魔法少女いろは☆マギカ 第2部 RE:Ms.Pain Planter(休載中 第二章一部完結済)   作:hidon

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 2018/11/12(木)PM17:10


 ――水名警察署。

「指示があるまで待機してろって、ももこに言われてたでしょ?」

「それは、そうなんですけど……会議をするって聞いたら、いても経ってもいられなくなって……」

「だが、丁度いい機会だ。七海君と話し合ったんだが、君に聞きたいことがあってね」

 来客用の応接室。 
 そこには罰の悪い顔を浮かべて、身を縮こませる環いろはがいた。
 テーブルを挟んだ対面側には、スーツ姿の七海やちよと神浜市警察署捜査課長の塚内直正警部が座っていた。
 元々、捜査会議に呼ばれたのは、治安維持部のチームリーダーと調整員だけである。
 チームリーダーと調整員の会議が終わった直後くらいに、いろはが現れた。
 警察署の入り口で警備に止められて、警備員の質問にしどもどろになっているところを、やちよに発見され、この部屋まで連れてこられたのだった。

「私に……?」

 目を丸くするいろはに、塚内警部は鋭い視線を向けてその名を言う。


「里見灯花さん――」


「っ!!」

 ぞっと、突き刺さるような冷感が背中を走った。

「――この少女と君は、親友だったそうだね?」

「……はい」

 震えた目でいろはは頷く。

「では、その子のことについて詳しく教えてもらいたいのだが、良いかな?」

「どうして、ですか」

「マギウスの翼と名乗る集団が起こした事件に、巻き込まれている可能性が」

「……」

 そこで、やちよが塚内警部にアイコンタクト。

 ――気遣いは、要らない。

「――ん」

 意図を理解した塚内警部は一度咳払いして黙り、やちよに会話を交代する。

「いろは。――マギウスの翼に、里見灯花が関わっているとしたら、どうする?」

「ッ!!」

 ギクリとするいろは。
 瞳孔が大きく見開かれ、両肩が飛び跳ねた。
 呼吸が荒くなり、脳に回る血流が急減して、視界が覚束ない。

「っ……灯花ちゃんを、疑ってるんですか?」

 可能性は感じていた。
 しかし、それでも――“親友”なんだ。
 深呼吸でどうにか堪えながら、やちよをじっと睨んでいろはは問う。
 首を振って応えるやちよ。

「仮定の話よ。彼女がいたら、黒羽根達とカマキリ男は、実現可能だと思う? 親友の貴女から見て」

「…………」

 いろはは俯き、考え込む。
 親友と対峙する是非を問われたような気がしたから。
 葛藤が無かった訳じゃない。
 記憶の中の灯花ちゃんは、私の為に病気の苦痛を我慢してくれていた。
 私がお見舞いに来ると、必ず眩しい笑顔を見せて、明るくて、楽しくて。
 面白い話をずっと聞かせてくれた、優しい女の子だったから。

 でも、()()の里見灯花は――違う。
 
 戦うと決意した。止めると誓った。
 例え、自分の身が亡ぶかもしれなくても、全てを失っても、家族を救えなくても。
 それが自分の使命だと思っていたから。
 今でも、その気持ちに嘘は無い。
 でも、さっきのやちよさんの言葉に気づかされた。まだ、迷いが残っていたんだ。ああ、ダメだ。そんなんじゃダメだよ――環いろは。

「可能、だと思います」

 ――だから、向き合わないと。

「……それは、どうして?」

 覚悟を改めた。
 怪訝な顔をするやちよさんの顔をしっかりと見据えて。
 私ははっきりと答えた。

「彼女は、天才だから。いつだって、()()()()()()にしてきた……。だって、あの人は」


――プロフェッサーだから。

 
 

 


FILE-2 #21.5 マギウス・ザ・プレイヤー②

 

 

 

 

 

 2018/11/13(金)AM9:00

 

 

 かくして、治安維持部の方針は決まった。

 捜査本部から待機を言い渡されている間は、管轄下の町内の都市伝説の徹底的な調査である。

 当然、ももこ達チーム・イザナミも――

 

「みんな! 知り合いを全員当たって、そういうのを全部精査してくれ! 小さな噂程度でも構わない! なるべく全部だ!!」

 

 慶治町役場に隣接する『神浜ミレナ座』の代表室に、全員集まっていた。

 リーダーのももこが、環いろは、深月フェリシア、水波レナ、秋野かえで、調整員の八重いずもに声を張り上げて指示を出す。

 

「は、はい!」

 

「任せろ」

 

「わかってるわよ!」

 

「りょッス」

 

「……」

 

 迷いのない顔で力強く頷く四人に対して、かえでだけは唯一浮かない表情だ。

 

「で、でも……捜二課長の話だと、これから行方不明者の中に犠牲者が増えていくんじゃないかな……? 田中寛治さんみたいに」

 

「ああ、それもどうにかして食い止めなきゃいけない!」

 

「どうするのよ?」

 

「アタシらは、モモが決めた事に従いまッスよ」

 

「それも同じだ。手当たり次第知り合いから情報を集めて、喧嘩してる人たちを見つけて、アタシらが仲裁して、説得して怒りを収めてもらうしかない」

 

「ふゆぅ……さすがに無謀が過ぎるよぉ……」

 

「でも、ももこらしいわね」

 

「……うん!」

 

 しれっと悪態をつくかえでだが、溜息混じりに微笑むレナの言葉に、快く同意する。

 

「そういうのは、ウチの専売特許ッスよ~」

 

「ケンカの仲裁なら……得意ですっ」

 

「ったく、メンドーだが……傭兵にできねーことはねー。やってやるよ」

 

 他の三名も、ももこの提案を快く引き受ける。

 正直、不安だったが皆の言葉を聞いて安心した。ももこに笑顔が宿る。

 

「みんな、ありがとう。じゃ、よろしく頼む!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2018/11/19(水)PM13:20

 

 だが、ももこらの健闘も空しく、6日後には犠牲者が7人も増えていた。

 全てが頭部を失い、階段の上に横たわっている状態で発見された。慶治町の至るところで。

 

 既に県警本部と神浜市政は、外出及び『喧嘩する』行為は、極力控えるよう市民に向けて発令している……が、人間関係とは中々厄介なものだ。二人の間に亀裂が入れば、元に戻すことは難しい。第三者に仲裁してもらったり、相談したとしても。

 行方不明者数は、25人にまで急増し、同時にもっと犠牲者も増える見込みだ。 

 そして、『喧嘩して、絶交を告げた者が消えてしまう』都市伝説の方も、知り合いに知っている者がおらず、土地神の祟りの類の資料も見つからず、困難を極めていた……。

 

「お稜さん、水名女学園の大図書館からはまだ見つからないのかっ?」

 

『悪いねもっさん。どうやら過去の血生臭い文献は、戦後に、みんな処分しちゃったみたいなんだ……』

 

 ももこが通話している相手は、水名女学園高等部の生徒会長――越塚稜子である。

 お嬢様学校の生徒の中で一番偉い人だが、この話し方からは、とてもそう思えない。

 それもその筈で、彼女は神浜市内随一の名門校と名高い水名女学園の、歴代生徒会長の中で、唯一水名区の政治家系の出身ではない。参京区の生まれで庶民――とはいえ、家は老舗の料亭でそれなりの良家――だ。

 所謂叩き上げの成り上がりである彼女は、その過程で多くの人脈と知識を有しており、友人であるももこからも頼りにされていた。

 

「町の中で一番でかい資料館はそこなんだっ、頼むよ!」

 

『わかってるって! ……う~ん、理事長に頼み込んで、学園長を説得してもらうしかないかなぁ……? なんとかするよ、もっさん』

 

 首無し遺体の事件以降、稜子の方も忙しいのだ。

 普段は学業に加え、学園内でケンカしてる生徒達の仲裁に生徒会総出で奔走している。

 図書館に入る時間など無いし、加えて“土地神の祟り”という限定的な資料を見つけるなど、無理難題だった。

 しかも、話によると。

 超貴重な歴史文献は、歴代学園長の管理下で、厳重に保管されており生徒は閲覧不可能という噂だ。

 

 それでも、稜子ら水名生徒会は、僅かな隙間時間を見つけたり、教師を巻き込んだり、歴史好き・読書好きな生徒に協力を依頼する等して、歴史文献を読み漁ってくれていた。

 

「ありがとう、じゃ……」

 

 通話を切ると、隣にいるいずもに向き直る。

 

「どうッスか?」

 

「まだ時間が掛かりそうだ……」

 

 深くため息を付くももこ。

 

「でも、無茶苦茶言ってるのはこっちだし、正直感謝しか無いよ……」

 

「そうッスね……」

 

 神妙な顔でいずもは頷く。

 

「春川係長らの捜査で、租界とカエレさん達の潔白が証明されたのは救いだけど……」

 

「こっちの方は暗雲立ち込めてまッスね~……」

 

 不意に窓に目を向けるいずも。

 最初の首無し遺体が発見された日から、天候はずっと薄暗い曇天のままだ。隙間すら無く灰色の雲が敷き詰められている。

 しばらく陽を浴びてない為、余計に気が滅入ってくる。

 

「くそっ、どこにいるんだよっ、あのカマキリ男はっ!?」

 

 ドンッと、やり場の無い苛立ちをテーブルにぶつける。

 疑惑でしかないが、奴が犯人だという確信がももこの中にあった。

 だが、一向に足取りが掴めない。

 あんな目立つ姿なのに、誰からも発見情報が無いのはおかしかった。

 

「けっ、バカどもが」

 

「っ!!」

 

 不意に聞こえてきたのは、罵倒。

 ソファに寝っ転がり、スマホを弄りながら悪態を付くフェリシアに、ももこはカチンとなる。

 

「グダグダやってっから先にやられんだよ、たくっ……」

 

「フェリシア! みんな頑張ってるんだぞっ!! そんな言い方」

 

「待ってももこさん!」

 

 怒鳴りながらフェリシアに迫るももこの前に、いろはが立ち塞がる。

 

「フェリシアちゃん、仲良くなった男の子が、行方不明になって……機嫌が悪いんです」

 

「!! あっ、そうだったのか……、ごめんなフェリシア」

 

「けっ」

 

 自分の浅慮を自覚し、謝罪するももこ。

 だが、フェリシアは聞きたく無いと言った様子で、ゴロンと寝返り、皆に背中を向けてスマホ弄りに集中。

 ……恐らく、顔を見られたくないのだろう。

 

「私も、いつも来てくれる女の子のお母さんが、急にいなくなってしまって……」

 

「そうか……。いろはちゃんは、それがマギウスの翼の仕業だとしたら、どう思う?」

 

「っ! それは……許せないです!」

 

 いろはは、ももこの顔をしっかりと見据えて、はっきりと答える。

 

「そいつらを見つけたら、どうしたい?」

 

「……っ!」

 

 奥歯をギリッと噛み締めた。

 グッと拳を握りしめて、いろはは強く言い放つ。

 

「とっちめて、攫われた人達を返してもらいますっ!!」

 

「……いろはちゃんが、そう言ってくれる子で安心したよ」

 

 

 先日の会議でももこは、“いろはは何者なのか”、とやちよに尋ねた。

 

 『貴女の目に見えている環いろはが、全てよ』

 

 やちよは笑みを浮かべてこう答えた。

 その意味が、分かった気がする。

 

 ――そうだよな。人の為に一生懸命になれる奴に、表も裏も無いもんな。

 間違いない、いろはちゃんはアタシ達の仲間だ!

 

 

「? どういう事ですか?」

 

「こっちの話。……よし! 一緒に頑張ろう、いろはちゃん!」

 

「はい!」

 

 差し出したお互いの拳をコツンと叩き合って、ももこといろはは誓い合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 そんな皆の様子を離れたところから眺めるレナの口から、とんでもない話が飛び出てこようとは。

 この時のももこには、想像できなかった

 

 

 

 




前回書き足りなかった事の続き。

とりあえず、キャラクターの方針だけ決めときたかった。

いろは→覚悟を改めたものの、黒羽根戦以降、情緒不安定気味。
やる気はあるが、焦りも酷く、色々からまわってる状態。

フェリシア→それなりに公務員生活を満喫してるが、トラブルメーカー過ぎる↑が何か不安。

ももこ→仲間と市民の命を護る為に奔走中。カマキリ男の行方を追う。
祟りの情報に関しては、水名生徒会頼りなのが心苦しい。苦労人。

いずも→同上。ももこを全力でサポートする姉貴分。

レナ→祟りの情報を集めつつ、カミハマンとして、町を盛り上げていく。しかし……

かえで→祟りの情報を集めつつ、おもちゃ診療所で子どもたちを励ましていく。しかし……
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