魔法少女いろは☆マギカ 第2部 RE:Ms.Pain Planter(休載中 第二章一部完結済)   作:hidon

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 大切な者と絶交した事を悔やみ、“謝りたい”。
 その気持を抱いて階段を昇ると、“神隠し”に遭う――――


「やっぱり、アタシの想像通りだ……!」

 ももこは古い文献に書かれている記述に、目を細めた。
 あれから、約5日後。
 水名女学園の越塚稜子から、ようやく“祟り”の元となる歴史文献が送られてきた。

 『絶交階段』

 それが、この祟りの名称である。
 歴史は平安時代まで遡る。
 神浜市が八神郡と呼ばれていたその頃、それぞれの領地で豪族達――八雲、八重、八島、八坂、八潮、八口、八張、八百の“神道八家――による宗教的内乱が続いていた。
 各々の土地が祀り上げる“神”こそが、八神郡の唯一神であると証明する為の争い。
 それぞれの土地の神の末裔たる教祖(領主)こそが、八神郡を治めるのに相応しいのだと宣言した。
 各家の意地の張り合いによって、八神の地は日夜、罪無き者の亡骸と血で染められていったという。

 映画館『ミレナ座』の代表室で、ももこといずもは、革製のソファ上で寄り添いながらその文献を読み込んでいた。

「だからこそ、崇め奉る神は、人々から恐れ多いものでなければいけなかったんだ……!」

「昔の水名の住民は、祟りを捏造して、土地神を強力な“怨霊”に仕立て上げたって訳ッスね」

「他の神道家に対抗心と威光を示す為にな……。でも、土地の住民が自発的にやっていたものが、いつしか、本当に自然発生する“祟り”に変化したって……!」

 それこそ、七海やちよが言っていたように。
 “風水”のような技術を使って、土地神を強化した結果かもしれない。

「それが『絶交階段』って訳ッスね」

 大豪族の里見家に八神郡が統治されてからは、政策の一貫として、それぞれの土地神は怨霊から、元の“守護神”へと戻された。
 現在、水名神社に祀られている土地神は『縁結びの神様』として水名の人々に慕われている。

「部長の言った通りだ。マギウスの翼は、みんなに忘れられて消えかかった“祟り”の力を、何らかのやり方で再生し、強化してるんだ……!」
 
 読みながら、文献を持つももこの手に力が入っていく。
 ぎゅうっと引き千切らん程に握りしめた拳がわなわなと震えた。
 義憤だ。
 理外の殺戮方法に恐れ震え上がるのでなく、純粋に故意で人を殺した犯罪者達に怒りを示せるのがももこの強さである。
 本人は向かないというが、いずもは、それこそがチームリーダーをやれる最大の理由だと考えていた。

「モモ……!」

「それにしても、学園長、随分渋ったよな……被害者がこんなに増え続けてるのに……!」

 忌々しく下唇を噛み締めながら、ももこは目線を下げた。
 テーブルに置かれた端末からは、ニュース速報がリアルタイムで続々と流れてくる。
 既に慶治町の行方不明者は50人を超え、同時に、首狩り遺体も23人に昇っていた。

「水名女学園の生徒や、教職員のご両親は、サンシャイングループ系列企業の重役が多いそうですし、圧力でも掛けられたのかもしれないッスね~。憶測だけど」

「だからって、市長が説得に動かなきゃいけないとか……流石に強情過ぎだろ!!」

「ほんと、いろはちゃんの人脈に感謝ッスね」

 学園長は、鋼の意志で拒み続けたそうだ。
 高等部生徒会長の稜子が何度頭を下げ、挙句土下座までしようが。理事長が幾度も説得しようが――それだけ“祟り”にまつわる文献が、誰かの手に渡るのを恐れた。
 いろはが、自分の未成年後見人(親代わり)の神浜市長・夕霧青佐に、お願いしなければ詰んでいた。
 しかも、青佐が無理ならば、皇グループ(世界的IT企業)CEO・皇 陸翔すら動き出しかねなかった。






FILE-2 #23 真実への道しるべ①

 

 

 

 

 ともあれ――

 “祟り”の全貌が記された文献が手に入った事実は、捜査本部に一時の安堵を齎した。

 これで、犠牲者の急増を抑えることができる。

 “祟り”は恐ろしいものだが、禁忌を侵さなければ回避できるからだ。

 捜査本部長・県警捜一課長は、広報官を通じてメディアに、『絶交階段』に関する文献の情報一切を公開させた。

 

 ちなみに、メディアには一応、「祟りを模倣した凶悪犯罪事件と見て捜査しているが、『前例の無い新型の魔女』による可能性が高い」と伝えている。

 マギウスの翼の情報及び、魔法少女達による組織的な犯罪の可能性は極力伏せた。

 

 これは、かの『結城安里事件』が関係している。

 一人の魔法少女が起こした、“連続児童誘拐殺人事件”。

 50人以上の少年少女を快楽のままに拉致監禁し惨殺・食人した、あの史上最悪のシリアルキラーが捕まってから、一年も経っていない。

 あの事件は、良くも悪くも、本気を出した魔法少女の実力を世間に知らしめた。

 子供を持つ一般家庭にとって、あの恐怖は未だ記憶に新しい。

 

 つまり。

 世間がこれ以上、魔法少女への疑念を強めれば、捜査に協力してくれている魔法少女達の生活にも悪い影響が出てくる。

 最悪、捜査が行き詰るかもしれない――それはなんとしても避けたい、県警本部側の都合であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時期――――

 

 いずもの想定通り。

 魔法少女(かえで)が行方不明になったことで、水名署から捜査協力を要請された。

 理由は単純で、魔法少女を探せるのは、魔法少女しかいないからだ。

 魔法少女の魔力探知能力に、警察の組織力が加われば、見つかる可能性はグンと跳ね上がる。

 

 水名署に向かったスーツ姿のももこ達が春川係長に案内されたのは、【サイバー犯罪対策室】であった。

 ここは、捜査本部設立時に、空いている会議室に設置された、特務的なものだ。

 中では、県警捜二課から派遣されたサイバー捜査員達がデスクの上で、パソコンとにらめっこしている。

 

(“祟り”相手に、サイバー捜査が何の役に立つんだろうな?)

 

 最初はそう高を括っていたももこだったが、サイバー捜査は実にいろんな事を調べるという。

 例えばSNSや、ネットの掲示板で書き込みが有った場合、IPアドレスを解析して、書き込み元のパソコンや端末の使用者を特定することが可能だ。

 他にもSNSは、いろんな情報が転がっているという。

 例えば、ある会社員が飲食店でランチ中、軽い気持ちで、窓の外の風景を撮影した画像を挙げたとしよう。

 

 ・背景の建物を画像検索すると、似た様な形の建物が絞り込まれる。

 

 ・伝票が一部でも映れば、店を特定できる。

 

 ・窓にかすかに映り込んだ社員証から、拡大鮮明化して、当人の名前や勤め先まで容易に割り出せる。

 

 このように、ただの写真でも、僅かな情報を掻き集めて相手を特定できるという。

 なるほど、捜索にはうってつけという訳だ。

 

「県警本部の捜査二課より、今回の事件のサイバー捜査を担当することになりました、『広域サイバー捜査係』の川原です」

 

「チーム・イザナミの十咎です。よろしくお願いします!」

 

「調整課の八重です」

 

「魔法少女の皆さんと一緒に捜査できるなんて光栄ですよ」

 

 川原(かわはら)と名乗った若い眼鏡の巡査長は、クールな見た目に似合わぬ温和な笑みを浮かべて、ももこ達と敬礼を交わす。

 その後ろで、水名署捜査課の春川係長が、いつも通りの冷徹な眼差しで呼びかける。

 

「川原巡査長、早速ですが」

 

 彼の視線で察した川原は頷く。

 

「! そうでしたね。十咎さん、八重さん。こちらへ」

 

 二人は、川原巡査長のデスクに案内され、彼が操作するパソコンの画面を見つめる。

 そこには、誰かのSNSのプロフィールが映し出されていた。

 

「彼はDu Tubeで日本中の旧い街並を紹介している動画配信者です」

 

 Du Tubeとは、今や世界でも知らぬ者はいないと言われる程の超大型動画配信サイトだ。

 この動画配信者は、つい先日、新しい動画作成の為に、水名区を周っていたという。

 

「彼の過去のツイートを確認したところ、興味深いものがありました。それが……こちらです」

 

 川原巡査長は画面を下にスクロール。

 すると、ももこ達の目に、一本の動画が止まった。

 製作中の動画の一部で、再生すると、水名区の歴史を感じさせる木造りの古都が画面いっぱいに映し出されている。

 

「ここです」

 

 と、川原巡査中は動画を一旦停止。

 彼が指したのは画面の左端。

 明治時代から健在し、今や市の観光名所の一つとなっている、旧神浜煉瓦製作所。

 普段は出入り禁止となっているそこへ侵入する、不審な人物の姿。

 とても小さく映っている為、このままだと、誰かは判別不可能だ。

 

「パーカーのフードを深く被っていますが、拡大鮮明化したところ……」

 

 判別可能。

 不審人物の顔が、パソコンの画面にくっきりと映し出される。

 

「女性。しかも顔立ちからして高校生ぐらいの少女と見受けられます」

 

「! 早速こっちに送って欲しいッス!」

 

「了解ですっ」

 

 何かに気付いたいずもが身を乗り出した。

 川原巡査長から鮮明化した画像を捜査本部用SNSを通して受け取った。

 自身の端末に届いた画像を、早速調整課のデーターベースで検索に掛ける。

 1分もかからずに、不審人物の正体を特定した!

 茶色掛かった黒髪をツインテールに縛った、工匠学舎の制服を着た快活そうな少女の顔が画面に映る。

 

天音(あまね)月咲(つかさ)さん。17歳。工匠区在住の魔法少女ッスねー」

 

「工匠ってこっち(西側)とは反対側の地区(東側)じゃないか!? 随分遠くから来たもんだな……?」

 

 いずもは、データベースを検索。

 彼女の端末の画面に、天音月咲にそっくりな少女が映し出される。

 こちらは月咲とは対照的に、ポニーテールで、水名女学園のゆったりとしたワンピース型制服をまとっており、お淑やかな印象を受ける。

 

明槻(あかつき)月夜(つくよ)さん。17歳。水名区在住の魔法少女。さっきの月咲さんとは双子で、生き別れの姉ッス。多分、会いに来たんじゃ無いんスかねー?」

 

 明槻家は由緒正しき水名旧家の一つ――要は『水名の生まれ無くば人に非ず』の信奉者――で、伝統を重んじるだけに、厳しい家柄と評判だった。

 若い月夜の立場は弱く、外出さえ禄に許されていないらしい。

 

「なるほどね……身分の違う姉妹が密会場所に人気の無い場所を選んだ可能性もあるよな……」

 

 残念ながら、犯人とかえでの手掛かりには繋がら無さそうだ。

 ももこがそう思った矢先――

 

「ところがそうでも無さそうなんですよね……」

 

「? どういうことですか?」

 

 川原巡査長の言葉に、首を傾げるももこ。

 彼は、眼鏡をくいっと直し、解説する。

 

「不審人物が侵入したら、普通は通報されます。しかし、旧神浜煉瓦製作所の管理会社に連絡した所、『この日の監視カメラに怪しい人物は一切映っていなかった』、とのことでした」

 

「「えっ!?」」

 

 彼の言葉に、ももこといずもが揃って目を見開く。

 

「もしかして……この月咲って子さ……」

 

「マギウスの翼かサンシャイングループと関係あるのかもッスねー……」

 

 両組織が関わる事件は、ソウルジェムに映像として残されない。

 連中には、ブレーンに里見灯花(天才科学者)がいる可能性がある。その技術力の高さに、何度も驚かされた。

 故に、監視カメラの映像データの改竄(かいざん)も容易いのでは……?

 

「早速鑑識課を連れて捜査に向かうつもりだが、同行願えるか?」

 

「はい!」

 

「りょッス」

 

 マギウスの翼と、かえでの手掛かりが掴めるかもしれない。

 春川係長の言葉に、強く答える二人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【悲報】月咲ちゃん、やらかす!

書いてて思ったけど、
ももこ達ってマリコさんポジションかもしれない。

今回から真相解明編となります。
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