊ねむ教授と、里見灯花――正義と悪の天才科学者を親友に持ち、その板挟みになっている、いろはちゃんの事が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――それから、暫くして。

 水名警察署から、株式会社カミハマヴィレッジ(租界)及び、三笠カエレ、蜂貴院優香両名に関する捜査報告書が、捜査本部に提出された。

 ももこもそれを見て、春川係長が言った“形式上”の意味が理解できた。

 

 

 ・まず、バックボーンについて。

 疑われていたのは前社長兼創業者のOと、顧問弁護士のI、財務担当のFだが、彼らはマギウスの翼ではなく、ある広域暴力団S会の幹部だった――が、それも20年以上も昔の話で、とっくに破門されている。

 他に会社の資料や従業員の身辺も調べたが、上記の組織との繋がりは一切判明しなかった。

 

 

 ・次に、田中寛治監禁の可能性も、ほぼシロ。

 社長の三笠カエレの許可を得て、カミハマヴィレッジ社内と、三笠カエレと蜂貴院優花の自宅を捜査した。

 警察は鑑識員を引き連れて徹底的に調査したが、田中寛治に関わるもの(指紋、足紋、下足痕、体液等)は一切見当たらなかったし、従業員に顔写真を見せて事情聴取したところ、全員が“そんな人物は社内で見たことが無い”、と言い張った。

 

 

 ・そして、三笠カエレの怨恨による田中寛治殺害の可能性も、否定された。

 

 田中寛治には一人娘の麻由美がいた。

 麻由美は、十代の時にグレて家出し、酒や悪い男達に溺れた。

 大東区で、ヤケになって不正入国者からMDMAを購入しようとした時に、カエレに見つかり、彼女の勧めで租界入りした。

 

 田中寛治は独自の調査で、その事を知った。

 広域暴力団との関係が噂される租界で、麻由美が元気にやれているのか、心配でならなかった。

 盗撮・盗聴を犯してまで、内部情報を把握しようと目論んだが、カエレに見つかる。

 だが、一部始終を見ていた他の従業員によれば、口論にはならなかったという。

 カエレは寧ろ、丁寧に論そうとした方で、田中寛治は「娘を返せ!」等と一方的にキレて喚き散らしていた。

 ……つまり、わざと相手を怒らせて、暴力や暴言を誘発し、その決定的証拠を撮影・録音することで、警察の介入を目論んだようだ。

 だが、カエレは彼の煽りに最後まで乗る事は無かった。

 

「諦めきれなかった田中寛治さんはその後、三笠カエレさんから離れると、従業員の男性Aさんを脅して、麻由美さんの連絡先を強引に入手したようです」

 

「行方不明当日の夜のLINEは麻由美さんとのものでした。結果は文面の通りです。麻由美さんは父を強く罵倒し、逆上した田中寛治さんは娘と“絶交宣言”しました」

 

 以上、水名署より。

 そして、田中寛治が行方不明になってから麻由美の憔悴は著しく、カエレは業務時間外は彼女のメンタルケアに費やしていたという。

 

 つまり、結論として、そこまで手を尽くしている従業員の親を、怨恨で殺害する線はかなり低いと判断された。

 

 

 ・最後に、三笠カエレ・蜂貴院優香の“魔法少女としての能力”を検査。

 これが一番の証拠となった。

 捜一、捜二課長、鑑識員、科捜研研究員が集う場所で実験が行われた。

 まず、二人の飛翔実験だが、全力を込めても15mくらいが限界で、ましてや雲の上を飛び続けるなんて不可能。

 次に、首刈りの実験。

 科捜研の全面協力のもと、人間の首と同等の強度を持つマネキンを複数用意。

 カエレはバトルアックスで、優香はハルバードで、首を勢い良く斬り落としたが、断面には3~40度程の微妙な傾斜が見られ、田中寛治の遺体のように、180度水平のものは一体も無かった。

 

 

 ――以上。

 警察の捜査結果として、租界及び、三笠カエレ、蜂貴院優香の潔白は証明された。

 

 これは捜査一課長と二課長の目論見でもあった。

 魔法少女と仕事を共にした事がある刑事なら、田中寛治殺害は“魔法少女には不可能”だとすぐ分かる。

 だが、捜査本部の中には、魔法少女に疑念を抱く捜査員も数多くいて、両課長は、まずそれを晴らすべきだと考えたのだった。

 そして、カエレと優香の潔白が証明された今。

 捜査本部は改めて一丸となって、“マギウスの翼”という『多くの魔法少女達を取り込み、超常現象を操る犯罪組織』の捜査に集中できる。

 

 

 

 

 だが、その間に――犠牲者は新たに7人も増えていた。

 

 

 

 

 

 

 




メンタル死んだ。何してても不安しかない。

なお、当面の間は、リアル多忙の為、お休み頂く可能性があります。
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